日立評論

まちづくりに貢献する日立ドローンプラットフォーム

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安全・安心,快適な「まち」を実現する公共・社会インフラ

まちづくりに貢献する日立ドローンプラットフォーム

ハイライト

少子高齢化に伴う人手不足が社会課題となる中,ドローンによる代替・支援を実現する動きが活発化している。

「まちづくり」では,インフラ点検,測量,農作物生育分析,物流・災害対応などでの活用が期待される。

本稿では,日立のドローン活用事例と,産学官連携した取り組みについて述べる。

目次

執筆者紹介

飯野 隆之Iino Takayuki

  • 日立製作所 IoT推進本部 ドローン事業開発プロジェクト 所属
  • 現在,ドローン事業開発プロジェクトの取りまとめに従事
  • 技術士(経営工学部門)

秋本 修Akimoto Osamu

  • 日立製作所 IoT推進本部 ドローン事業開発プロジェクト 所属
  • 一般財団法人総合研究奨励会 日本無人機運行管理コンソーシアム 事務局長

大野 泰三Ohno Taizo

  • 日立製作所 ディフェンスビジネスユニット 情報システム本部 ドローンビジネス推進センタ 所属
  • 現在,ディフェンスビジネスユニットのドローンビジネスに従事

浜野 美樹Hamano Miki

  • 日立製作所 システム&サービスビジネス統括本部 経営戦略統括本部 事業開発本部 所属
  • 現在,ドローン分野における海外有望パートナーとの事業提携と,海外での事業開発に従事

曽谷 英司Sotani Hideji

  • 株式会社日立システムズ 金融事業グループ ドローン・ロボティクス事業推進プロジェクト 所属
  • 現在,日立システムズのドローンビジネスに従事

太田 和孝Ota Kazutaka

  • 株式会社日立ソリューションズ クロスインダストリソリューション事業部 空間情報ソリューション本部 所属
  • 現在,日立ソリューションズのドローンを含む空間情報ソリューションビジネスに従事

1. はじめに

都市化が進んだ主要先進国のまちづくりには,少子高齢化に伴う人手不足やインフラの老朽化など,社会的な課題が山積している。これら課題の解決のために小型の無人航空機(以下,「ドローン」と記す。)の活用は有効な手段として期待されており,産学官でのドローンの社会実装に向けた技術開発の一方,法整備が急ピッチで進められている。これは,Society 5.0で実現しようとしている「超スマート社会」に向けた取り組みの一つでもある。

このような背景に対し,2017年4月に日立製作所IoT推進本部内に「ドローン事業開発プロジェクト」を立ち上げ,ドローンを活用したビジネス検討を開始した。日立グループのドローンを活用したソリューションを集結させ,日立ドローンプラットフォームを構築した(図1参照)。

また並行して,各種政策実現の支援と事業化を推進するための実行組織である一般財団法人総合研究奨励会が設立した「日本無人機運行管理コンソーシアム」(JUTM:Japan Unmanned System Traffic and Radio Manage­ment Consortium)の事務局を日立製作所が担うことにより,ドローンの社会実装とニーズの深掘に努めている。

図1|日立ドローンプラットフォームとソリューション概要日立グループのドローンを活用したソリューション群を一つのプラットフォームとして構築した。顧客の業務・バリューチェーン全体に新たな価値を生み出し,まちづくりの課題解決に貢献する。

2. まちづくりに対する課題

近年報道されているとおり,高度成長期に建設された多くの橋梁(りょう)やトンネルなどのインフラの老朽化が急速に進んでいる。

国内における土木・建築分野においても,東日本大震災などの激甚災害からの復興や,2020年の国際スポーツイベントに向けた会場建設などを背景に,これらの土木・建設工事を担う人材が不足している。

農業においては,機械による作業の自動化やICT(Information and Communication Technology)化を進めることによって効率を改善することが求められている。

また,国内の物流事業ではトラック輸送を担う人材不足が深刻化している。特に,離島間物流や地方の「買い物弱者」と呼ばれる消費者へ必要なモノを届ける物流ネットワークの再構築が求められている。

