日立評論

情報・通信機器の回収サービスおよびリサイクル技術

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日立評論

日立グループにおける資源循環の取り組み

情報・通信機器の回収サービスおよびリサイクル技術

ハイライト

日立グループは,国際連合が掲げるSDGsの17の目標のうち,12番目の「つくる責任つかう責任」に着目し,企業の社会的責任の観点から製品のリサイクルと枯渇する資源の有効利用(資源循環)を実施している。

IT機器事業においては,資源有効利用促進法に基づき,環境省の産業廃棄物広域認定制度を利用して,全国から使用済み製品の回収および資源の循環的利用に取り組んでいる。IT機器にはHDD搭載製品が多いため,情報漏洩防止の管理を徹底し,機能破壊した後にHDDに含有されるネオジムなどの希少金属についても,日立グループ内で資源循環している。ここでは主にATMなどのIT機器を対象とした循環スキームおよびリサイクル技術について紹介する。

目次

執筆者紹介

根本 武Nemoto Takeshi

  • 日立製作所 水・環境ビジネスユニット 水事業部 サービス事業推進部 所属
  • 現在,資源循環の企画・開発・事業化に従事

松本 伸生Matsumoto Nobuo

  • 株式会社日立産機中条エンジニアリング エンジニアリング事業部 環境サービス部 所属
  • 現在,株式会社日立産機中条エンジニアリングの環境事業および営業に従事

川上 信彦Kawakami Nobuhiko

  • 東京エコリサイクル株式会社 所属
  • 現在,東京エコリサイクル株式会社の事業経営に従事

左近 政美Sakon Masami

  • 日立製作所 システム&サービスビジネス統括本部 環境推進本部 製品回収サービスセンタ 所属
  • 現在,日立製作所他16社で取得した環境省の産業廃棄物広域認定制度による使用済み製品のリユース・リサイクルサービスに従事

四家 正喜Shike Masaki

  • 日和サービス株式会社 環境事業本部 所属
  • 現在,日和サービス株式会社の環境技術および事業開発に従事

1. はじめに

図1|主な資源の可採年数(確認埋蔵量÷年間生産量)約10年前の試算と比べると,大半の資源において可採年数が減少している。銅は当時の調査データよりも確認埋蔵量が増えたため,可採年数も上がっているが,年間の生産(消費)量は10年前比で1.3〜1.4倍に上昇している。

モノづくりに欠かすことのできない石油や鉱石などの地下資源には,世界の経済発展に伴って生じる資源消費の高まりによる,価格上昇などの調達リスクが存在している1)(図1参照)。地下資源の少ない日本の製造業にとって,鉄や銅などのベースメタルやプラスチックなど,原料の輸入が滞ることによる影響は大きい。

日立グループは,2000年前後に制定された特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)や循環型社会形成推進基本法を契機として,資源循環の取り組みを加速させている。具体的には,廃棄物の処理及び清掃に関する法律の改正(2003年)によって制定された環境省の広域認定制度2),※)を利用し,IT機器の自主的な回収・資源循環に力を入れている。IT機器の多くに搭載されているHDD(Hard Disk Drive)にはネオジムなどのレアアースが含まれており,1台当たりの含有量は数グラムとわずかであるが,むだなく回収し,資源循環を行っている。

ネオジムやジスプロシウムなどのレアアースは今後のモビリティ社会や省エネルギー・省資源社会を支えるうえで重要な資源であるが,地下資源が偏在するため,資源ナショナリズムや投機的な影響などの観点から,こうした資源の安定的な確保には依然として課題が残っている。このため日立グループでは,2008年からレアアース磁石を使用済み製品から選別・回収し,磁石メーカーの磁石製造工程に原料の一部として循環している。このような取り組みが評価され,2018年に株式会社日立産機中条エンジニアリングおよび東京エコリサイクル株式会社の2社が,「平成30年度3R(リデュース・リユース・リサイクル)推進功労者等表彰」において経済産業大臣賞を受賞している。

ここでは,その受賞内容でもあるIT機器の回収スキームとリサイクル技術について述べる。

※)
製造者などが廃棄物を広域的に回収・処理することを認める特例制度。

2. IT機器の製品回収サービス

日立グループでは企業の社会的責任を果たすべく,使用済み製品の回収・リサイクルの徹底による資源の循環的利用を推進している。製品回収においては,日立製作所システム&サービスビジネス統括本部の環境推進本部に製品回収サービスセンタを設け2),製品の回収業務を行っている(図2参照)。

