日立評論

鉄道システム

モビリティ

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1. ゆりかもめ 電力管理システムの更新

株式会社ゆりかもめより電力管理システムの更新を受注し, 2019年3月に製作を完了,現地搬入した。2020年9月に予定されている運用開始に向け,現在,現地試験を実施中である。

東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)は,都市部と臨海地区を結ぶ無人運行の新交通路線である。電力管理システムは22か所の変電・配電設備の監視制御を行うシステムであり,監視操作卓,監視制御サーバ,遠方監視制御装置,遠制子局,I/F(Interface)盤などから構成される。

主な特長は,以下のとおりである。

  1. サーバおよび遠制子局,I/F盤の二重化構成とすることにより,信頼性および保守性の向上を図った。
  2. 指令員が監視する系統表示盤を,モザイクパネルのハード構成品から大画面液晶ディスプレイ表示方式に変更することで,詳細な電力系統の表示を可能とし,視認性および保守性を向上させた。
  3. 系統画面に対して任意情報を貼り付けることを可能とする付箋機能の追加および定時運用機能の改善を行い,指令業務の効率向上を実現した。

[1]ゆりかもめ電力管理システムの構成[1]ゆりかもめ電力管理システムの構成

2. 東日本旅客鉄道 E956形式(ALFA-X)新幹線電車

東日本旅客鉄道株式会社は,2019年5月に東北新幹線の次期新幹線車両に向けた試験車となるE956形式(ALFA-X)新幹線電車を導入した。この新幹線電車では,次期営業車両に反映する新技術を導入した各種試験が行われている。

日立は,次世代新幹線の開発を進めるための試験プラットフォームとして,E956形式の開発コンセプトに基づき,最新の新幹線技術の検証に向けた製品を導入している。

さらなる安全性・安定性の追求について,新幹線電車として地震時に早く止まる技術として,台車にリニア式減速度増加装置を導入し,コイルをレールに近づけて電磁的な力により減速する仕組みを導入した。また,屋根上に空力抵抗板ユニットを納入し,通常走行時に屋根上に収納している抵抗板をブレーキ時に立てることで,空気抵抗により減速する仕組みを導入した。さらに,着雪防止の観点から床下フサギ板の形状を工夫して風の流れを変えることで,着雪しにくい車体構造を導入した。

快適性の向上について,客室内装構成の工夫を行い,窓の大きさや有無による車両構造や客室内の環境などの評価や,車内を二つに分けて客室の比較評価が可能な環境を導入した。

環境性能の向上について,微気圧波対策としてトンネル突入時の圧力波を抑えて環境性能を追求した先頭長22 mの先頭形状を導入した。また,屋根上に2種類の低騒音パンタグラフを載せ替え可能な屋根上機器配置構造を導入した。

メンテナンスの革新について,CBM(Condition Based Maintenance)の観点から,各機器の状態のデータを記録する仕組みを導入した。今後データ取得を進め,将来の故障予兆検知や故障復旧・メンテナンスに活用することを目的とする。 

当該試験車は2022年3月にかけて東北新幹線 仙台〜新青森間を中心に走行試験を実施し,車両性能確認のため数回程度400 km/hの速度で走行を行うほか,最高速度360 km/hまでの走行を行う予定であり,今後の東北新幹線の次期営業車に向けた技術検証を進めていく。

[2]ALFA-Xのエスクテリアデザイン[2]ALFA-Xのエスクテリアデザイン

3. 西武鉄道 新型特急車両「Laview」

西武鉄道株式会社は,2015年に開業100周年を迎え,次の100年の未来を担う新たなフラッグシップトレインの導入を計画した。池袋線・西武秩父線において,現行主力車両である西武10000系車両「ニューレッドアロー」は12編成,84両を日立で製作しており,その置き換え車両としての位置づけである。

近年,デザイン性を重視した鉄道車両が多く開発されているが,都市や自然と調和し,風景に溶け込む「いままでに見たことのない新しい車両」の実現に向け,基本デザイン監修は,世界的に著名な建築家でプリツカー賞など数々の建築賞を受賞している妹島和世氏により進められた。

日立として新型特急車両の受注を果たし,以下の開発を通じてデザインコンセプトを具現化した。

  1. 球面型の先頭形状に対応した前面ガラス,ワイパー,運転室
  2. 風景に溶け込む外装塗装仕様
  3. 大型側窓開口に対応した構体構造
  4. 大型側窓ガラス

2019年3月に池袋線・西武秩父線の池袋〜西武秩父間で運行を開始し,2020年1月までに7編成,56両を製作する。

[3]Laviewのエスクテリアデザイン(左),インテリアデザイン(右)[3]Laviewのエスクテリアデザイン(左),インテリアデザイン(右)

