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日立評論創刊100周年記念サイト

Chapter2:Energy/Environment:社会を変革するエネルギー・環境イノベーション:サステイナブルな未来に貢献するR&Dへ

創業当初から電力・エネルギー事業に取り組む日立は,国の政策や社会のニーズに応え,事業と一体となってこの分野の研究開発を推進してきた。

戦前は,発電機や変圧器など電力機器の開発によって全国の電源開発に貢献し,戦後は電力需要の増大に対応するため,水力・火力・原子力の大型電源を開発してきた。

さらに新エネルギー分野でも,風力・太陽光・太陽熱発電システムなど多岐にわたる技術開発をリードした。

現在,地球環境問題への対応をいち早く進め,再生可能エネルギー拡大に対応した系統安定化やエネルギーマネジメントなどの技術開発とともに,国内外の実証プロジェクトを遂行している。

茨城県神栖市 5.2MWダウンウィンド風力発電システム「HTW5.2-127実証機」

目次

未来のエネルギーのあり方を探って

[1]柏の葉スマートシティのエリアエネルギー管理システム エネルギー使用量を一括で収集・管理し,エネルギー需要を予測しながら地域全体として効率よく運用する。また,災害などによる停電時には最小限の必要電力を供給する。

[2]米国ハワイ州マウイ島でのスマートグリッド実証センターの制御システム,配電系統に設置した制御用機器とEV運用・充電制御といった需要家側の機器をつなぎ,電圧などに異常があれば自律的に制御する仕組みを構築している。

地球温暖化が深刻化する中で,世界的に再生可能エネルギーの拡大や分散型エネルギーシステムへの移行が進んでいる。エネルギー問題の課題解決にあたっては,こうした再生可能エネルギーの割合を増やすだけでなく,エネルギーの使用の最適化,すなわちスマート化がカギを握る。日立は,国内外でエネルギーのスマート化に関わるプロジェクトを展開しながら,来るべきエネルギー・環境問題の最適解を探る取り組みを続けている。それを代表するのが,国内の柏の葉スマートシティ,海外の米国ハワイ州マウイ島でのスマートグリッド実証事業の二つである。

柏の葉スマートシティのプロジェクトは,「世界の未来像」を創造すべく,安全・安心・サステイナブルな街の実現をめざしたものである。2010年から参画した日立は,この次世代都市のモデルづくりにおいて,街の安全・安心な生活を支えるエネルギー分野を担っている。具体的には,電力や水,ガスなどの需給を地域全体で見える化し,エネルギーの一元管理や需要予測,需給情報の提供を行うAEMS(Area Energy Management System)を開発・構築した([1] 参照)。また,AEMSから分散電源管理設備までを連携させることにより,電力・エネルギーの融通を可能にした。この国内初の試みでは,平常時は分散電源の電力を街区間で融通し合うことで街全体のピークカットを実現し,災害時には生活の維持に必要な施設や設備に電力を供給することで防災力の強化につなげている。

一方,マウイ島での取り組みは世界最先端の離島型スマートグリッドの実証である。マウイ島を含むハワイ州は,消費エネルギーの90%を化石燃料に頼っている現状から脱却するため,再生可能エネルギーの導入を進めている。そこで生じる電力系統の諸問題への対応が実証の主な目的だ。全体の取りまとめとスマートグリッド環境の構築を担った日立は,島内で大量の普及が見込まれるEV(Electric Vehicle)にまず着目した。EVの蓄電機能を余剰電力の吸収と再生可能エネルギーの安定化に用いることにより,化石燃料に依存しないエネルギーインフラを構築。実証サイトでは,島に設置されている風力発電システムと電力系統を用いて,ITを活用しながら,配電系統や需要家側負荷の制御,複数タイプの急速充電器を含めたEVの運用・充電システムの実証を進める。最終的には,充放電型のEVを活用したVPP(Virtual Power Plant)技術の確立をめざす([2] 参照)。

今後のトレンドは分散化・電化・デジタル化

森田 歩
エネルギーイノベーションセンタ
センタ長
1995年入社,電力・電機開発研究所, 日立研究所を経て,現在,研究開発グループにおける電力・エネルギー分野の取りまとめに従事。

