日立評論

モビリティの未来へ,つながりを深め,価値を生み出す

超スマート社会の一翼として

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モビリティの未来へ,つながりを深め,価値を生み出す

超スマート社会の一翼として

ハイライト

交通システム全体の最適制御をめざすスマートモビリティは,を中心にサイバー空間とフィジカル空間が高度に融合した「超スマート社会」の重点分野の一つとされている。日立グループ内で自動車産業とその周辺産業,および関連するサービス産業に携わる3名が,モビリティの未来について広く語り合う。

目次

自動車を取り巻く環境変化が加速

貫井 清一郎
日立製作所 未来投資本部 アーバンモビリティプロジェクト プロジェクトリーダ

津田 芳一
日立製作所 産業・流通ビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部 モビリティ&マニュファクチャリング本部 本部長

渡邉 ここ最近,電動化で自動車そのものが変わりつつあることに加え,コネクテッド化やシェアリング,自動運転など,モビリティとしての自動車のあり方を変えていくような技術やサービスが発展し始めています。本日は,自動車を中心としたモビリティの未来について考えていきますが,まずはこうした動向に対する見解をお聞かせください。

貫井 自動車はモビリティとして利便性が高い反面,渋滞による経済損失,環境負荷や交通事故などの社会的課題も生じさせています。また,個人所有の自動車の場合,稼働率が低く有効活用されていないという見方もあります。昨今の環境変化は,技術の進歩だけでなく,それら自動車を取り巻く課題の解決をめざす動きに牽(けん)引されているため,今後も加速していくことは間違いないでしょう。

山足 電動化の動きはこの1年で急速に進み,自動運転についても,これまでのロードマップでは,SAE Internationalの定義したレベル0〜5のうち,レベル3が2020年頃,レベル4は2026年以降が実現のめどとされてきましたが,前倒しされる可能性があります。異分野であったIT企業の参入もあり,全般的に変化のスピードが速まっていますね。ビジネス面でもそのことを念頭に対応しなければならないと強く感じています。

津田 モビリティについて考えるときに重要なのは,それ自体が社会インフラであると同時に,道路や通信などの他の社会インフラとも切り離せないということです。特に,自動運転の本格的な普及に向けては,道路インフラがどうあるべきかというビジョンも必要です。これを機に,モビリティのあり方について社会全体で見直していくことも必要かもしれません。

山足 道路インフラに関しては,ITS(Intelligent Transport System)が少しずつ実現しつつありますが,技術面でこれからの重要なポイントとなるのは,自動車とインフラをいかにつなげるかですね。その通信手段として,次世代通信規格の「5G」の実用化に向けた検討や,車車間(C2C:Car to Car)や路車間(C2I:Car to Infrastructure)などの「C2X」通信技術を支えるデバイスの開発が進んでおり,今後,新たな機能やサービスの実現も期待されます。

データ活用とサービス事業の拡充をめざす

山足 公也
日立オートモティブシステムズ株式会社 執行役員・CTO 兼 技術開発本部 本部長

渡邉 そうした動きを踏まえつつ,日立グループとして具体的にどのような事業を展開していくのか,現状や将来像についてお話しいただけますか。

山足 日立オートモティブシステムズ株式会社は部品事業を主体としてきましたが,最近は,部品だけでなくコネクテッドサービスのSI(System Integration)も求められることが増えており,今後は自動車メーカーに対するサービス事業も拡大していく計画です。

部品に関しては,モータやインバータなど電動化を支えるコンポーネント,自動運転の進展に伴って電動化が進む各種アクチュエータなども,私たちの強みが発揮できる分野として力を入れています。また,自動運転化やコネクテッド化などの潮流によって自動車とITとの融合が進む中で,ソフトウェアの重要性も高まっており,その強化にも取り組んでいます。部品分野では事業のグローバル展開を推進してきましたが,今後はサービスやソフトウェアの分野でもグローバル化を図っていきます。

津田 日立製作所産業・流通ビジネスユニットのモビリティ&マニュファクチャリング本部では,IoT(Internet of Things)技術で収集される自動車のデータとその解析技術によって,自動車産業の設計・製造,試作・研究開発といった領域の革新を支援することを大きなテーマに,日立オートモティブシステムズやクラリオン株式会社と連携してソリューションを開発しています(図1参照)。

例えば,部品の稼働データや車両の走行データを収集・解析して自動車メーカーの設計・製造ラインにフィードバックすることにより,マニュファクチャリングのスマート化を支援するソリューションなどを開発しています。走行データやECU(Electric Control Unit)などの機器データは,自動車産業だけでなく,保険などの周辺産業の新たなサービス創出にも活用できると期待されており,さまざまな可能性を探っているところです。

