センサーで測定したデータを無線ネットワークで収集するセンサネット技術の利用が始まっている。
このセンサネット技術を人間に応用した「ライフ顕微鏡」と「ビジネス顕微鏡」は,日々の活動や職場での生活リズムやコミュニケーションの状況を記録し,可視化することにより,ライフスタイル・ワークスタイルの変革を支援するシステムである。
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生活リズムを目に見える形で把握 |
情報爆発時代と言われる中で,小型化・高性能化するコンピュータと,普及が進む高速通信ネットワークを,どう活用し,どんな価値を提供するかが問われ始めています。その答えの一つとして,日立が注目しているのがセンサネット。各種のセンサーと無線通信機能,電池を備えた小型端末を任意の場所に設置して,測定したデータを自動的に収集,利用する技術です。生産施設の温度管理など,物や建物を対象としたサービスではすでに実用化されているこの技術を,人に応用して新しい価値創造をめざしているのが「ライフ顕微鏡」と「ビジネス顕微鏡」です。
「ライフ顕微鏡」は,腕時計型の端末を身につけ,1分間に20回の頻度で加速度・脈拍・温度を測定し,そのデータから一日の運動量,歩行数,睡眠時間などを自動的に推定するシステムです。それらの情報の活用方法は,高齢者の見守りやヘルスケアなど,さまざまなものが考えられます。例えば,一日の活動状態を色分けした「ライフタペストリー」という図表に示せば,普段あまり意識することのない自分の生活リズムを目に見える形で把握でき,生活習慣の見直しや,健康管理などにつなげられます。
基礎研究所 人間・情報システムラボの森脇紀彦 主任研究員(左),
中央研究所 センサネット戦略プロジェクトの山下春造 主任研究員(右)
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ワークスタイルの自己改革を支援 |
もう一方の「ビジネス顕微鏡」は,ビジネスにセンサネットを活用することで,知識労働者の生産性向上をめざすものです。名札型の端末に,加速度センサーのほか赤外線センサー,音声センサーも備え,測定したデータから,社員どうしのコミュニケーション時間や活動状況を推定し,その様子を地形図のような図表に表します。これによって,例えば,仕事が成功したときの組織のダイナミクスを定量的に分析できるようになり,客観的な視点で成功例に学ぶことなどが可能になります。最終的には,みずからの行動や組織としての働き方を振り返ることによって自己成長や自己改革を促すような,新しいワークスタイルの実現につなげていきたいと考えています。
どちらのシステムも,測定データそのものは単なる数値や波形でしかありません。それを,分析処理や表示の工夫によって,利用者にとって価値のある情報に変換するために,情報処理,ユーザーインタフェースなど,日立グループ内のさまざまな知見を活用できる垂直統合的な体制で開発を行っています。
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21世紀の「顕微鏡」が持つ可能性 |
16世紀末に顕微鏡が発明されて以来,生物学や医学,物理学はめざましい発展を遂げてきました。この二つのシステムも,今まで見えなかった個人や組織の動きを目に見えるようにする,正に「顕微鏡」であり,将来,ライフスタイルやビジネススタイルを飛躍的に変えるかもしれない。そんな期待感をもって,研究開発を進めています。
われわれの「顕微鏡」は,今までのIT機器のように使うだけで効率が上がるものではなく,現状への問題意識を持つ方々の改善や改革をサポートするものです。現在,日立グループ内での実証実験を通じて端末やアプリケーションの進化を図っていますが,今後はより多くの方々に使っていただきながら,共に成長していくシステムでありたいと考えています。