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1. EV用モータの制御・電磁振動連成シミュレーション技術

EV(Electric Vehicle)などモータで走る自動車は,エンジン車にはない静粛性が重要な提供価値の一つである。騒音は振動が空気中を伝わることによって発生し,振動にはモータの構造と制御に用いるインバータの性能が影響する。従来,設計段階で振動を評価する手法は確立されていなかったが,今回,モータとインバータの特性をあらかじめモデル化し,制御と連成解析して低振動化に役立てる技術を開発した。

振動の問題は,加振力(発生要素)と機械的な共振要素の2つで決まる。モータの第一の加振力は構造で決まる電磁気的成分であり,回転数に比例して増加する。第二の加振力はインバータの高周波な電流脈動がモータに流れて生じる。共振要素はモータケースや車体の機械的な共振点である。振動は従来,三次元で解析したが,計算負荷が重く制御と連成することは困難であった。

提案手法は,モータのロータとステータの間に働く電磁力を一次元の特性として表現する加振モデルを考慮し,このモデルは前述の2種の要因を含む。一次元化により計算量が軽減できたため,制御を含めた実機に近い環境でモータの振動を解析できる。

今後,振動まで対策した電動システムの設計に活用できると考えている。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

1.EV用モータの制御・電磁振動連成シミュレーション技術EV用モータの制御・電磁振動連成シミュレーション技術

2. 自動運転向けAI実装技術

2.AIの学習からECU実装までの処理フローAIの学習からECU実装までの処理フロー

事故防止のため運転手の機能を代替する自動運転技術の開発が進められている。また近年,より高度な自動運転を実現するため,車載カメラ映像から周辺物体を認識することなどを目的にAI(Artificial Intelligence)を活用する検討も加速している。しかし,演算量の多いAI処理を自動運転ECU(Electronic Control Unit)上でリアルタイムに処理するのは困難である。そこで,以下の2つの手法によりAIの処理負荷を軽減する縮約実装技術の開発を進めている。

  1. 認識精度に影響の小さい演算の割愛および演算精度の最適化による方式レベルの縮約
  2. FPGA(Field Programmable Gate Array)を活用したAI処理の最適リソース割り付け,専用回路化,内部メモリ活用による実装レベルの縮約

また,これらの手法を物体認識用AIに適用した結果,一例としてほぼ同等の認識精度で演算量を10分の1程度まで削減可能となることを確認した。

今後もこの技術の検討を進め,低負荷・低電力でのAI処理を実現し,自動運転への早期適用に貢献していく。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

3. セントラルゲートウェイ

3.セントラルゲートウェイセントラルゲートウェイ

自動運転やコネクテッドカーの実現に向け,次世代車両アーキテクチャにおいて核となる,車両通信データの転送処理と情報セキュリティ機能を備えた車両用ゲートウェイ装置を開発した。

このゲートウェイは代表的な車載ネットワークであるCAN(Controller Area Network)6チャネルの接続インタフェースを備え,各チャネル間のデータ転送を行っている。主要なセキュリティ機能としては,不正情報のフィルタリング,DoS(Denial of Service)攻撃などの不正アクセスを検知するバス負荷監視機能を実装している。ゲートウェイには,データの優先順位に従い順番を入れ替えて転送する制御用データと,受信した順番どおりに転送する診断用データという2種類の通信データが混在して送られてくる。これらのデータに対し,本開発のゲートウェイでは,相反する2種類の転送制御を両立させつつ,データ転送にかかる遅延時間を最小限に抑えている。

今後は,次世代車載ネットワークの一つであるEthernetに対応し,無線でECUのソフトウェア更新を行うOTA(Over The Air)機能や,センターと連携したセキュリティ機能を実装したゲートウェイを開発する。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)(量産開始時期:2017年11月)

4. 電動車用エンジンの熱効率向上技術

4.電動車用エンジン向けシステム製品電動車用エンジン向けシステム製品

今後急速に普及が進む電動化自動車向けに,エンジンの熱効率向上技術を開発している。

電動車用エンジンは,従来エンジンより運転領域が限定され,燃費最良点で運転する頻度が高いため,燃費低減のための燃焼制御技術およびシステム製品を展開する。燃費低減技術には,以下の3つの要素が求められる。

  1. 混合気の均質度を向上するインジェクタ,初期火炎核を安定して形成する点火強化システム(Ignition Coil)による希釈燃焼領域拡大
  2. 運転領域によって圧縮比を変化させる可変圧縮比機構(VCR:Variable Compression Ratio),バルブタイミングを最適化する電動可変バルブ機構(VTC:Valve Timing Control)による高圧縮比化
  3. シリンダとの摩擦を低減する低摩擦ピストン,運転条件に応じて最適な油量を実現する可変容量ポンプによる損失低減

これらのシステム製品の搭載により,熱効率45%超の性能を達成することを確認した(ベース比+8.9%)。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

5. デジタル通信型の多機能エアフローセンサー

5.多機能型エアフローセンサーの吸気管通路実装構造と内部構造多機能型エアフローセンサーの吸気管通路実装構造と内部構造

排ガスおよび燃費規制強化のため,エンジン制御では空気流量計測に加えて空気中の温度,水分量,大気圧の物理量を同時計測可能とした多機能型エアフローセンサー(AFS:Air Flow Sensor)の採用が主流となりつつある。

