自動車分野では,CO2排出量削減や排気クリーン化が進められ,環境性能が自動車の大きな価値となっている。
一方,走りの楽しさを追求する動力性能も欠かせない価値である。
これらを同時に満足する技術として,日立グループが新たに開発した高機能可変動弁VELが,2007年より日産自動車のスカイラインクーペに搭載された。
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運転状況に応じたきめ細かなコントロール |
自動車の心臓部であるエンジンは,空気を吸い込んで燃料と混合して燃やし,燃焼ガスを排気するという動作を連続的に繰り返すことで動力を生み出します。この仕組みを中心的に担っているのが,吸気と排気を行うバルブ(弁)を動かすバルブリフト機構と呼ばれるもので,エンジンの性能を左右する重要な部分です。われわれが開発したVEL(Continuous Variable Valve Event and Lift)は,この部分を革新的に高機能化した可変動弁システムです。従来の機構では,バルブのリフト量(上下動の大きさ)と作動角(開いている時間)を段階的に切り替えているのに対し,VELは運転状況に応じて連続的に変化させています。アクセルの踏み込みやエンジン回転数に応じたきめ細かなコントロールを可能にしたことが,すばやい加速応答性,高出力,低燃費,排出ガスのクリーン化につながっています。
オートモティブシステムグループ エンジン機構事業部 エンジン機構設計本部可変動弁設計部の山田吉彦 第二設計課長(左),鶴田誠次 チーフプロジェクトリーダー(中),中村信 主管技師(右)
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独自の機構と高度な設計が高機能化の鍵 |
VELの開発に着手したのは1997年,当初から,高回転性能,低フリクション(摩擦抵抗)などの性能と汎用性を満たすことを目標に,地道な開発を続けてきました。大まかな構成は,バルブを開閉する機械式動弁部と,その動きを制御してバルブリフト量と作動角を変換するアクチュエータ部に分けられます。機械式動弁部は,簡単に言うとカム(回転運動を上下運動に変換する部品)の動きを伝達機構によってバルブに伝え,バルブを上下させる部分です。この伝達機構は各可動部品が蝶番(ちょうつがい)のようにつながり合って動く強制駆動マルチリンク構造としました。これが,可動部品をスプリングで押し付けている一般的な構造に比べて,より高いエンジン回転域への対応とフリクション低減を可能にし,出力と応答性を向上させる大きなポイントとなっています。
モータで駆動するアクチュエータ部では,独自のボールネジ方式によるなめらかで俊敏な動きが,モータの低消費電力化や,高い応答性の鍵を握っています。ボールネジは,通常,産業用機械などに使われる高価なものですが,自動車部品の量産ノウハウを駆使して低コスト化を実現しています。
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高い走行性能と約10%のCO2削減を両立 |
環境問題がクローズアップされる中で,燃費向上や排気エミッションの低減は自動車の必須条件となっています。多くのドライバーから求められるドライビングプレジャー(走りの楽しさ)は,環境性能とは相反する要素となりがちですが,VELはそれらの高次元での両立を可能にしました。2007年に日産自動車株式会社のスペシャリティカー,新型スカイラインクーペに採用され,高い走行性能と約10%のCO2削減を実現しています。
今後は,環境性能のさらなる向上とともに,さまざまな機種に適したシステムの提案などを進め,より快適で環境に配慮した,次世代のクルマ社会の実現に貢献していきます。