これら二つの取り組みのような,地域系統システムによる分散化は,再生エネルギーの拡大に伴って今後さらに加速していくだろう。

他方,エネルギー関連の最新の動向に,自動車分野の電化がある。ここ1年の間,欧州に続き,世界最大のCO2排出国である中国などもEVシフトを打ち出した。日本の例でいえば,自動車が排出するCO2は全部門の15%に達しており,EVシフトはCO2削減に大きく貢献する([3] 参照)。また,自動車などの運輸部門以外にも,冷暖房や給湯,調理など,化石燃料による熱エネルギーを利用している分野にも電化が波及していくと考えられる([4] 参照)。

さらに,デジタル化の波が電力分野にも押し寄せてきた。2016年,資源エネルギー庁が有識者や電力会社をメンバーとする「電力インフラのデジタル化研究会」を設置したことも表れの一つだ。各電力会社は,発電分野でのデータを活用した高効率運転,送配電分野での新たな技術を用いた高度な保守・管理,小売分野でのデータを駆使した新サービスへの展開など,現在,国内外で始まりつつある取り組みをさらに推し進めていくことになる。従来,電力システムを構成する機器の省エネルギー化や発電プラントの高効率化などを中心に取り組んできた日立も,今後は電力・エネルギーに関するノウハウやデジタル化技術を駆使し,顧客との協創によって最適なソリューションを提供していく考えである。こうした電力インフラのデジタル化の必然性について,エネルギーイノベーションセンタ センタ長の森田歩は,機器の制御を例に説明する。

「これまでは発電所からオフィスや工場,家庭までをつなぐ電力機器だけを制御する時代でした。しかし今後は,電力を使用する需要家までも視野に入れて制御する必要が出てきます。制御対象がモノから人へ変化することによって,指数関数的に規模が大きくなることから,デジタル化が不可欠なのです。日立は,風力発電システムなどでのIoT(Internet of Things)によるオンライン診断の開発をはじめ,オールデジタライゼーションをキーテクノロジーとして,電力インフラに関わる制御など多方面にわたる研究開発を進めています」([5]参照)

[3]運輸部門における二酸化炭素排出量(内訳) 日本の二酸化炭素排出量のうち,運輸部門からの排出量は17.4%を占め,自動車全体では運輸部門の86.1%(日本全体の15.0%)を排出している。

[4]電力需要試算における電化率と代替機器の設定条件 最終エネルギー消費における電化率は30%(2013年)から69%(2050年)に上昇する。

[5]デジタル技術を活用した協創型エネルギーソリューションの提供 これまで培ってきた電力・エネルギーに関するノウハウやデジタル化技術を活用し,顧客との協創により最適なソリューションを提供していく。

黎明期から日本の電化を支えてきた日立

[6]鉄道省千手発電所(左),ブラジル・マカブ発電所(右)の発電設備

[7]日立研究所の外観と研究開発活動

ここで,100年以上に及ぶ日立のエネルギー分野の取り組みを振り返ってみたい。1910年,久原鉱業所日立鉱山で創業した日立製作所の最初の製品は,5馬力誘導電動機および5kVA単相変圧器で,変圧器は初めて「日立マーク」が表示され,外部にも販売された。1912年,東京市に電灯がほぼ完全普及し,1914年には猪苗代水力発電所が完成,翌年に東京まで228kmの長距離送電を開始するなど,日本でも一気に家庭・工場の電化が本格的にスタートした時期である。

創業以来,日立は利根発電岩室発電所向け1万馬力水車,逓信省向け35万V試験変圧器などの製品を次々と受注・製作したのをはじめ,1920年に株式会社として独立した後も,鉄道省千手発電所に水車・発電機・変圧器など設備一式を納入するなど,明治末期から昭和にかけて産業の基礎となる電力の充実に大いに貢献してきた。また,1941年,ブラジル・マカブ発電所向けに3,300kVA水車,3,750kVA交流発電機を製作・納入,戦前からグローバルに電力事業を展開していたことも特筆に値する([6]参照)。

1934年,自社製品の改良をめざして日立研究所を創設し,研究開発にも力を入れ始める([7]参照)。そのルーツは,言うまでもなく1918年に設置された試験課の研究係であるが,当時,水力実験室において模型水車の性能試験を行いながら発電所機器の研究を続けていた伝統を受け継ぎ,故障原因の解明に力を尽くすとともに,製品の改善にまで踏み込んだ。その点で,主力事業となった電力事業と研究開発は一体となって進められたと言ってよい。

