日立評論

実証から事業化の段階にさしかかった接客・案内サービスロボット「EMIEW3」

本格実現に向けて動き出したサービスロボティクスシステム

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日立評論

CUTTING EDGE 2017

実証から事業化の段階にさしかかった接客・案内サービスロボット「EMIEW3」

本格実現に向けて動き出したサービスロボティクスシステム

進行する少子化や高齢化に伴って労働力不足という社会課題が浮き彫りになる中,その解決手段として,サービスロボティクスへの期待が高まっている。日立は,実サービスの活用を視野に入れ,ヒューマノイドロボット「EMIEW3」とロボットIT基盤を開発し,2016年10月より羽田空港での実証実験を開始した。今後は,実証で得られたニーズや知見を踏まえながら,サービスロボティクスの事業化に向けた動きを加速させていく。

実サービスの活用を視野に開発された「EMIEW3」

「EMIEW3」は,他の対話型ロボットとは一線を画したものなのでしょうか。

馬場現在,対話型ロボットの多くは,集客・PR用途にとどまっているのが現状です。それに対し,「EMIEW3」は接客や案内などの実サービスの活用を視野に,初代「EMIEW」の開発以来培ってきた自律移動技術などの要素技術をさらに進化させ,現場で安定した運用ができるように工夫したヒューマノイドロボットです。例えば,実サービスを考えると,ロボットが走行する路面一つをとっても,でこぼこがあったりしていろいろと難しい問題が出てきます。そのため,前世代の「EMIEW2」より重心を低くし,補助輪を付けて4輪構成とするなどの工夫をしたほか,万が一転倒しても自分自身で起き上がり,それまでのタスクに復帰できるようにしています。また,知能処理に関しても,「EMIEW2」の音声認識・画像認識の技術をさらに磨いていることはいうまでもありません。

設楽小型軽量のボディやデザインはそのままにするなど,親しみやすさの点では「EMIEW2」を受け継いでいます。このように小型軽量でありながら実サービスが行えるロボット機体を実現できたのは,ロボット機体には衝突回避などのリアルタイム処理が必要な機能のみを持たせ,それ以外の知能処理は外部のクラウドに実装するリモートブレイン構成にしているからです。その結果,環境カメラとの連携や複数台の「EMIEW」との知識共有を可能にしたほか,さまざまなサービス業務に対応できるアプリケーションを柔軟に実装できるようにしました。また,多拠点,複数台のロボットの運用監視を行うマザーブレインの開発によって,「EMIEW」同士が接客・案内のサービスを引き継ぐことも可能です。このように,OT(Operational Technology)とITの技術を併せ持つ日立らしいロボットだということができます。

サービスロボティクスシステムの概要

マルチパーパスの検証に最も理想的な場所

実証実験のフィールドを羽田空港にしたのは,どんな理由からでしょう。

馬場単一機能を持つロボットはたくさんありますが,「EMIEW3」は多目的に使われるロボットとして開発しています。空港には物販を行う店舗も多いため,場所の案内だけでなく,店舗の情報案内も求められます。また,航空会社からは人を探したいというような要望が出てくることも予想されます。そういった意味で羽田空港は,「EMIEW3」の実証フィールドとして理想的な場所だったのです。

設楽今回の実証実験は3段階に分けて行っています。ステップ1では「EMIEW3」が専用のカウンターで空港利用者を迎え,今回は日本語・英語の二ヶ国語で対応しました。空港利用者の問いかけに対し,案内カウンターの隣に設置した案内情報ディスプレイと連携し,ディスプレイに表示された地図や,空港施設の概要,店舗の写真などを用いて案内するという内容です。ステップ2では,「EMIEW3」が空港利用者の問いかけに対し,自律走行により案内情報ディスプレイまで誘導し,回答と説明を行い,ステップ3では,「EMIEW3」がフロア内を走行し,空港利用者を目的地まで案内することを計画しています。

実証を通じて見えてきた今後の課題

現時点での実証実験の成果をどのように捉えていますか。

設楽事業側からいえば,空港は人だけでなく,インフォメーションアナウンスも多い場所だとあらためて気づきました。そんな雑音下でも,「EMIEW3」が空港利用者の問いかけに対して、案内できたことに驚きました。これから実施するステップ3では,お客様の歩調と「EMIEW3」のスピードが適当か,目的地まで案内しましょうかという「EMIEW3」の問いかけに対して,どれぐらいの人に「はい」とお答えいただけるかなど,目安を立てて検討していく予定です。

馬場ここまでの実証では,「EMIEW3」の前でどうしたらいいか戸惑うようなお客様がいたため,「EMIEW3」から話しかけるようにしたところ,大いに効果があることもわかりました。その一方で,コミュニケーションの点では,まだ改善の余地があると考えています。人と人のコミュニケーションでは,間のとり方,アイコンタクトなども重要ですが,そうしたレベルのスムーズなコミュニケーションを実現するには,信号処理や音声処理,動作も含めて,もう一段階ブラッシュアップする必要があるでしょう。

幅広いサービスが提供できるロボットをめざして

最後に,サービスロボティクスの将来像をお聞かせください。

設楽「EMIEW3」は,ロボット本体とリモートブレイン構成のロボットIT基盤というプラットフォームと組み合わせて,実サービスを提供することになります。例えば,エレベーターやカメラとの連動などを標準のパッケージとして,その上にプラグイン的にさまざまなオプション機能を付加することでサービスの幅を広げる展開を考えています。また,「顧客協創」する場として茨城県ひたちなか市にロボティクス協創ルームを設けましたが,やはり実物の「EMIEW3」を見ていただくと,お客様の反応が違います。どういったところにどういった形で活用するのがメリットを生むのかをお客様とともに見極めながら,サービスロボティクス事業という新しいビジネスを大きく育てていきたいですね。

馬場開発の立場では,さまざまな業種のお客様との協創を推進する中で,ロボットの知能を高度化し,対応範囲を広げたいと考えています。また,ロボットの知能については,「EMIEW」だけでなく,スマホやタブレット,自律走行する移動支援ロボット「ROPITS」にも応用可能なことから,「EMIEW」の開発で培った技術を幅広く応用展開し,社会課題の解決や,快適・便利な超スマート社会の実現に貢献していきたいですね。

研究開発グループ 機械イノベーションセンタ ロボティクス研究部 部長

馬場 淳史

ビルシステムビジネスユニット グローバルソリューション事業部 新規事業推進部 担当部長

設楽 真一

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