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COVER STORY:CONCEPT

市場の変化を先取りし,顧客の成長戦略を支える

バリューチェーンの全体最適化へ

ハイライト

消費者ニーズの多様化と購買行動の変化,企業活動のグローバル化などの経済・社会情勢のさまざまな変化が,産業・流通分野にも変革を迫っている。IT・制御一体でのデジタルソリューションから産業設備ソリューションまで,幅広い産業・流通分野を支える事業を展開している日立の事業コンセプトを紹介する。

目次

産業・流通ビジネスの環境変化に応える

産業・流通分野のビジネス環境は,経済のグローバル化による競争の激化,デジタライゼーションの進展による技術革新の加速,eコマースにより消費者が牽引するマーケット構造への変革などを受け,大きく変わりつつある。ITが未発達の時代はマスマーケティングに基づく大量生産品,いわば製造がリードするマーケット構造であった。これに対し,ITやIoT(Internet of Things)が発達した近年は顧客ニーズの詳細な把握が可能になり,多様なニーズに迅速に対応できる企業が優位性を持つようになっている。すなわち,バリューチェーンにおける力点が製造から流通にシフトしているのである(図1参照)。

図1│産業構造の変化

日立は,そうしたビジネス環境の変化を鋭敏に捉え,製造から流通までを幅広くカバーするさまざまなソリューションにより,顧客の課題解決を支援している。2016年4月には,顧客との協創を加速するためフロント機能を強化したビジネスユニット制の事業体制に移行した。これにより,産業・流通分野の顧客が直面する課題を素早く把握し,豊富な製品群と高度なサービスの両輪によって,これまで以上に迅速かつ強力に課題解決を後押しすることが可能になった。

協創のベースとなるのは,日立自身が製造業として,あるいは顧客のニーズに応えて磨いてきた現場を動かすOT(Operational Technology:制御・運用技術),データを分析・活用して経営を支援するIT,そしてこれらを支えるプロダクトである。それらに,IoTプラットフォーム「Lumada」を活用し,社会イノベーション事業の領域に拡大させていく。ビッグデータ分析による経営支援サービスや予兆診断技術を利用した運用・保守サービス,そして,循環的な需要を喚起するリカーリングモデルなど,新規顧客や新サービスを創出しながら新分野の開拓を行い,産業・流通分野におけるイノベーションの創出をめざす(図2参照)。

図2│産業・流通分野で日立がめざす方向性

バリューチェーンの全体最適化をめざす

現在,ビッグデータ分析やAI(Artificial Intelligence),ロボティクスなどのデジタル技術の発展により,従来の手法や思考法をドラスティックに変えるデジタライゼーションの波が社会全体に押し寄せている。ビジネスにおいては,それらのデジタル技術を活用するとともに,業界の垣根を越えたパートナー企業との協創を通じた新たなエコシステムを構築することにより,市場環境の変化への素早い対応とバリューチェーン全体の最適化を実現し,経営効率化や競争力向上につなげることが期待されている。

日立は,そのための基盤としてIoTプラットフォームLumadaを提供している。Lumadaは,日立が長年,磨き続けてきたOTとITの実績を凝縮した顧客協創基盤である。現場の機器の稼働状況から,人やモノの動き,販売データなど,経営に関わる多種多様なデータを収集し連携させ,AIなどの最新技術による分析とその結果のフィードバックにより,顧客の課題解決と価値創出を支える。

このLumadaを活用することで,産業・流通分野では,End to Endのバリューチェーン全体の情報を見える化・共有し,設計から調達・製造・流通・販売・物流・保守に至るまで,これまでの個別最適化ではなく全体最適化を実現する(図3参照)。Lumadaはオープンな設計であるため,他社の製品・パッケージとも容易に組み合わせて構築することができ,フルバリューチェーンの全体最適化も可能にする。さらに,セキュリティ機能も備えており,業務データや経営データをセキュアに分析できるなど,顧客に適した環境を実現できるのも特長だ。

日立は,Lumadaを基盤としたデジタルソリューションの強化に向けて,多様化するニーズに対応するための設計・生産・流通の高度化,グローバル生産体制における品質確保,ますます複雑化・高度化する経営における意思決定の迅速化といった,産業・流通分野の新たな課題に応えるソリューションの開発とグローバル展開を加速している。

