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日立評論

1. 自動運転ユニット/高精度地図ユニット

[1]自動運転ユニット(左),高精度地図ユニット(右)[1]自動運転ユニット(左),高精度地図ユニット(右)

日立グループは,2000年に先進運転支援用ADAS (Advanced Driver Assistance System)ユニットを製品化して以来,ステレオカメラ,ゲートウェイユニットなどの情報安全製品を製品化してきた。2019年には,自動運転システム開発で培った技術をベースに,自動運転ユニットおよび高精度地図ユニットの量産を開始した。

自動運転ユニットは,車両制御用と認識処理用の2 CPU(Central Processing Unit)構成にすることにより,高い安全性と高速演算性能を可能にした。高精度地図ユニットは,全国の高速自動車道などの高精度地図データを格納し,センシングでは見えない先読み情報を自動運転ユニットに送信する。衛星測位システムとジャイロセンサーを組み合わせ,トンネル内などでも自車位置を高精度に算出する機能とともに,ナビゲーションシステムで設定した目的地までの道路レベル経路を車線レベル経路に変換し,自車周辺地図情報とあわせて出力する機能を開発した。

日立グループは,今後も日立独自のOTA (Over the Air)ソフト更新やセキュリティ技術などを活用し,自動運転システムのサプライヤとして,安全で快適なクルマ社会の実現に貢献していく。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

2. 一般道の自動運転機能に貢献するリスク予測マップ技術

自動運転/運転支援向けに,自車両周辺での衝突リスクを予測してリスク回避を可能とするリスク予測マップ技術を開発した。

これまでの自動運転は,高速道でのレーン維持走行などの比較的単純な運転行動を想定していたため,一般道のように複雑な周囲環境には対処できなかった。複雑な周囲環境では,センサーで検知した情報から移動体の行動変化を予測し,さらにセンサーでは検知できない死角に潜むリスクも考慮し,数秒先の安全を見通す必要がある。

走行軌道計画において数秒先まで予測するには,三次元(平面xyと時刻t)の時空間の中で最適な軌道を探索する必要があるが,一般的に三次元探索には膨大な計算コストがかかることが知られている。本技術では,自車が将来到達する任意地点X-Yと到達予想時刻T時点での衝突リスクを求め,それを二次元に射影したリスク予測マップを表現した。リスク予測マップ上で安全な領域をたどる走行軌道探索を行えば,将来の危険を見通したリスク回避軌道を得られる。本技術により,車載向けプロセッサにおいても,5秒先までのリスク予測をリアルタイムに行い,自然なリスク回避を実現する自動運転を可能とした。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

[2]リスク予測マップの生成(左),リスク予測マップを用いた駐車車両回避の自動運転(右)[2]リスク予測マップの生成(左),リスク予測マップを用いた駐車車両回避の自動運転(右)

3. ステレオカメラによる走行路形状認知技術を用いたプレビューセミアクティブサスペンション

[3]高密度3D点群を利用した走行路形状解析[3]高密度3D点群を利用した走行路形状解析

予防安全機能が普及期を迎えつつあり,市場動向としては安心・利便機能への注目が集まっている。安心・利便機能の一つとして,海外に多いBump(突起)やPothole(くぼみ)といった走行路面の凹凸形状に応じた適切なサスペンションの制御技術が注目されている。ステレオカメラは,近距離であるほど測距性能が高く,遠方の車や人など大きな障害物と,近傍の数センチメートルの段差など詳細な走行路形状の推定を両立できることが特長であり,路面の凹凸形状の認識に有利である。

このステレオカメラによる高密度な三次元点群および原画を利用して,自車走行路を事前に認知し,この走行路の三次元形状に合わせたプレビューサス制御を実施することで,安心で快適な走行を実現する。Consumer Electronics Show 2019においては,実機のカメラとセミアクティブサスペンションを組み合わせた実験車を用いて,走行中に発生する衝撃を緩和し快適性を向上するデモを実施した。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

4. デュアルCPUシステム採用によるフェールオペレーショナルステアリングシステム

[4]フェールオペレーショナルベルトドライブ式EPS[4]フェールオペレーショナルベルトドライブ式EPS

自動運転などの高度安全走行技術の開発において,故障が発生してもシステムが動作を継続するフェールオペレーショナル機能の重要性が増している。車両操舵を司るパワーステアリングにおいては,故障発生時もアシストを完全に喪失することは安全上回避すべきであり,冗長化によるリスク低減が市場から求められていた。

この要求に応えるべく,量産化した電動パワーステアリングシステム(EPS:Electric Power Steering)では,操舵アシスト制御を司るCPUの冗長化をはじめとする主要電子部品の冗長構成を採用し,機能安全規格ISO 26262のASIL-Dへの適合を前提に,フェールオペレーショナル機能を大きく向上させた。それにより,突然のアシスト喪失に至るEPSの故障率を100 FIT未満に低減し,最大50%のアシスト力の継続供給を可能とした。

今後,さらなる故障率の低減(10 FIT未満),フェールオペレーション中の最大アシスト力の向上を図るとともに,コネクテッドカーに対応したOTAやセキュリティ機能を実装したEPSの開発を進めていく。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

(量産開始時期:2019年4月)

5. プロペラシャフトにおける衝突時の収縮機構追加による衝突安全性向上

[5]収縮機構を追加したプロペラシャフト[5]収縮機構を追加したプロペラシャフト

自動車の衝突安全性を向上させる,衝突時に低荷重で,従来の2倍以上収縮するプロペラシャフトを実現した。プロペラシャフトはエンジンの回転とトルクを後輪に伝える駆動軸であるが,衝突時につっぱり棒のようになると,車両のクラッシャブルゾーンの衝撃吸収を妨げるなど,乗員のダメージが低減されない。

