日立評論

循環型社会に向けた建設機械の部品再生事業のグローバル展開

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日立評論

日立グループにおける資源循環の取り組み

循環型社会に向けた建設機械の部品再生事業のグローバル展開

ハイライト

建設機械に不具合や故障が発生した場合,故障した部品を現場で取り外し,サービス工場へ持ち込んで分解修理をすると復旧までにかなりの時間を要してしまう。一方,新品部品と交換すると修理費用が高価になり,また故障した部品がそのまま産業廃棄物となってしまう。

これらの問題を解決するのが再生部品である。使用済みの部品を車体より回収し,再生工場での必要な内部部品の交換を経て新品同様の品質と性能を持った部品として再製造・販売することで,早期の機械復旧,修理コスト低減,また産業廃棄物削減を実現する。今後はこの部品再生事業を進化させ,さらなる環境負荷低減と収益性向上,またグローバル化を推し進めていく。

目次

執筆者紹介

渋谷 純Shibuya Jun

  • 日立建機株式会社 ライフサイクルサポート本部 部品事業部 再生センタ 所属
  • 現在,再生事業のグローバル化に従事

1. はじめに

現在,数多くの建設機械が世界中の過酷な現場で稼働しており,都市開発や資源開発などにおいて必要不可欠な設備となっている。この建設機械が故障して稼働を停止すると現場自体が止まってしまうため,いかなる場合でも早急に機械を復旧させるということは各建機メーカーにとって顧客満足度向上のための非常に重要な課題となっている。

機械の復旧に関しては壊れた大物部品(エンジン,油圧シリンダやモータなど)を取り外し,サービス工場での修理を経て,再び車体まで運んで取り付けるというのが一般的ではあるが,この場合,壊れている箇所の特定から修理に必要な部品の入手に時間を要し,早急な車体復旧が難しい。一方,新品の大物部品を壊れたものと交換すると車体の復旧までの時間が大きく低減できるが,一般的に新品部品は高価であるため,低コストで修理を行いたいという顧客要望には応えられず,また交換済みの部品はそのまま産業廃棄物となってしまう。

これらの問題を解決するものが再生部品である。再生部品とは図1に示す厳密な作業工程を経て,使用済み部品を新品と同等の機能を持つ部品として再製造したものである。

再生部品は新品部品の6〜7割程度の価格で顧客に販売されるため,修理コストを低減でき,また壊れた大物部品と現場で交換することで機械復旧時間を大きく短縮するため,顧客満足度の向上において重要な役割を果たす。また壊れた部品を再利用するため,産業廃棄物の量を大きく減らし,環境負荷低減に貢献するものとして評価されており,2018年には日立建機株式会社として「資源循環技術・システム表彰 経済産業省産業技術環境局長賞」と「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰 リデュース・リユース・リサイクル推進協議会会長賞」を受賞している。

図1|再生部品の製造工程使用済み部品を回収後,分解や検査などのプロセスを経て新品同様の性能を持つ部品として再製造される。

2. 日立建機のグローバル再生事業について

図2|再生部品の主なラインアップ建設機械を構成するコンポーネントの中で,再生品として供給している主要部品を示す。

日立建機グループは現在,日本,オーストラリア連邦,インドネシア共和国,ザンビア共和国,中国,インド,米国に再生工場を有している。各地の再生工場で取り扱う部品には地域特性があるが,グループ全体で見た場合,再生部品として図2に示すコンポーネントを主に取り扱っている。

超大型ショベル,ダンプトラックと呼ばれる車体の部品は1点1点のサイズが非常に大きく重量がある。再生部品として取り扱っている品目のうち,一番重いものはダンプトラックの走行減速機でその重さは12 tある。これは一般的な軽自動車12〜13台分の重さに相当し,このような大型部品を再生することで大きな省資源,廃棄物減量効果を実現している。これ以外にも多くの部品を捨てずに再使用する技術を保有しているため,スクラップ量を大幅に削減しており,日立建機グループ再生事業全体で見ると年間約2,900 t1)の廃棄物減量効果がある。

経済的な効果も大きい。顧客にとっては最新の再生技術で製造された高機能の製品を手頃な価格で購入できるため,特に再生工場を有するオーストラリア,インドネシア,ザンビアで稼働している超大型ショベル,ダンプトラック用の再生部品は需要が旺盛であり,2018年度はこの3か国で約170億円の再生部品売上を記録し,またこの3か国を含めたグローバルでの再生部品の売上高は約208億円であった。また余計な産業廃棄物を出さなくなるため,廃棄物処理の費用を大きく抑えられるというメリットもある。

3. 再生事業の課題と対策

3.1 再生工場のない国と地域への再生部品供給

再生事業は環境的にも経済的にも効果が大きいが,このような再生ビジネスモデルを構築するには状態の良い使用済み部品の確実な回収が必要不可欠である。使用済みの部品が回収できない場合,また大きく破損して再利用が不可能な部品しか回収できない場合,再生事業は成立しない。現在,日立建機グループの再生事業において,再生工場を有する前述の国と地域では顧客も再生事業の仕組みを理解し,再生部品を購入した際には使用済みの部品を返却するというフローが確立している。

