日立評論

エネルギーソリューション

電力・エネルギー

ページの本文へ

Hitachi

日立評論

エネルギーソリューション

電力・エネルギー

1.九州電力日向地区ダム総合管理システム更新

1.ダム総合管理室ダム総合管理室

日向地区ダム総合管理システムは,耳川水系8ダムおよび五ヶ瀬川水系2ダムの管内全10ダムに対して,日向土木保修所より一括して遠隔監視制御を行い,安全で確実なダム運用管理を実現することを目的としている。耳川水系は重要な連接ダムであり,システムとして重要な役割を担っている。

今回,ハードウェアの老朽化に伴い,システムを更新した。主な特長は,以下のとおりである。

  1. ダムに関する情報を収集し,ダムの状況/機器の状態などを基に,ダム総合管理室からの遠隔監視およびゲートの一括遠隔制御を行える構成とした。
  2. 耳川および五ヶ瀬川の水系ごとの訓練を可能にした。臨機応変なシミュレーション検証が可能となり,操作員の技術向上に寄与する。また,訓練評価機能の導入により,訓練実施者の操作に対する問題点を明確化することが可能となり,運用技術の向上にも貢献する。
  3. 各ダムのITV(Industrial Television)映像および入退所情報,セキュリティ情報をシステムに取り込むことで,ダム総合管理室で一括してセキュリティ管理が行える構成とした。

(運用開始時期:2016年11月)

2.中部電力基幹系統合型系統安定化システム西部方面運用開始

2.親局装置ISC-P(A系)親局装置ISC-P(A系)

中部電力株式会社の既設系統安定化システム更新に合わせ,過渡安定度維持システム(TSC:Transient Stability Control)と周波数維持システム(SSC:System Stabilizing Controller)を統合した基幹系統合型系統安定化システム[基幹系ISC(Integrated Stability Control)]を開発し,2017年5月より運用を開始した。

このシステムは,親局装置(ISC-P:Processing Equipment),子局装置(ISC-C:Control Equipment),故障検出装置・計測装置(ISC-S:Sensing Equipment),転送遮断装置(ISC-T:Transfer Trip Equipment)で構成され,複数メーカーが参画する一大プロジェクトを通じて開発された。日立はTSC機能やSSC機能など,システムの中枢で制御演算を担うISC-P(A系)の開発を担当した。

今回開発した基幹系ISCは,電気学会において新規性・有用性を高く評価され,電気学術振興賞の進歩賞を受賞した。また,システム開発・完成にあたっては中部電力より感謝状が授与された。

システムの主な特長は,以下のとおりである。

  1. TSCとSSCを統合し大幅にスリム化した。
  2. TSC機能において,電力系統の状況変化により複数の発電所が同時に動揺する事象への対応策として,発電機の加減速エネルギーに基づいて最適な制御対象を選択する手法を開発し,ISC-Pに搭載した。
  3. SSC機能において従来系統構成変更時に必要であったスイッチ操作を自動化し,運用面の効率を向上した。

3.東北電力広域分散形監視制御システム

3.東北電力 広域分散型監視制御システム東北電力 広域分散型監視制御システム

東北電力株式会社向けに,福島支店管内の制御所システムを納入した。このシステムは,福島支店管内のローカル系統の監視および運用を行う機能を有している。

主な特長は,以下のとおりである。

  1. 高信頼かつ長期保守が可能な自社開発ハードウェアによるライフサイクルコスト低減,高性能サーバおよび仮想化技術の適用による省スペース・省電力化を実現
  2. 隣接する他支店管内の制御所システムとの広域連係により,被災時などに相互バックアップして運用を継続可能とするシステム構成と機能
  3. 支援系ネットワークに接続したシンクライアント端末へのリアルタイム情報提供機能による,保守部門とのオンライン系統情報の迅速な共有と運用者の負担軽減
  4. 55インチ液晶ディスプレイ(28面マルチ構成)による,視認性と柔軟性の高い系統監視盤の実現
  5. 各種自動操作機能の充実・高度化およびHMI(Human Machine Interface)の高度化による運用者の負担軽減

このシステムにより,さらなる運用の効率化と高度化が期待されている。

(運用開始時期:2017年7月)

4.沖縄電力バックアップ自動給電システム

4.沖縄電力 バックアップ自動給電システム沖縄電力 バックアップ自動給電システム

沖縄電力株式会社では,1983年以来,発電機出力の制御から系統用変電所および配電用変電所の監視制御まで,すべてを1拠点で行う運用体制を維持してきた。今回,2拠点化によるBCP(Business Continuity Plan)対応を実現する,自動給電システムの非常災害時バックアップを目的としたバックアップ自動給電システムを納入し,運用を開始した。

