日立評論

協創による社会イノベーション事業を通じ,環境課題を解決する

「日立環境イノベーション2050」がめざすもの

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COVER STORY:CONCEPT

協創による社会イノベーション事業を通じ,環境課題を解決する

「日立環境イノベーション2050」がめざすもの

ハイライト

地球環境問題の解決に向けて,企業への期待が増す中,日立は,環境をめぐる世界の動向を踏まえ,「日立環境イノベーション2050」を策定した。
日立の環境経営でめざす姿を定めた「環境ビジョン」の下,「低炭素社会」,「高度循環社会」,「自然共生社会」の構築を実現していくための環境長期目標を設定している。
デジタル技術と協創で進化する社会イノベーション事業を推進していく中で,グローバルな環境課題に取り組む決意を示した。

目次

生活の質の向上と持続可能な社会の両立をめざす

図1│環境ビジョンと「日立環境イノベーション2050」

国連でのSDGs(持続可能な開発目標)の採択や,各国の批准によるパリ協定の発効をはじめ,豊かな地球を次世代へ引き継ぐため,環境負荷の低い社会の仕組みづくりが世界規模で模索されている。

日立は,これまで「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」という企業理念の下,重要な社会課題である環境問題解決に事業を通じて貢献してきた。近年の世界動向を踏まえ,2016年9月,環境経営でめざす社会の姿を示す「環境ビジョン」,および2050年を見据えた長期目標である「日立環境イノベーション2050」を策定し,環境への取り組みをいっそう推進していく構えだ(図1参照)。

日立が注力する社会イノベーション事業によって提供される社会インフラは,長期にわたって運用されるものが多い。したがって,中長期的な視点による環境への配慮がより重要になってくる。「環境ビジョン」と「日立環境イノベーション2050」は,そうした企業姿勢を内外に示すものであり,地球環境問題の解決にグループ全体が一丸になって取り組んでいく決意が込められている。

「環境ビジョン」として,「日立は,ステークホルダーとの協創による社会イノベーション事業を通じて,環境課題を解決し,生活の質の向上と持続可能な社会の両立を実現する」ことを掲げ,日立がその実現をめざす社会の姿を明確にした。また,このビジョンの下,気候変動の緩和・適応を通じて「低炭素社会」を,省資源化・再資源化を通じて「高度循環社会」を,生態系の保全を通じて「自然共生社会」を実現していく。さらに,「日立環境イノベーション2050」ではこれら3つについて,それぞれ具体的な目標を設定した。

「顧客・社会とともに変革を促す旗印」として

日立が環境長期目標として策定したのは,次の通りである。

「低炭素社会」の実現に向け,バリューチェーンを通したCO2排出量を2050年度までに80%削減する(2010年度比)。これは,IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書を参考にし,トップダウン目標として設定したものである。主な取り組み方針は次項で説明する。

「高度循環社会」の実現に向けた目標に掲げるのは,水・資源循環型社会の構築と,日立グループ内での水・資源利用効率の50%の改善(2010年度比)だ。主な取り組みとしては,質の高い造水,浄水,排水,下水に至る一連の処理を進化させ,循環利用を拡大するソリューションの提供および海水淡水化システムをグローバルに展開することによる水資源の創出がある。さらに,水・資源効率の改善のために,長寿命・省資源のモノづくりや,製品の回収・リサイクルの徹底,生産工程での水使用量の削減・廃水の浄化・再利用を強化していく。

「自然共生社会」に向けた目標には,自然資本へのインパクトを最小化することを挙げる。大気や水の浄化システムや自然モニタリングシステムなど,製品・サービスの提供を通じて,生態系を保全とするとともに,環境に配慮した調達活動を推進する。また,工場やオフィスにおける環境負荷も最小化とした具体策を掲げている。

これらの長期目標の達成には,日立が現在推進している顧客・パートナーとの「協創」が不可欠であり,「顧客・社会とともに変革を促す旗印」としている。具体的な推進は,3年ごとに環境活動項目と目標を設定した「環境行動計画」を作成し,それを実行することにより長期目標の達成をめざしていく意向だ。

「低炭素社会」実現のための具体的方策

長期目標の中で,特に日立が力点を置くのが,前述の「低炭素社会」の実現である。80%削減という長期目標を達成するためには,バリューチェーン上,9割以上の温室効果ガス排出量を占める「使用」段階での排出削減をいかに実現するかがカギとなる。

日立は,4つの方策によって「使用」段階での排出削減に取り組むとともに,自社の「生産」段階での削減もさらに推し進めていく。

第一に,事業構造を低炭素化へ移行させる。たとえば,自動車分野では自動車産業そのものが低炭素化に向かう趨勢に合わせてハイブリッド化や電動化をより重視していくことが考えられる。第二には,ブレークスルーとなる技術開発として,環境負荷の削減に寄与する革新的デバイス・材料の開発をめざす。第三には,産業機器やIT,原子力,再生エネルギー分野を中心に,超高効率プロダクツ・低炭素エネルギーの開発・普及をいっそう進める。そして第四の方策として,例えば都市全体といった広域で考え,複合的にシステム間で連携協調することにより,さらなる省エネルギーを実現する社会システムソリューションを普及させていく。

特にこうした複数にまたがる分野では,ITとOTの実績やノウハウを持つ日立の強みを大いに発揮しながら,顧客との「協創」の中で取り組んでいく考えである。

COLUMN

顧客や社会とともに取り組みを推進

CSR・環境戦略本部長
荒木 由季子氏

日立が事業の中核としている社会イノベーション事業は,非常に息の長い事業であり,しかもお客様や社会と一緒に取り組んでいくという性格を持っています。また,環境に対する配慮もより重要となってくることから,「日立環境イノベーション2050」の環境長期目標は,その点を踏まえて設定しました。

たとえばCO2排出量の削減について,自社においては従来から取り組んでおり,近年は工場エネルギーマネジメントシステムを導入して電力量の「見える化」をするなど,環境配慮への取り組みをさらに推進しています。しかしながら,バリューチェーン全体でみた場合,お客様に提供した製品・サービスの「使用」段階での排出量が圧倒的な割合となっているのが実態です。この使用段階での排出削減に関しては,私どもだけではCO2削減はできません。さらに,製品・サービス単体でなく,広域,システム的に複合した形で環境負荷削減を進めていく必要があるでしょう。

環境というと,企業の立場からはコスト増につながる抑制要因という感覚が強いですが,この社会課題をビジネスチャンスととらえ,社会イノベーション事業を展開していく中で,お客様,社会と一緒になって低炭素社会の実現に貢献していきたいと考えています。

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