期待されるブロックチェーンの応用展開
FinTech関連で今,注目している技術は何ですか。
西澤1つはブロックチェーンです。われわれは,グローバルでのデファクトスタンダード技術を共同開発する「Hyperledger*プロジェクト」にボードメンバーとして参画しつつ,性能やセキュリティなどの面で競合優位化を図るための研究開発も進めています。その一環として,ブロックチェーンをベースに電子小切手の振り出しや譲渡を行うシステムを,株式会社三菱東京UFJ銀行と共同開発し,シンガポールで実証実験を開始しました。この実証実験を通じて,ブロックチェーンを金融インフラとして実用化する際の課題を抽出し,応用ソリューションの開発にもつなげていく考えです。
ブロックチェーンを,IoTのプラットフォームとして活用する試みも始まっています。われわれも,蓄積したデータとビッグデータ分析やAI(Artificial Intelligence:人工知能)を組み合わせるなど,新たな応用を検討しています。
酒田共有の台帳を分散して持つことで信頼性や透明性を保つというブロックチェーンの仕組みは,中央集権的なシステムによる集中管理を必要としないことから,低コストで柔軟性の高い基盤を構築できるという利点があります。金融に限らず,さまざまな産業分野でプラットフォームとして活用できると期待されています。
Pinski私たちも,ブロックチェーンの応用に関心を示している感度の高い顧客と,ソリューションコンセプトの検討を始めました。ブロックチェーンでデータセットを共有することは,例えば,私設取引市場や再保険市場などで,企業間の決済時間の短縮などを可能にし,市場の仕組みに変化をもたらすと考えられます。私たちの顧客企業も,その可能性には大きな期待を寄せています。
IoTに関して言えば,産業機器,車両などの予防保全やフリートマネジメントシステムのモデルがすでにあります。それを活用することで,動産担保融資,新しいタイプの保険商品や,これまでにない金融サービスが創造できるでしょう。
酒田AIも期待される技術の一つです。人の作業を代行することで金融業務の効率化に貢献するだけでなく,多種多様なデータから金融にも関わる新たな事実や法則を発見できる可能性もあり,われわれもさまざまな活用法を探っています。
日立における金融イノベーションの推進コンセプト