日立評論

高機能材料

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日立評論

1.放熱性と信頼性に優れた回路基板コーティング材

家電やモバイル機器などの電子機器の回路基板表面には,結露による短絡防止のため,耐湿コーティングが施されている。一方,回路基板は部品の集約と小型化による発熱密度の上昇に伴い,放熱性の向上を求められている。そこで,高い放熱性を有する耐湿コーティング材を開発した。

主材料に高耐湿性樹脂を用いることで一般的な耐湿コーティング材よりも高い耐湿信頼性を確保し,熱伝導層と熱放射層から成る二層構造で,一般的な熱放散コーティング材よりも高い放熱性を実現した。熱伝導層は,コーティング膜内に分岐型セラミックス粒子を分散させることによって粒子間の熱伝導経路を増やし,高熱伝導化を達成した。また,表面に放射率の高い球状セラミックスを露出させることで放熱面積を増やし,熱放散性を向上した。

このコーティング材は,回路基板への塗布時に低比重の球状セラミックスが浮上し,自発的に二層構造を形成するため,従来のコーティング材塗布プロセスをそのまま活用できる。今後,高い放熱性と耐湿性が要求される機器への適用が期待される。

1.新開発コーティング材の膜構成(上),塗布による放熱性と耐湿性の向上(下)

2.高耐熱全固体リチウムイオン二次電池

固体電解質としてLiBH4系錯体水素化物を適用した全固体リチウムイオン二次電池(LIB:Lithium-ionrechargeable Battery)の抵抗低減を実現する基礎技術を開発した。また,開発技術を適用した小型電池(容量2 mAh,エネルギー密度30 Wh/L)を試作し,150℃において電池動作を実証した。

従来の有機電解液LIBは耐熱温度が60℃付近であり,用途が制限されているため,過酷な環境での使用や冷却フリーな蓄電システムへの適用が可能な高耐熱電池として,有機電解液の代わりに不揮発性の固体電解質を適用した全固体LIBの開発が期待されている。錯体水素化物を適用した全固体LIBは正極−電解質間の界面抵抗が高く,これまでその低減が課題であった。そこで東北大学WPI-AIMR(World Premier International Research Center Initiative-Advanced Institute for Materials Research)と共同で,Li-B-Ti-O酸化物および剥離抑制接合層を開発し,全固体LIBの界面抵抗低減に成功した。

今後の実用化に向けて,大容量化・高エネルギー密度化など,性能向上をめざしていく。

2.電池構成の比較と150°C環境での放電曲線

3.新コンセプト冷間工具鋼 SLD-i

冷間プレス成形においては,製品精度向上および被加工材の高強度化のため,金型の寸法精度や耐摩耗性が求められている。これらの要求に応える金型材料として,新コンセプト冷間工具鋼SLD-iを開発した。SLD-iは製造プロセスの革新により,成分はグローバルスタンダード鋼AISI D2(JIS SKD11相当)の範囲内にありながら,特性の源泉である炭化物の微細均一分散に成功している。

主な特長は,以下のとおりである。

  1. 熱処理変寸の抑制
  2. 経年変寸の軽減
  3. 耐摩耗性の向上

さらにSLD-iでは,ロット間での特性のばらつきを軽減した。これによって,バーリングパンチでの寸法安定によるかじりの抑制,プレートの精度安定,高張力鋼板成形型の切刃の摩耗抑制による金型寿命向上などの成果を得ることができた。

SLD-iの使用により,精密プレス型の高精度化および品質安定化,高張力鋼板成形用金型での耐久性向上などが期待される。

(日立金属株式会社)

3.SLD-iの炭化物分布イメージ

4.カテーテル用チューブ

4.各種カテーテル用チューブ

カテーテルとは,体液の排出,薬液の注入・点滴,血管の検査・治療などに用いられる医療用チューブである。中でも心疾患の検査・治療など,先進医療に用いられるカテーテルには,細径・薄肉・多層・マルチルーメン(多腔型)などの高い製造技術が必要とされる。

2016年,米国内でカテーテル用チューブ事業を展開するHTP-MEDS, LLCの買収に伴い,多様なカテーテル用チューブが日立金属株式会社の製品ラインアップに加わった。

