日立評論

鉄道システム

アーバン

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1.グローバル市場向けセミ・オーダー標準型近郊車両 Class 385

1.Class 385エクステリアイメージ(上),インテリアイメージ(下)

2015年3月,日立グループは英国のCaledonian RailLeasing Limited社を通じ,鉄道運行会社であるAbellio社からClass 385車両234両(3両編成46編成,4両編成24編成の合計70編成)の納入および10年間にわたる車両保守事業を一括受注した。

Class 385はグローバルA-trainラインアップの一つである標準型近郊車両AT-200として開発した車両であり,エディンバラ〜グラスゴー改修計画(EGIP:Edinburgh Glasgow Improvement Programme)の対象路線を含む,Abellio社がフランチャイズ権を獲得したスコットランド内の各路線に投入される。

今回開発したClass 385を皮切りに,セミオーダーメイドタイプの標準型車両であるグローバルA-trainのラインアップを拡充させ,競争力の高いリードタイムを維持しつつ鉄道事業者のニーズに合った車両を提供することで,英国市場だけでなく欧州市場や新興国市場での拡販を進めていく。

(営業運転開始予定時期:2017年12月)

2.回生電力貯蔵システムによる列車緊急走行機能

2.回生電力貯蔵装置CHOP盤と新開発の補助電源盤(右端)

東日本大震災以降,電力会社からの電力供給がダウンした場合の乗客の安全誘導が課題となっている。乗客を安全に誘導するための手段として,2014年,リチウムイオン電池の電力のみで列車を走行させるフィールド試験を東京地下鉄株式会社と共同で実施し,列車を最寄り駅まで自力走行させる列車緊急走行の実現性を確認した。

今回,フィールド試験の結果を踏まえて,東京地下鉄株式会社と協議・検討を重ね,列車緊急走行で必要となる電源自給システムおよび緊急走行への切り替え機能を備え,充放電制御用DC(Direct Current)−DC変換器を改良した列車緊急走行機能付き回生電力貯蔵装置システムを開発した。

同システムは東京地下鉄の東西線葛西変電所に納入され,2016年3月より運用を開始している。これに伴い,回生電力貯蔵システム(B-CHOP)の製品群には,従来の省エネルギータイプ,回生失効防止タイプに加えて,新たに緊急走行タイプが加わった。

今後はB-CHOPの機能向上に関する各種要望に応えながら,省エネルギーにも,乗客の安全な誘導・保護にも活用できるシステムに成長させていく。

3.京葉線 ATOS使用開始

3.京葉線指令卓

東日本旅客鉄道株式会社の東京圏輸送管理システム(ATOS:Autonomous Decentralized Transport Operation Control System)は,首都圏の高密度線区に導入された大規模自律分散型の列車運行管理システムである。

今回,京葉線の東京駅−蘇我駅間を2016年9月にATOS化した。これに伴い,ATOS導入済み線区である武蔵野線とのシステム間連携,指令員の運転整理入力操作の簡素化および予測ダイヤ(遅延などを加味した未来の列車運行状況の情報)の活用によるダイヤ平復の早期化,乗務員や駅への通告業務および保守作業管理業務のシステム化により,顧客の業務効率向上を実現した。また,発車標にきめ細かな情報を提供することが可能となり,旅客案内サービスを向上した。

さらに,乗客に対するサービス向上を目的として,予測ダイヤを旅客案内に利用する機能をATOSで初めて京葉線に導入した。これにより将来,ダイヤの乱れた状況下においても,発車標に「08:40頃」といった未来の発車予定時刻の表示などが可能となる。

4.東日本旅客鉄道 計画書伝達システム

東日本旅客鉄道の東京圏輸送管理システム(ATOS)において,2016年10月より計画書伝達システムを導入し,輸送指令業務の効率化を図っている。計画書とは,輸送障害発生時の指令員による運転整理計画内容を記載した帳票であり,運転整理計画を駅など関係各所へ伝達する役割を担う。

本システムは,端末からの運転整理入力によって計画書を自動生成し,運転整理入力の内容から配信対象を自動的に選択して送信する機能と,送信者側の端末において送達確認ができる機能を持つ。システム導入前は手書きで計画書を作成し,配信対象を指令員自ら選定したうえで,手作業でFAX送信していた。また,送達確認は指令電話により実施していた。今回のシステム導入により,指令員の作業負担は大幅に軽減され,かつ指令員の習熟度に依存しない,正確かつ迅速な情報伝達が可能となった。