そこで,従来からプロペラシャフトに収縮機構を採用しているが,これに加えて,スプラインを噛み合わせて,走行時は固定されて動かず,衝突時のみ収縮する機構を追加した。スプラインは,噛み合わせ寸法の最適化と精度向上を行うことで,プロペラシャフトが収縮する荷重を低減し,乗員へのダメージ低減を図っている。また,スプライン部分の保護のためOリングを用いて密閉しているが,衝突時にスプライン部分にOリングが噛み込むことを抑制する構造を採用し,収縮する荷重の低減を図っている。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

6. 35 MPa対応 直噴エンジン用燃料供給サブシステム

[6]35 MPa対応直噴エンジン用燃料供給サブシステム[6]35 MPa対応直噴エンジン用燃料供給サブシステム

世界的に強化される排気規制に対応するため,直噴ガソリンエンジンでは燃料の高圧化がトレンドとなっている。高圧化することにより燃料の微粒化が促進され排出ガスが低減されるが,課題として噴射量制御の高速化・高精度化,低騒音化などがある。

35 MPa対応に開発したインジェクタでは,予備ストローク機構を開発し,高速な開閉弁を実現した。また,閉弁検出制御と組み合わせることにより,最小噴射量 2.0 mg/shotを実現した。さらに,噴孔表面への燃料付着を防止する形状を開発し,排出ガス中のPN(Particulate Number)生成を抑え,Euro6C規制値に対して80%低減を実現した。

高圧燃料ポンプは内部容積を低減し,高圧化による圧縮ロスを従来比で約50%低減した。また,低騒音な電磁弁と吐出弁を開発し,騒音レベルを従来比で3 dB低減した。さらに,独自の内部レイアウトにより業界最小クラスの高さ48 mmを実現し,エンジン搭載性を改善した。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

(量産開始時期:2019年10月)

7. 流路切替制御弁の開発

[7]MCVの冷却水流路と切替パターン[7]MCVの冷却水流路と切替パターン

先進国を中心にEV(Electric Vehicle)の開発が進むものの,市場ではCO2排出量の規制強化が続く中でICE(Internal-combustion Engine)の燃費改善が必要になっている。日立オートモティブシステムズでは,運転状況(エンジン回転・負荷・水温・外気温)に応じて冷却水流路を変更し,各ユニットの温度を制御(熱マネジメント)することで燃焼室早期暖気・メカフリクション低減による燃費改善を実現するための冷却水流路切替え弁MCV(Multi-waterway Control Valve)を開発した。レイアウトではダブルウォーム機構でアクチュエータを小型化し現行エンジンレイアウトへの搭載を可能にし,新規受注につなげた。今後はICE,HEV(Hybrid Electric Vehicle),PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle),EVにおける熱マネジメントによる燃費改善を実現可能な冷却システムとMCVを合わせた提案を検討していく。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

8. シミュレーションによるポート噴射インジェクタの噴霧設計

[8]シミュレーションによるポート噴射インジェクタの噴霧設計[8]シミュレーションによるポート噴射インジェクタの噴霧設計

低燃費,低排出ガスかつ廉価への要求から,軽自動車や小型自動車の燃料系システムはツインPFI(Port Fuel Injection)の採用が拡大している。日立オートモティブシステムズは,ツインPFIにマルチスワール式ポート噴射インジェクタを2013年11月から量産化している。

PFIエンジンの噴霧設計も直噴と同様にエンジンごとの最適化設計が必要であり,日立製作所研究開発グループが開発したシミュレーションでエンジン内の燃料噴霧挙動,空気流動および混合気を解析して最適な噴霧要求仕様を決定し,顧客に提案している。

今回は短い開発期間での噴霧提案に間に合わせるため,設計・試作と実機効果検証の開発サイクル短縮が必須であること,ノック改善とパーシャル域の燃焼改善で異なる噴霧要求を両立させること,また,エンジン吸気ポート形状(インジェクタ取付位置)を含めて最適化することから,開発初期から顧客と連携してシミュレーションを積極的に活用した噴霧設計を実施した。その結果,マルチスワール式ポート噴射インジェクタは,顧客実機燃費試験において顧客の要求を満たし,受注決定に貢献した。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

(量産開始時期:2019年7月)

9. 車載制御用ソフトウェア開発プロセスの変革

[9]車載制御用ソフトウェア開発プロセスの変革[9]車載制御用ソフトウェア開発プロセスの変革

車載制御用ECU(Electronic Control Unit)では,自動車メーカーの要求仕様(以下,「顧客要求」と記す。)に基づいた,コスト(ハードウェアスペック)とパフォーマンス(機能・性能)の両立が求められる。特に,メモリやCPU処理時間などのハードウェアリソースが限られた中で,機能安全やリアルタイム性,データの一貫性・整合性の保証,マルチコアを活用した負荷分散をソフトウェアアーキテクチャとして実現することが課題であった。

そこで,顧客要求に基づき,「アーキテクチャ設計」,「タイミング設計」,「実機評価」,「タイミング検証」の4ステップをPDCA(Plan,Do,Check,Act)サイクルとして繰り返すことで,効率的にマルチコアソフトウェアアーキテクチャを最適化する開発プロセスを推進している。また,本開発プロセスでは,顧客と実機評価で使用する解析ツールおよび計測データを共有し,開発フェーズ終盤で発生することの多いタイミング問題を早期に検出して対処することを可能にした。

今後,本開発プロセスの自動化を推進することで,さらなる顧客価値の向上を実現していく。

(日立オートモティブシステムズ株式会社)

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