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顧客協創

研究開発

1.顧客協創方法論「NEXPERIENCE」

日立は,デザイン思考に基づく顧客協創方法論「NEXPERIENCE」を開発し,これまで300件以上の案件で活用している。「NEXPERIENCE」は,各業界のリーディングカンパニーとの協創活動において,将来ビジョン策定,アイデア創出,ビジネスモデル設計などのワークショップの質を高めている。また,パートナー企業と共に,日立の技術で社会課題の解決をめざした新しい保険サービスなどのイノベイティブな事業創生活動に貢献している。

イノベーション創出を加速するには,顧客の課題を深く正しく捉えるとともに,複数業種の知識を融合したアイデア発想が重要となる。そのため,エスノグラフィによる現場課題抽出とビジネスダイナミクスによる経営課題抽出を組み合わせた新たな顧客課題の分析手法を実践している。さらに,異業種で成功したサービス事例をパターン化してレコメンドする技術など手法の進化を進めている。

今後は,AI(Artificial Intelligence)を活用して人によるアイデア発想やビジネスモデル設計を支援するなど手法のさらなる強化を進め,イノベーションデザイン方法論の確立をめざす。

1.顧客協創方法論「NEXPERIENCE」の概要顧客協創方法論「NEXPERIENCE」の概要

2.グローバル研究チームInsights Laboratory

2017年4月,データアナリティクスやAI,顧客協創方法論「NEXPERIENCE」を活用し,日立のIoT(Internet of Things)プラットフォームLumadaの革新的ソリューションの開発を加速することを目的に,Insights Laboratoryが発足した。

Insights Laboratoryは,世界の主要地域に拠点を持つ日立製作所社会イノベーション協創センタ在籍の研究者やデザイナーに加え,Hitachi AI Technologyや音声・画像認識,自然言語処理,OT(Operational Technology)などの研究を行っているテクノロジーイノベーションセンタ在籍の研究者で構成しており,日立ヴァンタラ社(Hitachi Vantara Corporation)や日立コンサルティング社(HCC:Hitachi Consulting Corporation)および世界各地のフロント事業部と連携し,グローバルなIoTビジネスや市場参入戦略を推進している。また,Insights Laboratoryは,ビジョンの共有からソリューションコンセプトの創出,プロトタイプの開発や価値の実証までを顧客と共同で行うことで,日立の研究成果を示すだけでなく,顧客の真のニーズを満たすソリューションをグローバルに提供していく。

2.Lumadaの活用に貢献するInsights Laboratoryのグローバルな活動Lumadaの活用に貢献するInsights Laboratoryのグローバルな活動

3.欧州社会イノベーション協創センタ

欧州社会イノベーション協創センタの中核として,英国のCity of Londonに新たな顧客協創の拠点を開設した。この拠点は,顧客やパートナーと共に事業機会を見い出し,事業コンセプトやビジネスモデルを作り上げることで新たなソリューションを開発する顧客協創方法論「NEXPERIENCE」を提供するものであり,海外では北米に続く2番目の拠点となる。これは英国および欧州の顧客やパートナーが日立の研究拠点に容易にアクセスできるようにすることで,デジタル技術の活用による社会イノベーション事業のグローバル展開加速の一翼を担うものである。

この顧客協創空間は,デザイナーと研究者が協働して活動しやすいよう設計されており,先端研究とビッグデータ解析,ビジョン・サービスデザイン手法を融合し,欧州の顧客,パートナーと共に,成熟社会の抱える課題を解決するソリューションの開発を加速する。

3.新研究開発拠点のエントランス新研究開発拠点のエントランス

4.超スマート社会への協創を導く将来ビジョン

国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals)に加え,日本政府はSociety 5.0という新しい社会のコンセプトを掲げている。これは内閣府の第5期科学技術基本計画にて示された考え方であり,情報通信技術を活用することで,経済の効率化だけをめざすのではなく,人が暮らす豊かな社会を築こうとするものである。しかし,近年はデジタル技術の進展により人々の社会とのつながりや考え方が多様化し,社会システムのあるべき姿を容易に明確化できなくなってきている。日立は,IoT時代のイノベーションパートナーとして,Society 5.0の実現に貢献することをめざしており,将来の社会システムに関する具体的なアイデアを提示することで,社会システムのあるべき姿の議論をリードしていきたいと考えている。

ビジョンデザイン※)は,生活者の関心事を起点とした問題を提起し,これを解決する技術とサービスを例示することにより,求められる人と技術のインタラクションのあり方を探索する活動である。近年,多くのスマートな技術が開発されている一方で,人々の日々の生活の中にはこれらの技術では解決されない問題や,これらの技術によって新たに引き起こされる問題が存在している。ビジョンデザインでは,このような生活者視点の課題を示すことで,単にスマートであることを超えたヒューマニティのある社会システムについて考えることをめざしている(図4-1参照)。

