日立評論

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電力・エネルギー

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日立評論

1.複雑な風況変化による風車への影響を評価する解析技術

1.山岳テストケースにおける地形および風況解析結果の例山岳テストケースにおける地形および風況解析結果の例

風力発電のための風車の導入が欧米や日本で加速しており,日本では山岳地への導入が進んでいる。日立は,翼がタワーの下流側にある,山岳地に適したダウンウィンド風車を製品化している。

風車の導入時には発電量や損傷度を評価する必要があり,従来は欧州のような平坦地を規準とした規格に沿った風のモデルを用いていた。このモデルでは,特に日本における山岳地のように複雑な地形の風況変化を再現することは難しく,風車1基ごとに発電量や損傷度が変化するという課題があった。そこで,風速および風の乱れを抽出した風況解析結果を,風荷重や発電量を翼素運動量理論に基づき計算する風車解析ソフトに組み込んだ。これにより,地形の影響による風況変化を考慮した発電量評価および損傷度評価が可能となった。地形の影響を適切に評価するこの手法により,従来の手法に比べて発電量は大きくなり,損傷度についても,従来の手法では考慮できない荷重変動を評価できるようになった。

今後,この手法を風車導入時の検討に役立てていく。

2.高効率を実現する大容量アモルファス変圧器

2.アモルファス鉄心と巻線の外観(上),アモルファス変圧器の内部構造(下)アモルファス鉄心と巻線の外観(上),アモルファス変圧器の内部構造(下)

省エネルギーへの要求が高まる中,日立では,電力設備の配電クラスにおける高効率機器としてアモルファス変圧器を実用化している。ケイ素鋼板を利用した変圧器より,鉄心で発生する損失(鉄損)が低いのが特長である。

この変圧器を一般民需の市場に広く普及させるために,環境省のCO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業の一環として,従来の最大容量4 MVAを大幅に超える大容量アモルファス変圧器を開発した。大容量化には,鉄心の大型化に伴う自重応力の増大により,鉄損が増加するという課題があったが,鉄心を分割し,さらに鉄心上部を複数の梁(はり)で吊る構造を開発することで,応力の抑制を図った。その結果,鉄損を増加させずに大容量化を実現し,ケイ素鋼板変圧器に対して鉄損を50%低減した。系統への接続中に常時発生する鉄損の低減により,大きな省エネルギー効果が期待できる。

今後,さらなる大容量化と高電圧化を図り,グローバルに展開していく計画である。

3.信頼性基盤技術とIoTによるリスクベース予防保全技術

IoT(Internet of Things)で収集した機械システムの実稼働情報を分析し,分析結果を信頼性設計や運用・保守に活用する技術を開発している。

この技術は,実稼働情報から製品の使用環境,作用荷重や構造信頼性を明らかにし,信頼性設計の高度化に活用することができる。また,故障確率と故障によるコストを乗じて得られる故障リスクを指標とすることで,信頼性をコストの単位で比較でき,機械システム全体,設計から運用・保守までの製品ライフサイクル全体を対象とした高信頼化が可能となる。

日立は,風力発電システムの実稼働情報をIoTでオンライン収集し,故障リスクを分析するアナリティクス基盤を稼働中である。アナリティクス基盤を用いて,システムの信頼性の継続的な向上と,顧客の利益最大化に貢献していく。

3.オンラインアナリティクス基盤の概要オンラインアナリティクス基盤の概要

4.作業員の被曝を低減する廃炉除染技術

4.化学除染装置の適用例(上),炭素鋼配管内面の化学除染結果(下)化学除染装置の適用例(上), 炭素鋼配管内面の化学除染結果(下)

発電を終えた原子力発電所には,運転中に発生した放射性物質を適切に管理しながら解体・撤去する廃止措置が行われる。廃止措置期間における作業者の放射線被曝(ばく)を低減するために,原子炉内構造物や配管に付着した放射性物質を溶解除去し,除染後の廃棄物量を低減する化学除染技術を開発した。

この技術では,除染対象部位の材料に合わせて好適な有機酸を選択することにより,放射性物質を高効率で溶解除去することができる。さらに,除染後の有機酸は放射性物質を含む廃棄物となるが,触媒を利用して有機酸を二酸化炭素,窒素,水に分解することにより,廃棄物発生量を有機酸分解しない場合と比較して10分の1以下に低減可能である。

日立は,開発した化学除染技術により作業員の被曝線量を低減し,安全な廃止措置を支援していく。

5.吸収式冷凍サイクルの複合化技術

工場や発電設備から発生する100℃未満の低温排熱は,その用途が限定されることから十分に活用されてこなかった。排熱で冷房を行う吸収冷凍機においても,熱源出口温度は75℃程度が下限であり,より低温の排熱の有効活用が課題であった。

そこで日立では,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO:New Energy and Industrial Technology Development Organization)の委託研究「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」において,51℃までの温水排熱を回収して冷房に用いる,一重効用ダブルリフト吸収冷凍機を開発した。これは,低温排熱の回収を可能とする新開発のダブルリフトサイクルと,従来の一重効用吸収冷凍サイクルを組み合わせたものである。この結果,従来は最大20℃程度であった熱回収温度差を約2倍の44℃とし,単位温水流量当たりの冷凍能力を約2倍とすることが可能となった。

この技術は今後,産業分野の低温排熱や夏季における地域温水ネットワークなどの未利用熱への適用が期待されており,日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社の新型冷凍機に採用されている。

(製品化時期:2017年4月)

5.一重効用ダブルリフト吸収冷凍機の外観(左),サイクル系統図(右)一重効用ダブルリフト吸収冷凍機の外観(左),サイクル系統図(右)

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