大容量化から経済性・環境性重視へのシフト

西野 由高
電力・エネルギー業務統括本部
CTO
1985年入社,日立研究所所長,技術戦略室長などを経て,現在,電力,原子力,エネルギーソリューション事業分野の技術統括に従事。工学博士。

[8]佐久間発電所用の10万kW立軸フランシス水車

[9]教育訓練用原子炉(左)と島根原子力発電所(右)

1950年代からは,経済成長に伴う電力需要の増大を背景に,大型水力・大型火力の開発に注力した。佐久間発電所用のフランシス水車([8]参照),仙台火力発電所用の火力発電機は,その代表的な製品である。

一方,戦後まもなく中央研究所が原子炉の基礎研究に着手し,1957年には日立工場に原子力開発部を設置,原子力の平和利用の推進にも取り組んだ。島根原子力発電所のプロジェクトに参画して,1974年に国産第1号の商用炉の運転開始に貢献したことも大きな成果の一つである([9]参照)。この原子力関連の研究においては,コーポレートラボとしてハブ機能を持つ日立研究所と中央研究所に加え,1978年に創設されたエネルギー研究所の力によるところも大きい。また1974年,オイルショックを契機に国のエネルギー政策が見直されたことからスタートした「サンシャイン計画」にも当初から参画し,太陽・地熱・水素などの多岐にわたる新エネルギー技術の研究開発を推し進めた。

その後,1990年代には時代の要請に応え,経済性・環境性を重視した取り組みへシフトしていく。1992年,ブラジル・リオデジャネイロでの地球サミット以降,地球環境問題がグローバルな問題として認識されるようになり,社会全体に環境重視の傾向が強まった。そんな中,日立は高効率な石炭火力をはじめ,風力や太陽光などを用いた再生可能エネルギーシステム,ITを活用して電力供給を最適化するスマートグリッド,大規模な蓄電技術など,「低炭素社会」の電力安定供給に向けた取り組みを加速させていったのである。

100年以上に及ぶ日立のエネルギー分野の歩みを振り返り,電力・エネルギー業務統括本部 CTOの西野由高は語る。

「日立の電力インフラ事業は,水力発電から始まって,火力,原子力へと,日本の電源構成の変遷,つまり国のエネルギー政策と社会のニーズに合わせて進展してきました。その中で研究所は常にその一歩先をめざし,さまざまな国家プロジェクトへの参画などを通じて技術力・エンジニアリング力を培ってきました。サンシャイン計画で取り組んだ太陽光発電や燃料電池の要素技術が,その後の再生可能エネルギーなどの成果につながっていったのです」

「脱炭素化」の世界的潮流に応える取り組み

[10]SDGs(持続可能な開発目標)における17の目標

[11]環境ビジョンと日立環境イノベーション2050中長期的な視点から環境に配慮する日立の企業姿勢を内外に示すものであり,地球環境問題の解決にグループ全体が一丸となって取り組んでいく決意を込めている。

そして現在,エネルギー分野に変革を促す出来事が国内外で起こっている。一つは,「脱炭素化」を加速させる国際的なトレンドだ。2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は,2030年までの国際社会共通の目標として掲げられたもので,17の目標のうちには「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」,「気候変動に具体的な対策を」をはじめ,環境への取り組みを推進することで解決につながる項目も数多い([10]参照)。また,2015年にCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で「パリ協定」が採択されたのを受け,世界各国は自主削減目標を掲げ,温室効果ガス削減の取り組みを始めている。

日本では,SDGsやパリ協定の動きに加え,官・民・学によって超スマート社会の実現をめざすSociety 5.0の取り組みのほか,電力システム改革も進行中である。これらの取り組みが,さらにエネルギー分野の変革を進める要因ともなっている。日本政府は,2050年までに80%のCO2を削減するという目標を設定しており,エネルギーシステムの見直しを求められている現状だ。こうした潮流の中,日立は,2050年を見据えた長期目標として設定した「日立環境イノベーション2050」において,政府と同様にCO2の80%削減というチャレンジングな目標を掲げ,その目標の達成に向かってさまざまな取り組みを展開している([11]参照)。

「目標のCO2 80%削減は,非常に高いハードルです。電化をさらに進める必要がありますが,EVだけでは50%の削減にとどまります。同時に,原子力や再生可能エネルギーなど無炭素電源を全電源の75%超にまで増やすことが,目標達成のためには重要になってきます。EVの蓄電池をどのように活用するか,再生可能エネルギー拡大に伴う技術的課題をどのようにして解決するか,研究所,研究者が果たすべき役割はますます大きくなっています」(森田)

