日立評論

社会に資する新たな価値を届ける生活ソリューション

ライフデータを活用して,未来の幸せを形づくる

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社会に資する新たな価値を届ける生活ソリューション

ライフデータを活用して,未来の幸せを形づくる

ハイライト

2019年4月1日,家庭と生活に関わりの深い日立グループの2社が統合し,新会社として日立グローバルライフソリューションズが誕生した。同社は,日立が5月に発表した「2021中期経営計画」の達成に向けた注力5分野のうち,「ライフ」ソリューションセクターの一翼を担い,家電や空調などのプロダクトやサービス,ソリューションを通じて,誰もが暮らしやすいまちづくりの実現に向けて,取り組みを加速しているところだ。新会社設立とともに取締役社長に就任した谷口潤が,日立グローバルライフソリューションズの位置づけと経営ビジョン,自らの役割について語った。

目次

ライフデータの活用で新たなソリューションを

日立グローバルライフソリューションズは,社会イノベーション事業を推進する日立グループの中にあって,非常にユニークな存在と言えます。なぜなら,生活に身近な冷蔵庫や洗濯機などの家電や空調ソリューションの開発,販売,サービスなど,コンシューマーにプロダクトやサービスを提供するビジネスを通じて,生活者とダイレクトに接点を持ち続けてきた数少ない事業体だからです。つまり,「人々の暮らしに寄り添う」,「人とつながる」,「人と人をつなげる」といった,ヒューマンセントリック(人間中心)な価値が常に問われる企業と言えます。

社会インフラ事業やエネルギー事業というBtoB(Business to Business)ビジネスだけでなく,BtoBtoCまでを俯瞰できるということは,日立グループが推進する社会イノベーション事業の深化,すなわちソーシャルデザインや社会価値の創出において極めて重要であり,生活者と直接の接点を持つことはグループ全体にとっても大きな強みになります。

従来,われわれは高機能,高信頼のプロダクトを通じて,便利さや快適さを提供してきましたが,新会社の設立を機に,この生活者との接点を生かして,新たな取り組みをさらに加速しようとしています。その一つが,お客さまのライフデータやデジタル技術を積極的に活用することによる,お客さまそれぞれのライフスタイルに合わせた新たなソリューションの提供です。

例えば,日本のみならず,世界の先進国の消費電力を見ると,産業や交通などの社会インフラで消費される電力と同様に,家庭の消費電力が占める割合は大きく,全体の2〜3割にも上ります。しかも,各家電の省エネルギー化は進んでいるものの,エネルギーの総量としては増加傾向にあります。この家庭の消費電力のうち,比較的大きな割合を占めるプロダクトが冷蔵庫とエアコンです。そこでわれわれは,これらの家電の使用状況をモニタリングすることで,消費電力の予測に役立て,効率的なエネルギーの需給バランスに活用することができないかと考えています。

各プロダクトの使用状況を可視化できれば,バリューチェーン全体を最適化し,さまざまな社会課題を解決することにも役立ちます。現在,食品の廃棄(フードロス)が大きな社会課題となっていますが,その出口の一つと言えるのが各家庭の冷蔵庫です。各家庭での食品のストックや消費状況,賞味期限などが分かれば,消費者のみならず食品を取り巻くステークホルダー,すなわち小売業者や流通業者,農家や畜産業者にとっても非常に価値のある情報となり得るでしょう。

そして,これらのデータを活用することで,コンシューマーが真に必要なものを,真に必要なときに,必要な量をお届けするという社会を構築することができれば,フードロス問題の解決に貢献できるのではないでしょうか。生活者とダイレクトな接点を持つわれわれだからこそ,ライフシーンに何が起こっているのか,何に困りその解決にはどれぐらいの時間を要しているか,さらに言えば社会がどのような動きをしているのかを理解し,社会課題解決のためのソリューションへと結びつけることができるのです。

このように,今後,社会全体としてサステイナブルな成長を続けていくためには,各家庭でのライフデータの活用は不可欠であり,それこそがわれわれのミッションの一つであると考えています。

