日立評論

産業・流通・水

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日立評論

産業・流通・水

1.水環境ソリューション技術の展望

日立グループは,1世紀近くにわたり水環境分野の技術開発を行ってきた。現在では水源保全,治水,上下水道,排水処理,造水や水再生などの幅広い分野に,製品やシステム,サービスを提供している。また一方で,水環境に関わるさまざまな課題を総合的に解決する水環境ソリューションの提案活動を進めており,既存事業の強みとITを生かした,新たなソリューション・サービスの提供をめざしている。

水環境ソリューションにおいては,監視制御システムや水処理プラントなどのプロダクトや個々のシステムのみならず,OT(Operational Technology)やITとの幅広い連携による全体最適化が不可欠である。さまざまな技術の連携により,今後も水処理・水運用の革新や電力をはじめとする他のインフラとの連携などを進め,社会インフラ全体の安全・安心の確保や最適化,持続的発展につなげていく。

1.既存事業の強みとITを生かした新たな水環境ソリューション・サービス

2.久喜市上下水道部吉羽浄水場中央監視制御システム

2.久喜市上下水道部吉羽浄水場 中央監視制御装置

久喜市上下水道部吉羽浄水場(埼玉県)は1973年の運用開始以来,県水と自己水源である取水井を水源として久喜市内のおよそ45%にあたる24,000 m³/日の給水を担う基幹浄水場である。

同機場の監視制御システムでは,有人設備である吉羽浄水場のほか,本町浄水場および取水井7か所,水質末端局5か所の無人設備を遠隔監視操作している。今回,1998年納入の監視制御システムの更新に伴い,LCD(Liquid Crystal Display)監視操作卓を納入した。

主な特長は,以下のとおりである。

  1. 監視制御装置にクライアントサーバ方式を採用し,サーバを二重化することにより高信頼性を確保した。
  2. 制御LAN(Local Area Network)として採用したEthernetの回線を二重化することにより,信頼性を向上した。
  3. 遠隔監視用のテレメータ装置を制御LANに直接接続することにより信頼性を向上した。

(運用開始時期:2016年3月)

3.愛知県一宮建設事務所日光川上流浄化センター中央監視制御システム

3.一宮建設事務所日光川上流浄化センター中央監視制御システム

日光川上流浄化センター(愛知県)は,一宮市と稲沢市からなる日光川上流処理区52,500 m³/日※)の下水処理を行っている。今回,監視制御設備の老朽化に伴い,水処理設備と滅菌・放流設備すべての監視制御を目的として,システムの更新を行った。

主な特長は,以下のとおりである。

  1. クライアントサーバ方式を採用し,サーバを二重化することにより信頼性を向上した。
  2. 制御コントローラをギガビット制御LANµΣNetwork-1000に接続することにより,大容量高速通信を可能とした。
  3. ミニグラフィックパネル付き操作卓を撤去し,LCD監視装置に更新した。
※)
2015年4月1日時点の処理能力。

4.大阪市水道局城東配水場監視制御システム

4.大阪市水道局城東配水場監視室

大阪市水道局城東配水場は,豊野浄水場の配水場として1968年7月に運用を開始し,市内中央部および東部へ配水している。城東配水場は,豊野浄水場との高低差を利用して自然流下で配水しながら,夜間は余剰水量を配水池へ貯水している。また,使用量が増加する昼間は,増圧用ポンプで配水を行うとともに,配水池の水をピーク用ポンプにて配水している。

今回,監視制御設備の更新に伴い,信頼性向上および最適な水運用を目的とした監視制御システムを納入した。

主な特長は,以下のとおりである。

  1. クライアントサーバ方式を採用し,サーバを二重化することにより信頼性向上を実現した。
  2. 配水ポンプなどの自動制御を行うコントローラはメイン系(二重化)とバックアップ系(シングル)で構成し,さらに信頼性を向上した。
  3. 柴島浄水場の総合水運用システムにて立案した配水池流入流量計画データを本システムで受信し,豊野浄水場からの送水量における最適な水運用を実現した。

(運用開始時期:2016年4月)

5.広島県沼田川浄化センター監視制御システム

5.広島県沼田川浄化センター監視制御システム

沼田川浄化センター(広島県)は,三原市と東広島市からなる沼田川処理区23,800 m³/日※)の下水処理を行っている。今回,監視制御設備の老朽化に伴い更新したシステムの目的は,水処理設備と汚泥処理設備のすべてを監視制御することである。