このように,まちづくりを行うさまざまな分野において人手不足が大きな課題であり,それを解決する手段としてドローンを活用した作業の効率化が期待される。日立ドローンプラットフォームは,業務を単にドローンに置き換えるだけでなく,顧客の業務・バリューチェーン全体に対して新たな価値を生み出すことを大きな目的とし,幅広い分野に向けた展開を行っている。

3. まちづくりに貢献する日立ドローンプラットフォーム

3.1 インフラ点検

株式会社日立システムズは,2016年9月にドローンの操縦や撮影代行,撮影した画像の加工と分析,パブリッククラウドも活用した「ドローン運用統合管理センター」のサービス提供を開始した。ドローンの知見がない事業者へも,機体の準備から運用,データ管理までワンストップでサービスを提供することができる(図2参照)。

例えば,人が行っている高所作業のインフラ点検業務においてドローンへの代替が進み始めているが,その際,ドローンによる点検業務の効果があるか事前に詳細な計画を立てることが非常に重要となる。具体的には,今ある点検マニュアルをドローンベースに見直し,対象とするものがクラック(ひび割れ)なのか,錆びなのかによって,ドローンの機種とカメラを選定する。何ミリのクラックを抽出するために,何万画素のカメラで何メートル離れた距離から撮影するかによって撮影枚数・データ量を算出するなどの綿密な計画を立てることも必要となる。

また,作業時においても,撮影した箇所がどこなのか漏れなく,簡単に把握できる「3次元台帳管理システム」を利用したり,撮った映像をリアルタイムにほかの場所でも見たりすることもできる「リアルタイム伝送システム」を活用する。さらには点検業務を終えた後の報告書の作成においては,「3次元台帳管理」を用いることで従来の手作業より効率的な書類作成支援を行う。

今後はAI(Artificial Intelligence),ディープラーニングも活用し,クラックや錆びを自動的に抽出できるようにしたり,さらには老朽化を予測したりすることまで可能なソリューションをめざす。

図2|「ドローン運用統合管理サービス」概要顧客業種ごとに適したドローンの選定・安全な運用から,データの収集・加工・管理のサービスをワンストップで提供する。報告書の作成の自動化も支援し,将来的には構造物の老朽化予測も行う。

3.2 測量(i-Constructionほか)

現在,国土交通省主導で土木測量の分野では,ICTの活用によって建設現場の効率化を図る「i-Construction」が推進されている。具体的には2016年4月より,3億円以上の入札施工に関しては,必ずドローンを用いて,3次元化された地形を示すデータを作成することが必要となった。国土交通省の計画ではすべての建設プロセスの管理を3次元化されたデータによって一貫管理することを推奨しているが,測量結果の3次元化は,大量の航空写真を重ね合わせて解析しなければならない。これに対して,ドローンの1回の飛行時間は30分程度であるため,効率的に飛行するためのルート計画を立てる必要がある。

日立システムズの「ドローン運用統合管理サービス」はデータの3次元化をクラウド上で高速で行うとともに,クラウドへの大容量データ転送も「多重転送」の技術を用いて高速転送が可能な点を特徴とし,ドローンの1回の飛行時間内で効率的なデータの3次元化を行うことができる。

また,株式会社日立ソリューションズでは,砂や鉱物を採掘する鉱山において原料の山をドローンで撮影し,3次元のデータにすることで原料の体積量を効率的に算出することができる「原料ヤード在庫量計測・管理システム」を提供している。同じ原理で,工事進捗に必要な重機で採掘した土砂の量を計測するソリューションも展開している。

3.3 農作物生育分析

日立ソリューションズでは「GeoMation 空間情報IoTプラットフォーム」をベースとしたドローン活用ソリューションを展開している。特に農業分野での利用が期待されており,さまざまなセンサーからの情報と空間情報を連携させて農作物の生育を監視する(図3参照)。

例えば,「圃(ほ)場・土壌管理システム」を用いることによってさまざまな情報と地図を関連付けて管理し,生産者ごとの圃場の作付体系,収益性などを的確かつタイムリーに把握し,現状に即した具体的な農業計画を立案できる。「クラウド型農業支援サービス」,「栽培管理サービス」では,生産者が直接インターネット環境で,生産履歴の登録や参照,検索,帳票の印刷,農薬使用のシミュレーション,農薬情報の利用を行うことができ,これにより農薬の適正指示用基準に従った積極的な食の安全・安心への取り組みをサポートする。これら生育管理はOT(Operational Technology)の領域,一方,圃場図・生産履歴・気象データなどはITの領域であり,日立のIoTプラットフォームLumadaのソリューションの一つとして実現されている。