4. ドーハメトロ 車上電気品システム

[4]ドーハメトロの外形[4]ドーハメトロの外形

中東カタール国の首都ドーハのドーハメトロが2019年5月8日に開業した。ドーハは豊富なエネルギー資源を背景に経済成長を遂げ,人口や自動車の急激な増加により交通渋滞が深刻化している。また,2022年に大規模なスポーツイベントの開催が予定されており,公共交通機関の整備が求められていた。これに対応するため,ドーハメトロの3路線Phase1約76 kmの建設が進められていたが,今回第一弾のRed Lineが先行2019年5月8日に開業となった。

このドーハメトロ用電車の電気品は,日立製作所(水戸事業所)製のインバータ制御装置とTCMS(Train Control and Management System:車両情報制御装置)のSynaptraが採用され,完全無人運転[GoA(Grades of Automation)-4]で運行されている。

インバータ制御装置は,砂漠地帯の外気温55℃の環境でも問題なく稼働できるよう,高効率のハイブリッドSiC-IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子を採用し,発熱を低減している。

TCMSは完全無人運転に対応するため,車両内のさまざまな制御装置・部品とインタフェースを取り,制御・故障情報をリアルタイムに収集・配信することで,地上システムと連携して鉄道システム全体の運用の一端を担っている。

現在までに3両×75編成の電車が現地に搬入されているが,さらに,2020年以降に35編成の追加納入も予定されている。最終的には約140 kmに及ぶ延伸も計画されている。

5. 新型大容量EMU「カラバッジオ」

[5]カラバッジオ2階建てEMU[5]カラバッジオ2階建てEMU

イタリアでは,地域鉄道や通勤列車に対し大量輸送システムを求める声が高まっており,2階建て車両の導入が進められている。カラバッジオは,日立が提供する新型大量輸送2階建て車両製品群の一つで,2019年からトレニタリア社に最大300編成,フェロヴィノルドミラノ社に最大120編成を納入する包括契約を締結しており,イタリアの主たる鉄道事業者の基幹的な保有車両となる見通しである。

カラバッジオはイタリアで現在運行中の車両と比べて,輸送能力,加速度,信頼性,環境への影響という点でトップクラスのパフォーマンスを有している。車体の美しさにもこだわり,非常に革新的で印象的な外観を実現した。

また,イタリアと日本の双方で培われた高度な技術が生かされていることも特徴の一つであり,技術的にコアとなる部品の製造は水戸工場とナポリ工場で,車体の製造はイタリアのピストイア工場とレッジオカラブリア工場で行われている。

6. 外観検査技術の開発

鉄道のメンテナンスにおいて,日常の点検業務の一つとして巡回目視による外観検査がある。目視による検査では,検査員の知見や経験による定性的な判断となり定量的な判定が難しいうえ,正常と判断した部位の状態は記録が残らず経年変化を捉えにくいなどの課題があった。

日立は,3Dセンサーとレーザドップラセンサーを組み合わせることで,走行する車両の側面や床下機器などの,連続的にゆがみのない高精細な凹凸や輝度の情報を取得し,定量的な判定,経年や環境などによる車両外観の状態変化の監視を可能とする技術を開発した。本技術により,走行する車両の座標位置が固定されたゆがみのない静止画とともに奥行き情報を取得できるため,画像処理などの負荷を増大することなく容易に検査対象の抽出や,その部位の過去からの変化量を捉えることができる。

実車走行試験により,ボルトの緩みや台車周辺への着雪量を定量的に把握することができ,有効性を確認することができた。今後はAI(Artificial Intelligence)などの分析基盤と連携することで,検査の自動化や劣化予測などに活用できるものと期待される。

[6]鉄道のメンテナンスにおける外観検査技術[6]鉄道のメンテナンスにおける外観検査技術

7. 沖縄都市モノレール 延長対応および運行管理システム,電力設備監視システム改良

[7]沖縄都市モノレール運行管理システム運行表示盤[7]沖縄都市モノレール運行管理システム運行表示盤

沖縄都市モノレール株式会社は,2019年に新駅4駅(石嶺,経塚,浦添前田,てだこ浦西)と新変電所(浦西変電所)を含む区間延長を計画していた。そこで,2003年の沖縄都市モノレール開業時に日立が納入した運行管理システム,電力管理システム,設備・防災監視システムについて,今回,延長区間への対応として,3システムの改良を行った。

改良においては,信頼性を確保しつつ低コストで仕上げることをめざした。電力管理システムと設備・防災監視システムは,一体の電力設備監視システムとして構築した。また,ネットワーク,プリンタなどの一部装置を運行管理システムと共用する構成とした。

運行管理システムは,新たに放送装置と案内表示器へのダイヤ配信に対応し,乗客案内を強化した。また,基地線内の列車追跡,入出庫自動制御などに対応した。既設区間の運用を考慮しながら段階的な切換を行い,2019年10月1日に延長区間の開業に至っている。

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