日立評論

ペーパーレス化がけん引する働き方改革

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新たなワークスタイルを実現する日立のソリューション

ペーパーレス化がけん引する働き方改革

ハイライト

時間や場所の制約から解放され,新しい働き方を実現するには,ペーパーレス化が不可欠である。ペーパーレス化はあらゆる業務に関係するため,その推進には全社を挙げての取り組みが必要であり,特にトップダウンで施策を実行することが必要である。また,文書のペーパーレス化を進め,情報をデジタル化することで,RPAなどによる業務の自動化が期待できる。本稿ではペーパーレス化の重要性とRPAの有効性,導入事例を交えながら,成功のポイントについて述べる。

目次

執筆者紹介

青山 ゆきAoyama Yuki

  • 株式会社日立コンサルティング サービス&デジタルコンサルティング本部 所属
  • 現在,働き方改革に向けたペーパーレス化や,デジタル化およびRPAを活用した自動化による業務改革,文書管理などに関するコンサルティング業務に従事

曽我 伸子Soga Nobuko

  • 株式会社日立コンサルティング サービス&デジタルコンサルティング本部 所属
  • 現在,ペーパーレスな働き方や文書管理に関するコンサルティング業務に従事

篠塚 健司Shinotsuka Kenji

  • 株式会社日立コンサルティング サービス&デジタルコンサルティング本部 所属
  • 現在,文書管理システムの導入や,非効率な紙事務削減に向けたペーパーレス化およびRPA適用のコンサルティング業務に従事

尾池 直哉Oike Naoya

  • 株式会社日立コンサルティング サービス&デジタルコンサルティング本部 所属
  • 現在,文書管理やRPAを活用した新たなサービス開発のコンサルティング業務に従事

福本 真奈美Fukumoto Manami

  • 株式会社日立コンサルティング サービス&デジタルコンサルティング本部 所属
  • 現在,企業の生産性向上のためのペーパーレス化および業務へのRPA組み込みに関するコンサルティング業務に従事

1. はじめに

ビジネスにおいて,紙の書類をベースに業務を行うことには,さまざまな制約がついて回る。具体的には,「文書を保管するためのキャビネットや書庫がオフィススペースを占有してしまい,働く人のために有効に使うことができない」,「申請書などを紙で運用しており,チェックや押印のためにオフィスを離れられない」,「必要な書類がどこにあるかが分からなくなる」,「回覧に時間が掛かる」などのデメリットがあり,業務の生産性を低下させる原因ともなっている。しかしビジネス文書をペーパーレス化することによって,働き手は時間や場所の制約から解放され,柔軟な働き方が可能になる。これが,ペーパーレス化が働き方改革の一丁目一番地と言われる理由である。

2. 法改正に伴うペーパーレス化の加速

2001年に策定された日本型IT社会の実現をめざす「e-Japan戦略」の下,政府はすべての国民がITを活用できるようにすることで国際競争力を強化するべく法整備を進めてきた。2005年には「e-文書法」が施行され,これまで法令により紙での保存が義務付けられていた書面を,電子化して保存することが可能となった。約250の法令で電子保存が認められたことに伴い「電子帳簿保存法」が改正され,決算関係書類を除く国税関係書類をスキャナーで取り込み,電子ファイルとして保存することが認められた。しかし,当時はまだスキャンした書類の保存要件が厳しく,ほとんどの企業が紙で書類を保存する状況から脱却できずにいた。しかし2015年,2016年と電子帳簿保存法の規制緩和が進められ,スマートフォンなどの携帯端末で撮影した画像での保存も認められるなど,ペーパーレス化に取り組みやすい環境が整ってきた。

国税関係書類を電子化するためには税務署への申請が必要だが,当初は年に10件程度であった申請件数が,2018年は3か月で100件を超えたことからも,ペーパーレス化が急ピッチで進んでいることが分かる。こうした中,取り組みが遅れているのが行政官庁と金融機関である。これらの機関では,日々の業務をつぶさに記録として残す必要があり,かつ記録の証拠性をシビアに問われるということが遅れの原因となっている。株式会社日立コンサルティングでは,こうした書類の証拠性を確保しながら何をどこまでペーパーレス化することができるのか,顧客の線引きを支援している。

2.1 ペーパーレス化の継続と文書管理

法整備によってペーパーレス化を実現する環境が整い,多くの企業がペーパーレス化に注目している。しかし,紙と電子文書の管理は大きく要領が異なる。法律にのっとって証拠性を確保しながら,ペーパーレス化によって業務を効率化するためには,文書管理の見直しが必須となる。例えば,ペーパーレス化に必要な環境や電子承認のワークフローを整備しても,しっかりとした文書管理の運用ルールがないと,一時的で限られたペーパーレス化になりかねないため,電子文書の承認フローや保存期限,保存のルールの設定などを行う必要がある。ペーパーレス化を継続させるためには,次のステップを見据えた電子文書の管理方法を確立していかなければならない。

2.2 ペーパーレス化の効果を最大化するRPA

ペーパーレス化の効果を図1に示す。まず,紙が減ることで保管スペースを削減できると同時に,印刷枚数の削減により環境負荷を軽減できる。次に,文書を紙でなく電子機器上で処理できることで,業務の効率化を図ることができる。これによってテレワークが容易となり,柔軟な働き方が可能となるほか,社内の情報共有が進むことで組織が活性化することも見込まれる。さらに,情報セキュリティのガバナンス強化にもつながる。

金融機関では,取引先に関する資料を持って外出した場合,一度オフィスに戻って資料を片づける必要があり,これを実施しないと仕事を終わらせることができない。しかし文書をペーパーレス化すれば,どこに居てもタブレット端末で情報を閲覧できるうえ,持ち出した資料を無くす心配もない。生体認証などの技術と組み合わせれば,タブレットの紛失・置き忘れによるセキュリティリスクも軽減できる。

