情報機器や家電などを中心に製品開発サイクルがスピードアップする一方で,高機能化が進み,複雑な構造を持つ製品の安全性や信頼性を確保するために設計段階での検証項目は増え続けている。
開発時間短縮と製品の品質向上をめざす「解析主導設計」は,先端のシミュレーション技術を活用した「全体解析」と「最適設計」の技術を柱にモノづくりのプロセスイノベーションを実現する。
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開発スピードアップと品質向上を両立するために |
情報機器や家電などでは,製品の短命化が進む一方で,高機能化に伴う構造の複雑化が進んでいます。製品開発には,開発期間の短縮と,設計段階での検証項目の増加という相反する要素の両立が求められるようになり,この課題を解決するために力を入れているのがシミュレーション技術です。従来から行われてきた試作による検証をコンピュータによる解析に置き換えることで,製品開発の大幅
なスピードアップと品質向上を同時に実現することをめざしています。
機械研究所 高度設計シミュレーションセンタの
杉村和之 主任研究員(左),磯島宣之 主任研究員(右)
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「全体解析」と「最適設計」がモノづくりを変える |
中でも特に先端的な取り組みとして挙げられるのが「解析主導設計」で,その大きな2本の柱となっているのが「全体解析」と「最適設計」の技術です。全体解析は,CAD(Computer
Aided Design)データさえあれば,複雑な形状の製品でも自動的に直交格子を生成し,高精度な熱流体解析を可能にします。われわれの技術では,LES(Large Eddy Simulation)と呼ばれる乱流解析手法を用いて,刻々と変化する流れの挙動を的確にとらえ,特徴的な流動構造を明瞭に把握することができます。しかもその複雑な解析を,大型計算機やパソコンを複数台つないだクラスターシステムで短時間に行えることも大きな特徴です。
一方の「最適設計」技術では,そうした解析技術を活用して,製品の品質向上のために必要な複数の目的を同時に満たす設計を可能にします。複数の目的とは,空気清浄機のファンを例にとると,効率向上・静音性向上・製造コスト低減などで,それぞれに対する解析結果をわかりやすい統合的な形で示し,開発者の最適な選択を支援します。大学との共同研究の成果を生かした高速な計算方法により,短時間に数百〜数千ケースもの検証が可能なため,それだけ製品の性能・品質アップを実現できる可能性が広がります。
さらに,その膨大な数のシミュレーション結果を分析することにより,中に潜んでいる設計ノウハウや設計知識を可視化し,開発者の気づきにつなげるデータマイニングにも取り組んでいます。解析技術で製品を進化させ,その過程で得られた知を次の開発に生かし,さらなる進化を促進する。そのサイクルを確立していくことが,解析主導設計による「モノづくり改革」であると考えています。
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人間の知見と発想を生かすための土台に |
全体解析は,Blu-ray Disc対応光ディスク装置の設計に適用し,冷却ファンをつけなくても発熱体であるレーザダイオードを効率よく冷却できる,画期的な構造を実現しました。これまで別グループが数年間かけて実験を主体として行っていた手法では,高コストの部品やファンなどを用いなければ実現できなかった冷却特性を,この技術によって3か月程度で,低コスト・ファンレスで実現できたのは大きな成果です。また,複雑な装置内部の流れの構造を速度,圧力分布などで検証した結果,実用上十分正確な結果が得られていることが確認できています。最適設計は,主にターボ機械の設計に適用しています。最適化された設計案の性能向上が,実験的に再現されるように技術の検証や改良を重ねながら,開発期間を従来の4分の1程度まで短縮できるようになりました。
今後はこの二つの技術の連携を深めてシナジー効果を高めるとともに,シミュレーション適用範囲を構造強度や振動,熱伝導などにも広げていきます。解析主導設計によって時間や手間のかかる解析や分析の作業をサポートすることで,開発者・設計者の高度な知見とそれに基づく発想をより生かせる環境をつくり,日立グループ製品の信頼性向上・品質向上に貢献していくことが目標です。