日立では,2011年に世界で初めてホットワイヤ式の多機能AFSの量産を開始した。今回,さらなる高機能化を目的としてデジタル通信型の多機能AFSを開発した。

  1. プリント基板を活用した高密度実装の実現
    センサー素子はシリコン半導体素子を採用し,すべての電子部品をプリント基板に集約実装することで部品点数,生産工数を削減し,小型化を達成した。
  2. デジタル通信を採用した高機能化の実現
    温度,湿度,圧力,流量センサー信号を単線で伝送可能なLIN(Local Interconnect Network)通信を採用し,車載ネットワークへの適用を図った。

LIN通信採用により,エンジンコントロールユニットとの双方向通信も可能とし,高機能化を達成した。

今後は,さらなる高性能化と部品の集約化を進め,高性能エンジンに適するセンサー開発に取り組む予定である。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)(生産開始時期:2018年5月)

6. グローバルNo.1に向けた油圧VTC技術

6.油圧VTCのシステム構成と分解図油圧VTCのシステム構成と分解図

世界的に環境・燃費規制が高まる中,エンジンのさらなる性能向上を実現するVTC技術を開発すべく,世界初のVTC挙動シミュレーションを開発し,新たな高機能VTCを完成させた。

開発したシミュレーションは,機構,流体,エンジン領域をそれぞれ三次元で詳細にモデル化し,OEM(Original Equipment Manufacturer)が求める高精度レベルを達成した。さらに,気液二相流を世界で初めて一次元モデル化し,エンジン始動シーンを初めて再現した。また,自他共通課題であるエンジン始動時のロックピン誤解除のメカニズムを解明し,防止構造を完成させた。これによりロックピン解除圧を下げてVTCの作動領域拡大を実現し差別化を図った。この技術開発が認められ,新規ビジネスの受注につながった。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

7. FIAT CHRYSLER AUTOMOBILES N.V.向けアルミニウムショックアブソーバ量産適用

7.アルミ製ベースシェルショックアブソーバの外観アルミ製ベースシェルショックアブソーバの外観

現在,自動車業界では,排ガス低減や燃費向上のための技術および製品の開発が積極的に進められている。

日立オートモティブシステムズでも燃費向上に向けて自動車部品の軽量化に取り組んでおり,ショックアブソーバではロッド中空化や部品の樹脂化などを進めてきた。

今回,FIAT CHRYSLER AUTOMOBILES N.V.からの要請を受け,主要部材であるベースシェルを従来の鉄製からアルミ製に変更することで,大幅な軽量化を実現するショックアブソーバを開発した。従来製品と同等の性能と信頼性を確保するため,アルミ材の材質や熱処理方法,熱膨張変化による性能低下,新規量産加工技術などの課題を克服し,同サイズの従来製品比で15%の軽量化を実現したアルミ製ベースシェルショックアブソーバの量産化を果たした。

北米地域のボリュームゾーンである大型ピックアップトラックへのアルミ製のショックアブソーバ採用は業界初であり,今後のサスペンションビジネスの拡大に大きく寄与するものである。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)(生産開始時期:2018年1月)

8. SurroundEyeによる自動駐車システムの実現と将来展望

クラリオン株式会社は,国内主要カーメーカーと長年共同開発を進めてきた俯瞰(ふかん)表示の技術をベースとする画像認識技術とソナー信号をECU内でフュージョン処理し,高精度な駐車空間認識を実現した自動駐車用ECUを新型リーフ向けに納入している。

2017年にはスマートフォンを用いた遠隔操作により,車外から並列・縦列車庫入れ・出庫を自動で行うリモートパーキングシステムを,クラリオンと日立オートモティブシステムズが共同で開発した。これは,クラリオンの周辺監視カメラシステムであるSurroundEyeと,日立オートモティブシステムズの車両制御技術やステアリング,ブレーキなどのアクチュエータ制御技術を連携させた自動駐車システムである。遠隔操作で車両を駐車するものであり,スマートフォンの画面に車両周辺の映像と,車両の進行予定経路をリアルタイムに表示するHMI(Human Machine Interface)により,ドライバーは常に車両周囲の状況を把握しながら安全に車両を操作することが可能である。

2018年には,駐車周辺環境と駐車パターンを記憶させ,自動駐車が可能なPark by Memoryを開発した。SurroundEyeによる俯瞰映像と,ソナー信号による周囲構造物の検知情報,さらにGPS(Global Positioning System)による位置情報を統合し,記憶した駐車場に車が近づくと,自動駐車可能であることをドライバーに通知し,車内もしくはスマートフォンアプリのボタンをドライバーが押下する簡易な操作だけで自動駐車が可能である。

近年,駐車時の操作ミスによる自動車事故が社会的な問題となっている中,人為的な操作によらない安全な自動駐車技術の早期普及に貢献していく。

(クラリオン株式会社)

8.リモートパーキングシステム(上)とPark by Memory(下)リモートパーキングシステム(上)とPark by Memory(下)

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