日立評論

高機能材料

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1. FA工作機械向けカメラ同軸ケーブル

1.FA(Factory Automation)工作機械向けカメラ同軸ケーブルの断面写真FA(Factory Automation)工作機械向けカメラ同軸ケーブルの断面写真

労働力不足,人件費高騰を背景に人協働型ロボットや小型多関節ロボットの市場が拡大しており,ロボットの可動部に搭載される高耐屈曲・高耐捻回ケーブルの開発が急務である。

日立金属株式会社では,絶縁体を3層で押出成形し,1層目と3層目を充実,2層目を発泡構造とし,導体が柔軟に動きやすい構造を採用することにより,高耐屈曲性・高耐捻回性を実現した。さらにシールドでは素線同士のこすれによる断線を防止するために,銅箔糸と合金線から成る交織編組を適用し,曲げ半径19 mm(外径の3倍)で10万回以上,捻回長500 mmで60万回以上の高い屈曲・捻回寿命を実現しつつ,625 MHzで13.9 dB/30 mの減衰特性を達成した。開発した構造は,さまざまなサイズや構成にも適用可能であり,耐ノイズ特性とあわせて総合的な特性を満足するようなことも可能である。

(日立金属株式会社)

2. 低重希土類技術を適用したNEOMAX Fシリーズ

2.NEOMAX F シリーズ特性マップNEOMAX F シリーズ特性マップ

Nd-Fe-B焼結磁石はその優れた磁気特性により省エネルギー環境適合製品に多く使われているが,高温での使用に耐えるために,保磁力の向上に有効な重希土類元素(Dy,Tbなど)が使われる。現状,重希土類元素は環境規制などによる価格高騰ならびに調達リスクを抱えており,重希土類元素の使用量削減が急務である。

この課題に対して,日立金属では保磁力向上に大きく影響する主相粒子間の粒界相に着眼し,組成や添加元素を探索するとともに,製造条件などの適正化を行うことで重希土類元素の使用量低減を実現した。また,2014年にNMX-46Fシリーズを市場投入し,2015年には高性能グレード材NMX-S49Fを展開することで,従来の「NEOMAX Standard Series」と同等特性でDy使用量を約2 mass%削減した。

2018年にはこの技術に改良を加えることにより,これまでの高性能材を上回る特性を持つNMX-S49FHおよびNMX-S49FSHを開発した。

減磁曲線に示す通り,S49FSHは同等の保磁力でDyを3 mass%含有したS45Fよりも大幅に重希土類使用量を削減しつつ高Brの特性を得られ,今後需要増が見込まれる電気自動車関連の駆動モータなどへの適用が期待される。

(日立金属株式会社)

3. 均一圧縮試験および等温断面処理による高信頼性材料データ評価技術

3.均一圧縮試験法と等温断面処理法の概要均一圧縮試験法と等温断面処理法の概要

航空機エンジンなどに用いられる超耐熱合金製の熱間鍛造品の開発設計では,試作回数の低減による開発の加速と設計品質の向上のため,有限要素法による鍛造シミュレーションが活用されている。鍛造シミュレーションを高精度に実施するためには,被鍛造材となる超耐熱合金の正確な材料特性データをあらかじめシミュレータに入力する必要があり,とりわけ材料を塑性変形させるのに要する応力,すなわち流動応力の特性が重要である。

流動応力は,圧縮試験実験を行い,その変形量と荷重の測定値から算出して取得するが,通常の圧縮試験では,荷重値に試験片から加工治具への抜熱,試験片と加工冶具間に生じる摩擦力,試験片内部に発生する加工発熱の影響が含まれてしまい,正確な流動応力を得ることが難しい。そこで,均一圧縮試験によって抜熱と摩擦力の影響を実験的に,等温断面処理によって加工発熱の影響を解析的に除去する手法を確立した。

(日立金属株式会社)

4. 次世代パワーデバイス用金属ペースト

4.接合ペースト適用例と接合後断面接合ペースト適用例と接合後断面

EV(Electric Vehicle),HEV(Hybrid Electric Vehicle)などのモータ制御用として急速に使用が拡大しつつあるパワーデバイスでは,動作温度上昇の要求への対応が課題となっている。接合ペーストにおいても,一般的な鉛フリーハンダに代わる材料として,高い接続信頼性を有し200℃以上でも動作可能な材料の開発が進められている。日立化成株式会社は,銅粒子を安定的に焼結することで180W/(m・K)の熱伝導率を示す焼結銅ペーストおよび,はんだ接合と同等の工程で400℃以下では再溶融しない化合物を形成して接合できる銅錫系金属ペーストの開発を行っている。これにより,パワーモジュールの小型化・低コスト化に貢献するとともに,今後,普及が予想されているSiC(Silicon Carbide)半導体素子の採用による高温動作化にも対応可能である。

(日立化成株式会社)

5. 超低傷ナノセリアCMPスラリ

日立化成が開発した低傷特性化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)用のナノセリアスラリが,ロジック最先端の5 nm世代のデバイスに適用され始めている。

このスラリは砥粒径が5 nm程度と極めて小さいにもかかわらず高い研磨速度を発現するが,その研磨機構には不明な点が多かった。今回X線光電子分光(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いたCeの価数評価により,ナノセリア砥粒の反応性の高さが研磨速度発現の理由であることを明らかにした。

セリアによるSiO2の研磨では,まずセリア粒子が研磨パッドにより基板に押し付けられたときの局所的な高温・高圧でCe-O-Si結合が形成され,Ceの価数はスラリ中の4価から3価に変化する。次いで機械的な作用でSi原子が基板から脱離する。ナノセリアは砥粒自体の反応性が高いため,スラリにSiO2基板を浸漬するだけでCe-O-Si結合が形成されることがXPS測定によるCe3価の増加から分かった。このような研磨の第一段階の反応の速さがナノセリアの研磨速度発現の理由である。

今後もナノセリアスラリの先端デバイスへの適用を拡大するとともに,Si原子の脱離機構に関する解明も進めていく。

(日立化成株式会社)

5.透明なナノセリアスラリ(左)とSiO2基板の浸漬前後のCeのXPSスペクトル(右)透明なナノセリアスラリ(左)とSiO2基板の浸漬前後のCeのXPSスペクトル(右)

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