このスキームは日立製作所および関連する17社の約100種類の製品を全国的に取り扱いできるよう,環境省の産業廃棄物広域認定を取得したうえで運営している。取り扱った製品は2014〜2018年度の5年間で,ATM(Automated Teller Machine)やサーバなど約500 tに上り,そのうちHDDは約10 t(約2万台分相当)であった。

こうした制度を利用し,関連会社の製品も対象に含めて一体的に運営することで,日立グループのIT機器の大半を網羅し,顧客からの要望範囲を拡充させるとともに,資産廃棄時に生じる廃棄物管理業務の負担を軽減してきた。また図3に示すとおり,日本全国の回収・リサイクル網を整備し,分別後の有用資源や廃棄物のトレース方法も標準化したことで,どこでも同レベルのサービスを提供できる安全・安心な廃棄物ソリューションを実現した。特に廃棄物トレースについては委託先や二次排出先監査を徹底し,顧客の立場になって運営にあたっている。

図2|製品回収サービスセンタの役割持続可能な社会の実現に向けて,使用済みとなった自社製品を回収し,全国一律の処理方法(セキュリティ管理や再資源化手順など)を推進する。

図3|日立グループのIT機器の回収・リサイクル網顧客の資産廃棄に対し全国11社12拠点の認定施設で確実な廃棄・リサイクルサービスを提供している(2019年4月時点)。

3. ATMの徹底的なリサイクル

図4|ATMの回収・リサイクル実績(上)と機器の保管・点検の様子(下)2007年から日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社による自主回収を開始した。図中の数値には,2014年から日立製作所の自主回収分を合算している。回収したATMは,機種,年式ごとに整列保管し,順次手作業による分解を行う。事前に日立オムロンターミナルソリューションズと連携し,取り出す部品情報を得ている。

IT機器の中でもATMはセキュリティ性が高い製品のため,製造者である日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社との情報共有が重要である。日立産機中条エンジニアリングはかつて日立製作所がこの地(新潟県胎内市)でATMなどを製造していた歴史を受け継いでおり,今でもATMの構造を深く理解した技術者が残っている。日立オムロンターミナルソリューションズと日立産機中条エンジニアリングはそのような関係性から,2007年以降,密接に協調してリユース・リサイクルの取り組みを進めている。日立産機中条エンジニアリングには,日立グループ広域認定ルートで回収されたものおよび日立オムロンターミナルソリューションズが独自に回収したものを合わせて年間約2,000台の使用済みATMが搬入される(図4参照)。

日立産機中条エンジニアリングでは,製造年式,機種ごとに分解方法や手順を考慮し,機器をグループ分けしたうえで分解作業に取り掛かる。極力,単一素材に近い形に分類し,その先の資源循環を効率的に進めるため,分解作業は手作業で行われる。近年では,部品などを整備し,新品に近い状態とするリファービッシュへの対応も視野に入れて取り組んでいるため,手作業での丁寧な分解工程は重要性が増している。

現時点ではまだ保守部品的な用途(リユース)が多いが,これまでに部品点数で約20点,部品総数としては約7,000点を有効利用してきた。製品自体が時代の変化や新紙幣導入などによって仮に10年で寿命を迎えたとしても,部品によってはまだ使えるものも多い。製品設計に取り入れた環境配慮設計DfE(Design for Environment)を基に,リファービッシュ・リユースの適用拡大は今後も推進していく必要がある。

3.1 ATMの部品リユース効果

洪水や地震などの自然災害が発生した場合において,社会インフラの基礎を担うIT機器の機能維持は,水道水や電気などのライフラインと同様に重要である。2011年の東日本大震災の際,銀行,郵便局,コンビニエンスストアなどに設置された数百台のATMが水没などの被害を受け,一時利用できなくなった。その際,注目されたのが使用済み製品からの部品融通である。当時,日立産機中条エンジニアリングは日立オムロンターミナルソリューションズの要請により,供給に時間のかかる新品部品に代わって使用済み製品の部品を復旧に充てるべく備えを進めた。使用済み製品から再利用可能な部品を取り出して復旧に役立てるという発想は,同年にタイで発生した洪水被害の際に初めて機能し,迅速な復旧に貢献した。部品1点当たりの重量が軽いため,資源の節約や新品部品製造のためのエネルギーの削減といった観点では,部品リユースの効果は大きくないが,有事の際のバックアップ対応にも有効な手段であることが分かった。これは,使用済み製品の中にもまだ使えるものがあるといった部品リユース・リファービッシュの思想から生まれた副次的効果である。

3.2 ATMの資源リサイクル

資源リサイクルは,限りある地下資源の有効利用に直接的に貢献することが可能である。ATMは構造上,鉄素材が多く使われており,回収できる部材のうち全体の約9割を鉄が占めている(表1参照)。ほかに制御基板やケーブル類など,タッチパネル部のガラス素材以外のほとんどの素材が国内資源循環に貢献している。

