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OT×IT×プロダクトでSociety 5.0の実現を支える

人間中心のスマートな社会をめざす日立のデジタルソリューション

ハイライト

急速に進歩するデジタル技術が,データの高度な利活用による新しい価値の創出を可能にしている。デジタル技術を活用した社会イノベーション事業を通じて人間中心の超スマート社会「Society 5.0」の実現をめざす日立の取り組みを,執行役副社長の塩塚啓一が語る。

目次

社会全体でデジタルトランスフォーメーションを

塩塚 啓一

塩塚 啓一
日立製作所 執行役副社長
1977年日立製作所入社,2005年情報・通信グループ金融システム事業部副事業部長,2010年情報・通信システム社事業執行役員金融システム事業部長,2012年理事 情報・通信グループ情報・通信システム社システムソリューション部門COOなどを経て,2015年執行役専務 情報・通信グループ情報・通信システム社システム&サービス部門CEO,2017年より現職。社長補佐(金融,公共社会,ヘルスケア,ディフェンス,サービス・プラットフォーム担当),システム&サービスビジネス統括責任者,システム&サービスビジネス統括本部長,社会イノベーション事業統括責任者を兼務。

産業界にデジタライゼーションの波が押し寄せています。IoT(Internet of Things),ビッグデータ,AI(Artificial Intelligence),ロボティクスなどのデジタル技術のここ数年の進歩は目覚ましく,それらを活用することにより,新たなビジネスモデルやサービスモデルの創出,生産性の飛躍的な向上などを実現する第4次産業革命が幕を開けました。

こうした動きは海外でも見られ,主に製造業を中心にデジタル革命への期待が高まっています。その背景には,経済が堅調に推移する一方で,長期的な視点で見たときに成長力が鈍化しているという,先進国共通の課題が挙げられるでしょう。停滞を抜けだし成長を持続するためには,デジタル革命を製造業だけでなく金融業,公共サービス,エネルギーや鉄道などの社会インフラ,さらには商業からヘルスケアまで含めたさまざまなサービス業にまで拡大していき,社会全体でデジタルトランスフォーメーションを実現していかなければなりません。それが,日本政府が推進するSociety 5.0の取り組みです。

IoTの活用による最適化やAIのサポートによる効率化などは,人口減少という特に大きな課題を解くカギとなります。年齢や性別を問わず,あらゆる個人が活躍できる社会,どんな場所でも安全で快適に暮らし仕事ができる,人間中心のスマートな社会を実現するために,法制度と共に技術で後押ししていくことが求められます。

他方,デジタルトランスフォーメーションが進むと,光だけでなく影の部分も拡大します。すでに社会の脅威となっているサイバー攻撃など,便利さの裏側にあるリスクにもしっかりと目を向け,セキュリティの対策をしていかなければなりません。

イノベーション創出を加速するデジタルトランスフォーメーション

Lumadaを基盤にサービスビジネスへシフト

デジタライゼーションの進展は,プロダクトからサービスへとビジネスにおける収益の源泉をシフトさせ,金融や小売などの一部の業種に大変革をもたらしています。従来の業界,業種の枠を越えたプレーヤーの参入による市場構造の変化が加速し,業界を牽(けん)引するキープレーヤーの交替なども起きています。

日立もプロダクト中心のビジネスを100年以上続けてきましたが,社会とお客様のビジネス環境の変化を見据え,デジタル技術を核としたサービスビジネスへと舵を切っています。2010年に社会イノベーション事業への注力を打ち出したのも,デジタル化の進展に合わせてみずから事業構造を変えながら,お客様のビジネスとSociety 5.0の実現に貢献していくためです。

日立には50年を超える歴史を持つITと,社会インフラ分野を中心にプロダクトとともに100年培ってきたOT(Operational Technology)があります。これらを掛け合わせると,フィジカル空間においてプロダクトが生み出すデータをサイバー空間に集め,分析した結果を,プロダクトを動かすOTにフィードバックすることによって,全体最適化を実現できます。それは,ビジネスの効率化や生産性向上,生活者の快適性や利便性の向上といった価値につながります。

社会イノベーション事業では,このOT × IT×プロダクトによる価値創出をサービスの視点から考え,お客様と一緒に価値を協創しています。社会変革や技術革新のスピードが速まっている今日,長い開発時間をかけて完成したシステムを納めるよりも,課題発見から仮説設定,検証というサイクルを素早く回しながら,お客様と一緒にソリューションを磨いていくことが求められています。強い技術とプロダクトはもちろん重要ですが,それをサービスとして生かすことで,迅速な価値協創が可能になるのです。

そのための基盤となるのがIoTプラットフォームLumadaです。Lumadaには,ビッグデータやAI,セキュリティなどのさまざまな要素技術とともに,OT×ITのユースケースをテンプレート化した数百件のソリューションコアを用意しています。さらに,ExアプローチとNEXPERIENCEという日立独自の協創ツールを活用し,お客様とのビジョンの共有に始まり,コンセプトを創り,それを具現化していくというプロセスを一貫してサポートしています。