図3|「GeoMation空間情報IoTプラットフォーム」農業への適用イメージGeoMation 空間情報IoTプラットフォームは,ドローンに搭載したセンサーから取得した農作物の生育状況と,圃場情報,気象情報などを収集・分析することで,営農計画や食の安全・安心の確保を支援する。

3.4 物流・災害対応

JUTMでは,2017年3月,10月の2回,複数の事業者が運航管理システムの管制の下で,物流・測量・災害対応など複数のドローンが同時に安全な運用を行う大規模な実証実験を福島県の福島浜通りロボット実証区域で実施した。

特に10月の実証では世界初となる「市街地を含むドローンによる物流連携」を成功させた。これは複数の物流事業者が浪江町で荷物を集約させた後に,重量物を積載できる小型無人ヘリにて約16 kmの距離を拠点間輸送し,南相馬市にて再び各事業者がドローンを活用して顧客に配送するものである。

また,災害対応として,通常は各自の業務を行っている事業者が,南相馬市の災害対策本部の指揮の下で,緊急物資輸送や被災者捜索を支援する実証も成功させた。

本実証は後述する日立製作所が提供する運航管理システムにより実現した。運航管理システムは「統合機能」と各事業者が持つ「運航管理機能」に分かれており,「統合機能」を用いることにより複数事業者にまたがる物流連携および災害対応を実現できる形となる(図4参照)。

図4|物流連携および災害対応運航管理システム統合機能により,「市街地を含むドローンによる物流連携」および「平時→災害時シームレス移行」を実現する。

4. JUTMと運航管理システム

現在ドローンビジネスでは,各事業者が個別に限られた範囲内での飛行を行う事例が多くを占めている。しかしながら,ドローンが数多く飛行する未来社会においては,複数のドローンどうしおよび有人機との衝突や電波干渉などを未然に防ぎ,安全に運用できるようにするための運航管理システムが必要になると考えられる。特にドローンを活用した物流事業のような,長距離飛行を行う必要のある事業者にとっては,目視外飛行を可能とするための運航管理システムの構築が必須になると予想される(図5参照)。

ドローンの運航管理に関する議論を行う場として,2016年7月にJUTMが設立された。本分野における第一人者である東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻の鈴木真二教授が代表を務め,150を超える会員(2017年9月1日時点)で構成される。JUTMは産学官界の関係機関・企業が入会しており,前述した実証実験のほかに,ワーキングなどによる検討を進めている。特に国際的な取り組みとして,JUTM国際標準化ワーキングを日立製作所が担当し,ISO(International Organization for Standardization)でのドローンの標準化活動に積極的に取り組んでいる。

一方で国による取り組みとして,2017年度より経済産業省が所管する国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO:New Energy and Industrial Technology Development Organization)による「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」の公募に際し,「運航管理システムの研究・開発」の担当として日立製作所が採択された。共同研究先各社と共に3年計画で運航管理システムの研究開発を進める※)。このNEDOの活動を通じて安全・安心なドローンの活用を実現する取り組みを推進する。

※)
この成果は,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務で研究開発中のものである。

図5|運航管理システム概要ドローンの空域管理・飛行計画・動態管理・電波管理を行うことで,ドローンの安全な飛行を支援する。

5. おわりに

このようなまちづくりの課題解決はまさにSociety 5.0につながるものであり,日立ドローンプラットフォームはさまざまなソリューションでその実現に貢献する。また並行して,JUTMの活動を通じて産学官と連携したドローンの社会実装を進める。

今後は,新たな価値を創出する「オープンイノベーション」のアプローチと,企業の枠を超えた「トータルイノベーションのエコシステム」の形成に向け,国内外の関係各社との協創を積極的に推進する。

参考文献など

1)
鈴木真二:ドローンが拓く未来の空 飛行のしくみを知り安全に利用する,DOJIN選書(2017.3)
2)
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」基本計画,12〜14(2017.1)
3)
大浦寛,JUTM福島デモンストレーション向け運航管理システムについて,第55回飛行機シンポジウム講演集,2〜5(2017.11)
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