日立評論

統合監視で街を守るトータルセキュリティソリューション

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日立評論

安全・安心,快適な「まち」を実現する公共・社会インフラ

統合監視で街を守るトータルセキュリティソリューション

ハイライト

今日私たちを取り巻く環境は日々変化し,セキュリティに求められる役割も多様化している。

日立では異常をリアルタイムに検知する技術に加え,迅速で確実な判断・対処を支援するソリューションを提供し,まちの安全・安心の確保に貢献していく。

目次

執筆者紹介

岡村 栄二Okamura Eiji

  • 日立製作所 ディフェンスビジネスユニット 営業本部 営業推進部 所属
  • 現在,社会インフラセキュリティ分野の事業開拓に従事

藤田 眞之Fujita Saneyuki

  • 日立製作所 ディフェンスビジネスユニット 営業本部 営業推進部 所属
  • 現在,社会インフラセキュリティ分野の事業開拓に従事

日野 一彦Hino Kazuhiko

  • 日立製作所 ディフェンスビジネスユニット 営業本部 営業推進部 所属
  • 現在,社会インフラセキュリティ分野の事業開拓に従事

1. はじめに

近年,世界各地で発生しているテロ事件やグローバルな人の移動の増加,予測できない異常気象といった自然災害など,私たちの生活を取り巻く環境は日々変化し,セキュリティに求められる役割も多様化している。

街区や空港,駅といった大規模施設や私たちの生活を支える社会インフラなどの施設では,必要に応じて監視したい場所に防犯カメラや各種センサーを設置し,防災センターや警備室などでモニタから監視する方法が一般的となっている。しかし,この方法では,すべてのカメラ映像を同時に監視することは不可能であり,仮にすべての映像を表示できたとしても,目視による監視では,危険や脅威発見の遅れや漏れといったリスクがある。また,複数の建物で構成される街区などの広域エリアにおいては,建物や分割したエリアごとに監視拠点が点在している場合も多く,それぞれの関連施設が持っているセキュリティ情報を共有することが難しいため,危険回避のために有効に活用できないという課題がある。

本稿では,社会インフラや街区などの広域エリアにおける多様な脅威に対し,リアルタイムに危機や脅威を検知するとともに,分析による状況把握,対応方法の判断,対処の実行に至るまでの一連のプロセスをサポートするトータルセキュリティソリューションについて紹介する。

2. 街を守るトータルセキュリティソリューション

テロや自然災害などの危機に対し,社会インフラの安定的なサービス提供やより安全で快適な街の実現のためには,これまで個別に管理運用されてきた複数のシステムと連携して監視する必要がある。具体的には,既存の設備の活用を含め,さまざまな種類のセンサーを共通のインタフェースによって相互接続することで,複数施設にまたがる監視エリア全体の統合監視を行う。これらの防犯カメラ映像やセンサー情報をリアルタイムに解析することで,監視エリア内で発生する事象を正確に把握し,危険の予兆段階から検知する。さらに,それらの情報をGIS(Geographic Information System)と組み合わせ,OODA[Observe(監視),Orient(分析),Decide(判断),Act(対処)]プロセスに基づくノウハウも含めて,意思決定や情報共有をサポートし,迅速・的確に判断・対処するための統合監視ソリューションを提供する(図1参照)。

以降で,監視・分析および判断・対処に関連したソリューションについて紹介する。

図1|統合監視で街を守るトータルセキュリティソリューションの概要防犯カメラの映像やIoT(Internet of Things)によるさまざまなセンサーデータを統合し分析することで,不審者・不審物や支援が必要な来訪者のリアルタイム検知を行い,対処支援ソリューションにより迅速に対応することで,安全・安心とサービス向上を実現する。

3. 監視・分析ソリューション

膨大な監視情報から異常を検知し迅速に対処するためには,リアルタイムにデータ分析を実施し,刻々と変わる状況を正確に把握することが重要である。例えば,映像解析により,重要施設への侵入を試みる不審者や一定時間以上置き去りにされた不審物を検知したり,サポートが必要な来訪者の存在を把握したりすることなどができる。

3.1 重要施設の外周監視ソリューション

従来の重要施設の外周監視においては,赤外線センサーによる遮断検知の場合,飛来物や小動物を誤検知する可能性がある。また,フェンスの振動やテンションを検知するセンサーの場合,はしごなどでセンサーの検知を回避されることも想定され,確実な対策を実現するにはさまざまな課題がある。

これらに対して日立は,外周監視にサーマルカメラを設置し,映像解析によるリアルタイムの侵入検知を行う外周監視ソリューションを提供している(図2参照)。

このシステムでは,防犯カメラ映像を解析して人を検知し,その人が禁止エリアに侵入した場合にアラームを発報し,その場所と検知映像を示す。

サーマルカメラは熱エネルギーを映像化するため,昼夜や明るさの変化に対する影響が小さい。また,熱エネルギーは透過性に優れるため,暗闇や煙,霧などの中でも可視化に優位性がある。さらに,カメラ1台当たりの監視距離が長く,システム全体のカメラ台数を低減する効果もある。

異常検知時には実際の映像を目視で確認できるため,侵入者かそれ以外の要因かを監視者が最終的に判断することで誤検知による無駄な出動を抑止することが可能となる。ディープラーニングによる人の識別など,さらなる検知精度向上の研究も行っている。