また,自社技術だけでなくPentahoやOSS(オープンソースソフトウェア)などの優れた技術も積極的に取り入れながら,ソリューション協創のスピードアップを図ってきました。その成果としてお客様との協創案件も着実に増えています。海外でも,米国サンタクララに設立した日立ヴァンタラ社を拠点に,Lumadaを活用したデジタルソリューションのグローバル展開を加速しています。

「デジタルセントリック」が分野を越える

昨年,日立は社会イノベーション事業のさらなる成長に向けて「電力・エネルギー」,「産業・流通・水」,「アーバン」,「金融・社会・ヘルスケア」という注力4事業分野を設定し,それぞれに担当の副社長を配置しました。私が担当する金融・社会・ヘルスケア分野は,一見すると互いに関連が薄い分野のように感じられますが,デジタルセントリックであること,つまりデジタル技術を中心に据えることで大きな変革が期待できるという点は共通しています。日立が長年ITサービスを提供してきた金融と社会の両分野に加え,ヘルスケア分野でもデジタル技術を活用する事業領域を増やし,それらをビジネスユニットの枠を越えてつないでいくことで,デジタルソリューションの力を最大化できると考えています。

各分野にフォーカスすると,まず金融ではフィンテック(Fintech)という新たな潮流が注目を集め,海外ではスマートフォンを活用した金融サービスなどを提供するスタートアップ企業も数多く登場しています。国内でもデジタル技術を活用した金融・保険商品やサービスの開発に期待が高まる中で,日立は,エンドユーザーに新しい価値を提供することをめざしたお客様の取り組みを支援する,デジタル金融イノベーションに力を入れています。

言語系AI技術の金融サービスへの適用,医療ビッグデータの利活用による新たな保険サービス・商品の創出,スマートフォンの汎用カメラで実現できる指静脈認証技術と決済への応用などは,その先進的な例として挙げられます。また,金融の主要機能の一つである決済システムは,社会インフラとしても重要です。ブロックチェーン技術を基盤に商流や物流などと連携させることで,契約や取引のスマート化を図ることもできるでしょう。

データ活用を支えるセキュリティにも注力

社会分野では,官公庁や自治体に加え,エネルギーや交通などのインフラ分野で基幹業務システムを支えてきた実績を生かし,デジタルソリューションの拡大に取り組んでいます。例えば,エネルギー分野では,電力使用状況に関するデータと分析・予測技術を掛け合わせることで高効率化やコスト低減につなげられるほか,見守りなどの新たな情報サービスの提供も可能になります。マイナンバーなどのIDを行政,ヘルスケア,さまざまな民間サービスで共通して利活用することができれば,より質の高いサービスが受けられるようになるでしょう。道路・交通関連データをリアルタイムに分析し,渋滞緩和や物流の効率向上につなげるソリューションも期待されています。

ヘルスケアでは,大きなプレゼンスを発揮している画像診断装置や放射線治療システム,分析装置などのプロダクトを基盤としながら,医療ビッグデータを活用したインフォマティクスに力を入れています。政府が推進するデータヘルス計画への貢献,AIなどを活用した医用画像診断の高度化にも取り組んでいます。

これらのデジタルソリューションすべてに共通して欠かせない要素がセキュリティです。2017年5月に,日立グループ内においてランサムウェア感染が発生しました。これを教訓に,みずからのセキュリティ対策を修正・強化するとともに,経験に基づく情報を適切にオープンにし,パートナーやお客様と共有しています。セキュリティにおいても協創の考え方に基づいて,自社だけでなくパートナーやお客様と一緒に対策していくことが重要であり,社会全体の安全・安心に資すると考えています。

人を幸福にするデジタルソリューションへ

日立の社会イノベーション事業は,先ほども触れたようにSociety 5.0の実現を支援するものであり,Society 5.0が掲げる人間中心の社会に貢献することが大きな目標です。今後デジタル化が進みドローンやロボットが行き交う世界になったとしても,アイデアを生み出し価値を創るのは人であり,人という存在の大切さは変わらないはずです。技術はあくまでも道具として,エンドユーザーである人を中心に考え,人をいかに幸福にするかを追求することが日立のめざす協創であり,社会イノベーション事業です。

社会イノベーション事業をグローバルに展開していくうえでは,日本のみならず世界中の人々の安全・安心・快適の実現に取り組むことも重要です。安全な水や食糧,医療へのアクセスさえ確保できない国や地域があるという現実に目を向け,SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の17の目標からバックキャスティングし,日立の社会イノベーション事業を通じて貢献していくことを考えなければなりません。先進国をさらに引き上げるだけでなく,世界全体をボトムアップするためのデジタルソリューションも創出していきたいと私は考えています。理想論に聞こえるかもしれませんが,日立がサステイナブルな真のグローバルカンパニーとなるためには,忘れてはならないことです。

そうした大きなゴールをめざしながら,目の前のお客様との協創を一つひとつ着実に成功させ,人間中心の未来社会の実現に貢献していきます。

Society 5.0実現に向けた日立の取り組み

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