まずは横浜線に本システムを導入し,今後京葉線ほか各線区への展開を予定している。引き続き,顧客のニーズを細やかにとらえ,輸送指令業務の改善に貢献していく。

4.計画書伝達システム導入前後の指令員業務の比較

5.E235系山手線量産車向け情報提供装置 Visual Information System

5.3連表示器が連動するコンテンツ(上),山手線内回りの案内表示(下)

東日本旅客鉄道は,E235系山手線量産先行車1編成の営業運転を開始した。

日立は,駅などにも導入されているデジタルサイネージに対応した新たな情報提供装置(VIS:Visual Information System)を開発し,E235系山手線量産先行車向けに製作・納入した。このVISは従来の仕様やサービス機能を踏襲しつつ,新たに窓上に3連の表示器を設置し,車端妻部にも表示器を増設してデジタルサイネージ機能を強化したものとなっている。これらの表示器には,ソフトウェアによる画像表示同期処理にて車両内の広告を同期して表示させることができ,3連の画面が連動するコンテンツ表示を実現した。案内コンテンツは環状線をイメージし,乗車している電車が内回りか外回りかが一目でわかるデザインを採用した。また駅設備には3Dアイコンを使用し,好評を得ている。

このデジタルサイネージ機能を強化したE235系新型量産車両は,2017年度より山手線に順次配備される予定である。

6.北海道新幹線の信号システム

北海道旅客鉄道株式会社に納入した北海道新幹線三線軌対応DS-ATC(Digital Communication and Control for Shinkansen Automatic Train Control)が,北海道新幹線開業に伴い,2016年3月26日に運用を開始した。

北海道新幹線(新青森−新函館北斗間)は,全線148.8 kmのうち約82 kmを新幹線と在来線で共用する仕組みになっており,この区間は,S軌・N軌・C軌の3本のレールを敷設し,新幹線は標準軌(S−C軌)を,在来線は狭軌(N−C軌)を走行する特殊な三線軌条方式となっている。しかしこの方式を実現するには,以下の技術的な課題があった。

  1. 列車検知・制御の単位となる軌道回路において,三線レール間の相互影響により生じる信号電流の減衰や列車検知特性の悪化
  2. 非対称軌道回路構成に起因する妨害ノイズの増加
  3. 二線軌には必要のなかった,共用軌のレール破断を検知する新しい仕組みの開発

本システムは東日本旅客鉄道へ納入したDS-ATCをベースとして,以上の技術的課題を克服し,新幹線と在来線のレール共用走行を可能とした世界初の信号システムとなっている。

6.三線軌対応DS-ATCシステムの構成

7.九州旅客鉄道,東日本旅客鉄道向け 交流架線式蓄電池電車

7.交流蓄電池電車外観(上),主回路蓄電池外観(下)

九州旅客鉄道株式会社は,気動車に替わる次世代車両として,交流架線式蓄電池電車の営業運転を2016年10月より開始した。本車両は蓄電池の搭載により,従来の気動車に比べて省エネルギー化,低騒音化,省保守化を実現している。電化区間では従来の交流電車と同様に走行し,交流架線から蓄電池を充電してそのエネルギーで非電化区間を走行する。蓄電池は架線からの充電のほか,回生ブレーキでも充電可能なシステムである。主電動機には,騒音や保守作業の低減を目的として全閉外扇方式を採用し,車両情報制御装置にはEthernet伝送を適用したSynaptraを採用した。運用に関わる基本機能を統一することで非電化区間でも電車と同じ操作性を実現し,将来的に導入される線区でも対応が可能となっている。また車体のデザインには,「人と地球の未来にやさしい」という車両コンセプトを反映している。

今後,本車両をベースに耐寒・耐雪対応などのカスタマイズを行った車両を,2017年春,東日本旅客鉄道の男鹿線に導入予定である。

8.SiCを用いた鉄道車両用インバータ

8.従来型IGBTインバータと新開発SiCインバータ

SiC(Silicon Carbide)を基材としたパワーデバイスの採用により,SiCモジュールの小型・低損失化を実現した。3.3 kV/1200 AのSiCモジュールを開発し,従来のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)モジュールと同じ出力密度における実装面積を2/3に低減した。併せてパワーデバイスの冷却効率を改善する冷却方式も開発し,内装の部品点数の削減により,インバータを40%小型化・軽量化した。

空気ブレーキの使用を最小化する回生領域の拡大や,機器損失の低減による車両の消費電力量(車両原単位)低減によって,高効率駆動システムを実現する。また,機器損失の占める割合が大きい誘導電動機において高調波損失に着目し,これを低減する誘導電動機の構造最適化と,PWM(Pulse Width Modulation)制御方式の最適化を実施することで消費電力量を削減した。近郊および通勤路線における現車試験では,従来の駆動システムと比較して車両原単位37.1%の低減を実証した。

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