日立評論

デジタルサイネージ向け総合情報サービス

IoT・AI技術を活用したコンテンツ配信

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日立評論

「まち」のQoL向上を実現するスマートライフ・ビジネス

デジタルサイネージ向け総合情報サービス

IoT・AI技術を活用したコンテンツ配信

ハイライト

日立は,デジタルサイネージ運用時の負荷を軽減し,より効率的な運用を提供する総合情報サービスを開始した。

防犯カメラやPOS,各種IoT機器からのセンサー情報やSNS投稿などをリアルタイムに収集・分析し,AI技術を駆使して,位置や時間に応じたコンテンツをリーズナブルに配信する。

目次

執筆者紹介

安蒜 英章Anbiru Hideaki

  • 日立製作所 アーバンソリューションビジネスユニット 街づくりソリューション本部 スマートモビリティ推進センタ 所属
  • 現在,主にデジタルサイネージ分野の高度情報配信の事業開発に従事

山田 敬一Yamada Keiichi

  • 日立製作所 アーバンソリューションビジネスユニット 街づくりソリューション本部 スマートモビリティ推進センタ 所属
  • 現在,主にデジタルサイネージ分野の高度情報配信の事業推進に従事

橋本 明大Hashimoto Akihiro

  • 株式会社日立システムズ マネージドサービス事業グループ スマートソーシング&サービス事業部 プラットフォーム基盤運用部 所属
  • 現在,主にデジタルサイネージ分野の高度情報配信のシステム開発に従事

眞鍋 英明Manabe Hideaki

  • 株式会社日立ケーイーシステムズ ソリューション事業部 システムソリューション本部 デジタルサイネージ部 所属
  • 現在,主にデジタルサイネージ分野の高度情報配信のシステム開発に従事

1. はじめに

デジタルサイネージ市場は,ポスターなどのアナログ媒体の電子化や,万一災害が発生した際の安全・安心のための活用,2020年の国際スポーツイベントでの訪日外国人対応などに向けて,今後ますます成長が見込まれている分野である。一方デジタルサイネージが街中で急速に増えており,多面展開する施設オーナーには管理コストの負担削減や,コンテンツを有効かつ効率的に配信管理するソリューション作りが喫緊の課題となっている。さらには高齢化,都市部と地方との情報格差などの社会問題に対して有効でタイムリーな情報発信が必要とされている。

これらの課題を解決すべく,デジタルサイネージ付近に設置したカメラ・センサー機器などからの情報や,設置場所に関連した天気,交通,SNS(Social Networking Service)などの各種情報を自動的に収集し,活用することとした。具体的には,配信コンテンツの内容とコンテンツ配信者が設定するターゲットに対して,収集した情報を基にAI(Artificial Intelligence)技術で最適な配信場所をマッチングさせる「総合情報サービス」を提供する。

2. デジタルサイネージの概要

デジタルサイネージとは,屋外,店頭,公共空間,交通機関などさまざまな場所で,ディスプレイなどのデジタル技術を活用して情報を発信するシステムである。

デジタルサイネージは大画面ディスプレイやネットワーク技術などの著しい進歩に伴い,コンテンツを表示したい場所・時に適切に配信・表示する技術の有効性についての認識が進み,急速に普及している。

またデジタルサイネージはOOH(Out of Home)メディアとして,テレビ・ラジオ・新聞に代わる新たな広告媒体としても期待されている。

2.1 日立のデジタルサイネージプラットフォーム

日立グループ内におけるデジタルサイネージとしては,株式会社日立ケーイーシステムズのMediaSpaceが挙げられる。交通,流通,金融などのさまざまな分野で国内約3万面の導入があり,多機能で信頼性の高いプラットフォームをクラウドサービスとして提供している(図1参照)。

図1|MediaSpaceサービス概要サイネージプラットフォームであるとともにコンテンツ提供,運用サポート,システム監視,配信代行のサービスを提供する。

2.2 デジタルサイネージの課題

デジタルサイネージは導入後,コンテンツを継続的に更新する業務が不可欠となる。特に広告を取り扱うようなデジタルサイネージの運用は,例えば以下のような複雑・煩雑な業務を厳密に行う必要がある。