日立グローバルライフソリューションズは,ひとりひとりに寄り添い,より快適な生活空間を実現するライフソリューションを提供する。

人々の生活を豊かにする「生活ソリューションカンパニー」をめざして

こうした新たな取り組みを進める中で,われわれが掲げているのが,「生活者ひとりひとりに寄り添う」というビジョンです。今,生活者のライフスタイルは大きく変わってきています。かつて日本では専業主婦がいる家庭が主流でしたが,今は共働き家庭の方が多くなりました。共働きの家庭では,出勤前の朝の時間や,仕事を終えた後の夜の時間は,家族と共に過ごすための貴重な時間であり,そのためにわれわれは家事をより効率的に行うための支援ができればと思っています。

ライフステージの移行に伴い,ライフスタイルも大きく変化します。例えば,中学生のお子さんがいて,毎日お弁当をつくるご家庭なら,冷蔵庫の冷凍室は満杯になることが多いようです。その場合は,大容量の冷凍庫が必要になります。逆に,シニアの夫婦二人で,健康を気遣って野菜をよく食べるご家庭であれば,冷蔵庫の真ん中に野菜室がある方が使いやすいでしょう。かといって,ライフスタイルの変化に合わせて,その都度冷蔵庫を買い替えるというわけにはいきません。

そこで当社では,二つの引き出しを冷蔵,野菜,冷凍に自在に切り替えることができる「ぴったりセレクト」という機能を搭載した冷蔵庫を開発しました。難易度の高い技術の組み合わせでしたが,生活者のライフスタイルに寄り添う製品を,というコンセプトのもとで実現した製品です。

また,お客さまひとりひとりにプロダクトに愛着を感じていただけるよう,デザイン性を高めることも重要です。現在,われわれは「Hitachi meets design PROJECT」という取り組みの下,社内および社外のデザイナーとコラボレーションしながら,デザイン改革を本格的に実施しています。2019年3月から中国で販売を始めた空気清浄機は,日本を代表する世界的なデザイナーの深澤直人氏にご協力いただき,好評を得ています。

このようにニーズが多様化した時代に合わせて,各家庭の困りごとに寄り添い,顕在化していない課題までも見いだしながら,われわれはサービスやソリューションを全方位で提供していきたい。その思いを,「360°ハピネス 〜ひとりひとりに,うれしい暮らしを〜」という当社のキャッチフレーズに込めています。そして,ひとりひとりの困りごとに寄り添うためにも,先述のライフデータの活用が不可欠というわけです。

ビジネス成長のカギは「協創」にあり

谷口 潤
日立グローバルライフソリューションズ株式会社 取締役社長
1995年日立製作所入社。システムエンジニアやコンサルタントとしてメーカーの生産ラインの改善や高度化などを担当。2018年サービス&プラットフォームビジネスユニット制御プラットフォーム統括本部情報制御第三本部本部長。2019年4月1日に日立コンシューマ・マーケティング株式会社,日立アプライアンス株式会社の合併により日立グローバルライフソリューションズ株式会社が誕生し,社長に就任。

日立グローバルライフソリューションズの発足から約半年が経ちましたが,従来のプロダクトやサービスに対して,ライフデータやデジタル技術を活用して付加価値をつけ,ソリューションとして提供していくという新たな試みに対して,ステークホルダーや生活者の方々から共感の声を頂いています。今後はさらに,この取り組みを加速して,リーダーシップを発揮しながら事業を成長させていくことが私の経営トップとしての役割だと思っています。

私自身はもともと,日立において製造業向けに生産性や品質を向上させるITシステム,制御システムのエンジニアを経て,最近ではそのデータを活用したIoT(Internet of Things)ソリューション事業の立ち上げ,その確立などに取り組んできました。その中で,特にここ数年,力を入れてきたのが「協創」で,必要に応じてさまざまパートナー企業とのコラボレーションによりビジネスのスピード化を図ってきました。

この経験を,生活ソリューションカンパニーである日立グローバルライフソリューションズにおいても,ぜひ生かしていきたいと考えています。とりわけグローバル展開を強化していく際に,1社でできることは限られています。たとえパートナーが得意分野の異なる同業他社の企業であったり,グローバルなプラットフォーマーであったとしても,互いの得意/不得意分野を補完し,協力し合うことでグローバル展開を加速していきたい。スピード化とサービス価値向上をめざして,すべてを自前でやろうとせずに,協創により柔軟に進めていきたいと考えています。

