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高機能材料

高機能材料

1.温度逸脱検知インク

より安全で安心な食品・医薬品をエンドユーザーに提供するため,個別商品ごとに一貫した流通品質管理を可能とする温度逸脱検知インクを新規に開発した。商品の配送単位は,生産者から消費者に輸送される過程で,大型トラックやコンテナ単位から梱包箱,個別商品と少量化していく。現状,商品管理は高価なセンサー付き記録機を用い,大型トラックやコンテナなどを単位として限定的に実施されているが,消費者までの一貫した品質管理サービスの提供が望まれている。

今回開発した温度逸脱検知インクは,商品ごとに定められた管理温度帯の上限と下限からの逸脱を不可逆の色変化により検知するものである。個別商品のIDコードを組み合わせた温度逸脱検知コードを個別の商品やダンボール箱に付与し,保管倉庫や販売店などの各流通ポイントでコードをスマートフォンで読み取ることにより,商品の管理状態,時間,場所などの情報取得が可能となる。温度逸脱検知コードとIoT(Internet of Things)を活用し,生産から販売までの一貫した品質管理を安価なコストで実現する。

1.温度逸脱検知インクを用いた流通品質管理の例温度逸脱検知インクを用いた流通品質管理の例

2.高耐食・高耐摩耗クロム基合金

2.低コスト・高耐食を実現するクロム基合金のベンチマーク低コスト・高耐食を実現するクロム基合金のベンチマーク

ポンプや自動車などに使用される摺(しゅう)動部材は使用環境の過酷化や低コスト化の要求に伴い,高耐摩耗・高耐食化や高級金属の使用量低減が求められている。従来,高価なニッケル基合金やコバルト基合金が用いられたが,今回の開発ではコスト低減のためクロム基合金の製品適用をめざしている。一般的に,クロム基合金はフェライト相単相で優れた耐食性や強度を示すが,室温で脆(ぜい)性を示すため製品化は困難であった。

この課題を解決するため,硬質のフェライト相と軟質のオーステナイト相が共存する二相化合金に着目し,組成検討を行った。この結果,クロム基合金の良好な耐食性を維持しつつ,靭(じん)性を向上した合金の開発に成功した。これにより,コバルト基合金と比較して70%の原料コスト減,2倍の耐摩耗性および1,000倍以上の耐食性を確認した。

今後は,耐摩耗肉盛部材としてユーザー指定の工法に合わせた施工条件の選定や実使用環境下での適用性検討を推進する。

3.高熱伝導窒化ケイ素基板

3.高熱伝導窒化ケイ素基板の外観(上)とパワーモジュールの構造例(下)高熱伝導窒化ケイ素基板の外観(上)とパワーモジュールの構造例(下)

EV(Electric Vehicle),HEV(Hybrid Electric Vehicle)などのモータ制御用として急速に普及しつつあるパワーモジュールでは,絶縁性のみならず,温度サイクルにより発生する応力に耐えられる絶縁基板が要求されており,機械的特性に優れた窒化ケイ素(Si3N4)基板の採用が進んでいる。日立金属株式会社は,熱伝導率90 W/m・Kの窒化ケイ素基板の量産を行っているが,今回新たに熱伝導率を130 W/m・Kまで高めた窒化ケイ素基板を開発した。

パワーモジュールの高エネルギー密度化に伴い,絶縁基板に対する高い放熱性が求められる中,従来の窒化アルミ基板や窒化ケイ素基板と比較してより高い放熱性と,温度サイクルに対する高い信頼性を実現した。これにより,パワーモジュールの小型化・低コスト化に貢献するとともに,今後,普及が予想されているSiC(Sillicon Carbide)半導体素子の採用による高温動作化,および従来は窒化アルミ基板が使用されていた高耐圧用途への適用も可能である。

(日立金属株式会社)

4.圧力式マスフローコントローラーPS100シリーズ

4.圧力式MFC PS100シリーズの外観(左),構造図(右)圧力式MFC PS100シリーズの外観(左),構造図(右)

日立金属は,流量検出の経時変化を抑え,ガス圧力変動時の流量安定性を向上させるため,圧力センサーによる差圧検出方式を採用した圧力式マスフローコントローラー(MFC:Mass Flow Controller)PS100シリーズを開発した。

主な特長は,以下のとおりである。

(1)圧力センサーによる流量計測
PS100シリーズは,従来のサーマル式MFCと異なり,圧力センサーによって非加熱で流量計測することで,熱分解性ガスによるMFC接ガス内面への反応生成物が付着することを抑制し,経時変化を抑え,長期間にわたって安定した流量計測制御を行うことができる。
(2)圧力変動影響抑制機能の性能向上
MFC上流側には機械式レギュレーター,下流側には制御バルブを配置した独自の構造により,MFC前後のガスの圧力変動に対して,高い流量安定性を実現した。
(3)EtherCAT通信対応
アナログ信号でのインタフェースやDeviceNet通信に加えて,高速通信が可能なEtherCAT通信に対応している。

(日立金属株式会社)