図5に鉄の資源循環模式図を示す。このようなショートループの国内資源循環によって,海外から輸入する鉄鉱石の消費を抑えるだけでなく,エネルギー消費の面でも,LCA(Life Cycle Assessment)の計算上,鉄鉱石から鉄を製造する場合と比較して約1/3のエネルギー消費で済むことになり,鉄は高度循環社会の実現に欠かせない模範的資源であると言える3)

ATMには他にも銅やアルミニウム,プラスチックなどが使われているが,すべての素材が鉄のように有効利用できているとは限らない。例えばプラスチックの場合,焼却時の熱利用および焼却灰の骨材利用を徹底しており,これは単なるリサイクルという観点からは適正であっても,線形経済(Linear Economy),すなわち一方通行のリサイクルである。数値のうえでは,ATMに使用されるプラスチックのリサイクル率は99%[(有価物量+再資源化物量)/処理量]となっているが,今後は循環経済(Circular Economy)を意識し,より高度な循環社会に対応した資源循環に取り組むことが必要である。

表1|ATMの構成表の例リサイクル率は(有価物量+再資源化物量)/全重量で計算している。

図5|鉄の資源循環工程資源循環は,天然資源の乏しい日本にとって,資源の消費を抑えることのできる有効な手段である。

4. HDDの効率的なリサイクル

国内の日立グループではATMやその他のIT機器から回収したHDDをすべて東京エコリサイクルに集約し,まとめてリサイクルしている。またHDDは,日立グループの各製造事業所などの環境管理業務を担う日和サービス株式会社と連携し,各事業所などから廃棄されるPC類を主としたIT機器からも集めている。日和サービスは日立グループの事業所が多数存在する茨城県および神奈川県に拠点を有しており,福祉リサイクル事業の一環として地元の社会福祉施設と連携し,回収したPC類の分解作業において知的障がい者の雇用も行っている。事業を開始した2013年度以来6年間にわたり,全国の回収拠点から収集するHDDは年間10万台に上っている。

4.1 HDDリサイクル技術

HDDをリサイクルするうえで重要なのは経済性と品質である。HDDを図6(左)に示す部品ごとに手分解すると,作業者が一人の場合1時間当たり10〜12台しか処理できないが,東京エコリサイクルでは,2009〜2011年に経済産業省および国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO:New Energy and Industrial Technology Development Organization)の補助金によって日立製作所が開発したHDDの自動分解装置を用いて,作業者一人につき1時間当たり約140台と効率的な処理が可能である4)

この装置は,ネジ締結構造であるHDDの特性を生かし,HDDに衝撃と振動作用を加えネジを緩ませて部品ごとに自動的に分解するものである。図6(右)に示すとおり,衝撃の強さと振動数については分解成功率が最も高くなる組み合わせを選定している。本装置の最大の特長は,衝撃を加える際に焼結体のレアアース磁石が粉々になることを避けるための通過孔である(図7参照)。この通過孔を設置したことにより,HDDから離脱した磁石を選択的に回収する仕組みとした。

磁石が損傷し粉状になると,自然発火の危険性や不純物混入によるその後の磁石再生工程への影響が懸念されるが,この機能により磁石に損傷を与えることなく,ほぼ原形のまま回収できる。

図6|HDD分解後の状況HDDはすべての部品がネジ(ビス)締結構造のため,手作業で分解可能である(左)。自動分解装置で同じ数の部品を処理する場合,処理能力は手作業の10倍以上にもなる。装置に投入されたHDDは,投入後10〜20分では大半が原形を維持しているが,時間経過に伴ってネジが緩み,部品が外れ始め,40分後の分解成功率は95%以上となる(右)。

図7|HDD自動分解装置の内部機構説明図装置は回転する内壁と外壁で構成されており,VCMのレアアース磁石部品が外れた時点で磁石通過孔を通過して外壁から回収する仕組みである。

4.2 レアアース磁石リサイクルによる効果

こうしてHDDから回収した磁石は,2013年度からの6年間で約26 tに及ぶ。2018年度より取り組みを始めたMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像診断装置)用レアアース磁石も含めれば,同年度の磁石の回収量は1年間で約25 tとなり,HDD用磁石6年分に相当するレアアース磁石を1年で回収・資源循環したことになる。レアアースの資源循環は鉄資源のリサイクルと同様,エネルギーの消費削減につながる。これは,資源採掘・精製から原料の海上輸送,および国内輸送・磁石製造に関わる一連の工程で排出される地球温暖化ガスの中で最も影響度の高いCO2の排出量削減にもつながる。LCAソフトMiLCA(Multiple Interface Life Cycle Assessment)5)のインベントリデータで計算したCO2削減量を図8に示す。同じ重量のレアアース磁石を鉱物資源から製造する場合に比べ,東京エコリサイクルで回収した1年間のレアアース磁石量(約25 t)を国内資源循環により再利用した場合はCO2排出量が1/10以下になることが分かった。