ちなみに,すでに地域家電店「日立チェーンストール」において,テレビやオーディオといった,いわゆる黒物家電については,SONY製品を販売しています。当社の白物家電の強みと,SONYの黒物家電の強みを,互いに補完し合う形でビジネスを展開しているのです。これも一つの補完関係でのパートナーシップの実例です。

また,生活者の方々とのコラボレーションについても,SNS(Social Networking Service)などを通じた取り組みを始めています。その一つが,食をテーマにしたスマートフォン専用のSNS「ペロリッヂ」です。これは,ユーザーが自らの食体験を投稿することで,お気に入りの食材や簡単レシピなど,おいしい体験のシェアリングをユーザー同士で簡単に行うことができるというサイトです。ぜひアプリをダウンロードしてお試しください。

成長戦略への取り組みを通じて,社会課題の解決へ

今後の成長戦略には,「プロダクト事業の強化と拡大」と「ソリューション事業の創生」の二本柱を掲げています。その具体事例の一つに,空調事業の「exiida遠隔監視-予兆診断サービス」があります。これは,お客さまの空調・冷熱機器の運転状態を24時間365日監視し,万一の異常発生時には,故障を未然に防止するためにお客さまに予兆を通報し,機器の停止が起こらないようにするIoTサービスです。運転状態データはWeb閲覧やダウンロードが可能で,お客さまの設備管理の手間も省けます。

特に,病院や介護施設,集客施設といった空調を停止すると大きな影響が出るミッションクリティカルな施設において,空調設備の故障の予兆をつかめれば,事前にメンテナンスをして,非常事態を回避することができます。このようにわれわれは,従来のようにプロダクトを提供するサービスに加えて,提供したプロダクトを快適にお使いいただくためのビジネスを展開し始めているのです。

さらに,コネクテッド家電や空調サービスをサービスプラットフォームと位置づけて,これらを通じて収集したマシンデータ,ライフデータやビジネスデータを日立のLumadaを活用して分析し,協創により新サービスやソリューションの創出を図っています。

その一例が,高齢者の見守りサービス「ドシテル」です。これは,離れて暮らす単身高齢者の部屋の様子や変化を,家族がスマートフォンでいつでも確認できるという見守りサービスです。部屋の壁に設置した専用の活動センサーを用いて,活動量を検知することにより,高齢者の方のプライバシーに配慮しながら情報を取得します。さらに冷蔵庫などの日立のコネクテッド家電と連携させて,活動状態をより細かく確認できる機能も追加することを予定しています。

大家族から核家族化へ,さらに高齢者の一人暮らしが増える中で,家族が抱える心配や不安も増す中,人々の不安を取り除くことができれば,それは新たな「社会価値」になり得るでしょう。

また現在,社会課題の一つとして,「環境価値」の向上が大きなテーマとなっています。われわれは,従来のように省エネルギー性能に優れた商品開発に加えて,商品購入後も生活者のライフスタイルに合わせて機能を追加できるようにして,商品の買い替えサイクルを長くすることで廃棄物の削減に貢献していきます。また,プロダクトを提供する際に,よりエネルギー効率のいい使い方を提案していくことも重要です。このように,環境価値の向上に資する技術やソリューションを提案してまいります。

トライ&エラーで開発スピードをさらに加速

今後の新たなチャレンジとしては,社名に冠したように,グローバル展開に一層注力していきます。長年に渡り開拓してきた東南アジアをはじめ,グローバル市場においては,従来のように高信頼な製品をお届けするとともに,より生活者の方々の好みや課題に寄り添えるよう,日立ならではのユニークな生活ソリューションに磨きをかけたいと考えています。

また,デジタルソリューションによる新しい価値提供に関しては,スモールスタートで始めて,お客さまに体験,体感していただき,その反応を見ながら,課題をフィードバックしつつ,よりよいサービスへと仕上げていくという試みもしていきたいと思っています。デジタルの領域においては,トライ&エラーにより価値を高めていくことが不可欠です。そのためにも,これまで同様に高い技術力をコアとして磨きをかけつつ,協創と失敗を恐れない積極果敢な試行錯誤により,よりよいソリューションをスピーディにお届けしていきたいと思っています。ぜひ,今後の活動にご期待ください。

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