日立評論

資源循環の動向と日立の取り組み

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日立評論

ハイライト

世界において,GDPの伸長に伴って物質採取量は増加の一途をたどっており,エネルギーや天然資源の不足あるいは枯渇が大きな懸念となっている。こうした中,日立は「環境ビジョン」および環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を策定し,持続可能な社会の実現に向けた具体的な取り組みをグループを挙げて進めている。

その中でも,ここでは資源循環の取り組みに焦点を当て,建設機械部品や自動車用電装品の再生,家電および情報通信機器の回収・リサイクルといった事例を紹介する。

目次

執筆者紹介

原田 泰志Harada Yasushi

  • 日立製作所 研究開発グループ エネルギーイノベーションセンタ 所属
  • 現在,エネルギー・環境分野の研究に従事
  • 博士(工学)
  • IEEE会員
  • 電気学会会員

1. はじめに

図1|物質消費量と経済活動とのデカップリングの進展世界の物質資源の使用量の伸びは,GDPの伸びに比べて減速している。

資源効率性の高い経済を確立することは,環境負荷の軽減と持続的な経済成長のために必須である。図1に示すように,1980年以降,世界において,GDP(Gross Domestic Product)の伸びに伴い物質採取量も増加してきた。この図によれば,物質採取量の伸び率はGDPのそれよりも低いようではあるが,一方,2050年までに世界人口が現在の77億人から98億人に増加し,1人当たり国民所得は約3倍になると見込まれていることを考慮すると,楽観できない状況にある。OECD(Organisation for Economic Cooperation and Development)加盟国の1人当たり年間物質消費は世界平均を60%上回っているとの統計を踏まえ,今後,世界の生産・消費パターンがOECD諸国のパターンに近づくことを想定すると,エネルギーや天然資源の需要増加が懸念される。

こういった状況のもと,日立は「環境ビジョン」を策定し,「低炭素社会」,「高度循環社会」,「自然共生社会」の実現をめざしていくことを明確にした。本稿では,日立が実現をめざす「高度循環社会」のうち,特に資源循環に焦点を当てる。まず日本国内における資源循環の動向を統計データから振り返ったうえで,日立の主な取り組みを紹介する。

2. 日本における資源循環の動向

2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核を成すSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)でも,「目標12:つくる責任つかう責任」が目標設定されているように,資源の有効活用が国際社会における共通課題となっている。この課題を解決に近づけるには,3Rすなわちリデュース(Reduce:ごみの発生抑制),リユース(Reuse:再利用),リサイクル(Recycle:再資源化・再生利用)といった取り組みが重要である。

日本では,1991年,再生資源利用促進法が制定されたのを契機に,資源循環への取り組みが本格的に始まり,2001年,循環型社会形成推進基本法により3Rの基本的考え方が示された。このような背景の下,リサイクル率は図2に示すとおり,1989年度の4.5%から2016年度には20.3%と4倍以上となった。また,資源の循環利用率は,図3に示すように1990年度以降,ほぼ右肩上がりに上昇している。2000年度の約10%からおよそ4〜5割の向上をめざし,2020年度に約17%とすることを目標として進められている。このうち家庭用電化製品について,製造業者などにおける再商品化率の推移を図4に示す。2017年度,品目別の再商品化率は,エアコン92%,ブラウン管式テレビ73%,液晶式・プラズマ式テレビ88%,冷蔵庫・冷凍庫80%,洗濯機・衣類乾燥機90%と,いずれも特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)に基づく再商品化基準を上回る実績を挙げている。これらの統計から,過去数十年来,日本の3Rは着実に進展してきたことが分かる。

図2|リサイクル率の推移リサイクル率は,1989年度の4.5%から上昇傾向で推移し,2016年度には20.3%となった。

図3|資源の循環利用率の推移循環利用率は2015年度時点では約15.6%(2000年度約10%)であり,2000年度と比べ約5ポイント上昇した。

図4|製造業者などにおける家電再商品化率の推移家電リサイクル法に基づき,各種家電製品の積極的な再商品化が進められている。

3. 循環社会に向けた日立の取り組み

日立では,循環社会に向けた取り組みとして,先に述べた3Rに加え,使用済み製品を整備して新品に準じる状態とするリファービッシュ(Refurbish)や,使用済み製品を分解,洗浄,部品交換などを経て新品同等の製品とするリマニュファクチャリング(Remanufacturing)も重要と捉え,活動を推進している。