主な特長は,以下のとおりである。

  1. 自動給電システムとバックアップ給電システム間で,発電所/変電所単位に制御権の切り替え管理機能を導入した。
  2. 各種運用データを相互に引き継ぎ,一致させることで,バックアップ時のスムーズな運用継続性を実現した。
  3. 仮想サーバを適用し,端末のシンクライアント化によりハードウェア台数を削減した。
  4. 運用モードの切り替えにより,オンライン/オフライン機能の運用拠点を切り替える機能を導入した。

このシステムにより,さらなる運用信頼性の向上と効率化が期待されている。

(運用開始時期:2017年8月)

5.東京電力パワーグリッド 新信濃変電所200 MVA同期調相機 固定子巻線取替工事の完了

5.東京電力パワーグリッド 新信濃変電所 同期調相機固定子の吊り出し作業東京電力パワーグリッド 新信濃変電所 同期調相機固定子の吊り出し作業

東京電力パワーグリッド株式会社 新信濃変電所の200 MVA同期調相機(RC:Rotary Condenser)は,系統の短絡容量が小さくなった場合でも周波数変換装置(FC:Frequency Converter)を安定的に運転するため,電圧不安定や高調波共振などの発生防止を目的に設置されている。1991年の運用開始より26年が経過し,固定子巻線の絶縁耐力の低下が確認されたため,取替工事を行い,機器の機能回復を行った。

RCが停止するとFCが融通する電力量に制約がかかることから,作業停止期間を極力短縮して実施する必要があった。そのため,安全性や作業性を考慮したうえで,休日も含めた作業実施などにより,標準で185日の停止期間を130日まで短縮し,予定工期にて取替工事を完了した。

(工事完了時期:2017年7月)

6.超高圧変電所向けデジタル形送電線保護リレー装置のレトロフィット推進

6.超高圧変電所向けデジタル形送電線保護リレー装置の外観超高圧変電所向けデジタル形送電線保護リレー装置の外観

送電線保護リレー装置は電力流通を支える重要な基盤設備であり,老朽化設備の更新にあたっては,設備停止期間の最短化が求められている。今回,レトロフィット手法※)の適用により,最新仕様を搭載した高機能なデジタル保護リレー装置への更新を実現した。

主な特長は,以下のとおりである。

  1. 最新のデジタルリレーユニット(Veuxbusシリーズ)の適用による高信頼度の確保
  2. 国際規格に対応した伝送方式の採用による通信設備を含めたトータルコストダウンの実現
  3. 既設装置の筐(きょう)体および外部ケーブルの流用による顧客工事期間の短縮
※)
経年装置に対し,主要部品であるデジタルリレーユニットをはじめとする劣化部品の部分更新を行う手法。

7.企業向けエネルギー&ファシリティサービス

企業にとっての最優先投資先が成長領域(工場生産設備増強,店舗拡大,研究開発,事業買収など)である一方,それを支えるユーティリティ設備への投資は進まず,老朽化の一途をたどっている。受変電などの電源設備において納入から25年以上が経過した老朽化設備は,国内で約1兆円規模にも及ぶと推定される※)

日立は,この社会的課題に対し,リニューアルを含めた最適化のためのプランニングから設計・調達・工事,資産保有,運用保全に至るまでのライフサイクルすべてを,顧客に代わってワンストップで行うOBF(On-Bill-Financing)サービスモデルを提供している。

主な特長は,以下のとおりである。

  1. プランニングおよび初期投資が不要であり,かつランニングにおいてもLTSA(Long Term Service Agreement)契約が可能
  2. IoT(Internet of Things)プラットフォームの活用によるファシリティの最適な運用と保守・保全
  3. EMS(Energy Management System)プラットフォーム活用によるエネルギーの最適運用

これらの機能を提供することにより,エネルギーとファシリティ運用の効率化とアセットライトを通じて,顧客の企業成長を支援していく。

※)
2017年12月現在(日立製作所調べ)。

7.OBFサービスモデルを活用したエネルギー&ファシリティサービスOBFサービスモデルを活用したエネルギー&ファシリティサービス

8.地域ユーティリティ事業者向け発電・電力取引最適化支援サービス

ドイツ連邦共和国では,再生可能エネルギー比率が拡大している一方,需給調整に対して,前日電力市場や当日の実需給30分前まで取引可能な当日電力市場の活用が推進されている。これらの電力市場は再生可能エネルギーの供給変動に連動しており,取引価格変動が大きいという特徴がある。

日立はこの変動の大きな電力市場に着目し,発電・電力取引最適化支援サービス(HETO:Hitachi Energy and Trading Optimization)の提供を開始した。このサービスは,日立の保有するデジタル技術を適用することにより,発電所の発電調整能力活用により発生する余剰電力を取引価格変動の中のプレミアム価格で取引を行うための計画と,発電所の運転計画最適化を同時に実現するものである。

同サービスはヘッセン州ダルムシュタットのインフラサービスを提供する都市公社(シュタットベルケ)であるENTEGA AGとの実証事業で有効性を検証し,商用化を進めている。