Utility 3.0を予見した生活者中心の視点

[12]日本の電力・ガス・熱システム改革のスケジュール一体的な制度改革により業態ごとの「市場の垣根」を撤廃し,エネルギー企業の相互参入や異業種からの新規参入を進める。これにより,競争によるコスト低廉化と消費者の利便性向上,総合エネルギー企業による海外市場の開拓・獲得をめざす。

現在進行中の電力システム改革は,2016年に電力の小売全面自由化を経て,2020年の法的分離による発送電分離と小売料金の全面自由化が実現する最終段階に差しかかっている([12]参照)。従来,全国10社の電力会社が地域ごとに独占的に電力を供給していた形が,さまざまな事業者の参入や競争,全国レベルでの供給力の活用,需要家の選択によるスマートな消費など,より柔軟なシステムに生まれ変わる。その結果,需要家である一般消費者のメリットが増大するうえ,需要家の一部は「プロシューマー」ともなってくる。

これに伴って電力のビジネスモデルも大きく変化すると予想されている。電力会社が「エネルギーを届ける」にとどまっていたUtility 1.0の時代が終わり,現在は,自由化による発電と小売りの競争が始まって,「エネルギーを取り引きする」Utility 2.0の時代を迎えている。さらに今後は,「エネルギーをサービスする」Utility 3.0の時代へ向かうというシナリオだ。

「エネルギーシステムも,効率化・スケールアップから,分散化・自由化・デジタル化による新しいフェーズに入り,エネルギー分野に新しい事業者が続々と参入してダイナミックに市場が動いていくでしょう。Society 5.0やUtility 3.0の時代には,協創による新しいビジネスモデルが生まれ,事業者はこれまで以上に需要家・生活者の視点が重要になってきます。日立としては,高度な技術による『人にやさしい』ソリューションやサービスの実現,そして新たなエコシステムをつくることを目標に取り組んでいきます」(西野)

「集中と分散が共存」する世界をめざして

可児 祐子
エネルギーイノベーションセンタ
主管研究員
1999年入社,電力・電機開発研究所,エネルギー・環境システム研究所,日立研究所を経て,現在,原子力システム,燃料サイクル技術の研究開発に従事。博士(理学)。

そうしたSociety 5.0やUtility 3.0の時代に向けて,日立はどのような将来ビジョンの下で研究開発を推し進めているのか。

「日立は,長期的な姿として再生可能エネルギーを電力系統に自由に接続できるグリッドを構想しています。言い換えれば,大規模系統と分散型のシステム,すなわち『集中と分散が共存』する世界をめざすということです。現在,主となっているのは,電力会社の中央給電指令所が大規模・分散電源を統括する基幹システムですが,自然エネルギーを地産地消する分散システムの割合を多くし,将来的には半分近くにすることがエネルギーセキュリティの実現にもつながると考えています」(森田)

具体的には,地域システムに関連しては,需要者側に近いコミュニティのマイクログリッドやエネルギーマネジメントシステムの開発などがある。柏の葉スマートシティやマウイ島のスマートグリッドは,その例となる世界でも先進的な取り組みである。マイクログリッドに関しては,電力系統を介して連携した複数のマイクログリッド間で電力を融通し,地域全体でエネルギー効率を向上させるための研究開発のほか,仮想発電所とも言えるVPP技術のソリューションへの展開も進めている。基幹システムに関しては再生可能エネルギーがグリッドに占める割合が大きくなることから,ベース電力と調整を行う広域系統の制御技術をはじめ,電力系統安定化ソリューションに注力している。

「将来的には,遠く離れた地域の分散電源を日本全国に送電することも必要になってくるはずです。制御でどこまでできるか,社会ミニマムコストを考慮し,最適なソリューションを開発していくことが求められます。私たちは,再生可能エネルギーの出力・負荷変動に基づいて電圧維持と送電ロス削減を両立させる,未来予測型VQC(Voltage Reactive Power Control System)の開発など,電力システム改革のその先の広域統合を見据えた研究開発を進めているわけです」(森田)

