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技術と事業を通して地球環境という課題に挑む

グローバルな協創により低炭素社会の実現へ

ハイライト

地球規模での産業化・都市化の進展に伴い,加速度的に深刻化してきた地球環境問題。地球温暖化,資源の枯渇,生態系の破壊といった国境を越えて広がる課題に対し,国際社会は国連を中心に結束して取り組み始めている。

長期的な未来へ向けた持続可能な発展には,環境意識を高め,多様なステークホルダーが団結して行動することが求められるが,日立グループは地球環境問題をどのようにとらえ,向き合っていくのか--。

日立製作所の田中幸二執行役副社長が語る。

目次

社会への貢献を事業として実践してきた日立

今日の社会はさまざまな課題に直面していますが,中でも特に深刻なのは地球環境問題です。地球温暖化をはじめ,資源の枯渇,開発に伴う生態系の破壊,大気汚染,水不足などは,社会の発展に伴って生じたものである以上,経済活動を通じてその発展を支えてきた企業にも解決に取り組む責任があります。

日立グループは,「優れた自主技術・製品の開発を通じて,社会に貢献する」という創業理念の下,これまで1世紀以上にわたって,技術と事業を通して社会への貢献を実践してきたのです。

そうした企業風土は,過去の物のように見られていた時期もありましたが,近年は,ESG(Environmental,Social and Governance)投資などが広がっているように,グローバル社会の課題解決に貢献することが企業価値として評価されるようになり,世の中の潮流がこちらに向いてきたと感じています。

日立の企業風土や姿勢は,今までも,これからも変わりませんが地球環境問題への取り組みはいっそう強化する必要があります。とりわけ重要なのは,全世界の気候に影響を及ぼす地球温暖化をこれ以上進めないこと,そのために社会のあらゆる領域で低炭素化を進めていくことです。

IT×OTでCO2排出量削減を実現

日立は,幅広い事業領域において環境経営に取り組んでいますが,CO2排出量の削減という面で特に効果が大きいのは電力や産業の分野です。これらの分野では,電力システムを構成する機器や産業機器の省エネルギー化,発電プラントの高効率化,低炭素エネルギーシステムの提供など,主に製品面での取り組みを進めてきました。今後はそれに加え,機器をつないだシステム全体としてCO2排出量を削減する考え方がカギとなります。

IoT(Internet of Things)を活用して,電力の需要と供給のバランスをとりながらグリッド全体をスマート化したり,産業プラント全体を効率化したりする,あるいは,人工知能を用いてより効率的な機器の運用方法を見つけ出すなど,最先端のデジタル技術を活用したソリューションが,さらなる低炭素化を実現します。

こうしたソリューションの多くはお客様との協創によって生み出していくものです。日立は,長年にわたって培ってきた社会インフラや産業インフラのOT(Operational Technology)とIT分野のさまざまな技術を生かし,IoTプラットフォーム「Lumada」を提供しています。実際に現場を動かす制御技術と,データを分析し活用する技術を融合させ,ソリューションの協創を加速するのが狙いです。

日立には,創業製品であるモータをはじめ,長い歴史の中で技術革新によって進化を重ね,効率性・信頼性を高めてきた製品群があります。社会・産業インフラに組み込まれ長期間使用されてきた多くの製品,設備,システムからIoTを活用して得られるビッグデータに,OTの豊富な知見を組み合わせ,例えば,お客様の現場のオペレーションも踏まえたエネルギー効率の改善など,より顧客視点での価値を提供できることが私たちの強みと言えます。

デジタル技術を活用したソリューションの協創を通じて,お客様のエネルギーコスト削減や生産効率向上とともに,CO2排出量削減を実現していく。さらに,そこから得られたノウハウをグローバルに横展開し,地域の特性に合わせた事例を増やしていく。こうした協創をさらに進展させることによって環境問題解決へのグローバルな取り組みを加速できると考えています。

新しい産学連携でイノベーションを

日立製作所 執行役副社長
田中 幸二
1974年株式会社日立製作所入社,2006年電力グループ日立事業所長,2007年執行役常務,2011年代表執行役執行役副社長,2016年代表執行役執行役副社長社長補佐(原子力,電力,エネルギーソリューション,産業・流通,水担当),公益財団法人日立財団理事長兼務

CO2排出量の削減には,長期的な視点で見ると,技術的なイノベーションが欠かせません。飛躍的な省エネルギーや高効率化につながる最先端の科学研究の成果を,いち早く実用化して広く社会へ広めていくことも,企業としての使命です。

研究開発グループは,長期的視点で将来の社会課題に取り組むグローバルオープンラボとして,世界の研究機関との連携を通じて技術革新をリードしていくことをめざしています。また,東京大学,京都大学,北海道大学と開始した共同ラボでは,実際に日立の研究者が大学に常駐し,オープンイノベーションに腰を据えて取り組んでいます。こうした活動が産学連携,産学協創の新しいモデルケースとなり,社会課題解決の実現につながるイノベーションが創出されることを期待しています。

長期的なビジョンで持続可能な社会を創る

日立は,1972年に公益財団法人日立環境財団を設立し(設立当初の名称は財団法人公害調査センター),時代に先駆けて環境問題に関する調査研究や,環境保全活動の普及・促進を支援してきました。1974年には株式会社日刊工業新聞社と共催で「環境賞」を創設し,環境保全に関する成果を上げた研究や技術開発,活動などを顕彰してきました。こうした財団の活動も,社会の環境意識の向上に少なからず貢献してきたのではないかと思います。日立環境財団を含む日立の5財団は,2015年に合併して私が理事長を務める日立財団となりましたが,環境保全や持続可能な社会の構築を支援する活動は,今後も継続していきます。

未来の持続可能な社会には,現在の社会のあり方を大きく変えていかなければなりません。2050年を目標年として「日立環境イノベーション2050」を策定したのは,環境問題の解決には長期的なビジョンが必要であることを再認識するとともに,グローバル企業として長期的な取り組みをリードしていくという私たちの決意をグループ内外に示すためでもあります。

日立はこれからも,グループ企業,パートナー企業,法人や個人のお客様など,グローバルに広がるステークホルダーの皆様との協創による社会イノベーション事業を通じて,環境課題を解決し,生活の質の向上と持続可能な社会の両立の実現に力を尽くしていきます。

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