日立評論

多様化するライフスタイルに寄り添う新たな価値の創出

QoLを高める生活ソリューションカンパニーをめざして

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日立評論

Overview

多様化するライフスタイルに寄り添う新たな価値の創出

QoLを高める生活ソリューションカンパニーをめざして

ハイライト

デジタル技術を活用したイノベーション創出が急速に進行し,新しい商品やサービスが次々と誕生する中,世界の人々のライフスタイルの多様化が加速している。その一方,複雑な社会課題が次々と顕在化しており,それらに対する対応が求められている。

日立コンシューマ・マーケティング株式会社と日立アプライアンス株式会社が合併し,新たに発足した日立グローバルライフソリューションズ株式会社は,「ライフ」分野でデジタル技術を活用し,お客さまひとりひとりに寄り添い,生活課題を解決する商品・サービスの提供を通じて,お客さまのQoLを高める生活ソリューションカンパニーをめざしていく。

目次

執筆者紹介

松村 俊之Matsumura Toshiyuki

  • 日立グローバルライフソリューションズ株式会社
  • 事業戦略統括本部 ブランド・コミュニケーション本部
  • 広報・CSR部 所属
  • 現在,経営案件・商品のメディア向け広報活動に従事

1. はじめに

2019年4月,日立グループが今後注力する「ライフ」分野において,デジタル時代の家電・空調事業をリードする新会社「日立グローバルライフソリューションズ株式会社」を設立した。新会社は日立コンシューマ・マーケティング株式会社と日立アプライアンス株式会社の合併により発足したものである(図1参照)。

近年,デジタル技術を活用したイノベーション創出が世界中で急速に進行し,新しい商品やサービスが次々と誕生している。またSociety 5.0やSDGs(Sustainable Development Goals)の実現に向けた取り組みなど,複雑な社会課題の解決をめざす世界的な潮流も日々変化している。こうした中,世界中のお客さまのライフスタイルの多様化も加速している。

これまでのプロダクトアウト型ビジネスモデルの時代では販売会社と製造会社の2社体制が機能してきたが,今後マーケットイン型を指向するにあたり,一体運営が最適との判断となった。また,事業推進にあたってもスピード感が従来に増して重要となっており,新会社へのトランスフォーメーションを図るべきタイミングでもあった。

今回の合併により,意思決定はもちろん,商品やソリューション・サービスの提供スピードを加速させるとともに,日立グループにおいてお客さまの暮らしに最も近いポジションを生かし,「ライフ」分野でデジタル技術を活用した商品・サービスを提供していく。そして,それらを通じて,お客さまの多様化するライフスタイルに寄り添い,生活課題を解決することにより,お客さまのQoL(Quality of Life)を高める生活ソリューションカンパニーをめざしていく(図2参照)。

図1|家電事業の歩み日立コンシューマ・マーケティング株式会社と日立アプライアンス株式会社の合併により新会社を設立した。

図2|日立グローバルライフソリューションズ株式会社のめざすところお客さまのQoLを高める生活ソリューションカンパニーをめざす。

2. モノづくりへの取り組み

日立は2006年から基本機能である省エネルギーの追求を前提に,オンリーワンの機能を開発し,お客さまにとって「魅力ある価値」を提供することで生活にイノベーションを実現できる商品をめざして,プレミアム戦略を展開してきた。

この「プレミアム戦略」における商品開発の経験から,日立はお客さまの家電に対する普遍的ニーズについて図3のように捉えている。

図3|お客さまのニーズ大切なのは,潜在ニーズをいかに捉えるかである。

図4|ヒートリサイクル 風アイロン ビッグドラム BD-NX120C「風アイロン」でアイロンがけの手間を減らす。

図5|新たなスローガンお客さまに真に寄り添い,新たな価値を提供する企業をめざす。

この四種の普遍的ニーズは,大小の変化はあるが常に存在し,その中で「経済性」と「健康・安全性」は共通の基盤であり,常に確保し追求する必要がある。「利便性」と「快適性」についても,多様化するお客さまのニーズに応えるべく,高い技術と独自性のあるアイデアで実現することで,より多くのお客さまに満足いただける製品の提供をめざしてきた。

例えば,洗濯機では乾燥時に風の力でしわを伸ばす「風アイロン」や,洗濯槽に汚れが付く前にきれいな水で洗い流す「自動おそうじ」,冷蔵庫は真空の力で食品の酸化を抑制して鮮度を保つ「真空チルド」,エアコンではセンサーで部屋や人・家族を検知して快適な空調を実現する「くらしカメラ」など,お客さまの視点に立った「魅力ある価値」を提案してきた(図4参照)。

近年の超高齢化,少子化,単身世帯や2人の少人数世帯の増加などの社会構造の変化から,お客さまの暮らしや家電に対するニーズも大きく変わってきている。中でも,女性の社会進出とともに急増している「共働き家庭」など,生活の変化からくる「お客さまの多様化,ニーズの多様化」が製品開発を進めるうえで重要な要因となってきている。このような社会構造の変化については,日本は特に顕著であるが,グローバルに見ても共通の課題と言える。

このような社会構造の変化に対し,これまでのプレミアム戦略をさらに進化させ,多様化するお客さまのニーズに応える新たな取り組みに合わせて,スローガンを「360°ハピネス〜ひとりひとりに,うれしい暮らしを〜」とし,さらなる「魅力ある価値」の提供をめざして製品開発をスタートした(図5参照)。

