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CUTTING EDGE 2017

デジタライゼーションとFinTechによる金融イノベーションのグローバル展開

北米の金融イノベーションラボ設立から始まる新たな挑戦

デジタル技術が社会に急速に浸透している中で,金融サービスとITを融合させ,新たな価値を生み出すFinTechが注目されている。日立は,デジタライゼーションとFinTechの潮流を捉え,お客様とともに革新的なソリューションの創造をめざす,デジタル金融イノベーションの取り組みを加速している。

そのために,北米を中心にお客様との協創を推進する研究開発組織である北米社会イノベーション協創センタのシリコンバレー拠点内に「金融イノベーションラボ」を設置。多彩なパートナーとともに,グローバルな視点から金融ビジネスの革新に挑んでいる。

デジタル技術による金融イノベーションをめざす

FinTechのような金融分野での新しい動きに,日立はどう向き合っているのでしょうか。

酒田金融とITの結びつきは今に始まったことではなく,日立はこれまでにも,国内の金融機関のお客様に基盤となるハードウェアから情報システム,各種ソリューションまで一貫したシステムインテグレーションを提供してきました。昨今,スマートフォン,IoT(Internet of Things)などのデジタル技術を活用した新しい金融サービスを提供するFinTech関連企業の登場によって,金融分野の競争環境は大きく変化し,既存の金融機関も変革に向け動きを活発化している状況と捉えています。変化と向き合うお客様を支援するには,新しいサービスモデルをできるだけ早く開発・提供することが重要と考えています。FinTech関連企業との連携や,OSS(Open Source Software)の採用など,これまで以上にオープンイノベーション指向で新たな価値を創出することが日立にも求められます。このような変化の中,デジタル技術の動向とFinTechの潮流を捉え,お客様と革新的なソリューションの協創をめざす取り組みを始めました。

Pinskiその一環として,2016年4月に,北米社会イノベーション協創センタ内に金融イノベーションラボを開設しました。FinTech関連企業が多く集まる北米の環境を生かし,金融分野の最新動向に関する調査や,ブロックチェーン,ビッグデータ分析などの技術を活用したソリューションモデルの開発に,顧客やパートナー企業とともに取り組んでいます。

日立は金融システムの構築において多くの実績を持ち,最新のデジタル技術にも通じています。このラボで,日立の強みと存在感を世界中にアピールするとともに,最先端の技術をできるだけ多くの顧客のニーズと結びつけることで,デジタル技術による金融イノベーションの実現をめざしています。

西澤FinTechは,非金融で発達したデータ活用技術とオープンインフラを活用してユーザー視点で金融サービスを再定義する動きで,それぞれの地域や国ごとに進む方向が異なると考えています。現在は個人向け金融サービスの拡充が主流ですが,海外ではアンバンクド層に対する金融サービスなどの提供にもつながっていくでしょう。われわれ社会イノベーション協創センタは,お客様の課題を共有し,お客様とともに革新的なソリューションを創造する協創の中心となる研究開発組織です。その北米拠点に金融イノベーションラボを立ち上げたことで,今後は国内だけでなく海外でも金融業界のお客様との協創を促進し,お客様の新しいチャレンジを支えていきたいと考えています。

FinTechの主たる領域

期待されるブロックチェーンの応用展開

FinTech関連で今,注目している技術は何ですか。

西澤1つはブロックチェーンです。われわれは,グローバルでのデファクトスタンダード技術を共同開発する「Hyperledgerプロジェクト」にボードメンバーとして参画しつつ,性能やセキュリティなどの面で競合優位化を図るための研究開発も進めています。その一環として,ブロックチェーンをベースに電子小切手の振り出しや譲渡を行うシステムを,株式会社三菱東京UFJ銀行と共同開発し,シンガポールで実証実験を開始しました。この実証実験を通じて,ブロックチェーンを金融インフラとして実用化する際の課題を抽出し,応用ソリューションの開発にもつなげていく考えです。

ブロックチェーンを,IoTのプラットフォームとして活用する試みも始まっています。われわれも,蓄積したデータとビッグデータ分析やAI(Artificial Intelligence:人工知能)を組み合わせるなど,新たな応用を検討しています。

酒田共有の台帳を分散して持つことで信頼性や透明性を保つというブロックチェーンの仕組みは,中央集権的なシステムによる集中管理を必要としないことから,低コストで柔軟性の高い基盤を構築できるという利点があります。金融に限らず,さまざまな産業分野でプラットフォームとして活用できると期待されています。

Pinski私たちも,ブロックチェーンの応用に関心を示している感度の高い顧客と,ソリューションコンセプトの検討を始めました。ブロックチェーンでデータセットを共有することは,例えば,私設取引市場や再保険市場などで,企業間の決済時間の短縮などを可能にし,市場の仕組みに変化をもたらすと考えられます。私たちの顧客企業も,その可能性には大きな期待を寄せています。

IoTに関して言えば,産業機器,車両などの予防保全やフリートマネジメントシステムのモデルがすでにあります。それを活用することで,動産担保融資,新しいタイプの保険商品や,これまでにない金融サービスが創造できるでしょう。

酒田AIも期待される技術の一つです。人の作業を代行することで金融業務の効率化に貢献するだけでなく,多種多様なデータから金融にも関わる新たな事実や法則を発見できる可能性もあり,われわれもさまざまな活用法を探っています。

日立における金融イノベーションの推進コンセプト

金融イノベーションに向けた,新たなエコシステムを

デジタル金融イノベーションの実現に向けて,今後の展開をお聞かせください。

西澤日立は,株式会社三井住友銀行およびベトナム郵便会社と共同で,ベトナムで郵便局ネットワークを活用した非現金決済サービスに関する調査を行いました。その調査結果を今後,実際のサービスにつなげ,ベトナムにおける社会インフラの充実に貢献していきたいと考えています。社会インフラ面でのニーズを出発点に,将来を見据えながら,新たな社会基盤となる金融サービスを作り上げていくことも重要です。日立が持つ国内で実績のある既存技術を新興国へ適用することで金融イノベーションを実現するといった取り組みです。今後このような事例を増やし,さらに革新的な新技術もうまく組み合わせることで,金融分野から広く社会イノベーションへとつなげていきたいと考えています。

酒田イノベーションの実現では,新しい技術が必須ということではなく,むしろ,既存の技術をうまく組み合わせるアイデアやフレームワークが鍵になります。そのために,日立のIoTプラットフォーム「Lumada」を活用しながら,お客様とのソリューション協創へ積極的に取り組んでいきます。そして,成功したユースケースを蓄積し,横展開していくことによって,お客様にとってもユーザーにとっても価値のある金融サービスの実現をグローバルに支援していきます。

Pinski私たちのラボでは,同じ北米社会イノベーション協創センタ内にある,エネルギー,交通,ヘルスケアといった他分野のイノベーションラボのメンバー,ビッグデータ分析やIoTなどの研究者との連携を深めることで,金融の枠を越えた新しいアイデアの創出に取り組んでいます。さらに,お客様との協創だけでなく,北米の大学や他の研究機関との共同研究も計画しています。私たちは,それらの活動を通じて金融イノベーションに向けた新たなエコシステムを形成し,金融分野の革新をリードする存在をめざしていきます。

金融ビジネスユニット 金融システム営業統括本部 事業企画本部 ビジネス企画部 部長

酒田 大樹

研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ 顧客協創プロジェクト プロジェクトマネージャ

西澤 格

Chief Strategist for Hitachi’s Financial Laboratory, Global Center for Social Innovation

David Pinski

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