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1.鉄道業務分析向けデータ関係可視化技術

鉄道分野では,車両および線路の保守などの業務効率化や,列車増発などのサービス向上に向けた施策立案のためのデータ利活用ニーズが拡大している。今回,複数の業務システムデータを組み合わせた横断的な分析を可能とする鉄道業務分析向けデータ関係可視化技術を開発した。

従来,業務システムデータは部門ごとに蓄積されており,部門をまたぐ分析を行うには他部門の大量のデータ項目から必要なデータを選択する必要があったが,作業者が複数の関連業務に精通していない場合,データの意味が分からず分析が困難であった。そこで,メタデータや値集合からデータ項目間の関係を抽出し,同一の意味や相関の強さなどの関係をネットワークグラフで表現することで,データ理解を支援する関係可視化技術を開発し,複数の業務にまたがるデータの分析を容易化した。

今後はこの技術を導入した製品の提供をめざし,交通サービスの効率化,高度化に貢献していく。

1.鉄道業務分析向けデータ関係可視化技術の概要鉄道業務分析向けデータ関係可視化技術の概要

2.リングトポロジー鉄道無線信号システム

2.リングトポロジー鉄道無線信号システムの概要リングトポロジー鉄道無線信号システムの概要

無線通信技術のない時代から列車の安全を担保してきた鉄道信号システムは,列車の間隔や進路を制御するため,駅機器室に設置された高性能な中央装置が多数の沿線機器を制御するスター型のアーキテクチャを基本としている。これに対して,列車に搭載された車上装置が相互に情報を交換し,自律的にその安全を確保することができれば,中央装置は不要になり,ライフサイクルコストは大幅に低減すると考えられる。

そこで,近年急速に発達している無線通信技術を活用して,各列車の車上装置と各駅の転てつ器装置との間で各列車の進路情報を共有し,他の列車の占有していない範囲で線路上のどの場所へも安全に列車を走行させることのできる信号システムの仕様を確立した。具体的には,各列車の占有範囲や各転てつ器の鎖錠状態といった保安情報を1つの電文で一元管理し,その電文を関係する車上装置や転てつ器装置の間で回覧させる仕組みである。このリング型電文回覧による列車間隔制御や進路構成制御の安全性をFTA(Fault Tree Analysis)やFMEA(Failure Mode and Effect Analysis)などの分析技法を駆使して解析し,公益財団法人鉄道総合技術研究所からシステムの安全性確保の考え方について,安全上問題となる点は見られないとの評価を得ることができた。

今後,柔軟な列車運行を可能にする省設備な信号システムとして,国内外の鉄道事業者向けに実用化をめざす。

3.パブリックセーフティ向け人物発見・追跡技術

国内外で安全・安心へのニーズが高まる中,さまざまな場所に大量の防犯カメラが設置されているが,映像の確認作業はほとんど人手に頼っているのが現状である。今後さらに防犯カメラの数が増えれば人的負荷がより一層増えることから,映像解析技術による省力化が求められている。

これに対し,日立はAI(Artificial Intelligence:人工知能)を活用して,性別,年齢層,服の種類・色,所持品など100項目以上の人物属性を従来の約1/40の計算時間でリアルタイムに判別する技術と,全身画像を用いることで従来の約3倍の検索精度で膨大な映像の中から特定人物を抽出する技術を開発した。

この技術により,目撃情報を手がかりに広域の映像から特徴に合致する人物を瞬時に発見し,顔の映らない後ろ姿や遠方の映像からでも特定人物の足取りを詳細に追跡可能となるため,防犯カメラ映像の確認作業を省力化できる。

今後,この技術を公共空間での警備や捜査を支援する防犯システムに導入していくことで,社会の安全・安心に貢献していく。

3.人物発見・追跡技術の概要と利用シーン人物発見・追跡技術の概要と利用シーン

4.エレベーターの故障停止時間を短縮するセンサーレス同期駆動制御技術

4.エレベーター同期駆動制御の概要エレベーター同期駆動制御の概要

ビルの移動手段であるエレベーターは,高層化が進むアジア各国の都市を中心に世界中で必要不可欠なインフラとなっており,万一,故障が起きた場合でも,早期に復旧することが求められる。日立では,乗りかごを動かすモータの回転位置を検出するセンサーが故障した際に,保守員による従来の復旧作業の一部を自動的に行うことで停止時間を短縮する,センサーレス同期駆動制御を開発した。

今回開発した技術では,モータ回転位置センサーが故障した場合でも,回転位置を推定してモータを駆動することができる。また日立では,マイコン制御によって高精度化した電子安全技術により,乗りかごの位置・速度などの運転状況を常時監視している。センサー故障時でも,センサーレス同期駆動制御技術と電子安全技術による乗りかごの状態監視を併用することで,乗りかごを移動させることができ,短時間かつ安全にエレベーターを復旧させることが可能となる。

