日立評論

顧客協創を軸に北米ビジネスを加速させるエネルギーソリューション事業

電力の安定供給をめぐる課題への最適解を追求:

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日立評論

CUTTING EDGE 2017

顧客協創を軸に北米ビジネスを加速させるエネルギーソリューション事業

電力の安定供給をめぐる課題への最適解を追求:

再生可能エネルギーの導入が急速に進む中,北米地域はエネルギー分野の市場規模が次第に大きくなっている。2016年,日立は北米における事業拡大を目的にEnergy Solutions Division(ESD)を開設し,海外での数々の実証事業や国内で培ってきた経験とノウハウを基に,北米ビジネスに本格的に乗り出した。今後は,現地ニーズを踏まえて基幹系統・地域系統の両面で先進的なエネルギーソリューションの提供に努めていく。

市場規模と最新技術から北米市場に着目

マイクログリッドのソリューションイメージ

北米地域からビジネス展開を始めた理由はどんなところにあるのでしょう。

清治これまで日本国内を中心に,送変電・受変電・系統システムや需要家のマネジメントサービス,2016年の小売全面自由化に対応したシステム構築・運用など,日立が培ってきた技術と知見をベースにエネルギーソリューションを提供してきました。
また,グローバルでは米国・ハワイ州でのスマートグリッド実証事業などに参画し,技術開発とビジネスモデルの確証を進めてきましたが,現在,こうした数々の実証で得られた技術,ノウハウをグローバルにビジネス展開していこうとしています。
その際,北米に着目したのは,市場規模が大きく,自由化が進み,市場や技術の変化が大きいので,私たちもそこからいろいろと吸収できると考えたからです。

森田研究開発グループは,2015年に組織を再編しました。その中でお客様と共にソリューションを開発するフロント組織と位置づけている,社会イノベーション協創センタ(CSI:Global Center for Social Innovation)が北米の拠点となっており,サンタクララのオフィスを中心に活動しています。エネルギー安全保障の制約や企業プライバシーの観点から,やはりどうしてもお客様の近くで研究開発を進めることが重要となってきます。

Aramそして北米におけるエネルギーソリューション事業拡大を目的に,2016年6月に設立したのがEnergy Solutions Division(ESD)です。かつて,日立のエネルギーソリューション事業のグローバル展開にはやや保守的なところもありました。しかしローカルの知識と顧客網を有するESDは,地域内での実績づくりに向け,フロントユニットとしてダイレクトに動くことができます。現在,米国には分散型エネルギーシステムへの移行,高度なITとデジタル技術の開発と採用という2つのトレンドがあり,それらを先取りすることで大きなビジネスチャンスを取り込みたいと考えています。

マイクログリッドを足がかりに基幹系統へ拡大

具体的には,どういった取り組みを進めているのでしょうか。

清治マイクログリッド,系統安定化システム,蓄電池システムの3つを柱としています。系統安定化システムについては,厳しいナショナルセキュリティが課せられていることから,一挙に参入するのはなかなか難しい。一方,マイクログリッドは,ニューヨーク州をはじめとしてFS(Feasibility Study)案件を受注しており,まずはマイクログリッドを足がかりに実受注に向けて取り組んでいます。

Aram米国では,自然災害による長時間の停電が度々起こっており,さらに今後,サイバー攻撃やテロへの備えも必要と言われています。
そうした中,お客様はエネルギーのレジリエンシーを強化する手段の一つとして,マイクログリッドに注目しています。
しかしビジネスモデルの観点からすると,マイクログリッドはまだ技術的にも,またその市場も創成期にあります。
真の「ワンストップ」対応をめざすベンダーとして,われわれは現在,マイクログリッドの評価,設計,施工,資金調達,そしてO&M(Operation and Maintenance)といったプロセスの合理化に取り組んでいます。

森田電力の安定供給・運用には地域系統のマイクログリッドも重要ですが,基幹系統のアプローチも不可欠です。
基幹系統では,私たちは系統安定化のためのオンライン型保護制御システム[オンラインRAS(RemedialAction Scheme)]の開発,系統の聴診器といわれるPMU(Phasor Measurement Unit)の活用などに取り組んでいるところです。2003年の大停電以降,系統安定化への関心が高い米国では,現状は系統保護システムとしてオフラインRASが採用されていますが,今後は出力変動などの電源のダイナミックな変化に即時対応する必要があるため,リアルタイムに制御できるオンライン型が求められます。すでに国内での実績を重ね,現在はグローバル展開を見据え,海外の電力会社との協創を進めています。

日立が提供するエネルギーソリューション

北米における実績の「逆輸入」も視野に入れて

最後に,今後の展開の見通しについてお聞かせください。

Aramもちろんマイクログリッドにとどまらず,系統安定化システムや蓄電システム,デマンドレスポンス,バーチャルパワープラントなど,エネルギーソリューションとしてのメニューを拡充し,市場ニーズに適合したソリューション提供を通してビジネス拡大をめざしていきます。また,分散型エネルギー源の普及に伴って発生するさまざまな問題を解決するため,日立グループ内の各部門とも連携していきます。例えば,IoT(Internet of Things)プラットフォームLumadaの開発チームとの連携においては,彼らが主にITソリューションを担当するのに対し,ESDはIT側が必要とするOT(Operational Technology)構成やデータフィルタリング,アルゴリズムの最適化など,OTのシステムインテグレーションを担います。

森田マイクログリッド関連の研究開発では,事業者と直接会話する機会を増やし,お客様も気がついていない真の課題を把握して,新たな価値を創造していきます。
北米のCSIは,Lumada上にEnergy-IoT環境を整備していく方針で,風力などの分散エネルギーリソースにエッジコンピューティングを付加し,遠隔からの機械学習によって発電出力を予測するなどしています。このようなソリューションコアを拡充しながら事業の拡大につなげていくとともに,グローバルワンチームの一員としてさまざまな取り組みを推進していくつもりです。

清治一方,国内でも電力システム改革が進んでおり,2016年度から電力自由化が全面開始となり,2020年には発送電の分離がなされます。また,リアルタイム市場の創設により調整力としてのネガワット取引環境が整備されていくなど,電力自由化先進国の米国と同じような状況を迎えることになるでしょう。北米でのビジネスを進める一方で,そうした実績やノウハウを日本に「逆輸入」し,日本特有のルールや環境,再生可能エネルギーの大量導入に伴う安定化の要望に対応したシステムソリューションも提供していきます。

エネルギーソリューションビジネスユニット 電力情報制御システム事業部 事業部長

清治 岳彦

Sr. Vice President & General Manager,Energy Solutions Division,Hitachi America, Ltd.

Alireza Aram

研究開発グループエネルギーイノベーションセンタ センタ長

森田 歩

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