2008年の北京オリンピックを控え,経済成長に拍車がかかる中国では,
エネルギー需要の伸びも著しく,各地でエネルギープラントの建設が進められている。
日立製作所は,700 m級の超高落差西龍池揚水発電所プロジェクトを,東芝,三菱電機との日本企業コンソーシアムで受注し,2008年8月の運転開始に向けて最終的な据付工事に取り組んでいる。
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中国のエネルギー需要に応える |
水資源の豊富な中国では水力発電への期待が非常に大きく,三峡ダムに代表される巨大水力発電所プロジェクトが幾つも進行中です。そして揚水発電所も,原子力発電所と並行して各地で建設が進められています。揚水発電は,上下二つの貯水池を持ち,電力需要の多い昼間は上池から下池へ落とす水の力で水車・発電機を回して発電します。そして夜間には電気を使い電動機でポンプを回して下池から上池へ水を汲み上げ,昼間の発電に備えます。24時間一定の出力を保って運転される原子力発電所では,需要の少ない夜間に余剰電力が生じますが,この電力を利用して夜間に水を揚水することで,いわば電力を位置エネルギーとして「蓄える」機能を持つのが揚水発電所です。電力需要の急増する中国において,総出力122.4万kWという大型の西龍池発電所には大きな期待が寄せられています。
電力グループ 水力事業部 水力技術部の小森健介 主任技師(左),
日立事業所 水力設計部の大嶋勝宏 部長(右)
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日本メーカー3社の協力体制 |
2004年9月に受注したこのプロジェクトは,ポンプ水車を日立製作所と東芝,発電電動機を三菱電機と東芝,その他変電機器・制御設備を三菱電機が担当していますが,特徴は3社の協力体制にあります。出力30万6,000 kWの発電用ポンプ水車が1〜4号機まであり,従来ならポンプ水車と発電電動機とを1社で担当,またはそれぞれを2社で設計・製造するのが普通でした。しかし,西龍池揚水は700 m級揚水発電機器であり,技術的にも難しい機械です。そのため,今回はポンプ水車の設計・製造を2社で横割りの協力体制をとることで両者の強みを生かし,競争力を高めています。すなわち,ポンプ水車の設計は主従の担当を決めて共同で進め,主要部品であるランナ(羽根車)と主軸は日立製作所と東芝が2台ずつ作りますが,入口弁本体や給水装置は東芝が4台分を,ポンプ水車固定部・調速機・入口弁用制御装置や圧縮空気システムは日立製作所が4台分を製作するといったユニークな方式です。
受注活動時期の1999年,日立製作所は,世界に先駆けて有効落差728 m,出力41万2,000 kWの超高落差大容量ポンプ水車を東京電力の葛野川発電所で実現させました。一方,中国におけるこれまでの揚水発電所は落差500 m級で出力30万kW程度のものでした。ポンプ水車にとって落差は設計するうえで非常に重要な要素であり十分な性能設計と強度設計が必要になるため,日立製作所のこうした実績と日本企業コンソーシアムとしての実績が今回の受注につながったのです。
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揚水発電の技術を次世代へ |
西龍池揚水発電所は,中国で日本メーカーが主契約者となった最初の揚水発電プロジェクトであり,今後,中国の揚水発電所の建設が加速されると中国企業だけでは需要に対応できない可能性もあるので,今回の実績を最大限に生かし,さまざまな技術協力の提案や受注活動を行っていきます。こうした新規プロジェクトは,次世代を担う技術者のチャレンジと育成の場としても重要です。
現在では主流となっている可逆方式がスタートした1959年から日本の揚水発電も50年近くが経ち,既存設備の補修やリニューアル技術の重要性が高まってきています。単に保全・改修するというのではなく,例えば最新の流体設計による新型ランナに入れ替えることによって効率や性能を一段とアップさせていく,そうした付加価値を生み出す新たな技術提案が必要になります。そして,それにより継承されていく技術力,育成される若手技術者を活用して,中国以外にもインド,東南アジア,ブラジルなど,新規の水力発電所建設が数多く計画されている大きなマーケットに積極的に進出していきたいと考えています。