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産業・流通・水

1.神奈川県内広域水道企業団綾瀬浄水場監視制御システム

綾瀬浄水場は,敷地面積23万4,495 m2,給水能力50万 m3/日を持つ神奈川県内広域水道企業団の中核となる大規模浄水場であり,1998年に運用を開始した。稼働開始から16年が経過し,このたび,システムの信頼性向上・運転監視業務の効率化をめざして,中央監視制御設備を一括更新した。

この工事には,各電気室でのモバイルPC(Personal Computer)によるWeb監視システムや,システムのセキュリティ対策も含まれている。Web監視システムは構内LAN(Local Area Network)を構築し,ノートPCを電気室に持参することで中央監視室と同等の監視を実現し,事故・保守・試運転時などの維持管理・保守に効果を発揮する。またセキュリティ対策では,負荷が大きく,監視制御システムのレスポンスを低下させるおそれのある一般的なブラックリスト方式ではなく,ホワイトリスト方式を初適用し,負荷を低減しつつも未知のマルウェアを無効化するセキュリティシステムを構築した。

(運用開始時期:2016年3月)

1.監視制御システムへのホワイトリスト適用のイメージ(左),綾瀬浄水場 監視制御室(右)監視制御システムへのホワイトリスト適用のイメージ(左),綾瀬浄水場 監視制御室(右)

2.東京都水道局 深大寺浄水所監視制御システム

深大寺浄水所(東京都)は,調布市第三浄水所として1965年5月に運用を開始し※),調布市内の井戸水源と東村山浄水場からの送水によって同市内へ給水を行っている。同浄水所の監視制御システムは,深大寺浄水所のほか複数の給水設備を遠隔監視操作している。

今回,配水池などの整備計画により,受変電設備,ポンプ設備および一部の監視制御システムの更新が必要となった。既設システムは2000年代初頭のハードウェア,OS(Operating System),ソフトウェアで構成されているため,一部更新においても大規模なハードウェア,ソフトウェアの改修が発生する予定であった。そこで既設システムのソフトウェアを新ハードウェアおよびOSに対応させることで,既設システムの継続運用を実現した。

主な特長は,以下のとおりである。

  1. 既設システムのソフトウェアを新ハードウェアおよびOSに対応させ,継続運用を実現した。
  2. 新設コントローラを二重化することにより信頼性を確保した。

(運用開始時期:2018年3月)

※)
2000年4月より,調布市水道事業を東京都に統合。

2.深大寺浄水所 監視制御システムの構成深大寺浄水所 監視制御システムの構成

3.広島市下水道局 宇品ポンプ場遠方監視システム

3.広島市下水道局 宇品ポンプ場の遠方監視システム広島市下水道局 宇品ポンプ場の遠方監視システム

広島市下水道局はポンプ場のポンプ運転業務の効率化を目的として,職員が常駐する拠点ポンプ場[宇品ポンプ場(旭町水資源再生センター系統),吉島ポンプ場(江波水資源再生センター系統)]に,管轄下にある職員が常駐しないポンプ場の集中監視制御システムを導入した。

主な特長は,以下のとおりである。

  1. TS(Terminal Server)方式の採用により,管轄するポンプ場(6か所)をVPN(Virtual Private Network)回線で接続し,かつ各ポンプ場のコントローラから各系統の拠点ポンプ場(宇品ポンプ場/吉島ポンプ場)と2拠点通信を行うことで拠点ポンプ場間での二重化を構築した。
  2. 双方の拠点ポンプ場から管轄するポンプ場の監視操作を可能とすることにより,管理体制の信頼性向上を実現した。
  3. 制御コントローラを二重化し,自動制御の信頼性向上を図った。
  4. 管轄するポンプ場の汚水ポンプおよび雨水ポンプの自動制御を統一化し,監視制御における業務の効率化を図った。

(運用開始時期:2017年4月)

4.単槽式MBRと高速凝集沈殿法による仮設水処理ユニット

4.仮設水処理ユニットによる処理フローの例(上),装置の組み合わせ例(下)仮設水処理ユニットによる処理フローの例(上),装置の組み合わせ例(下)

地方都市への下水道整備の拡大に伴って急激に普及した小規模下水処理場は,今後,本格的な改築更新の時期を迎える。しかし,水処理施設を1池しか有していない下水処理場などにおいて,改築更新時に水処理施設の稼働を一時停止する場合の仮設処理については,これまで汎用性の高い技術がなかった。

