日立評論

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日立評論

1. 自動運転の高度化を支える認識・制御技術

1.車載センシング車載センシング

自動運転の実現に向け,市場では車載センシング技術の開発が加速している。日立は,ステレオカメラや全周囲カメラなどの車載センサーを開発している。現在,自動運転は,高速道路の同一車線において自動操舵機能が実現されており,今後,高速道路だけでなく一般道への適用範囲拡大が期待されている。このため,車載センサーでは,車,レーンといった特定物体の認識だけでなく,交差点などの複雑な道路形状や一般道における不特定物体の把握が重要な課題となる。

日立では,一般道路における自動操舵を実現するため,高密度な3D点群を活用して走行可能な領域を解析し,走行路上にある任意の障害物形状を把握するステレオカメラを開発した。また,スムーズな操舵を行う自動駐車を実現するため,前後左右に配置された魚眼カメラにより生成した過去と現在の三次元地図の照合により自車位置を認識する全周囲カメラを開発した。

今後,本技術を活用することで,さまざまな道路に適用できる自動運転の実用化に貢献する。

2. 自動運転システム開発プラットフォーム「CONVEY」による顧客協創

2.プラットフォームCONVEYの概要プラットフォームCONVEYの概要

自動運転の実現に向けた開発が急速に進んでいるが,個別の要素技術があったとしても,それをソリューションとして構築するのは困難である。特に自動車やモビリティ分野においては通常,他の分野に比べて開発期間が長期であるため,この問題は顕著である。そこで日立は,複数の車載ソフトウェアを共通環境で開発可能であり,短期間での自動運転デモを実現できるプラットフォームCONVEY(Research and Development Platform for Connected Vehicles and Mobility)を開発した。

このプラットフォームは,(1)リファレンスアーキテクチャ,(2)共通インタフェース定義,(3)疎結合のソフトウェアコンポーネント,(4)開発および展開のためのインフラ,という4つの要素を提供する。これらの4要素により,迅速なソフトウェア開発,自動的なソフトウェア展開,ならびに効果的なコンポーネントの再利用を可能とする。日立は,CONVEYを利用して,DENSE(aDverse wEather eNvironmental Sensing systEm)およびHumanDriveという2つの欧州プロジェクトに参画し,顧客協創を推進している。

今後,CONVEYを日立グループ全体に展開することによって,自動運転技術および経験を蓄積・共有し,さらなる顧客協創を迅速に実現する。また,自動車だけにとどまらず,鉄道や海運などその他のモビリティにも適用していく計画である。

3. 電気自動車のモータ駆動省エネルギー化に貢献する高耐久性構造SiCパワー半導体TED-MOS

3.今回開発したTED-MOS今回開発したTED-MOS

EV(Electric Vehicle:電気自動車)の省エネルギー化に貢献するパワー半導体として,次世代材料のSiC(炭化ケイ素)を用いた日立独自のデバイスTED-MOS[Trench Etched DMOS(Double-diffused Metal-oxide-semiconductor Field-effect Transistor)]を開発した。TED-MOSはFin状トレンチ構造を特徴とするSiC MOSFETであり,他の一般的なトレンチ構造MOSFETで課題となる電界集中を回避しつつ,従来DMOS構造に比べて低抵抗化を実現可能とした。EV向け高電流密度化のため,デバイス中央部の「電界緩和層」によりさらに電界抑制する一方,低抵抗化のための「電流拡散層」を追加し,従来DMOS比で電界を40%低減するとともに抵抗を25%低減し,エネルギー損失を50%低減することに成功した。

本技術により,EVのモータ駆動インバータの省エネルギー化を推進するとともに,社会インフラシステムのさまざまな電力変換器にも適用し,低炭素社会の実現に貢献していく。

4. 鉄道車両の車内騒音予測技術

4.部分構造の詳細FEMモデルを活用した鉄道車両のSEAモデル部分構造の詳細FEMモデルを活用した鉄道車両のSEAモデル

鉄道車両などの公共性の高い乗り物では,車内の静音化は乗客の乗り心地向上において必要不可欠な要素の一つである。しかし,車両の速度向上や軽量化などに伴って車内騒音は増加する傾向にあり,設計段階での予測・低減技術の重要性が増している。鉄道車両のような大規模構造物の騒音予測では,複数の構造要素に分割した全体構造モデルを用い,台車からの加振力や空力音を入力として,車体構造を伝播(ぱ)して車内に侵入する音のスペクトルを計算するSEA(Statistical Energy Analysis:統計的エネルギー解析)が用いられる。

計算には構造要素間の結合部での振動伝達率を示す結合損失係数が必要だが,従来は既存車両を用いて実験的に同定するしかないのが課題であった。本課題を解決するため,結合部を含む部分構造の詳細FEM(Finite Element Method:有限要素法)モデルから結合損失係数を算出し,それを用いて鉄道車両全体のSEAモデルを構築する手法を開発した。