5.鉄道車両用同軸ケーブル

5.新開発ケーブルの構造新開発ケーブルの構造

鉄道車両において車両内の無線通信機器が拡充され,無線通信機器に信号を伝送する高周波同軸ケーブルの需要が高まっている。鉄道車両に搭載されるケーブルには,欧州系火災安全性規格を満足することが必要とされる。そこで日立金属では編組シールド上の難燃性テープにより炎と絶縁体を遮断し,シースに適用した自社配合の難燃ハロゲンフリー材料の燃焼継続抑制効果により火災安全性規格を満足させた。さらに高周波帯域(〜6 GHz)での長距離伝送特性の向上をめざし,誘電率の低い発泡絶縁体を採用したほか,絶縁体上に導電率の高い銅箔(はく)シールドテープを縦添えすることにより,火災安全性規格に対応した高周波同軸ケーブルを開発した。また,導体からケーブル製造まで一貫して製造できるため,顧客要求に応じた伝送特性,構造寸法の高周波同軸線に対応することが可能である。

今回の鉄道車両通信ケーブルのラインアップ拡大により,今後,さらなる拡販をめざしていく。

(日立金属株式会社)

6.新表面処理Tribecシリーズ

Tribecは,金型専用に開発されたPVD(Physical Vapor Deposition)コーティングである。金型の損耗形態は用途によって多岐にわたり,必要とされる機能は単一ではない。これを踏まえ,各種金型に必要とされる特性を追求した表面処理Tribecシリーズを開発した。世界的なCO2排出規制を背景とした自動車の軽量化を実現する超ハイテン(高張力鋼板)成形用の冷間プレス成形およびホットスタンプ金型用のTribec炬(かがり),スマートフォンなどに電子部品を世界規模で供給する精密プレス金型用として開発されたTribec極(きわみ)は,市場の大きな期待に応えるべく,国内だけでなくグローバルな受託コーティング拠点展開を開始している。

主な特長は,以下のとおりである。

(1)Tribec炬
成形負荷の増大により重要度が増す,金型表面の酸化反応による保護膜形成作用を促進する膜構成に加え,コーティングの厚膜化に伴う表面粗さの課題をコーティングの前処理・後処理で解決する。
(2)Tribec極
特殊フィルタリングコーティング技術により,ダイヤモンド構造に近い高密度DLC(Diamond-Like Carbon) ta-C(Tetrahedral Amorphous Carbon)皮膜の平滑な表面性状を実現する。

複数の層を融合させることで多彩な機能性皮膜を実現し,これまでにない金型機能を提供していく。

(日立金属株式会社)

6.新表面処理Tribecの皮膜構造および機械的性質新表面処理Tribecの皮膜構造および機械的性質

7.高耐摺動摩耗性フェノール樹脂成形材料

7.開発材の摺動摩耗抑制メカニズム(上)と摺動摩耗試験結果(下)開発材の摺動摩耗抑制メカニズム(上)と摺動摩耗試験結果(下)

金属との耐摺動摩耗性に優れたフェノール樹脂成形材料を開発した。

従来の樹脂製摺動部品は,摺動による摩擦熱で表面が溶融したり,摺動摩耗時に発生した摩耗粉が研磨剤の役割となって摩耗を促進させるという点が課題であった。開発した耐摺動摩耗材は,熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂を使用しているため,熱可塑性樹脂とは異なり,摺動摩擦熱では溶融しない。さらにある条件下の摺動時には,摩耗粉に含まれる潤滑成分が自身および相手金属の表面に付着し,保護膜を形成しながら表面平滑性を保つため,摩耗促進が抑制できる。

開発した耐摺動摩耗材は現在,汎用エンジンのカム付きプーリに採用されており,今後はその他の摺動部材にも展開していく。

(日立化成株式会社) 

8.指紋認証モジュール用ダイアタッチフィルム

近年,セキュリティ強化を目的として,顔認証,虹彩認証,指紋認証など生体認証センサーのモバイル機器への適用が進んでいる。

スマートフォンに適用されている指紋認証センサーモジュールは,カバーガラスにセンサーチップを接着した構造や,センサーチップを半導体パッケージに組み込んだ後,カバーガラスに半導体パッケージを接着した構造などがある。従来,カバーガラスとセンサーチップまたは半導体パッケージとの接着剤にはペーストが用いられてきたが,生産性や厚みのばらつきを改善するためフィルムへの切り替えが進んでいる。そこでフィルム状接着剤として,半導体パッケージ中で半導体チップの支持体(基板,リードフレームなど)への接着に用いるダイアタッチフィルム(DAF:Die Attach Film)の適用を検討したところ,高接着性および高信頼性を達成することができた。

今後も半導体用材料として培ってきたダイアタッチフィルムの技術を用いて,次世代指紋認証センサーへのフィルム状接着剤の適用拡大を進めていく。

(日立化成株式会社)

8.DAFの製品外観と指紋認証モジュールへの適用例DAFの製品外観と指紋認証モジュールへの適用例

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