日立評論

顧客協創

研究開発

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日立評論

顧客協創

研究開発

1. NEXPERIENCEの進化

日立は,協創によるソリューション創生を加速するためにNEXPERIENCEを開発し,顧客との新サービス・新事業の創生に取り組んできた。NEXPERIENCEとは,将来事業機会の発見から課題分析,アイデア創出,価値評価に至る一連のプロセスを支援する手法と実践を指す。

近年,社会の多様化やデジタル革命の進展に伴い,社会課題への対応が急務となっている。そこで,社会課題解決型事業を創生するため,以下の手法強化を進め,事業創生の確度向上を図っている。

  1. オープンな協創で,社会課題に関する情報を幅広く収集・分析する課題発見・分析
  2. 日立の事業横断知見を生かした事業構想を創出するアイデア発想支援
  3. 創出された事業構想を,社会に受容させるエコシステム型サービスビジネスモデル設計

こうした手法の拡充に加え,顧客協創により本質的な課題を発見し,イノベイティブな解決策を創生する人財「デザインシンカー」を育成することで,社会課題解決に向けたソリューション創生に貢献していく。

[1]NEXPERIENCEの進化[1]NEXPERIENCEの進化

2. ビジョンデザイン

日立は,将来社会に生じうるさまざまな課題の把握と,それらを乗り越える技術やサービスのコンセプトの創出を通じて,Society 5.0の具体像を探索するビジョンデザインの活動を進めている。

まず,日立京大ラボと共に「Crisis 5.0」,および「Imagination 5.0」というプロジェクトを通じて,2050年の日本社会の課題を捉えながら,個人の創造性の発揮による克服の在り方を考察した。

また,デジタル社会における信頼の形を検討する「Future Trust」では,個人,コミュニティ,都市における新たな結び付きを支える新たなテクノロジーのビジョンを描き,ウェブサイトやイベントにおいて発表してきた。

さらに,国分寺市の「協創の森」をベースとして,社会実装を行う「Future Living Lab」の活動を開始し,地域通貨や農業をテーマとしながら,地域に暮らす人々が自らの創造性を基礎として人口減少時代の課題を克服する仕組みの探求に取り組み始めている。「Social Impact Design」では,喫緊の社会課題に対する深い理解を基に,多様なステークホルダーと共に,新たな社会のビジョンづくりに挑戦している。

今後は,人々の持つ内発的な力を引き出しながら,地域の課題を乗り越えるための新たな社会インフラのビジョンを探求していく。

[2]ビジョンデザインのプロセス[2]ビジョンデザインのプロセス

3. 産業・流通分野向けフルバリューチェーンソリューション

産業・流通分野における顧客協創では,顧客の長期的な成長戦略とそこに至るロードマップを描くことが重要である。その検討には,事業全体のプロセスに対して,社内外のトレンド・ニーズ・技術課題をマッピングした「フルバリューチェーンマップ」が有効である。これにより全体を俯瞰(ふかん)し,関係者全員参加のワークショップで実行施策を明確化することで,プロジェクトの目的を全員で共有でき,プロジェクトの成功につながる。

例えば,モノづくり改革を推進している機器メーカーとの協創では,生産性の改善に加え,将来の労働者不足・多様化に対応した働き方改革も同時に実現する施策を検討した。その解決策として,日立が長年培ってきたデジタルイノベーションを加速する「Lumada」と連携した「4M(Man,Machine,Material,Method)解析プラットフォーム」を活用し,人に優しい生産モデルを開発した。これにより,人材の多様化比率を3倍にし,生産性を30%向上することをめざしている。

[3]フルバリューチェーンマップの例[3]フルバリューチェーンマップの例

4. 人の活動を可視化するデジタルスマートスペース

AIおよびIoT(Internet of Things)技術の発展により,さまざまなデバイスや設備からデータを取得・分析し,業務や環境を改善できるようになってきている。今後は,環境を使用する人を含む空間自体をデジタル化することによって,人が享受する価値をより高めたスマートな空間を提供できると考えられる。日立の進めるデジタルスマートスペースの研究では,働き方改革や生産性向上,安全・安心の実現という社会課題の解決に向け,オフィスや工場,公共空間における人の活動を可視化する技術開発を行っている。

オフィスの業務効率化に向けては,出席者の発言を分析し,会議の内容と活性度を可視化して,会議の質を向上する取り組みを行っている。工場の生産性,安全性向上に向けては,センサーによって作業員の行動を認識し,身体負荷が大きい箇所を提示して,安全指導や技術伝承に活用する。カメラを用いた人物や大型荷物の検知・追跡技術は,駅や空港での安全・安心の確保に寄与する。