主な特長は,以下のとおりである。

  1. Web機能を用いたクライアントサーバ方式を採用した。
  2. 制御LANとして光ケーブルLAN(二重化)を採用したほか,コントローラ間に専用光二重化リングを配し,ネットワークの信頼性を向上した。
  3. 機器の点検中および保守中を示す札掛け機能,引き継ぎ者へのメッセージを残す掲示板機能を搭載し,昼夜運用管理者への引き継ぎ業務を効率化した。
  4. メッセージ名称,速報および故障発生中のリスト,履歴への記録有無,故障区分のオンライン変更を可能とし,ユーザーに対してオープンなシステムを提供する。

(運用開始時期:2016年4月)

※)
2014年度末時点の処理能力

6.ICTを活用した効率的な硝化制御システムおよびB-DASHプロジェクトでのガイドライン(案)発刊

茨城県と日立製作所は2014年度より2年間,国土交通省の下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)において,同省国土技術政策総合研究所の委託研究「ICTを活用した効率的な硝化運転制御の実用化に関する技術実証研究」を実施した。実証した硝化制御システムは,流入負荷変動にいち早く対応する風量制御機能,処理特性の見える化機能,風量演算モデルの自動更新機能を搭載し,水質安定化,風量削減(消費電力低減),維持管理業務の軽減を図るものである。

2015年度,茨城県流域下水道事務所霞ケ浦浄化センターで行った実証では,合計98日間の運転で処理水アンモニア濃度を平均0.3 mg-N/L(目標平均1.0 mg-N/L以下)としつつ,風量を溶存酸素(DO:DissolvedOxygen)一定制御比で17%低減した。その後,評価委員会にて実証成果の承認を受け,本実証を完遂した。また,これらの成果に基づき,システムの適用条件や導入検討手順などをまとめた下水道事業体向けの技術導入ガイドライン(案)が,国土技術政策総合研究所より2016年12月に発刊された。

6.B-DASHプロジェクトにて実証した硝化制御システム

7.光ファイバーマルチセンシングシステム

下水道関連インフラの老朽化が進む一方,管理する技術者の数が減少しており,施設の実態を把握した効率的な維持管理が求められている。特に管路内の水位や水質,硫化水素などの発生状況は,維持管理を行ううえで有用な情報となるが,管路内は無電源かつ点検が容易ではなく,従来,これらの情報を継続的に計測することは困難であった。

この課題に対し,日立は東京都下水道サービス株式会社および一般社団法人日本下水道光ファイバー技術協会とともに,光ファイバーを使った新たなセンシングシステムを開発した。この技術は,数キロメートル離れたMSBox(Multi Sensing Box)に対して,シングルモード光ファイバー1芯のみで光給電と双方向通信を実現する。さらに1芯に対して複数個・複数種類のセンサーを接続可能である。また,保守が困難であることを想定し,自己診断機能を搭載した。MSBoxに接続されたセンサーの計測情報を遠方から監視することで,不明水対策や合流改善,老朽化対策など,維持管理上の課題解決に貢献していく。

7.光ファイバーセンシングシステム

8.水処理から水景観への新たな取り組み

8.噴水設備納入事例(上),プール設備納入事例(下)

Hitachi Aqua-Tech Engineering, Pte. Ltd.(HAQT)はこれまで,リゾートホテルや自治体,さらにはエンジニアリング会社などへ逆浸透膜[RO(Reverse Osmosis)膜]を用いた海水淡水化装置を納入してきた。今回,リゾートホテルや商業施設向けの受注機会の拡大およびさらなる競争力強化のため,海水淡水化装置の付随設備としてプールや噴水などの水景観を提供する事業への取り組みを始めた。

2016年4月,HAQTは水景観設備の納入を主な業務とするAqua Works Engineering Pte. Ltdと合併・統合し,現在,プールの循環濾(ろ)過設備から水中照明設備,さらに噴水や水上遊具設備に至るまで,水景観の設計から納入・保守・メンテナンスまで一貫したサービスを提供している。今後はHAQTの顧客ネットワークを活用し,水景観事業をモルディブやアジア諸国に展開するとともに,単なる水処理プロバイダーとしてではなく,水を活用し生活に豊かさを加えるシステムインテグレーターとして事業を拡大していく。

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