  • 複数部門によるコンテンツの分担準備
  • コンテンツ内容の審査,承認
  • コンテンツ配信場所や表示期間の指定,管理

またこれらの業務に加え,ディスプレイの仕様に応じた複数のコンテンツ準備などの負担も増加している。さらにデジタルサイネージの急速な市場拡大のため,管理面数の増加や,多様なデジタルサイネージの出現により,施設オーナーや運用者の負担が増大している。

3. 総合情報サービスの実現

総合情報サービスは,これまでデジタルサイネージの運用時に負担となっていた業務の複雑さ・煩雑さを低減し,より効率的な運用を提供するサービスである。

具体的には以下の4つのサービスを提供している(図2参照)。

  • インテリジェントCMS(Content Management System:コンテンツ管理システム)
  • 共通配信プラットフォーム
  • データ収集,分析,利活用機能
  • 状況適合配信機能

図2|総合情報サービスの概要防犯カメラ画像,店舗のPOS,SNSの書き込み,天気予報や施設内の各種センサー情報などをリアルタイムに収集・分析することで,サイネージやスマートフォンの位置・時間に対応したコンテンツを配信する。日立のAI(Artificial Intelligence)技術を駆使することで,タイムリーで最適なコンテンツを適切な場へ提供する。

3.1 インテリジェントCMS

デジタルサイネージにおける実務上のさまざまなオペレーションを共通のワークフローとして処理する機能を有したCMSを「インテリジェントCMS」として提供している。

(1)表示計画の立案
インテリジェントCMSは,設置場所の特性に合わせたグルーピングやスケジュール設定を運用者が柔軟に設定できる表示計画の立案機能を実現している。
例えば朝夕の通勤者の流動の多い場所や,昼食時間帯に家族連れが滞留しやすい場所など,接触者の属性に合わせたグループ化を行って表示計画を立案することで,コンテンツと接触者属性を効率よくマッチングする計画を作成することが可能となる。
(2)コンテンツ表示枠管理
コンテンツ表示枠管理機能は,表示場所,表示期間,放映長などを管理する機能である。大規模なデジタルサイネージでは,コンテンツは複数の部門あるいは複数企業が分担して準備し,枠を管理する運用が一般的である。
コンテンツ表示枠管理機能では,運用に関わるさまざまな担当者,管理者に即した権限を細かく設定でき,業務をおのおのの職制,権限で分担し効率のよい運用を行うことが可能となる。
さらに表示枠を広告目的で利用する際,広告主や広告代理店が直接,枠を確保し管理する運用も実現する。
(3)コンテンツ登録・審査・配信
コンテンツの登録,配信にあたっては配信前に審査を行うワークフローを準備している。審査機能により,不適切なコンテンツ配信を抑制し,デジタルサイネージの信頼性を向上する施策を機能として提供している。
(4)緊急配信
万一災害が発生した場合や,緊急事態発生時に,デジタルサイネージの表示内容を通常のものから,防災・減災情報に切り替えたり,非常口,避難場所案内などの情報を表示したりするなどの連携を行うことが可能である。

3.2 共通配信プラットフォームによる一斉配信

共通配信プラットフォーム(以下,共通PFと記す。)は,総合情報サービスとさまざまな仕様のデジタルサイネージ配信システムとをつなぐインタフェースとして機能するクラウド基盤である。

共通PFを通してさまざまなロケーションの複数のデジタルサイネージ媒体にコンテンツを一斉に配信できる。施設オーナーにとっては,複数のデジタルサイネージ媒体に対する配信業務の一元化やリアルタイムで効率的な配信が可能となり,これまでのデジタルサイネージにはない運用を実現する(図3参照)。

図3|共通配信プラットフォームの概要配信システム各社との連携により,今までにないマルチベンダー配信サービスを実現する。

3.3 IoT機器によるデータ収集・分析・利活用

デジタルサイネージはIoT(Internet of Things)機器との連携により表示効果を具体的に確認したり,サービス提供内容を拡張したりするなどの効果を上げることが可能である。特に近年はカメラやセンサーの時間的・空間的分解能やソフトウェアによる分析能力が飛躍的に向上した結果,デジタルサイネージの設置場所における利用実態や効果を抽出しデータを有効化することが可能となっている。