お客さまひとりひとりの声に真摯に耳を傾け,くらしに寄り添うことで,生活の中の課題を掘り起こし,高い技術と独自のアイデアで解決する,お客さま中心の開発へと変わることをめざしている。同時に,これまで培ってきたモノづくりの力とデジタル技術で家電に新しい価値を創生することを目標に,ソフトウェアによってお客さまの生活,使い方に合わせて進化する家電として「コネクテッド家電」の製品化も進めている。

家電においても,製品だけでなくデジタル技術や各種サービスの提供を通じて,多様化するニーズに応えることが重要となっている。お客さまの生活課題を解決するソリューションを提供するにあたって,お客さまの生活実態やお客さま自身も気が付いていない潜在的なニーズの発掘を行うなどの従来の手法はもちろん,これらの手法にとどまらず,将来在るべき姿を描くことで先回りして課題を抽出し,解決するアイデアや技術を蓄積しておくことが求められている。将来の生活や人々の意識変化などを描くことで,そこから「バックキャスト」して製品,機能,サービスアイデアを創生する「ビジョン商品計画」も新たな手法の一つとして取り組みを始めた。

また,グローバル市場における商品開発においてもお客さま視点での発想や,地域によって異なる生活形態や習慣,フードチェーン・コールドチェーンなど家電開発にとっての必須要素の調査,分析がますます重要になってきている。そこで,日本国内で行ってきたお客さまの意見や行動,意識を調査する生活ソフト開発センタと同じ機能を持つ組織を,2017年4月にタイ王国のHCPT[Hitachi Consumer Products(Thailand), Ltd.]内に新設し,各国のお客さま視点での開発を進めている。

3. 各分野の取り組み

本特集では,お客さまの生活の変化に対応する商品やソリューションの開発などについて,各論文で紹介する。それぞれの概要について,以下に述べる。

(1)ひとりひとりに寄り添う商品開発
事業スローガン「360°ハピネス〜ひとりひとりに,うれしい暮らしを〜」に基づく商品展開の中から,IHクッキングヒーターとロボットクリーナー,冷蔵庫「ぴったりセレクト」,コードレススティッククリーナー「ラクかるスティック」,「AIお洗濯」搭載のタテ型洗濯乾燥機「ビートウォッシュ」,凍結洗浄 ファンロボ搭載のルームエアコン「白くまくん」Xシリーズについて紹介する。また,海外ではタイに設立した「グローバル商品開発センタ」の活動事例として,東南アジア向けの縦型洗濯機の開発プロセス,販売戦略を紹介する。
(2)カスタマイズ,自動化,使いやすさでQoL向上をめざす家電開発
実際に使用するお客さまひとりひとりに寄り添い,生活課題を解決し,QoLを高める技術の具体的な研究開発事例として,冷蔵庫のカスタマイズのための新規構造に対する解析主導設計,掃除機の使い勝手を向上させる軽量化と吸込み力の強化,洗濯乾燥機の状態に合わせて自動で洗い方を制御する「AIお洗濯」と洗剤・柔軟剤の自動投入機能,ルームエアコンのファンに蓄積するホコリを自動で洗浄する「凍結洗浄 ファンロボ」について紹介する。
(3)高度循環社会をめざす家電リサイクル
日立グループは家電リサイクルにいち早く取り組み,政府の指導と業界の協力を得ながら技術開発を推進させるとともに,自らリサイクル事業に参画してきた。また,家電リサイクルで再商品化したプラスチックの家電への再利用にも取り組んでいる。この論文では,家電リサイクル実証プラントで構築したリサイクル技術をベースに進めている環境先行開発の一例として,グラスウール除去装置について紹介する。
(4)「exiida遠隔監視-予兆診断サービス」の展開
空調・冷凍設備の大量の稼働データを収集・分析することで,故障に至る前の予兆を検出し,故障停止前に保全を行う「exiida遠隔監視-予兆診断サービス」の提供を開始した。この論文では,快適な環境の維持・事業上の損失の低減などの経済的価値とともに,冷媒(フロン)の排出抑制による環境負担軽減,夏季に集中するメンテナンス業務の平準化による現場の作業者不足解消といった社会的価値を提供する予兆診断技術の開発状況とサービスの概要を紹介する。
(5)再生医療市場に向けた空調ソリューション
これまで培ってきた温度・湿度・清浄度・室圧を高精度に制御する技術を応用し,再生医療分野における細胞加工施設の空調ソリューションを提供している。この論文では,ソリューションの概要ならびにクリーンルームの特徴,他社との協創とともに「再生医療イノベーションセンタ」について紹介する。
(6)日立GLSにおけるIoTを活用した家電モノづくり改革
工程の中の価値を生まない動作,仕掛りや停滞の削除や改善といった「ムダ取り」,セルの自動化と工程間をつなげた全体最適化などをめざし,モノづくり改革を進めている。この論文では,見える化・つながる化・脱属人化をコンセプトにIoT(Internet of Things)システムを活用してTSCM(Total Supply Chain Management)の強化に向けた取り組みを紹介する。

4. おわりに

日立グローバルライフソリューションズ株式会社は今後,これらの取り組みをはじめとして,お客さまに寄り添いお客さまの生活課題を独自のアイデアと技術で解決することで,お客さまのQoLを高める生活ソリューションカンパニーをめざす。また同時に日立グループが「2021中期経営計画」で掲げる「社会価値」,「環境価値」,「経済価値」の向上に貢献する商品・サービスの開発に取り組んでいく。

参考文献など

1)
石井𠮷太郎:何をつくるのか−お客さまの潜在ニーズを形に 家電品開発へのこだわり,日立評論,91,04,338〜343(2009.04)
2)
渡辺克行,外:ユーザーニーズに応えるための進化−暮らしを変える技術開発−,日立評論,92,10,726〜733(2010.10)
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