これに対し,日立製作所,地方共同法人日本下水道事業団および株式会社日立プラントサービスが共同開発した新技術は,実規模での実証試験の結果,工期短縮や省スペース化,省コスト化など,仮設水処理に要求されるニーズに応えつつ,安定した処理水質を確保できることが検証され,2017年3月,「単槽式MBR(Membrane Bioreactor:膜分離活性汚泥法)と高速凝集沈殿法による仮設水処理ユニット」として,日本下水道事業団の新技術I類に選定された。この技術は,各ユニットを単独または組み合わせて使用する可搬式仮設水処理装置であり,被災時の応急復旧処理への適用も可能である。

5.光ファイバーマルチセンシングシステム

日立製作所は,東京都下水道サービス株式会社および一般社団法人日本下水道光ファイバー技術協会とともに,下水道管路内の光ファイバーを活用した新たなセンシングシステムを開発した。

この技術は,管路内に数キロメートル間隔で設置したMSBox(Multi Sensing Box)に最大4種のセンサーを接続し,シングルモード光ファイバー1芯を通る光エネルギーのみでセンサーへの給電と双方向通信を実現する。これにより,無電源の下水道管内においても多地点・多種類の遠方監視が可能である。実際の下水管路内での実証では,不明水による水質の変動や硫化水素ガスの発生などが把握できた。得られた計測情報の解析から,不明水の対策や合流改善,老朽化への対応など,維持管理上の課題解決に貢献していく。

5.光ファイバーマルチセンシングシステムの概要光ファイバーマルチセンシングシステムの概要

6.水道の広域化と業務標準化に対応する業務支援技術

6.開発中の業務支援ツールの概要開発中の業務支援ツールの概要

水道インフラの老朽化が進む一方で技術者の数は減少しており,水道施設の効率的な維持管理が求められている。特に技術継承の問題は中小事業体などで喫緊の対策が必要であることから,管理の一体化や施設の共同化といった水道の広域化,および業務の標準化を早急に推進していく必要がある。

日立はこの課題を解決するために,水道の広域化と業務標準化に対応する業務支援技術を開発中である。この技術は,水道施設を維持管理するうえで行われる業務を標準業務手順 (SOP: Standard Operating Procedure)として共通化およびデータベース化し,作業者が水道施設を維持管理する際に業務フローとして提示することで,状況判断の簡易化とエラー低減を実現する。また,データの見える化や管理指標の統一も容易となる。

日立は今後もこうした業務支援技術で水道施設の維持管理の課題解決に貢献し,水道サービス事業を拡大していく。

7.高回収率海水淡水化ROシステムE-RexWater

7.従来法とE-RexWaterの設備比較(上),実証装置外観(下)従来法とE-RexWaterの設備比較(上),実証装置外観(下)

世界の水需要の高まりに応えるべく,海水淡水化技術の開発が進められている。こうした中,日立製作所は高回収率海水淡水化RO(Reverse Osmosis)システム「E-RexWater」を開発し,中東地域におけるシステム性能評価を実証装置(処理水量約500 m3/日)で実施している。

E-RexWaterは,従来の海水淡水化ROシステムでは40%程度であった水回収率を60%に向上した。また,高収率化による原海水量の低減に伴い,前処理・後処理設備を容量比で約30%削減し,設備全体で約15%の省エネルギー化を図るとともに,水資源である海水の保全および前処理薬品の使用量低減による環境負荷の低減を実現した。

このシステムと特長的なRO膜を組み合わせることで,さらなる省エネルギー化や造水システムの幅広い提案が可能となると考えており,さまざまな業種や地域による多様なニーズに貢献できるものと期待している。

8.南アフリカ若手技術者育成への貢献

8.有用細菌を担体に固定して行う排水処理技術を体験する研修生有用細菌を担体に固定して行う排水処理技術を体験する研修生

日立製作所では南アフリカ共和国の科学技術省(DST:Department of Science and Technology)と共同で,2009年度より若手技術者を毎年日本に招き,社会貢献プログラム「日立−DST南アフリカ技術者育成スカラシップ・プログラム」を実施している。2015年度からは自治体や上下水道事業体など,水処理や水管理に関わる若手技術者を毎年5名程度招き,日立グループや外部の協力機関,上下水道事業体などと連携して約2か月間の研修を日本国内で行っている。

2017年度は6名の研修生を招き,監視制御技術や水処理技術などの講義および技術研修を実施した。また,日本国内の上下水道施設や海水淡水化施設,水インフラ関連製品の製造工場の視察も行った。

このプログラムでの人材育成を通じて,日立グループは水環境分野でのさまざまな課題解決に貢献していく。

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