今後,本手法を活用して,静音化と軽量化など背反する性能を高度に両立する鉄道車両の開発に貢献していく。

5. ビル内の円滑な移動を可能にするエレベーター連携人流シミュレーション技術

5.行き先階予約システムの導入効果の評価例行き先階予約システムの導入効果の評価例

エレベーター設置計画の支援を目的として人流シミュレーション技術を開発した。本技術は,エレベーターやセキュリティゲートなどのビル設備をモデル化し,ビルのエントランスからオフィスの自席までの間,ビル設備を利用する人の移動を予測し,その結果を直感的に理解しやすい三次元アニメーションで確認することを可能にするものである。

本技術の活用例として,従来のエレベーターと行き先階予約システムを導入したエレベーターについて比較評価した結果を図に示す。従来の方式ではセキュリティゲート付近で混雑しているのに対し,行き先階予約システム導入後はセキュリティゲートを通過する際に行き先階別に振り分けられるので,混雑が緩和されていることが分かる。

このように人流シミュレーション技術を活用することで,ビル設備や建築レイアウトの変更の影響度合いを見える化し,設置計画時の関係者間での課題共有を容易にすることで,適切な設置計画の立案に貢献できる。

6. ロボティクスサービスプラットフォーム

6.ロボティクスサービスプラットフォームと卓上型ロボットEMIEW-Cロボティクスサービスプラットフォームと卓上型ロボットEMIEW-C

近年,少子高齢化などに伴う社会課題の解決に向けて,ロボティクスや人工知能を活用した超スマート社会の実現が期待されている。これに対し日立では,顧客との協創を通じて,ロボティクスを活用した新たなサービス事業の創生に取り組んでいる。

2016年に開発したサービスロボットEMIEW3とロボットIT基盤では,事業化に向けた検証を行いながら,機能改善を図っている。また,提供サービスの拡大に向けて,ロボットIT基盤に接続する新たなロボット開発も行っている。その一つとして,カウンターや会議室など卓上での用途向けに,卓上型ロボットEMIEW-Cを開発した。EMIEW-Cは,移動機能をなくし卓上コミュニケーションに特化した構成としたことで低コスト化を図り,EMIEW3と同じロボティクスサービスプラットフォームで動作させることで開発の効率化をねらっている。

今後,実証実験を行いながら,ロボティクスサービス事業の創生および拡大を推進するとともに,ロボットが収集したデータを活用した新たなデジタルソリューションの創生をめざす。

7. 家庭用エアコンの画像処理モジュール

7.家庭用エアコンの画像処理モジュール家庭用エアコンの画像処理モジュール

家庭用エアコンの快適性と省エネルギー性を両立させる画像処理モジュールを開発した。画像カメラは,部屋にいる一人ひとりを識別し,在室時間を把握する人識別機能を提供する。在室時間の情報を用いて一人ひとりの体感温度の変化を予測することで,人が不快と感じる前に気流を制御し,快適性を保つ。さらに,部屋の温度分布を捉える温度カメラや,近赤外線LED(Light Emitting Diode)技術も搭載することで,家具などの位置や形状,天井や床,壁,窓の温度といった室内環境も認識して冷風や温風を効率よく循環させ,家庭用エアコンの省エネルギー運転に貢献する。

8. 生活家電のデザイン改革「Hitachi meets Design PROJECT」

8.社内デザイン改革第一弾アジア市場向け縦型洗濯機(上)と社外協働第一弾グローバル市場向け空気清浄機(下)社内デザイン改革第一弾アジア市場向け縦型洗濯機(上)と社外協働第一弾グローバル市場向け空気清浄機(下)

日立製作所研究開発グループ東京社会イノベーションセンタでは,2018 年 2 月に日立アプライアンス株式会社より発信された「デザイン価値の創造」 宣言と連動して,日立アプライアンスと家電デザイン改革「Hitachi meets Design PROJECT」を推進中である。高い市場競争力と今後の社会潮流に合致した新たなデザイン品質を獲得するために,先行開発を実施してデザインフィロソフィ「Less but Seductive/一見控えめなれど人を魅了するモノのありよう」を策定した。この理念を体現するデザインを順次製品へと落とし込んでいく。

従来より格段に高いデザイン品質を自ら生み出すためのこの社内改革に加え,理念に共鳴する社外著名デザイナーと彼らの名を冠したスペシャルモデルの開発も同時進行させている。社外協働第一弾として,世界的デザイナー深澤直人氏によるグローバル市場向け空気清浄機を 2019 年2月に発売する。さらに第二弾の欧州著名デザイナーとの協働も進めている。

日常でユーザーが製品と接するときに,使い勝手の良さと同時に美しさが感じられ,生活に寄り添い愛着を持って永く使えるデザインをめざして改革を進め,日立の家電デザインを一新していく。

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