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INSPIRATIONS 社会イノベーションをめぐる対話 vol.01INSPIRATIONS 社会イノベーションをめぐる対話 vol.01

  • 五神 真
    東京大学総長
  • 中西 宏明
    日立製作所
    取締役会長 代表執行役

「知」の協創により
豊かな未来社会を拓く

社会変革を牽引する
イノベーションエコシステムの構築

国内外の社会課題が複雑化・多様化する中、日本政府は社会課題解決と経済発展を両立し、
誰もが快適に暮らせる超スマート社会「Society 5.0」を推進している。
一方、国連は地球社会の共通課題の克服に向けてSDGs(持続可能な開発目標)を提唱し、
産業界にも事業を通じた貢献を呼びかけている。
社会変革を加速するイノベーションを生み出すために、大学や企業における研究開発はどうあるべきか──。
共に未来投資会議の議員として名を連ねる
東京大学の五神真総長と日立製作所取締役会長の中西宏明が語り合った。

五神 真Makoto Gonokami
1982年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了。1983年同大学理学部物理学教室助手、1990年同大学工学部助教授、1998年東京大学大学院工学系研究科教授、2010年同大学院理学系研究科教授、2012年東京大学副学長、2014年同大学院理学系研究科長・理学部長を経て、2015年より現職。理学博士。
中西 宏明Hiroaki Nakanishi
1970年日立製作所入社、2003年国際事業部門長、執行役常務、2004 年執行役専務、2005 年Hitachi Global Storage Technologies,Inc. 取締役会長兼CEO、2006年日立製作所執行役副社長、2010年代表執行役執行役社長兼取締役、2014年代表執行役 執行役会長兼CEO兼取締役、2016年より現職。

Society 5.0はゴールの共有である

中西今日の社会はさまざまな課題が顕在化し、それらの克服に向けて社会の変革をめざす機運が高まっています。2016年1月22日に閣議決定された第5期科学技術基本計画でも、「未来の産業創造と社会変革」を柱の一つに掲げ、非連続なイノベーションを生み出す研究開発を強化し、「超スマート社会」を世界に先駆けて実現するための取り組みを「Society 5.0」として強力に推進する方針を示しました。五神総長と私は、総合科学技術・イノベーション会議の専門委員、委員として計画の検討に携わってきました。まずはSociety 5.0の意味や背景となった問題意識について、五神総長のお考えを改めてお聞かせいただけますか。

五神第5期科学技術基本計画を策定していた当時、ちょうどIoT(Internet of Things)などによるデジタル革命への期待が高まっており、第4期までの成果を踏まえた未来ビジョンを示す言葉として、社会全体が新しい場所に向かっていることを実感できるSociety 5.0が採用されました。
 Society 5.0の内容については、2016年9月に日本経済再生本部に設置された未来投資会議の議員として、中西会長とも一緒に検討してきました。その中でポイントとなったのは、デジタル革命によって、あらゆる産業、あるいは社会システムにおいて不連続な変化が起きるということです。超スマート化と言い換えることもできますが、例えば、ビッグデータ活用のような、これまでとは異なる価値創造のプロセスが、社会の構造をがらりと変える可能性があります。
 重要なのは、テクノロジーの進歩に従属して社会が変わるのを傍観するのではなく、そうした変化を能動的に捉え、チャンスとして利用することです。社会変革は急がなければなりません。特に少子化と高齢化の問題は、数年以内に手を打つ必要があります。この大きな課題をゲームチェンジによって克服するのだ、そのための新しい技術やサービスを世界に先んじて開発するチャンスなのだと捉えると、取り組むべきことが明確化します。これまでの社会ストックの価値や日本の強みも把握したうえで、変化後にどのような社会を創造していくのか、そのために今、何をすべきか。Society 5.0は、そうした思考を促すためのキーワードとなるのではないでしょうか。この言葉が社会に広まったのは、中西会長のお力に依るところが大きいと思っています。