また,災害やパンデミックなどが発生した際にも場所を問わず通常の作業ができるため,事業継続性の面でもペーパーレス化は効果を発揮する。また,サーバを二重化して遠隔地でバックアップを取ることも可能である。

このように,ペーパーレス化にはさまざまなメリットがあるが,中でも最大のメリットと言えるのがRPA(Robotic Process Automation)の導入が可能となる点である。RPAはソフトウェアロボットが人の代わりにデータを入力したり,情報を検索したりする仕組みであり,従来人手で行っていた定形業務を自動化することができる。しかし,いざ自動化をしようとすると,業務プロセスの中に紙による事務作業が残っており,問題となるケースがある。そこで,文書を電子化してRPAと組み合わせることで問題の解決を図った(図2参照)。さらには人工知能を組み合わせることにより,これまでは難しいとされていた例外的な対応を含む非定型業務の自動化を実現することも可能となる。

本格的なRPAの導入を進めている株式会社日立ドキュメントソリューションズの例を紹介する。同社は企業向けの複合機サービスを提供しており,複合機ベンダとの契約・手配や,月々の使用料の各部署への請求処理などを行っているが,目視による紙帳票の突き合わせ処理などの作業が締日付近に集中していた。そこでRPAを導入し,各ベンダとの契約書や請求書などをスキャンしてOCR(Optical Character Recognition)処理し,仕分けやデータ登録作業などを自動化することで,ソフトウェアロボットによる自動処理と人手による作業を分散させたり,さらにはソフトウェアロボットで複合機の設定値をリモートチェックしたりするなど,複合機の堅牢(ろう)化によってサービス品質の向上を図っている。

最終的には,業界全体が同じフォーマットを使用し,それぞれの取引先から帳票を電子デ−タで受け取ることが理想的ではあるが,そこへ至るまでの道程は長い。まずは,身近な業務のペーパーレス化を進めていくことが必要である。

図1|新しいワークスタイルとペーパーレスな働き方オフィススペースの有効活用,テレワークなど柔軟に働ける環境の構築,情報共有の促進などの面で,ペーパーレス化は新しいワークスタイル実現の大前提となる。

図2|RPAを活用した業務改善イメージ文書のペーパーレス化(デジタル化)にRPAを組み合わせて,効果の最大化を図る。

3. ペーパーレス化の事例

日立コンサルティングが実現したペーパーレス化の一例を紹介する。

ある企業では,意思決定を行う際,承認を得るために拠点間で文書を回覧し,案件によっては20人以上もの関係者から承認印を得る必要があり,1つの事案に対する意思決定に平均で数週間を要していた。それに加えて,回覧した文書は紙で長期間保管していた。そこで,まずはルールの作成に着手した。文書の作成ルール,回覧・承認のルールを策定し,電子稟(りん)議の仕組みを導入して,証拠性を担保した形で電子文書を管理できるようにした。また,過去から現在にわたり保管されている大量の既存文書についても,削減のための管理基準を定めた。マニュアルを作成し,社内の理解を得るための説明会を開催した。ペーパーレスで仕事をするとなるとすべての部署に影響が及ぶため,説明会には全部署から約100名の従業員が集まった。

このような過程を経て実現したペーパーレス化により,意思決定のスピードは数週間から数日にまで短縮された。また,既存の文書をオフィスから約70%削減し,キャビネット約1,000本分を削減できたことで,新たに多数の会議室を設けることができた。併せてテレビ会議システムを導入したことで,拠点への出張費用を減らすこともできた。クリック1つで承認が完了することに対し,「チェックが甘くなった」という意見も一部にはあったが,ペーパーレス化の前後を比較すると,紙文書の回覧に比べて承認漏れや改竄(ざん)のリスクが減少したことが分かっている。紙では複数名いる承認者の一部を一時的に飛ばしてしまう可能性があったが,電子機器を用いた回覧であれば承認経路を間違えることはない。文書保管においても,保存期限を設定できるため,期限前に廃棄してしまったり,不必要な文書を残して漏洩(えい)・紛失したりといったリスクを排除することができ,文書のライフサイクルを確実に管理できるようになった。

また,ある銀行では,業務の効率性を示す指標であるOHR(Over Head Ratio)を向上するための取り組みとしてペーパーレス化が推進された。文書に関わる業務の効率化は個々のシステムや業務のみならず,すべての業務に対して有効である,という考えに基づく,幹部主導のプロジェクトであった。

ペーパーレス化成功のポイントはいずれも,社内にペーパーレスを定着させる活動をトップダウンで行ったことである。ペーパーレス化は仕事のやり方に変化をもたらす取り組みであるため,中には否定的な考え方を持つ従業員もいる。重要なことは,ペーパーレス化は単なる紙の削減ではなく,自らの働き方を効率化するものだという認識を促すことである。電子文書(紙書類の場合は,スキャンし電子化したもの)を所定の場所に保管することで,書類探しに時間を取られることもなくなる。ペーパーレス化とは,仕事のやり方を変え,創造的な業務に時間を有効活用することをめざす取り組みなのである。

4. おわりに

ペーパーレス化の目的は,電子文書の管理を確実に行い,電子文書を中心とした業務フローを確立することで,効率的なワークスタイルを実現することである。そのためには文書管理のルールを確立し,そのルールを全社で共有することに加え,自社の資料と顧客の資料では管理のレベルを変える,ファイルを消去する期間を設定するなど,詳細なルールを決めて全従業員が一丸となって取り組むことが必要である。

日立コンサルティングは今後も,ペーパーレスな働き方や文書管理に関するコンサルティングサービスを通じて,ペーパーレス化の先にある働き方改革に貢献していく。

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