一方,再生工場を有しない国と地域においては,再生部品販売後,国境をまたいだ使用済み部品の回収に関して輸送費や関税などのコストアップが避けられず,また再利用可能な部品を返却しなければならないという顧客意識も根付いていないため,これまで再生事業は積極的に展開されてこなかった。

この課題を克服し再生部品のグローバル供給を行うため,まずグローバル展開している物流業者と協業し,国境をまたいで使用済み部品を回収する際の仕組み作りを推し進めている。例えば日本製の再生部品をヨーロッパ市場に供給した際は,日立建機ヨーロッパ統括会社で各代理店から回収すべき使用済み部品の数を管理して回収し,それを物流会社へ引き渡し,輸送費用低減のためにコンテナで一括して日本へ返却するという運用を開始した。東南アジアでは物流会社と契約を結び,再生部品を販売した各国からの使用済み部品を回収し,再生部品製造工場へ返却するという業務をアウトソーシングする方針で進んでいる。

顧客に対しては,再生部品の販売促進活動を進める過程で,再生部品を使用するメリットと,コアの返却の重要性を理解してもらうための啓発活動を,各種資料を準備して進めている。

3.2 加工修理技術のさらなる開発と部品の再利用判定技術の向上

再生部品は顧客にとって低コストで,かつ新品と同等の性能を持つものでなければならない。これを実現するためには,同じ部品を繰り返し使用して再生を続け,製造コストを下げる必要があるが,一方で同じ部品を使い続けることで各部品が金属疲労などにより使用中に破損してしまうリスクが高まり,新品同等の性能品質を維持することが難しくなるというジレンマを抱えている。この課題を解決するものとして加工修理技術の開発と再利用判定の精度向上の2点を進めている。

長時間使用された部品には摩耗や小さな亀裂などが見られることがある。そのような部品を再利用すると機械の故障につながるリスクがあるため,少しの摩耗や亀裂でもスクラップ処理せざるをえない部品が多々あり,これらを再利用できるようにする加工修理技術の開発は大きな課題であった。現在はこの加工修理技術の開発を開発ロードマップに従って進めており,再利用可能な部品の種類を増やし,世界中の再生工場で製造コストを下げ,かつ新品部品と同等の機能を持つ再生部品の製造を実現している(図3参照)。まだ開発途中もしくは実機検証中の新技術があるため,今後もこれらの実用化をめざし加工修理技術の向上を実現していく。

また長時間使用された歯車部品など,摩耗や亀裂などの変化が認められなくても金属疲労などで破損するリスクが徐々に高まる部品も存在している。このような見た目から故障リスクの有無を判断できない部品については,再利用の可否を明確に判断する基準が存在せず,再生部品の品質保持の観点からスクラップ処理で対応していた。そこで現在,国立研究開発法人産業総合研究所などの研究機関と共同で,非破壊で組織的な変化や硬さ,残留応力といった機械的性質の変化を捉え,信頼性の高い余寿命予測・再利用判定を行うための技術開発を進めている。

これらの研究開発は産業廃棄物を削減し循環型社会を実現するうえで非常に重要であり,1日でも早い実用化が期待される。

図3|新しい再生技術の開発事例故障頻度や経済性を調査し優先順位を決め,同じ部品をより長く安全に使用するための対策を考案している。

4. 日立建機のめざす未来の再生事業について

欧州において循環経済(Circular Economy)政策が法規制に盛り込まれ始めるなど,今後グローバル規模で循環型社会の構築という潮流は進むと思われる。この流れの中でメーカーとして使用済み部品を回収し,再び製品を生み出すという再生事業の担う役割は大きくなっていき,具体的には現在よりさらに多くの国や地域へ再生部品の安定供給を行う必要が出てくると想定される。再生部品の販売は部品の単なる安売りではないため,再生部品の供給量が増えれば増えるほど,回収しなければならない使用済み部品の数も世界の各国と地域で増加していくが,現時点ではその確実な回収を行う世界的な基盤整備はまだ不十分である。将来的にはどの国と地域に未回収の部品がいくつあるのかを一元的に管理する仕組みも構築していく必要があり,また安定的に再生事業を継続していくためには,顧客に対し資源循環や地球環境保全を訴えるだけではなく,再生部品が魅力のある製品であり続ける必要がある。安価に再生部品を供給するための製造コスト削減,新品同様の品質,必要な時に必要な再生部品がすぐに入手できるという顧客の視点に立った施策を推進していきたいと考えている。

5. おわりに

本稿では,現場で稼働する建設機械から部品を回収し,新品部品と同等の性能を有する部品として再製造し販売するという再生事業について述べたが,この事業が引き続き循環型社会という新たな仕組みの中で競争力を保持しグローバル展開していくためには,一企業単体の取り組みでは限界がある。日立グループの持つ技術や知見,サプライチェーンを活用し,今後はより広範囲かつ広角的な事業として再生事業を推進していく。

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