中西過分なお褒めを頂きました。私は日立グループの改革において社会イノベーション事業という新しい方向性を打ち出した経験を通して、コンセプトの重要性を認識したのです。当初は「社会イノベーションって何ですか」と、社内でもよく言われました。しかし、個々の技術を語るだけでは社会全体の変革を牽引することはできない、これからは全体の方向性やビジョンを示すコンセプトが重要になると考え、あえて概念的な言葉を使ったのです。
 Society 5.0もそれと同様で、新しい社会を一緒に創り上げていくための、ゴールの共有だと思っています。われわれが超スマート社会と呼んでいるのは、技術を乗り越えたその先にある、より人間的な社会です。その構築へ向けて、最初から「これがSociety 5.0 だ」と設計図をすべて描くのではなく、コンセプトを創り上げていく過程で創造性が発揮され、新しい価値が生み出されることが重要なのだと思います。

五神今のご発言から大事なことを思い出しました。私は総長に就任する2年ほど前に、JST(科学技術振興機構)のCOI(Center of Innovation)プログラムの支援を受け、東京大学に「コヒーレントフォトン技術によるイノベーション拠点」を立ち上げました。私の専門がレーザー物理だったこともあり、他の研究機関、材料やレーザー関連のメーカーにも参加いただいて、光加工技術と材料技術の融合による生産革命をめざそうと考えたのです。
 日本は20世紀後半の高度経済成長期に、オートメーションと品質管理技術によって高品質な製品を廉価に提供することに成功しました。ただ、規格化された大量生産品の普及は「人が物に合わせる」社会をもたらしたと言えます。この次は、生産技術のイノベーションによって、個別に生産しても高品質の物を大量生産と同等の価格で提供できるようにし、「物を人に合わせる」社会へと転換すべきです。
 デジタル革命がもたらす未来の社会とは、個を活かし、資源を有効活用する持続可能な社会であると私は考えます。個を尊重するものづくりへのシフトはその一端であり、ほかにもテーラーメイド医療、フレキシブル勤務など、物ではなく個々の人を中心に考えることが、これからの社会変革のカギになるでしょう。デジタル革命は、単なるツールの問題ではなく、社会の構造そのものを本質的に変えていくものです。

新しいことへの挑戦を楽しむマインドを養う

中西デジタル革命による社会の質的転換や新たな価値創造のためには、これまでとは異なる人材育成のあり方も必要になってきますね。

五神先ほど言った少子化と高齢化のような喫緊の課題に対し、この数年でゲームチェンジを実現するためには、より多くの知を集めなければなりません。そう考えると、大学の役割も、これまでのように若者を教育して社会に送り出すだけでは十分ではないでしょう。送り出した人材を再び呼び込んで、共に課題に立ち向かう場となることが期待されています。再教育というよりも、一緒に考えて一緒に行動するような場としてのリカレント教育を積極的に行っていく必要があります。
 また、若い人たちに対して、「未来の変化に備えてプログラミングや語学力を小学生時代から鍛えなさい」と言ってしまうことがありますが、これは少し理不尽だと思うのです。人数も少なくなる若い世代の人たちだけに「これからの時代を支えてください」と言うのではなく、まず私たち上の世代がみずからいろいろなことに挑戦し、その姿を見せていくべきです。変化を恐れるのではなく、新しいことへの挑戦を楽しむマインド、人と違うことへの挑戦を恐れないマインドを養うことが大切です。
 新しい価値を生み出すのは人であり、人を育てる大学の役割は重要性を増しています。社会のさまざまなセクターと連携しながら、パラダイムシフトを駆動する中心的な役割を果たしたいと思います。

中西教育においては、グローバリゼーションに対する意識改革も重要だと思います。ビジネスだけでなく、文化や社会生活そのものもグローバル化していくことが避けられない中で、日本と海外との関わりについても質的転換をしなければなりません。多様な人種や文化の人たちとコミュニケーションすることによって、不確実な時代や、次のダイナミックな変化に対応する力をつけることが必要です。

五神グローバル化の意味するところも、最初の頃は先進国のモデルを途上国にも広げていこうというフラット化のニュアンスが強かったのが、現在は多様な人たちが楽しく共存する世界をめざそうという方向に変化しています。多様性を理解し尊重するには自分を相対化できる力が必要で、そのためにも海外留学を経験すべきだと学生たちには言っています。私としては、機会拡大に一層努力して、できるだけ多くの優秀な学生たちの背中を押したいと思っています。