図3│End to Endの「つながり」で新たな価値を創出

Lumadaをコアにした主なソリューション事例

Lumadaでは,顧客のビジネスに素早く適用できるよう,OT×IT×プロダクトにより課題解決を実現したさまざまなユースケースをひな型化している。

変化のスピードが増す今日,価値創造の迅速化も重要性を増している。日立では,自動車,医薬品などの成長市場で課題解決の実績を積み上げており,今後はそうしたユースケースを活用しながら,幅広い業界にソリューションを提案していく。ここで,Lumadaをコアにした主なソリューション事例について紹介する。

◉ERPソリューション

膨大なデータの高速処理や分析を実現するインメモリプラットフォーム「SAP※)S/4HANA」を活用して,生産設備からのセンシングデータと連携・分析することにより,経営判断の迅速化や事業戦略の早期立案・実行を可能にした。日立はSAP関連ビジネスで国内トップレベル(日立推計)の提供実績があり,また,日立グループはSAPユーザーとしての豊富な適用実績・ノウハウを有している。こうした強みを生かして,業種ごとのテンプレートを提供することで,多様な顧客の課題に合わせたソリューションを提供する。

◉設計業務支援ソリューション

3D-CADやCAEなどのデータについて,分散された拠点間での設計環境の共有を可能にする,クラウド型設計業務支援サービスを開始した。バリューチェーン全体での設計データとノウハウの共有化,AIを活用した設計業務の高度化などにより,開発期間の短縮,製造現場の作業効率向上,設計プロセスのセキュリティ向上に貢献する。

◉医薬業界向けソリューション

医薬品分野では,特に非臨床試験から臨床試験,申請承認までの業務効率化ニーズが高まっている。日立では,こうした課題に対してコンサルティングサービスを提供している。また,ヘルスケアアプリや光トポグラフィなどから収集したデータに加え,医学論文をはじめとするオープンデータ,電子カルテなどのリアルワールドデータ,顧客内のインハウスデータを組み合わせ,AIによる解析でデータを価値に変えることにより,新薬開発のスピードアップ,アンメットメディカルニーズ(有効な治療方法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズ)の発掘など,創薬のイノベーション実現に向けた協創を推進している。

◉スマートマニュファクチャリングソリューション

先進の画像解析システムと製造実行管理システムをつなぐことにより,現場ノウハウ・プロセス・技能をデジタル化し,熟練技術の継承を支援している。例えば,製造現場の4M(Man,Machine,Material,Method)データを基に,作業員の逸脱動作や設備不具合の予兆を検出するソリューションを顧客と協創し,品質確保や設備稼働率の向上といった効果を上げている。

◉ロジスティクスソリューション

低温物流の課題である食品の安全・安心かつ効率的な配送の実現に向け,アジア圏を対象に物流データプラットフォームの提供をめざしている。荷物追跡や鮮度モニタリング,配送ルート最適化など多様なデータを総合的に分析することで,定時配送や温度帯・品質管理の保証を実現し,廃棄ロスの削減やQuality of Life向上に貢献する。

日立は今後,こうした最新の取り組みを,国内のみならずアジアや北米を中心に海外にも拡大していく。

※)
SAPは,ドイツおよびその他の国々におけるSAP SEの登録商標である。

COLUMN

デジタル技術を活用し,お客様と共に成長をめざす

宇川 祐行
日立製作所 執行役常務/産業・流通ビジネスユニット CEO

日立はこれまで,産業・流通分野において,コンサルティングやシステム開発,運用・保守などのSI(System Integration)事業,ERPやMESなどのプロダクト事業,産業設備ソリューション事業などを提供し,お客様のビジネスの効率化や最適化に貢献してきました。産業・流通ビジネスユニットではLumada をコアに,こうした既存事業の強みとお客様の現場を動かすOTを融合させ,日立だからこそできるサービスを提供していきます。

デジタル技術の活用によって,現実世界のデータに価値を持たせ経営に反映させることは,お客様の新事業や新サービス創生にもつなげることが可能です。現状の改善とともに,未来を見据えたお客様の成長戦略にも貢献することが,私たちの重要な役割です。そのためにも,幅広いお客様と協創による課題解決を実現し,共に成長していきたいと考えています。

Lumada をプラットフォームとして,パートナーと連携しながら,さまざまなシステムやお客様をつなぐことにより,これまでのバリューチェーンの枠を越えた,より柔軟で発展的な新たなエコシステムの構築に取り組んでいきます。私たちは,お客様と共に新たな価値を創造するIoT時代のイノベーションパートナーをめざします。

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