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1.G-Vectoring Control

日立オートモティブシステムズ株式会社の車両運動制御G-Vectoringに基づいた新技術が,マツダ株式会社で開発され,2016年7月に発売の「マツダ アクセラ」大幅改良モデルに初搭載されて以降,マツダの各モデルに順次展開されている。

マツダの新技術G-Vectoring Control(GVC)は,日立オートモティブシステムズが有するG-Vectoring制御のアルゴリズムを基にマツダが応用開発したもので,車両の横方向と縦方向の運動を連係し,四輪への接地荷重を最適化して,スムーズで効率的な車両運動を実現する世界初の制御技術である。両社は2010年より共同開発を進め,神奈川工科大学との産学連携研究を行いながら,本技術の量産化を実現した。

マツダで開発されたGVCは,マツダの新世代車両運動制御技術SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICSの第一弾であり,エンジンでシャシー性能を高める新発想の制御技術として今後の市場拡大が期待されている。

今後も,このような自動車の安全性や快適性を向上する自動車機器システムの開発を強化し,自動車メーカーの魅力あるクルマづくりに貢献していく。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

1.GVCが搭載されたマツダ アクセラ スポーツ(左),G-Vectoringコンセプト(右)

2.プレビューセーリングストップ

近年,実走行の燃費改善への要求が高まり,エンジン・変速機などパワートレインの高効率化のみならず,エコドライブのように走行環境に応じたパワートレイン制御が期待されている。

日立グループは,安全・快適・環境・時間を考慮した運転支援システムSmart ADAS(Advance DriverAssistance System)開発の一環として,外界情報から自車前方を先読みし,先読み情報に基づいたパワートレイン制御で燃費を改善する技術を開発している。ステレオカメラで先行車との相対速度・距離を算出すると同時に,地図情報から前方道路の勾配・カーブ位置を取得することで必要な出力を推定し,出力不要と判断すると自動的にエンジンを停止するプレビューセーリングストップ技術である。

さらに,プレビューセーリングストップ技術とACC(Adaptive Cruise Control)を融合した低燃費システムSmart ACCを開発している。このシステムは,運転支援および自動運転システムに燃費向上の付加価値を与える有効な手段となる。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

2.外界情報を活用した低燃費システムSmart ACCの概要

3.OTAソフトウェア更新・セキュリティを実現する センター・ゲートウェイ技術

3.TCU機器の外観(上),ゲートウェイ機器の外観(中),センター連携したゲートウェイによるOTAソフト更新・セキュリティマネジメント(下)

自動車のコネクティッド化が進展し,外部サーバや交通インフラとのつながりが拡大する中,日立グループは車両の品質・付加価値を向上する技術として,無線を活用したOTA(Over The Air)ソフトウェア更新技術および情報系のセキュリティ脅威から制御系ドメインを保護するセキュリティマネジメント技術を開発した。

これらの技術は,自動車に搭載されるゲートウェイとセンターサービスを含めたトータルシステムによって実現される。OTAソフトウェア更新では,センターから新旧プログラムの差分データのみを無線通信で車両に配信することにより,更新のための通信データ量を削減して高速のソフトウェア更新を実現するとともに,更新異常時のリカバリ技術を開発して信頼性を向上させた。セキュリティマネジメント技術では,センターとゲートウェイ間での相互認証やデータの暗号化,ゲートウェイでの鍵管理やインシデント管理機能によってセキュリティを確保する。

日立グループは,センターから車外通信用のTCU(Telematics Control Unit),ゲートウェイなどの車載ECU(Electronic Control Unit)までのさまざまな要素技術を保有しており,ワンストップで本システムを提供していく。

(株式会社日立製作所,日立オートモティブシステムズ株式会社,クラリオン株式会社)

4.ベルトドライブ式電動パワーステアリング

4.ベルトドライブ式電動パワーステアリングの外観(カットモデル)

環境規制や省エネルギー指向が進む中,自動車のステアリングシステムの電動化は急速に普及しており,近年では大型車への採用も拡大している。

今回,大型車両に適用可能なベルトドライブ式電動パワーステアリングを開発・量産化した。システムの要である減速機構には高負荷に対応可能な高精度ボールネジを採用しており,作動音低減のためにサブミクロンレベルの加工および精度管理を行っている。また,ISO(International Organization for Standardization)26262(機能安全)対応として,電気・電子系ではすべてのセンサーを冗長化するとともに,センサーとマイクロコンピュータ間の通信を従来のアナログ通信からデジタル通信に変更することで信頼性を向上させている。

今後は自動運転車両に対応させるため,センサーの多重化やシステムの冗長化を行い,新たな顧客ニーズに応えていく。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)(量産開始時期:2015年10月)