図2|重要施設の外周監視ソリューションの概要サーマルカメラの利用により,夜間などの暗闇や,雨,霧などの悪天候に影響されない外周監視が可能である。

3.2 車両下部撮影装置

国内においても,重要施設の入門や国際会議の検問などで,車両下部の点検を実施している場合がある。しかし,多くの場合は手鏡などを利用した目視による方法であり十分な確認が難しい。また,時間を要する,記録が残らないといった課題がある。

日立では,道路上に置いたカメラユニットの上を車両が通過するだけで,車両下部を鮮明に撮影可能な車両下部撮影装置を提供している(図3参照)。

加えて,車両下部だけでなく,前面や上部の撮影を同時に行うことで,車両外見全体の確認を容易かつ確実に実施するとともに,車両ナンバーを含めたデータベースとして記録を残すことができる。より確実に異常を検知するために,過去のデータと比較し差分を抽出することで変化位置を示す確認支援なども検討している。

図3|車両下部撮影装置の概要道路上に置いたカメラユニット上を通過することにより車両下部を鮮明に撮影し,映像の記録が可能である。

4. 判断・対処を支援するソリューション

さまざまなリスクに対して,安全・安心を確保し,より快適な街を実現するためには,把握した状況に対し,いかに迅速で確実な判断・対処を行うかも重要な要素となる。そのためには,異なる組織や事業者間において,単に情報を共有するだけではなく,各施設や組織が認識を共有し,連携して対処することが重要である。

4.1 情報共有ソリューション

街区など,複数の施設で構成される広域エリアにおいては,それぞれの施設ごとに通信網が整備されているものの,相互の通信は限定的なのが現状である。また,街区に限らず,社会インフラやその他の施設においても,警備や施設管理など組織ごとに内線電話やトランシーバなどの通信手段を保有して業務を行っており,組織間の相互の通信や情報共有は行われていない場合が多い。

このような状況を改善する手段として,既存の通信インフラ設備と携帯電話や無線などの異なる通信手段の統合や,音声だけでなくデータや映像などの通信を実現するマルチネットワーク連接装置を提供している(図4参照)。

これにより,通常は通信することができないトランシーバと固定電話や,周波数の違うトランシーバどうしの通信が可能となる。また複数の相手と同時に通話することも可能なため,複数の施設や組織の同時連携,迅速かつ正確な情報共有や指示を実現できる。音声と同時に,現場の従業員などが保有する情報端末に地図や図面,写真などを共有し,双方向で手書きなどの入力を行うことで正確で確実な情報共有が可能なソリューションとしてインタラクティブブリーフィング装置を提供している(図5参照)。

これらのソリューションにより,単なる情報ではなく認識の共有を可能とし,さまざまな事象に対する正確な判断と迅速な対処の実現を支援する。

図4|マルチネットワーク連接装置の概要固定電話,トランシーバなど通常は接続できない通信端末をシームレスに接続し,独自の通信インフラが構築可能である。

図5|インタラクティブブリーフィング装置複数の拠点や現場の情報端末とデータを共有し,双方向での手書き入力などにより確実な情報共有を実現する。

4.2 測位ソリューション

街区や大規模施設などの監視エリア内では,警備や清掃など複数の組織がそれぞれの業務を行っている。このため,異なる組織間において,誰がどこにいるのかを把握し連携することは難しい。また,特に屋内と屋外が混在する施設においては,その実現はさらに困難である。

日立では,屋外と屋内の測位をシームレスに実現する測位ソリューションを提供している。例えば,従業員が持つスマートフォンを利用し,屋外ではGPS(Global Positioning System)で測位し,屋内では施設に設置したビーコンを受信して位置を把握するとともに,センサー間は加速度センサーとジャイロを利用したDR(Dead Reckoning)によって移動距離と方向を推定することで現在位置を把握する。

屋内測位に用いる一般的なビーコンは電池などで駆動するため,定期的な電池交換が必要であり,大規模な施設に多数のビーコンを配置した場合はその作業が負担となる。これを解決する手段として日立は,屋内照明程度の明るさで発電した電力で駆動でき,夜間も蓄電デバイスで動作する,メンテナンスフリーのクリーンビーコンを活用したソリューションを推進している(図6参照)。

各従業員の位置を把握することで,異常を検知した際に近くにいる人を確認するなど,迅速で効率的な対応が可能になる。現在位置の把握だけでなく,移動ルートや滞在場所,時間なども記録されることから,蓄積したデータを分析することで,業務改善などへの応用や災害時の活用も期待できる。

また,ビーコンの活用を従業員だけでなく施設来訪者にも広げることで,ルート案内やマーケティングへの活用,エレベーターや照明,空調といった設備との連携など,さまざまな目的に利用でき,サービス向上の効果も期待できる(図7参照)。

図6|クリーンビーコンの概要ソーラーパネルを搭載し,無給電化・電池交換不要のメンテナンスフリー化を実現したビーコンであり,室内照明などの低照度環境でも24時間稼働する。

図7|クリーンビーコンによるサービス向上への応用イメージビーコンの活用によりロケーションにひもづいた情報の提供が可能になり,さまざまなサービスへの応用が期待できる。

5. おわりに

本稿では,多様化するセキュリティの脅威に対応するために,単に危険を検知するだけではなく,その後の意思決定や対処までをサポートするトータルセキュリティソリューションを紹介した。

今後も変化し続ける社会環境において,セキュリティが果たすべき役割にも進化が求められる。日立は,AI(Artificial Intelligence:人工知能)など,新たな手法や技術の活用により,今後も多様化していく脅威に対応する研究を進めている。これからも,街の安全・安心の確保と,より快適な生活のためのサービス向上を実現するソリューションを提供していく。

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