本章では,3Rおよびリファービッシュ,リマニュファクチャリングに関する取り組みを中心に,日立の具体的な事例を紹介する。それぞれの事例の詳細については,今号掲載の各論文を参照されたい。

3.1 建設機械の部品再生事業

日立建機株式会社では,建設機械の使用済み部品を車体から回収し,その部品を構成する内部部品を一部交換することで,新品同様の品質と性能を持った部品として再製造する事業を展開している。この事業は,故障の早期復旧・修理コスト低減といった点で顧客満足度の向上につながるばかりではなく,使用済み部品を再利用することで産業廃棄物の量を大きく減らし,環境負荷低減に貢献するものとして評価されており,2018年,一般社団法人産業環境管理協会資源・リサイクル促進センターより資源循環技術・システム表彰「経済産業省産業技術環境局長賞」を,リデュース・リユース・リサイクル推進協議会より3R推進功労者等表彰「リデュース・リユース・リサイクル推進協議会会長賞」を受賞した。

3.2 自動車用電装品のリユース化

日立オートモティブシステムズ株式会社は,オルタネータ,スタータといった自動車用電装品を自動車ディーラー,整備工場から回収し,新品純正品と同等の外観・機能に再生するリビルド事業を推進している。この事業では,多品種少量の部品を扱うため人手による作業が必須であり,高度な技術を保有する多能工が作業に当たっている。この事業は,過去25年にわたる自動車用電装品の高品質なリユースへの貢献が認められ,2016年度,資源・リサイクル促進センターより資源循環技術・システム表彰「経済産業省産業技術環境局長賞」を受賞した。

3.3 家電リサイクルの取り組み

日立グループでは,使用済み家電製品のプラスチックの自己資源循環スキームの構築に取り組んでいる。その一環として,良質なリサイクルプラスチック材のサプライチェーンを構築する工夫や製品の設計製造オペレーションの見直しなどの活動を推進してきた。その結果,冷蔵庫において,2018年度,リサイクルポリプロピレン材の適用比率を約20%から約50%まで拡大することができた。今後,継続的な活動の中でさらなる適用比率の向上をめざす。

3.4 情報・通信機器の回収・リサイクル

日立グループでは,情報・通信機器のリサイクルに取り組んでいる。特にHDD(Hard Disk Drive)では情報漏洩(えい)防止対策として機能破壊した後,希少金属(ネオジムなど)を抽出し資源循環に取り組んでいる。図5に,リサイクル工場外観(左)と分解後のHDD部品(右)を示す。株式会社日立産機中条エンジニアリングは,この事業活動が評価され,2017年度,新潟県環境会議廃棄物減量化・リサイクル部会事務局より,「新潟県優良リサイクル事業所表彰」を受賞した。また2018年度,日立産機中条エンジニアリングと東京エコリサイクル株式会社は,リデュース・リユース・リサイクル推進協議会より3R推進功労者等表彰「経済産業大臣賞」を受賞した。

図5|リサイクル工場外観(左),分解後のHDD部品(右)東京エコリサイクル株式会社のリサイクル工場では,HDD(Hard Disk Drive)部品を分解して収集し,希少金属のリサイクルに役立てている。

4. おわりに

世界の人口は,1950年の25億人から2019年の77億人と,過去70年で3倍に増加した。一方,世界の1人当たりGDPは1980年の3,000米ドルから2019年には1万2,000米ドルと,過去40年で4倍に拡大した。今後,人口は2050年に98億人,2100年に112億人に達すると見込まれ,同時に1人当たりGDPも継続的に成長を続けるであろう。

このような状況の中,将来,地球に暮らす人々が豊かな生活を享受し,かつそれを持続可能なものとするには,限りある資源を循環的に利用しなければならない。資源循環は,生産者,消費者など関係するすべてのステークホルダーの協力があってこそ初めて成立する。日立グループでは,本稿で紹介した取り組みなどを通じ,ステークホルダーの一員として,しかるべき役割を果たしていく。

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