従来,HDDなどの製品に組み込まれていたレアアースは回収されず,貴重な資源がむだになっていたが,独自に作り上げてきた循環スキームや回収技術などにより,現在日立グループでは,自ら調達するレアアース磁石の約10%相当量を資源循環によって賄うことができる。環境負荷低減に対する貢献が一義的な目的ではあったが,使用済み製品の回収施策や装置の無人化などの対策によって,その後,サプライチェーンを通じてレアアース磁石を経済的に循環できるようになったため,現在もこのスキームを継続して運用することができている(図9参照)。

図8|レアアース磁石の資源循環による二酸化炭素削減効果計算レアアース磁石を地上資源として国内で再利用することにより,従来製法に比べCO2の発生量を1/10に抑えることができる。

図9|レアアース磁石資源循環サプライチェーン今までの製造から廃棄まで直線的(Linear)な流れから,今後は資源の循環的(Circular)利用によって,廃棄するものを少なくし,付加価値の違う方法(部品・素材リユース,原料リサイクルなど)をバランスよく取り入れる。このように製品の長寿命化,省資源化につなげ,人と自然が共生できる高度循環社会をめざす。

4.3 今後の展開

今後はリサイクル対象として取り扱う製品や循環する部品,素材の範囲を広げ,環境負荷低減に努めると同時に,資源の乏しい日本でも製造業が持続的に発展する方策を示していくことが重要である。取り扱う製品を拡大していくことによって,分解の際,手作業では困難な細かい作業を求められるものや,設計情報に基づく適正な位置情報が必要になってくるものもある。HDD自動分解装置による省人化技術は,安全や品質の面からも今後さらに必要性が増していくと考える。この技術は,すでにスマートフォンなどの携帯端末のリサイクルにも生かされており,日立グループにおいて使用済みとなった携帯端末の一部は,無人の自動分解装置でリサイクル処理されている。今後はAI(Artificial Intelligence),IoT(Internet of Things)技術なども駆使して,労働者不足の打開にもつなげていく考えである。

5. おわりに

本稿では,資源を大量消費する時代から持続可能な社会・自然共生時代への転換を見据え,循環経済を意識した資源の効率的利用の事例について述べた。これらは,メーカー系静脈産業(資源循環産業)の強みを生かし,設計情報を活用した連携を行ってきた成果である。資源循環は素材メーカーからの需要も高く,地域性や経済性などの面から外部連携(信越化学工業株式会社など)も重要な要素である。

SDGs(Sustainable Development Goals)12番目の目標である「つくる責任つかう責任」に加え,17番目の目標「パートナーシップで目標を達成しよう」についても貢献するべく,今後は日立グループ内のサプライチェーン連携,およびグループ外のパートナーシップにより,効率的な資源循環を実践していく所存である。

謝辞

本稿で述べた技術開発は,経済産業省「平成21年度新資源循環推進事業費補助金(高性能磁石モータ等からのレアアースリサイクル技術開発)」ならびに2011年度の国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「希少金属代替材料開発プロジェクト(レアアース磁石利用製品からの磁石分離およびレアアース回収技術の開発)」の助成事業によって推進したものである。また本稿で述べた取り組みは新潟県環境会議廃棄物減量化・リサイクル部会において評価され,「平成29年度新潟県優良リサイクル事業所表彰」を受賞した。翌年,新潟県からの推薦もあり「平成30年度3R(リデュース・リユース・リサイクル)推進功労者等表彰」において経済産業大臣賞を受賞した。関係各位に深く感謝の意を表する次第である。

参考文献など

1)
U.S. Geological Survey: Mineral Commodity Summaries 2018, U.S. Geological Survey(2018.1)
2)
日立製作所,製品回収による貢献
3)
根本武,外:CO2削減・循環型社会の実現をめざすリサイクル技術,日立評論,90,5,434-437(2008.5)
4)
根本武,外:産業の持続的発展を支える資源リサイクルへの取り組み,日立評論,93,5-6,430-435(2011.5)
5)
一般社団法人産業環境管理協会:MiLCA(Multiple Interface Life Cycle Assessment)
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