家庭に置かれるコミュニケーションロボットを題材とした「Ageing with me」というビジョンを例に,ビジョンデザインで示す生活者視点の問題提起とその解決方法の仮説の例を示す。このビジョンは,データ分析が社会に広く浸透し,病気になる確率が数値で個人に示されてしまうという将来社会像を舞台としている。これは日立が望む社会像ではないが,将来社会において生活者が直面する問題を「起こりうる未来」として強調することで,新しい社会システムを考えるための論点を明確化するためのものである。この中で,認知症になる確率を知った高齢者の「消せない不安」という問題と,それに対する,ごくわずかな認知症傾向の表出に気づくロボットという仮説を設定している。この仮説では,問題に対応するために望まれる人と技術のインタラクションのあり方として,以下の3点を示している(図4-2参照)。

1点目は,1人暮らしの高齢者の発話を促すことである。ここで登場するロボットは,買い物などのユーザーからの指示を待つものではなく,豊かな表情を持つことで高齢者が話しかけたくなる存在となることができる。2点目は,行動のわずかな変化に気づくことである。長い時間を共に過ごす中で,慣れなどによって人では見過ごしてしまうわずかな行動の変化に,ロボットだからこそ冷静に気づくことができる。3点目は,少しずつ役割を変えることである。このロボットは認知症予防専用器として家庭に導入されるものではない。初めは買い物や服薬のサポートをしていたロボットが,徐々に認知症の進行を和らげるように役割を変化させる。これらによって,技術が生活者に寄り添い,技術ならではの問題の解決を進めるさまを示している。

このように,将来社会の中で生まれる生活者のどのような問題をどのように解決するのかについて,現時点では実現のハードルが高い技術を登場させたビジョンを示すことで,社会システムのあるべき姿と研究開発のテーマを探索する(図4-3参照)。

※)
"ビジョンデザイン

4-1.ビジョンデザインの構成とウェブサイトで公開中のコンテンツビジョンデザインの構成とウェブサイトで公開中のコンテンツ

4-2.認知症への不安を題材としたビジョン「Ageing with me」で示す技術とインタラクションのあり方認知症への不安を題材としたビジョン「Ageing with me」で示す技術とインタラクションのあり方

4-3.「消せない不安」が広がった社会で技術がどのように人に寄り添うことができるかを示したビジョン「消せない不安」が広がった社会で技術がどのように人に寄り添うことができるかを示したビジョン

5.欧州における港湾セキュリティの顧客協創

5.港湾セキュリティソリューションの例港湾セキュリティソリューションの例

人や貨物の輸送量の増加,テロの脅威,密輸の増加などに対応するため,港湾セキュリティ業務への負荷が拡大しており,その運用効率の向上が必要とされている。日立コンサルティング社と日立ヨーロッパ社(Hitachi Europe Ltd)は,セキュリティ分野での国際的な大手企業と,港湾セキュリティ業務のデジタル化に関する顧客協創を行った。

まず,顧客サイトでのエスノグラフィ調査とワークショップにより,既存のセキュリティサービスオペレータが直面する課題を特定した。そのうえで,これまで独立していた単体業務システム群を統合し,ワークフローを可視化した。タッチ操作ですべてのセキュリティアプリへのアクセスを実現したほか,モバイル機器で検査を行えるようにして作業を簡素化し,運用効率の改善を実証した。

この開発ソリューションは他のセキュリティビジネスへの横展開による新たな事業機会開拓につながるものである。また,アセット売却からデジタルセキュリティサービスビジネスへの事業モデルの革新もサポートする。

6.病院経営ソリューション

「健康中国2030」の実現に向け,民間資本活用による医療の質・量の向上に取り組む中国では,病院経営の効率化・安定化が課題となっている。

日立は,病院の運営ノウハウと情報システムを統合活用するソリューションの協創を通じ,患者満足度の向上と病院運営の効率化を実現し,病院の収益向上に貢献する。病院のPET-CT(Positron Emission Tomography - Computed Tomography)検査センタ開設においては,運営ノウハウに基づいたニーズ分析を通じて,患者と家族の満足度の高い空間デザインを病院と協創した。また,病院内の各種システムに格納されたデータに基づき,所要時間などの運営KPI(Key Performance Indicator)を算出し,業務フローや時系列に沿って表示するツールの開発を進めている。このツールを活用することにより,ボトルネックとなっている業務や要改善ポイントを見つけ,改善策立案支援や運営効率化を実現し,病院のパートナーとしてサステイナブルな経営に寄与する。

6.中国病院運営支援ソリューションの概要中国病院運営支援ソリューションの概要

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