さらに無炭素電源の再生可能エネルギーに関しては5MW浮体式洋上風力発電システム「ふくしま浜風」など,ロータをタワーの風下側に配置するダウンウィンド型の風車開発に取り組んでいる([13]参照)。また,次世代原子力発電システムの研究も引き続き行っている。発電プラントの安全性・信頼性の研究に携わってきたエネルギーイノベーションセンタ 主管研究員の可児祐子が言う。

「原子力発電に関わるメーカーとして,事業部門と研究部門が一体となって,まずは福島第一原発の廃炉を最後までやり遂げることが重要な使命だと考えています。そのうえで,3.11を契機に原子力のサステイナビリティ実現に向けた取り組みも進めています。現行炉については,再生可能エネルギーに対して競争力のある発電コストを実現するため,プラントデータを利用した稼働率の向上やリスク評価の推進,将来炉については,水冷と空冷をミックスさせることによって所内外電源に頼らず冷却を継続できる時間を延ばした革新的なBWR(沸騰水型原子炉)を開発しているところです」

また,新たな取り組みとして,実績を有するBWR技術をベースに,高レベル廃棄物による環境への負荷を緩和できる次世代軽水炉,RBWR(Resource-renewable BWR)の開発を推進している([14]参照)。原子力発電では,燃料であるウランを燃焼した際に副産物として発生するTRU(長寿命元素)が廃棄物となって蓄積することが問題となっている。RBWRではTRUを燃料として燃やし尽くすことで,廃棄物の有害度が天然ウランと同程度に減衰するまでの期間を約10万年から数百年に短縮する。

「RBWRでは実績のあるABWR(Advanced BWR)の安全システムやタービンなどのプラント周辺機器を用いますが,燃料集合体および炉内機器については新たに開発し,成立性を確認する必要があります。これまで米国大学との共同研究で各種課題をクリアし,実現見通しが徐々に高まってきています。今後も開発を進め,高レベル廃棄物の問題解決に向けた技術を構築したいと考えています」(可児)

[13]5MW浮体式洋上風力発電システム「ふくしま浜風」の概要経済産業省委託事業「福島浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」において建設されたものである。

[14]環境負荷を低減するRBWRの炉内機器実績のあるABWR(Advanced BWR)技術を適用し,安全性を確保しながら高レベル廃棄物の有害度を低減し,環境負荷低減を可能とするプラント概念と仕様を構築している。

エネルギー融通社会を見据えた構想力を生かす

[15]日立が考える電力システム改革後の広域統合コンセプト基幹インフラの整備と地産地消の推進,大規模電源と再生可能エネルギー,制御対象の設備から人への拡張など,「集中と分散の共存」を図っていく。

[16]日立東大ラボ主催のフォーラムでの議論風景

Society 5.0,そしてUtility 3.0が進む中で,エネルギーシステムはもちろん,社会の姿も大きく変わっていくはずである。とはいえ,西野は「エネルギーインフラは今まで通りに最後まで安定した基盤であることが求められる」と指摘する。日立が進めている「集中と分散の共存」の取り組みは,基幹システムと分散システムの両輪で,「3E+S(安定供給,経済効率性,環境適合性と安全性)」の実現をめざすものでもある。特に再生可能エネルギーの大量導入の実現には,エリアごとの対策が難しく,電力網の運用を日本全国で考えていく必要がある。日立は,電力システム改革後の広域統合を見据え,系統の中核となるデジタルアバターの開発にも着手している([15]参照)。さらに,やがて到来するUtility 3.0時代に向けては,日立東大ラボにおいて超スマート社会の実現に向けた将来の電力システムについて議論を進めながら,グローバルなサービス事業を展開していく予定だ([16]参照)。

「いずれ再生可能エネルギーの拡大に伴ってエネルギー単価が下がり,限界費用コストがゼロに近づくとともに,双方向・異業種間でエネルギーを融通する社会になっていくでしょう。そのとき,消費者はエネルギーの安定供給にお金を払うのではなく,サービスにお金を支払うようになり,個人と個人の間でエネルギーを介してさまざまな価値を交換する新しいサービスなどが出てくるものと予想されます。日立は,これまで電力・エネルギー分野においてBtoBのビジネスを中心にしてきました。生活者中心の視点に立脚したうえで,従来のエネルギー事業の枠を越えてこれから何ができるのか。エネルギー融通社会に向け,日立ならではの構想力をもって取り組んでいきたいと考えています」(西野)

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