図1│グループ連携によるソリューション開発

貫井 私は未来投資本部でデジタルソリューション事業の新規立ち上げをミッションとしています。現在は,本格的な自動運転・コネクテッド時代の到来を見据え,津田さんとはまた違った切り口から,ビッグデータ解析やAI(Artificial Intelligence)技術によるデータ活用ソリューションの提供に取り組んでいます。米国でトラックリースなどを行っている企業との協創の事例では,保有する約54万台のトラックの走行データや,全米で約600か所の修理拠点のメンテナンスデータを解析することで,メンテナンスのコストダウンをめざしています。今後は,メンテナンス技術の継承,稼働率や安全性の向上といった,さらなる価値を提供していきたいと考えています。そうしたソリューション協創と並行して,次世代のモビリティを切りひらいていく事業の実現もめざしています。

商用車の最適運用が一つのカギに

[司会]渡邉 恵子
日立オートモティブシステムズ株式会社 技術開発本部 技術企画部 主任技師

渡邉 現在,日本政府が進めている超スマート社会の実現に向けた取り組み,Society 5.0の中でも,自動運転やコネクテッド化によるスマートモビリティの実現は大きな要素の一つです。社会インフラや交通インフラがクラウドを介して車両とつながり,新しい価値やビジネスが創造されていく次世代のモビリティでは,どのようなことがカギになると思われますか。

津田 モビリティの未来を考えるうえで注目すべきなのは商用車ではないかと思います。自動車の世界総生産台数は,現在約9,000万台で,内訳は乗用車が約6,000万台,商用車が約3,000万台です。業界の一つの見方としては,これが2035年には1億2,000万台に増加するものの,乗用車は約6,000万台のまま横ばいし,商用車が約6,000万台に倍増すると予想しています。ニューモビリティと呼ばれる,小型のシェアリングカーや近距離の配送車などが急増すると見られているのです。そうなると,それらを最適に運用して円滑な輸送を実現することが課題となるでしょう。自動運転やコネクテッドの技術を適用しながら,電車やバスなども含めたモビリティ全体でのシームレスな連携をどう実現するかが重要になると思われます。

貫井 商用車という切り口で考えると,現在はバスのような定ルート・定期運行のもの,タクシーのような不定ルート・不定期運行のものが主ですが,過疎化が進む地方などでは,定ルート・不定期運行のモビリティが重要性を増していくかもしれません。コミュニティバスで人と荷物を一緒に運ぶことや,ペットボトルなどの資源回収を同時に行うといったことで,コストを抑えながら移動手段を確保するサービスなども考えられるのではないでしょうか。

津田 国土交通省が,2017年9月から過疎地における貨客混載の規制を緩和しましたから,やり方次第では,地域全体での輸送効率の向上や新しいビジネスモデルの創出につながりそうですね。

貫井 日立グループの強みを生かすモデルとしては,システムをつないで価値を創出することが考えられます。例えば,定ルート・不定期運行のモビリティと地域の病院の予約システムをつないで,空いている時間に診察できるように迎えに行くなど,人とモノをつなぐことで効率化できる領域はまだまだたくさんあります。モビリティの未来をひらくカギもそのあたりにありそうです。

「越境」できるチームづくりを

津田 そうした強みを生かすには,グループ内の情報や技術の共有を進める必要もありますね。お客様のオーダーに対応するだけでなく,日立としてモビリティの未来の姿をどう考え創造していくのかという長期的なビジョンを持ち,それに基づいてグループ内の技術やサービスを整理し,連携・融合を図ることや,IoTプラットフォームLumadaなどをベースに技術を横展開していくことが重要になるでしょう。

また,モビリティ全体で見れば,自動車だけでなく,鉄道や各種インフラなども含まれます。関連分野の人たちが,若い世代も含めて一緒に具体的な会話ができる場をつくれると,新しいものが生み出せる可能性も高まると思います。

山足 技術の横展開では,自動車のOTA(Over The Air)ソフトウェア更新技術を工場機器のアップデートに応用するという事例もあり,同様のことがさまざまな領域で可能だと思います。日立オートモティブシステムズとしても,産業・流通ビジネスユニットをはじめとするグループ内連携をさらに拡大していきたいと考えています。

図2│自動車関連技術・ビジネスをめぐる3つの軸

貫井 自動車に関わる技術やビジネスには,大きく3つの軸があります(図2参照)。自動運転技術や電動化などの自動車そのもの,道路や信号,通信,さらには保険や免許制度も含めた広い意味でのインフラや周辺産業,そして,それらをベースにコネクテッドなどの新しい技術を使ったサービスビジネスです。モビリティのスマート化は,それらが相互に関連しながら進んでいきますが,最近では小売業が物流も行うなど,プレーヤーがビジネス領域を越境する例も増えています。お客様が越境するときに,日立もまた越境できなければなりませんから,モビリティをキーワードとしたグループ内での越境チームづくりの必要性も感じています。

渡邉 超スマート社会やモビリティの未来を考えたとき,人やモノとシステムとをつなぐ技術や方法が今後一層重要になりますね。日立グループとしても,幅広い技術と事業をつなぐことで強みを発揮し,スマートモビリティの実現に貢献することをめざしていきましょう。本日はありがとうございました。

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