多様性の中から新しいものを生み出す場を

東京大学ビジョン2020

2015 年10 月に公表された、2020 年度に至る五神総長の任期中における行動指針。東京大学が知をもって新しい社会の変革を主導し、21 世紀の地球社会に貢献する「知の協創の世界拠点」としての使命を担うため、基本理念として「卓越性と多様性の相互連環」を掲げ、研究・教育・社会連携・運営の四つの「ビジョン」と、それを実現するための「アクション」で構成されている。「東京大学ビジョン2020」では、東京大学が、より良い人類社会を創るために産学官民の協働による変革を駆動する中心となるために、なすべきことを示している。

中西産業界では業種の境目がなくなりつつあり、ダイナミックな構造変化が起き始めています。グローバルなものの見方、地球全体で考えるような視点があれば、変化を前提に先を見据えた考え方ができるはずです。そうしたことは、しっかり本を読んで勉強すればいいというものではなく、やはり実際に人と交流しながら「学ぶ場」は欠かせないと思います。

五神そう思います。インターネット上には膨大な情報がありますが、それだけで済むかというとそうではない。大学のようにリアルに人が集まる場の価値は、ますます高まると考えています。多様な立場の人が、多様な経験と知識を持ち寄り、顔を合わせてディスカッションすることによって、多様性の中から新しいものを生み出していく。そうした動きを促進する場を増やしていかなければなりません。

中西まったく同感です。いつも五神総長とは意見が一致しますね(笑)。日本のトップクラスの大学は、国際的に見ても大きなポテンシャルを持っていると思いますが、東京大学では、グローバル化に関して力を入れていることはありますか。

五神地球全体の知の多様性を担う存在として、東大の価値や役割を明確化し、発信していくことが重要であると感じています。例えば、東大の場合は、世界的に見ても、人文科学や社会科学の領域に際立った特徴があります。その価値をしっかりと世界に伝えていくことに力を入れています。個を活かす持続可能な社会の実現においては、人文・社会科学と自然科学や技術の融合が、極めて重要になります。そうした分野を越えたコラボレーション、知の越境を学内で活性化させるための新しい仕組みを創り、世界の中でユニークな価値を生み出すことをめざしています。

産学官による
イノベーションエコシステム構築へ

中西日本だけでなくグローバルに社会・産業構造のパラダイムシフトが起き始めている中で、冒頭でおっしゃったように変革を急ぐには、大学と企業に官も含め、壁を越えた連携が欠かせません。東京大学と日立は、2016年6月に「日立東大ラボ」を設置し、ビジョン共有をはじめとする、産学連携の新たな姿をめざした活動を行っています。そうしたイノベーションエコシステムのあり方については、どのようにお考えですか。

五神産学連携のステージを上げることは、私が総長として特に重視している項目の 一つです。私はこれまで、自分の研究室から100人あまりの学生を社会に送り出してきました。そのうち約7割が産業界に行きましたが、卒業後の彼らの話を聞いていると、10年ほど前から、彼らの能力が最大限に活かされていないと感じることが増えているのです。産業構造が大きく変わる中で重要なのは、こうした人材を適材適所で活用し、彼らの潜在能力を引き出し、新しい価値を創出することです。卒業生のことをよく知っている大学は、その手助けができるはずです。
 一方で、産業界からの大学に対する期待は膨らんでいます。グローバル競争が激化し、短期的な結果が求められる中で、自分たちの強みをどこで活かし、どこに投資すべきかを適切に見極める知恵が必要です。大学には、学術分野で養ってきた、長い時間スケールでトレンドを把握する力があります。そうした力を役立てていただくためにも、企業を取り巻く環境の変化も踏まえた、新しい産学連携の形を創らなければなりません。そこでまず、企業が大学に対して安心して投資できるよう、契約などに関する体制を整備しました。その成果も出始めており、今後、エコシステムとして発展することを期待しています。