(1)カメラ・センサーによる効果測定
カメラやセンサーによりデジタルサイネージの周辺情報を計測することで,通過人数の計測をはじめ,通過者の年齢・性別などの属性抽出,通過者の移動動線の追跡,付近に配置した商品の選択や購入動作の識別,サイネージの注視時間の計測など,さまざまな行動情報を取得することが可能となった。これらの情報を常時収集することでデジタルサイネージの具体的な効果を見える化できる。
(2)POS連携
店頭に設置するデジタルサイネージでは,店舗のPOS(Point of Sale:販売時点情報)との連携により,デジタルサイネージの表示と消費者の購買活動の関連性などを分析することが可能となる。これらは広告コンテンツの効果測定などにおいて特に有効である。
(3)スマートフォン連携
デジタルサイネージにセンサー・発信機などのIoT機器を付与することでスマートフォンとの連携を実現する。IoT機器としてはWi-Fiルータ,NFC(Near Field Communication)センサーや,バーコード表示などがあり,現在はさまざまな手法による連携が可能である。また音声入出力用のマイクやスピーカーなどもこれらの目的に適用可能である。
スマートフォンにあらかじめ配布したアプリケーションとデジタルサイネージをつなぎ,イベント情報やクーポンの配信,デジタルサイネージ配信情報の持ち帰りなどの情報連携を実現する。
(4)SNS連携
デジタルサイネージの設置店舗や,放映したコンテンツの内容に関する投稿・レコメンドを抽出・集計することで,デジタルサイネージの設置効果や認知度,コンテンツ配信によるプロモーション効果の測定が可能となる。
Wi-FiはWi-Fi Allianceの商標または登録商標である。

3.4 IoT,AI技術の活用と状況適合配信

本サービスではIoT,AI技術を活用し,デジタルサイネージの設置場所や時間に関する情報,表示コンテンツ,接触者のPOSやSNSなどによる行動結果の蓄積・分析などを行い,サービスの運用者に対して,コンテンツの最適な配信先,配信条件の提案や,自動配信などの機能を提供する(図4参照)。

(1)状況適合配信
デジタルサイネージの設置状況や表示の時間帯により,接触者の属性が異なる場合が多いため,対象コンテンツと接触者属性の関連性が高い場所への配信を提案し,また自動配信を行う機能を提供する。
(2)コンテンツ分析
コンテンツに含まれる画像を分析する技術により,不適切映像の識別や配信回避の提案を行う。またコンテンツにより引き起こされる感情(例えば喜び,安らぎ,不安など)を分析機能で抽出し,付加情報をメタ情報として付与する。
またコンテンツと効果測定との比較から,該当コンテンツの訴求力の高い/低いなどの評価結果の報告も可能とする。
(3)設置条件に対するレコメンド
複数のデジタルサイネージを運用した結果,配信効果などの効果測定を継続するとともに,デジタルサイネージ間のデータを比較することで,個々のデジタルサイネージの優れている点や苦手とする点,改善すべきポイントなどの抽出と提示を行う。

図4|総合情報サービスが狙うサービスサイクルAI,センサーとサイネージを有機的に組み合わせることで,より付加価値の高い,成長する配信サービスを実現する。

4. おわりに

流通業界においては,買回り品におけるEC(Electronic Commerce)の台頭による流通業界の変容の結果,あらゆる「ウリモノ」がサービス化していくデジタルトランスフォーメーションがメガトレンドとして押し寄せている。

一方,オムニチャンネル化やパーソナライズされたサービス提供により店舗回帰の傾向がある。また,人材不足や高齢化などの社会課題にも対応するため,宅配サービスや店舗のICT(Information and Communication Technology)による高度化が必須となっている。

これらの状況に対応する総合情報サービスは,OT(Operational Technology)×ITにより得られる膨大なデータを基に,IoTプラットフォームLumadaによって顧客に新たな付加価値を提示するものである。Lumadaを利用したデジタルサイネージ向け総合情報サービスにより,新しい「売り方」を実現しようとしている事業者と共に高付加価値サービスを協創し,店ナカ,街ナカ,家ナカの情報をつなぐことで人の生活行動接点をもつなぐ統合マーケティングプラットフォームへの成長をめざしていく。

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