今後はこの制御技術を発展させ,さらなるサービス性の向上を図っていく。

5.協調自動運転向け通信・車両制御技術

5.AutoNet2030最終報告会での協調自動運転のデモの様子AutoNet2030最終報告会での協調自動運転のデモの様子

完全自動運転の実現に向けた開発が急速に進んでいる。Level 3(条件つき自動運転)は既に実機への搭載が始まっており,2030年までにはLevel 4(高度自動運転)が実用化されると考えられている。しかし当面の間は,自動運転と手動運転の車両が混在することになる。

日立ヨーロッパ社は,欧州プロジェクト「AutoNet2030」に参画し,混在環境対応の自動運転技術の開発を進めてきた。このプロジェクトの目標は,単独自動走行ではなく車両同士が協調する点が特長であり,通信技術がコアとなる。日立は,車車間通信(V2V:Vehicle-to-Vehicle Communication)と路車間通信(V2I:Vehicle-to-Infrastructure Communication)のプロトコルを協調自動運転向けに進化させる技術開発と,詳細地図の情報と各種センサー情報を統合し車両制御に提供するコンポーネントの開発を担当した。2016年10月にスウェーデンで開催された最終報告会では,合流車線から来た手動運転の乗用車が,協調自動運転で本車線を隊列走行中の乗用車とトラックの間にスムーズに合流・離脱するなどのデモを披露した。今後は,開発した技術の標準化と早期の実用化をめざす。

6.高出力パワー密度車載インバータの実装技術

二酸化炭素や窒素酸化物などの削減を義務づけた環境規制が世界各国で強化されており,電気自動車をはじめとする環境対応自動車のニーズが高まっている。今回,EV(Electric Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)向けに従来比2倍の出力パワー密度を実現した車載インバータを開発した。

インバータは小型・高出力化が求められており,インバータに搭載したパワーモジュールの放熱性能向上が不可欠である。そこで,パワー半導体が搭載されるパワーモジュールの両面に形成した放熱フィンを冷却水で直接冷やす直接水冷型両面冷却パワーモジュールを開発した。これにより,片側のみに放熱フィンを有する従来品と比べてパワーモジュールの冷却性能を35%改善でき,インバータの高出力パワー密度化を達成した。

今後もインバータ製品の性能向上を継続し,車両の電動化による環境負荷低減に貢献していく。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

(量産開始時期:2016年12月)

6.EV/PHEV用インバータEV/PHEV用インバータ

7.電動車両駆動用標準モータ

7.標準モータのステータ巻線標準モータのステータ巻線

昨今の地球環境問題に対応するため自動車の燃費・排出ガス規制が強化される中,車両電動化が注目されている。車両駆動用モータとして,小型・軽量,高出力,高効率を達成するため,永久磁石埋め込み式の同期電動機を採用した出力トルク/体格比の大きいモータの開発に取り組んでいる。モータの出力やトルク,寸法などに対する要求仕様はさまざまであり,複数の仕様に適用できる電動車駆動用標準モータを開発した。

標準モータのステータ巻線方式は,小型化・高トルク密度化を図るため,電線に角線を用いた波巻方式とした。角線を使用することにより,従来の丸線分布巻方式に比べて占積率(導体面積/スロット面積)を約20%,モータの出力トルク密度(出力トルク/ステータコア体積)を約15%それぞれ向上させることに成功した。

今後も環境規制の強化に対応するため,次世代標準モータ技術の開発で電動車両のニーズに貢献する。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

8.自動車制御システムの安全要件の自動検証技術

自動車制御システムは自動運転などの高度化に伴い,安全を確保するための要求仕様(安全要件)に基づいてシステムを開発することが国際標準規格で定められている。

従来の安全要件は,自然言語を用いた曖昧な表現がある場合,抜け漏れを検証するために専門家が時間をかけなければならず,また新規の安全要件の場合にはその記述および検証に時間がかかるという課題があった。これらの課題に対し,国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学の青木研究室の協力を得て,論理式によって表現の曖昧さを排除し,以下の技術を開発した。

  1. 自動検証することで記述漏れを確認する技術
  2. 検証済みの要件を再利用し,要件を自動生成する技術

この技術を電動パワーステアリングの安全要件に適用したところ,自然言語で記載された従来の表記に対して記述量が30%削減され,検証時間が10分の1に短縮された。またこの技術は,第三者試験認証機関により,国際標準規格ISO(International Organization for Standardization) 26262(機能安全規格)対応への有効性を認められた。日立はこの技術の普及を通じ,自動車制御システムの安全・信頼性を高め,加速する自動車産業の進展に貢献する。

(日立製作所,日立オートモティブシステムズ株式会社)

8.安全要件の自動検証技術安全要件の自動検証技術

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