中西おっしゃるように、ビジネスを取り巻く環境が複雑化し、真の課題が分からないというケースも増えている中で、企業は自分たちで考えた仮説やシナリオだけでは課題解決が困難になっています。
 やはりエコシステムという考え方が重要で、日立東大ラボのように、企業と大学のトップどうしが対話して技術だけでなく未来ビジョンを共有し、大学にある多様な知と社会とをつなぐことが、解決への近道であると思います。未来ビジョンが社会的課題と関わるものである以上、官も関係してきますし、資金面ではベンチャーキャピタルのような存在も必要でしょう。大学の知をドライビングフォースとしながら、その四者の関係がうまく回る仕掛けを創ることが、パラダイムシフトや産業創生につながっていきます。諸外国に後れをとりつつも、最近では産業界にもそうした認識が広まりつつあり、産学官連携による新たな日本流のイノベーションエコシステムを創る好機が到来していると感じます。

五神ベンチャーキャピタルの存在は重要ですね。東大では2004年にUTECというベンチャーキャピタルを設立し、研究成果の企業化と、そのためのノウハウの蓄積に力を入れてきました。米国のトップクラスの大学に比べればまだまだですが、これまで東大から生まれたベンチャー企業は約300社で、17社が株式上場し、全体の時価総額の合計は約1.4兆円にのぼります。産業界でも、今後、カーブアウトベンチャーのような形で研究成果を事業化することも増えていくと予想され、東大のベンチャー育成ノウハウをシェアするという形での産学連携もありうると思います。

中西2015年に発表された、五神総長の「東京大学ビジョン2020」では、基本理念に「卓越性と多様性の相互連環──『知の協創の世界拠点』として」と掲げておられますが、それはめざすべきエコシステムの形と言えるのではないでしょうか。

日立東大ラボ

東京大学と日立製作所が共同で、2016年6月に東京大学内に設置した研究組織。従来の課題解決型産学連携から発想を転換し、日本政府が提唱する「超スマート社会」の実現、Society 5.0 の推進に向けてビジョンを創生・発信し、その実現に向けた課題の解決をめざす、ビジョンドリブン型の共同研究に取り組む。創生するビジョンは、社会システムの変革を先導し、人々に豊かさをもたらす新たな価値を創造することで社会課題解決と経済発展の両立を実現するもの。そのビジョンを政策としても提言しつつ、先行着手した研究開発テーマの「人や機械を超える生命知能を活用した健康・安心・安全社会の実現」をはじめ、幅広い分野での「産学協創」を推進している。

五神私は、国境を越えて価値を持つような新しい知を創造する拠点が、東アジアで学問や産業を先駆的に進めてきた日本の地にあるべきですし、それが東大でありたいと考えています。経済的な価値にも直結する知を生み出すエコシステムの中で、日本の役割は外せないでしょう。

中西日立東大ラボによって、産学連携が新しいフェーズに入り、イノベーションにつながるエコシステムの形成が促進できれば幸いです。現在、取り上げている研究テーマの一つであるエネルギー分野はステークホルダーも多く、一企業の日立だけがメリットを享受するというものではありませんから、エコシステムのコアとなっていく可能性もあると思います。

五神ゲームチェンジを急ぐためにも、まずは成果を何らかの形で社会実装するところまで、きっちり進めていきたいですね。

SDGsと研究活動をマッチングさせる

中西ここまで国内の共通ビジョンとしてのSociety 5.0について論じてきましたが、未来社会へのグローバルな共通ビジョンとして掲げられた国連のSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)も、新たな価値を産学官で創り上げていく中で重要な指針になると思われます。いち早くSDGsを東大の運営戦略に取り入れられた五神総長は、SDGsへの貢献において、どのようなリーダーシップを採るべきとお考えですか。