5.セミアクティブサスペンション溶接ライン

5.ロボット協調制御による溶接治具レス自働MAG溶接

走行時の車両振動とコーナリング時の姿勢変化を制御し,乗り心地を大幅に改善する電子式セミアクティブサスペンションの生産性と品質保証度を向上させた。

主な施策は以下のとおりである。

  1. ロボット協調制御による溶接治具レス自働MAG(Metal Active Gas)溶接
    製品保持用,部品供給用および溶接用のロボット3台の協調制御を採用した。
  2. 3Dスキャナによる全数検査
    3D-CAD(Computer-aided Design)製品図面のマスタデータと3Dスキャナ製品形状データ比較による自動判定検査機を採用した。
  3. 統合管理システムによる製品・設備の一体管理
    CC-Link IEを活用した製品ごとの着工・検査・良否データを高制御で管理するシステムを採用した。

この結果,以下の成果を得ることができた。

  1. 溶接治具の廃止と作業人員の削減
  2. 製品全数での溶接寸法・角度・部品欠損に関わる品質保証度向上
  3. 全生産データ集中制御化によるライン稼働率の向上

今後は本技術をセミアクティブサスペンション以外の生産ラインにも応用し,生産性と品質保証度の向上に貢献する。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)(生産開始時期:2016年6月)

6.電動パーキングブレーキシステム

6.マツダ CX-9向け電動パーキングブレーキシステム

近年の車両の安全性,快適性に関するユーザー意識の高まりや,自動ブレーキの採用拡大に伴い,車室内レイアウトの自由度を向上させ,安全性向上に貢献し,さらには自動ブレーキへも応用できる電動パーキングブレーキシステムの採用が急速に拡大している。

日立オートモティブシステムズは,独自構造による電動パーキングブレーキシステム(e-PKB:Electric Parking Brake)を開発し,マツダ CX-5向けに2014年11月より量産を開始した。同システムは現在マツダの大型SUV(Sport Utility Vehicle)であるCX-9にも採用されている。

e-PKBは高効率,低作動電流,低作動音,小型化および軽量化を達成しており,競合他社製品に対するこれらの優位性を強みに,受注を拡大すべく活動していく。また,今後もe-PKBの改善・開発を継続し,市場や顧客のニーズに応え,安全性・快適性の向上に貢献していく。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

7.マイルド・ハイブリッド車両用 48 Vリチウムイオン電池パック

7.48 Vリチウムイオン電池パック

日立オートモティブシステムズ株式会社は,エンジン駆動時に小型電池とモータでアシストし,燃費を改善するマイルドハイブリッド車両向けに,高出力の48 Vリチウムイオン電池パックを開発した。

新開発の48 Vリチウムイオン電池パックは,BMS(Battery Management System)基板・セルに加え,リレー,ヒューズを一体実装した積載性の高いオールインワンパッケージの電池パックである。低温特性に優れ,従来の自社製電池セルと比較して約1.5倍の出力密度となる高出力な角形リチウムイオン電池セルを内蔵することで信頼性を高めている。また,48 Vシステムに用いられるモータでの加速アシストにおいて,十分なトルク性能が発揮できる最大出力10 kW以上および最大入力13 kW以上(いずれも10秒間)を実現した。さらに,コンパクトなデサインにより,車室内での設置自由度を向上した。

今後も,リチウムイオン電池をはじめとする電動パワートレイン製品の強化を通じ,電動車両の進化に貢献していく。

(日立オートモティブシステムズ株式会社,日立ビークルエナジー株式会社)

8.Full Digital Sound Z3,Z7,Z25W技術開発

8.Full Digital Sound市販商品Z3,Z7,Z25W

Full Digital Sound(FDS)Z3,Z7,Z25は,クラリオン株式会社が5年間に及ぶ車載専用FDS-LSI(Large-scale Integration)の開発を経て世に送り出した製品である。

車載専用LSIの開発には,走行時のロードノイズに負けない音圧,車載特有の外来ノイズ耐性など,さまざまな条件に対応したLSIが不可欠であり,また,CD(Compact Disc)以上の分解能を持って録音されている「ハイレゾ音源」を再生させるべく,24ビット・96 kHzに対応する性能の確保も必要であった。

Z3シリーズは光入力やUSB(Universal Serial Bus),アナログ入力を搭載するなど,現在,広く普及している複数の入力端子を備えている。常に全てのCD音源(16ビット・48 kHz)やアナログ入力を24ビット・96 kHzにHiサンプリングして再生する機能を備え,高音質の音楽をユーザーに提供する。

FDSは,アナログ再生のようにアンプで増幅して再生するシステムではなく,スピーカ入力までデジタル信号で再生する。24 MHzの超高速で再生する音楽は分解能が高く,歯切れがよく,デジタルの硬いイメージを覆す温かみのある音を奏でることができる。もう一つの特長は,低消費で大きな音を再生できる点にあり,新LSIは,低消費版のアナログIC(Integrated Circuit)に対しても 1/3 〜 1/5 程度の低消費を実現した。身近なシステムをFDSに交換することにより,相当量の電力削減が期待できる。

今回の技術開発をきっかけに,さらに多くの製品への搭載をめざしていく。

(クラリオン株式会社)

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