日立評論

実績ある技術に革新を加え,自動車の大変革を支える

社会課題を解決し,次のステージへ

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実績ある技術に革新を加え,自動車の大変革を支える

社会課題を解決し,次のステージへ

ハイライト

100年ぶりの大変革の時代にあると言われる自動車産業では,世界中の自動車メーカーが電動化を推進し,自動運転やコネクテッド化の実現に向けた開発競争も加速している。クルマ社会のあり方そのものが変わろうとしている中,日立グループはどのように強みを発揮していくのか。日立オートモティブシステムズ株式会社の関秀明CEOが語る。

目次

クルマ社会が次なるステージへ向かうために

今夏,フランス政府と英国政府が相次いで2040年からガソリン・ディーゼル車の新規販売を禁止する方針を発表し,大きな話題となりました。欧州諸国やインドなどでも脱内燃機関をめざす動きが見られ,世界最大の自動車市場である中国では,政府の環境規制強化により,EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)が急速に普及しています。米国でも,EVメーカーのテスラ社が存在感を高める中,GM社のEV「BOLT」の販売も伸びています。今後,各国で充電インフラ整備とともにEVの開発が加速していくのは間違いないでしょう。

電動化と並び,最近の動向として注目される自動運転では,これまで自動車産業界とは関わりの少なかったIT系企業も参入し,技術開発競争が加速しています。自動運転中の状況把握と判断,操作の最終的な責任の所在などは法制度の面で解決すべき問題でもあるため,国内外の法整備の動きも踏まえながら,段階的に実用化されていくことになると思われます。人間が運転するよりも安全性を向上し,移動の快適性をさらに高めるという自動運転の目的を達成するためには,今後も技術の進化を続けていかなければなりません。

この100年余りの間,自動車は常に新たな研究・技術開発の歩みとともに,革新を繰り返しながら進化し続けてきました。今や,世界中で人々の暮らしや経済活動を支え,社会になくてはならない存在となっています。一方で,大気汚染や交通事故,交通渋滞といった課題を抱え続けてきたのも事実です。今日において活発化している電動化の動き,自動運転技術の急速な発展は,クルマ社会がそれらの課題に向き合い,より環境負荷が少なく,より安全で快適な,次なるステージへと向かうために,成し遂げなければならない大変革と言えるでしょう。

自動車の基本的価値と性能を左右する技術を蓄積

大変革が起きている背景には,そうした社会的課題の解決に資する技術がそろってきたことも挙げられます。EVやPHVの普及は,コスト面での課題を抱えつつも,モータ,インバータ,リチウムイオンバッテリーの性能が向上したことが後押ししています。自動運転技術は,自動車のエレクトロニクス化の進展に伴い,カメラやレーダなどのセンシングデバイスをはじめ,高速データ処理や車両の運動制御などの技術が発展したことで実現可能になりました。

当社は,そうした電動化の基幹部品や,自動運転を支えるセンサー,コントローラ,アクチュエータなどを幅広く手掛けています。その多くは,私たちが日立製作所を母体に80年以上にわたってお客様と共に蓄積してきた自動車機器事業の経験と知見,それらを土台とする技術力の賜物と言えます。

日立の自動車機器事業の歴史は,1930年代に日立製作所が電装品の国産化を実現したことに端を発します。その後,製品分野を徐々に拡大し,2004年には日立製作所,トキコ株式会社,株式会社日立ユニシアオートモティブが合併,2006年にはクラリオン株式会社を日立製作所の連結子会社としました。それぞれの得意分野を融合させることで,「環境」,「安全」,「情報」という自動車の価値を高めるために欠かせない3つの要素において重要なコンポーネントをそろえるとともに,それらの一体制御による統合システムソリューションを提供する体制を整えたのです。

そして,2009年に自動車機器の部門が日立製作所から独立し,日立オートモティブシステムズ株式会社となりました。当社は,これまでの実績を基に,現在の主要な動力源である内燃機関の高効率化・低燃費化,「走る」,「曲がる」,「止まる」という基礎的な運動性能の向上につながる車両制御など,自動車の基本的価値と性能を左右するさまざまな技術を開発し,ソリューションとして提供しています。

自動車やモビリティを通して社会の課題を解決

関 秀明
日立オートモティブシステムズ株式会社 社長執行役員&CEO
1979年日立製作所入社。2004年都市開発システムグループ事業企画本部長,2006年電動力応用統括推進本部副本部長,2013年日立オートモティブシステムズ株式会社 常務取締役 パワートレイン& 電子事業部長 兼 佐和事業所長,2014年同社取締役副社長,2015年4月より現職。

電動化・自動運転の潮流は,自動車がインターネット通信機能を持ち,さまざまなデータを収集・分析して,リアルタイム情報サービスやより高度な自動運転を実現するコネクテッドカーの実用化とも密接に関わっています。コネクテッドカーは,日本政府が超スマート社会の実現に向けて推進しているSociety 5.0において,重要な要素の一つであり,IoT(Internet of Things)の一形態と位置づけられます。日立グループの持つIoTプラットフォームLumadaや,AI(Artificial Intelligence)技術,セキュリティ技術などは,自動車のコネクテッド化を支えていくうえでも重要な役割を果たすことになるでしょう。

日立グループは,社会インフラシステムのOT(Operational Technology),IT,多様な製品をかけ合わせることで,お客様や社会の課題解決をめざす社会イノベーション事業を推進しています。その中において当社は,自動車に関する多くの知見を有し,電子・電動化技術とともに高精度な車載製品群と高効率な制御技術を幅広く展開しています。そうした強みを生かしつつ,日立グループ内での連携をより深めて総合力を発揮することにより,自動車やモビリティという側面から社会の課題解決に貢献することをめざしています。

例えば,当社グループの車載機と日立製作所のITソリューションを連携させ,解析技術を生かして物流業界の効率化を支援する運行管理ソリューションを開発しました。このような総合技術による,自動車産業やクルマ社会の課題解決に向けたソリューション提案に,今後も力を注いでいきます。

未来のクルマ社会においても貢献できる企業をめざす

新たな技術潮流と異業種からの参入は,自動車業界における開発競争を世界中で激化させています。当社は,研究開発力を競争力の源泉と位置づけ,グローバルな視点で協力体制を築くことで,さらなる強化を図っています。革新的な技術を通じてクルマ社会の成長を牽引していくために,日立グループが有する研究開発資産のグローバルな活用とともに,国内だけでなく北米・欧州・中国に設置したテクニカルセンターや,日立製作所の研究開発拠点をはじめ,各国の大学や研究機関とも連携を深めてオープンイノベーションを推進しています。

パートナーとの協力や協業関係の強化は,製品戦略においても欠かせない要素となっています。本田技研工業株式会社と共同で2017年7月に設立した日立オートモティブ電動機システムズ株式会社は,今後さらなる拡大が見込まれる電動車両市場の中で,電動車両システムの中核であるモータの技術開発においてシナジー効果を発揮し,競争優位性を維持していくことをめざしています。

電動化,自動運転,コネクテッド化という潮流のさらにその先を見据えたとき,自動車は現在とは違った姿に変貌する可能性もあるでしょう。例えば,子どもの頃にアニメで見たような,空飛ぶクルマが実現するかもしれません。そうした未来においてもクルマ社会に貢献し,成長を牽引できる企業であるために,今後とも世界の市場動向や自動車メーカーのニーズおよび社会のニーズを敏感にとらえ,革新的な製品とソリューションをグローバルに開発し,提供していきます。