五神先ほどご紹介いただいた東京大学ビジョン2020では、「卓越性と多様性の相互連環」という表現で、「多様な活動の中から卓越したものを生み出す」ことを第一に掲げました。個々の研究者や学生たちの自由な発想に基づく活動をエンカレッジし、その力を集めることで、社会をより良い方向に向けるためのドライビングフォースを生み出したい。そのためには、活動の目的となる問題意識を高いレベルで共有することが必要で、国連がちょうど同じ2015年に示したSDGsをターゲットとしました。発表した当初はそれほど反響がありませんでしたが、SDGsが、アクティブに投資を呼び込み、経済活動を活性化するうえでも重要な指針となるという認識が広まったことで、注目度が高まっています。
 これも中西会長が関わられましたが、経団連もSDGsの観点から「企業の行動憲章と実行の手引」を改定されましたね。世界的なESG(環境・社会・企業統治)投資の流れとも相まって、企業の間にはSDGsへの取り組みを通じて持続的な企業価値向上をめざす動きも広がっています。
 東大では、まず教員にそれぞれの研究・教育活動がSDGsの17のどの問題と関係あるかを登録してもらい、マッピングしてみました。すでに150以上の活動が登録されています。そのマップは、東大の強みが全体のどの領域で発揮できるのか可視化するだけでなく、相互連関する研究テーマを見つけ、分野横断的な研究をエンカレッジするツールとしても役立っています。
 SDGsは、経済駆動をしながら資本主義を調和的な発展に資する仕組みにチューンアップするためにも極めて重要であり、そのことが大きな価値ではないかと思います。それと研究活動をうまくマッチングさせて課題解決につなげることが、大学の役割であると考えています。

中西先ほどの話とオーバーラップするのですが、SDGsという社会課題がはっきり捉えられるようになったのも、グローバルなものの見方が広がったからこそだと思います。ビジネスの観点から言えば、地球全体がつながっているという意識が社会の根底にある中、環境負荷をかけて大きなビジネスをして収益を得た、その代償として環境対策をするというような発想では、もう価値は生み出せなくなっています。ゴールを共有して最初からグローバルな視野で環境も考えたビジネス活動を行うことが、本当の意味でサステイナビリティにつながるという、ある意味で素朴な出発点に立ち返ることが必要になっています。
 SDGsをきっかけに、環境・エネルギー問題も、根本的には貧困問題につながるということに気づいた経営者が増えています。そういう視点でビジネスを再構築することが、産業界としてのリーダーシップであると考えます。

五神大学における研究の特徴は、時間スケールの多様性です。ごく短期の開発テーマもある一方で、100年、200年にわたって考え続けるようなテーマも大学ならば維持できます。産業活動も、本来は長期的な視点を持って行うべきなのですが、今は経済サイクルが短期化しすぎているために、長期的な研究や事業を維持することが難しくなっています。SDGsがそうした流れを変えるきっかけになるかもしれません。経済的な合理性を保ちつつ、もう少しロングスパンのものも含めて多様な時間スケールでの産業活動が安心して行えるような環境を、産学の相補的な連携によって創っていきたいですね。

中西長期的な活動をすべて大学にお任せするのではなく、共に取り組むことが大切ですね。
 日立の研究開発部門は、今年2018年に100周年を迎えました。新たな産学連携の中で、企業の研究所・研究者にはどのような役割を期待されますか。

五神区切りの年というのは、みずからのあり方を見つめ直す良い機会になると思います。2017年に東京大学は創設140周年を迎え、その際、ちょうど70年ごとの区切りで過去を振り返るとともに、次の70年を「UTokyo 3.0」と名づけ、個々人が自由な意志で意欲的に活動することが人類社会全体の安定的な発展につながる社会を実現するために、変革を駆動する大学をめざそうと決意しました。
 大学と企業ではできることが違いますから、企業の皆さんには企業としての長期的な研究開発の発展に挑戦し続けていただきたいと思います。Society 5.0のビジョンの下、技術だけでなく、それを本当の意味で人類に役立てる知恵が価値を持つような産業・社会構造へのパラダイムシフトを一緒に実現していきたいと願っています。

中西知の協創によって、変革を牽引していきましょう。日立は2015年に研究開発部門の組織を顧客起点で再編しましたが、本日頂いた五神総長のご意見も参考にしながら、次の100年のビジョンを考えていきたいと思います。本日はお忙しい中、ありがとうございました。