8.発電・電力取引最適化支援サービス発電・電力取引最適化支援サービス

9.バーチャルパワープラント

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー電源の普及拡大は,系統にさまざまな課題を生じさせつつある。日立は, EV(Electric Vehicle:電気自動車)や蓄電池,ヒートポンプなどの分散型エネルギー源によるDR(Demand Response)を活用し,ICT(Information and Communication Technology)を用いたアグリゲーション※1)・計画・制御により,これらの分散型エネルギー源を束ね,あたかも一つの従来型電源のように制御・活用する技術であるVPP(Virtual Power Plant)のソリューションに取り組んでいる。

米国ハワイ州では,2つのプログラムによって分散するエネルギー源を統合し,系統運用に活用するVPPの実証運用※2)を実施した。

1つはDRプログラムであり,住宅に設置されているEVや給湯器などの主要負荷に対して応答の速いDLC(Direct Load Control:直接負荷制御)を行う系統過負荷時の緊急負荷抑制や,需給計画から負荷調整スケジュールを作成し,各EVの利用設定を考慮したDRが電力システム上のピークを緩和できることを確認した[図9-1(左)参照]。

もう1つはVPPプログラムであり,前述のDRプログラムをさらに発展させたもので,系統への逆潮流可能な大量の蓄電池をアグリゲーションし,VPPとして需給調整を行いつつ運用する。EVユーザー宅に設置したV2G(Vehicle to Grid)対応のPCS(Power Conditioning System)を利用し,深夜および太陽光発電の発電電力が多くなる供給余裕時間帯に充電し,夕方など需要ピーク時間帯に放電することを基本的な動作としている。同図(右)の赤い実線が,各EVが通常運用で充電を行った電力実績の平均を表している。これに対し,放電方向および充電方向の棒グラフが,VPPプログラム実施期間中の充電および放電を表している。充電方向については,電力システムのピーク時間帯(18時〜21時)を避けて深夜帯に充電し,放電方向については,ピーク時間帯(18時〜21時)に放電をしていることが分かる。

以上の2つのプログラムの実証結果から,DRとVPPによる調整力が系統運用のリソースとして活用できることが確認できた。

英国マンチェスターにおけるスマートコミュニティ実証事業※2)では,需要家側に分散する蓄エネルギー源を対象にVPPを活用し,電力自由市場で各種サービスを提供するVPPのサービス実証を実証パートナーと共に行った。

1つは,各住宅に設置した550台のヒートポンプを活用した負荷の電力調整力をアグリゲーションし,まとまった電力調整力を電力取引市場や電力小売,系統運用者など電力事業関係者向けに取引するVPPプログラムである。利用者が設定した温度に対して温度差が2℃以上になると,DRプログラムが自動で離脱する機能,および利用者の手動操作による離脱機能を搭載することで,利用者の保護と利便性を確保しており,需要家の83%以上はDRを意識せずに電力を利用することができた。調整力の活用により7つのユースケース(図9-2参照)が可能であり,当初目標のネガワット量創出を確認し,アグリゲーターとの取引におけるDRがレギュレーションを満たすと評価された。

もう1つは,VPP事業から得られるデータを活用し,差別化や囲い込み,収益向上を目的とした付加価値サービスを行うデータ活用プログラムとして実施した,テレケアサービスである。実証ではVPPからの電力・温度と,ドアやモーションセンサーなど追加専用センサーのデータから,在宅状況や自動音声電話による状態確認,ケアマネージャとのチャット機能やケア履歴管理のIT化を行い,テレケアサービスの業務効率の改善と,データ活用サービスによる事業性改善効果を確認した。

以上の2つのプログラムから,電力自由市場の電力事業者へのVPPによる各種サービスが実現可能であることを確認できた。

日本でも2020年頃の電力システム改革第3段階に向け,電力事業の自由化は段階的に行われている。2017年にはネガワット取引市場の開設や系統運用者からの調整力公募が開始され,経済産業省がバーチャルパワープラント構築実証事業補助金を打ち出すなど,VPP導入が促進されている。また,自由化による競争の影響から需要家獲得ソリューションのニーズが高まっており,日立は,電力自由化が先行している海外の実証成果と運用ノウハウを基に,系統運用者や小売事業者・アグリゲーターが運用すると想定されるVPPとデータ活用ソリューションで,電力事業のニーズと課題に取り組んでいく。

※1)
分散型エネルギー源を群として束ねること。
※2)
経済産業省およびNEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organization:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助による実証事業。

9-1.DRプログラム(左)とVPPによる充放電マネジメント(右)DRプログラム(左)とVPPによる充放電マネジメント(右)

9-2.サービスユースケースサービスユースケース

Adobe Readerのダウンロード
PDF形式のファイルをご覧になるには、Adobe Systems Incorporated (アドビシステムズ社)のAdobe® Reader®が必要です。