HTP-MEDS, LLCのマルチルーメンチューブの主な特長は,以下のとおりである。

  1. 多ルーメン・異型ルーメン対応
  2. 小型精密サイズ対応
  3. 多様な材料を使用可能

さらにHTP-MEDS, LLCでは,硬度変化チューブや多層チューブなどの製品を製作することも可能であり,これらの技術や極細電線を組み合わせることで,さらなる高機能チューブの開発が期待できる。

(日立金属株式会社)

5.ショートストロークアクチュエータ Dual-Max

5.ショートストロークアクチュエータDual-Maxの外観と取り付け例

加振・防振を目的とした制振装置に搭載されるショートストロークアクチュエータの選択においては,従来,ソレノイドでは応答性が悪く,VCM(Voice Coil Motor)では形状が大きくなるという問題があった。これに対して,NEOMAXエンジニアリング株式会社は,両者の中間特性を有したDual-Maxを開発した。

本開発品は,コイル通電で発生した磁場とマグネットの吸引・反発作用を利用し,軸方向に可動子を動かすことで推力を発生させる。また,ケイ素鋼板を使った独自形状のコアを使用することにより,ソレノイドより高い応答性と,VCMより少ないマグネット量での高推力を実現した。

主にエレベーター防振用として納入しており,エレベーターが移動する際のガイドレールの歪みによって起こるボックス振動を抑制し,乗り心地を向上させることを目的としている。これは振動を打ち消す方向にDual-Maxでガイドローラーを可動させ,振動を吸収する仕組みであり,今後の適用拡大が期待される。

(NEOMAXエンジニアリング株式会社)(生産開始時期:2015年6月)

6.導電粒子超分散配置型異方導電フィルム

異方導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)は,FPD(Flat Panel Display)に搭載されるドライバIC(Integrated Circuit)チップなどの回路接続材料であり,熱硬化性樹脂の接着剤に導電粒子を分散した接着フィルムである。接続すべき回路間にACFを挿入して加熱・加圧することで,対向回路間の導電性と隣接回路間の絶縁性を発現させ,かつ両基盤を接着固定する。

近年,スマートフォンなどFPDの高画質化に伴い,搭載されるドライバICチップの接続(Chip On Glass)用ACFには高精細回路接続特性が求められている。そこで,日立化成株式会社の基盤技術である樹脂設計技術と導電粒子分散技術を発展させた,導電粒子超分散配置型ACFを開発した。

このACFは実装後も対向回路間で粒子が流動することなく,実装前の粒子単分散配置状態を保ったまま,効率よく粒子を捕捉することが可能となる。その結果,粒子の捕捉数のばらつきを抑えながら,高い捕捉数と高い絶縁抵抗値を両立し,従来品では困難であった高精細回路接続を実現した。

(日立化成株式会社)

6.ACFの特性

7.硫黄フリー高耐リフロー封止材

近年,自動車の電子化に伴い,車載用半導体は日々増加している。一方で半導体パッケージのコスト低減のため,従来の金ワイヤを安価な銅ワイヤへ置き換える施策も進んでいる。しかしながら銅ワイヤには,リードフレームとの密着性向上のため使用する硫黄原子含有の添加剤によって,腐食しやすいという欠点がある。AEC-Q006(Automotive Electronics Council-Q006)に定められた車載用半導体の信頼性試験の厳格な条件をクリアするには,リフロー工程での封止材とリードフレームとの剥離を抑えなければならない。

リフロー時の剥離対策として,エポキシ樹脂の改良によって吸水率および260℃付近での弾性率の低減を達成し,また硫黄原子非含有密着付与剤の改良によって接着力向上を実現した。これらを組み合わせることにより,硫黄原子を含まず,JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)MSL(Moisture Sensitivity Level)2においてリフロー時の剥離を抑えることができ,かつ高温保存性にも優れる硫黄フリー封止材を開発した。

今後は国内外へ展開するとともに,JEDEC MSL1ゼロ剥離をめざして開発を進める。

(日立化成株式会社)

7.リフロー後のCSAM(Constant-depth Mode Scanning Acoustic Microscope)画像

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