日立製作所は,英国初の高速線であるCTRL線と在来線の両方を走行する新車両を開発した。
2009年に予定されている新型高速鉄道車両の運行は,鉄道分野での課題であった輸送力増大とハイスピード化に大きく寄与し,ロンドンオリンピックでもアクセス輸送に活躍する見込みである。
 |
 |
CTRL線開業に伴う高速化をにらんだ新車両開発 |
CTRL線(Channel Tunnel Rail Link:ドーバー海峡トンネル連絡線)とは,ドーバーからロンドン市内のセントパンクラスを結ぶ英国内で初めての高速線(全長109 km)として建設が進められたもので,パリ・ロンドン間を結ぶ大陸間高速鉄道であるユーロスターの英国内の運転区間でもあります。
日立製作所は,CTRL線区周辺の在来線経由でCTRL線に乗り入れ,ケント州とセントパンクラスを高速で結ぶ車両の開発を行いました。今回,新車両の受注に至った理由として,当社がこれまで培ってきた新幹線に代表される鉄道技術と実績において高い信頼性を得られたことが大きなポイントになったと考えています。英国では輸送力の大幅な増強とハイスピード化が急務となっており,また2012 年のロンドンオリンピック開催を視野に入れて高速鉄道の運行が求められていますが,このCTRL-DS車両(CTRL Domestic Service:英国内運行用車両)の開発はこれらの要望に応えるものと言えます。
電機グループ 笠戸交通システム本部 CTRLプロジェクト室の岩崎充雄 主任技師(左),交通システム事業部の正井健太郎 担当本部長(CTRLプロジェクト)(右)
|
 |
 |
国際規格をクリア,二つのシステムに対応 |
CTRL-DS車両の特徴は,225 km/hのスピードを持つ高速鉄道であること,また英国の規格に準じた仕様であること,プレミアクラスの車両インテリアを実現したことなどが挙げられます。このうち仕様に関しては,衝突吸収構造をはじめとして,騒音や構体構造,燃焼規格・耐火規格に対応した車体構造,システムの構築に至るまで,国際規格(ISO),欧州規格(EN),英国規格(BS・RGS),欧州高速鉄道相互乗り入れ規格(TSI)などへの対応をクリアしています。
高速新線と英国在来線の両方を運行するため,電源方式は交流(25 kV)と直流(750 V)の二つ,信号のシステムも3種類あり,このような複数のシステムに対応していることもCTRL-DS車両の大きな特徴と言えるでしょう。従来,日立製作所が鉄道システムの構築にあたって提案してきたA-trainの思想を受け継いで,FSW(Friction Stir Welding:摩擦かくはん接合)を用いた高精度・高品位ダブルスキン構体を採用するなど,乗り心地・信頼性・安全性を満足させるため,最新の技術を駆使しています。
設計段階での安全認証を受け,現在,プロトタイプ4編成(1編成6両)の納入を順次進めているところです。2007年10月1日から走行試験を開始しており,実際の環境で走らせながら各種のチェックを行い,2009年12月には運行が開始される予定です。
 |
 |
ヨーロッパ市場進出への足がかりとして |
CTRL-DS車両が初めて英国へ納入された際,英国紙ガーディアンなどのメディアで大きく取り上げられ,「メイドインジャパン」の鉄道が期待されていることを実感しました。この新型高速車両が,鉄道発祥の地である英国でデビューするCTRL線は,ヨーロッパにおける日立のショーケースと言ってよいかもしれません。プロトタイプの納入後は,量産化に向けての課題に取り組む予定ですが,その一方,今回の納入を足がかりにして,英国市場および欧州大陸での事業拡大をめざしていきたいと考えています。