こうした先端技術開発を国内外の協創パートナーと共に行い,今後はさらに応用分野を拡大していく。

[4]デジタルスマートスペースを活用した顧客協創[4]デジタルスマートスペースを活用した顧客協創

5. デジタルペイメントソリューション

現在のサプライチェーン取引では,商流(受発注)・物流(配送)・金流(決済)に関する業務が個別システム,もしくは手作業で行われており,膨大な売上明細と検収明細の照合作業に時間を要している。また,売上・仕入情報をタイムリーに把握することができず,運転資金の資金繰りが課題になっている。

そこで,サプライチェーンにおける商流・金流の情報をブロックチェーン上でセキュアに共有し,受発注情報に基づく自動決済を行うプロトタイプを開発した。さらに,銀行との協創によりデジタル通貨の発行やデジタル決済を可能とし,自社のサプライチェーンで実証を進めている。また,これらの取引情報を活用した,資金需要に適切かつ迅速に対応する金融サービスの開発を進めている。

今後は,これらのサービスの社会実装を推進し,産業分野における社会課題の解決に寄与するプラットフォームサービスの実現をめざす。

[5]デジタルペイメントサービス[5]デジタルペイメントサービス

6. 温度検知インクを活用した物流管理ソリューション

食品,医薬品の安全性に対する消費者意識の向上により,各国でコールドチェーンにおける管理規制が強化されている。日立は,冷凍品,冷蔵品などの管理温度の逸脱を不可逆な色変化で検知するインクを開発し,インクと商品IDコードを組み合わせた温度検知ラベルの製造方法を構築した。

インクの周囲に赤,緑,青の基準色を設けた温度検知ラベルは,スマートフォンのカメラでインク色と基準色との色度差を読み取ることで,屋内外のさまざまな光環境下における読取誤差を低減するデザインとした。読み取りと同時にインク色による温度履歴情報から管理状態を判定し,IDコードに入力された商品情報と,スマートフォンの読取時刻・位置情報とともにサーバや顧客に直接送信する。

現在,食品や医薬品関連のメーカーと実証試験を進めるとともに,食品の鮮度管理や医薬品の品質管理などの分野への応用を見据えたコールドチェーンソリューションの製品化に取り組んでいる。

[6]温度検知ラベルを活用した品質管理ソリューション[6]温度検知ラベルを活用した品質管理ソリューション

7. 作業現場向けIoTエッジソリューション

日立の協創アプローチでは,顧客内の専門家と協力し,顧客独自の運用上の知見を得ることができる課題を特定しプロジェクトとして推進する。そのプロジェクトで得られた知見の分析により,最も重要な業績課題の解決および最も関連性の高いKPI(Key Performance Indicator)達成に取り組んでいる。

現在の工場は,クラウド,エッジサーバ,監視装置のほかに多様な設備など,多層的なシステムで構成されている。このため,IoTシステムには,複数の技術と統合できること,その他のソリューションやパートナー・ベンダーのエコシステムと共存することが求められる。また,IoTエッジソリューションに関しては,IoTデータチェーンのあらゆる場所での分析結果を統合できる必要がある。

これらを実現する,柔軟に接続可能なソリューションアーキテクチャを確立するため,日立はデータ取得,エッジ処理,クラウド分析をモジュラー化し,疎に結合させるアプローチを試行している。このようなアーキテクチャにより,IoTエッジソリューションを素早く顧客へ提供することをめざす。

(日立アメリカ社)

[7]IoTエッジソリューション確立アプローチと作業現場向けソリューションの例[7]IoTエッジソリューション確立アプローチと作業現場向けソリューションの例

8. AIベースの外観検査によるフリートメンテナンスの改善

[8]日立のAIベース外観検査のフレームワーク[8]日立のAIベース外観検査のフレームワーク

食品,医薬品,消費財,工業製品の輸送はすべて,車両,航空機,貨物船などのフリートアセットによる効率的な輸送に依存しており,フリートアセットの管理状態が輸送に対して大きな影響を与える。

日立は,長年にわたりさまざまな顧客および関係するステークホルダーと協力してきた経験から,フリートアセットを良好な状態に維持して安全性を高め,ダウンタイムをなくすことが運送業における最も重要な課題であると学んだ。これには,潜在的な欠陥を特定し,効果的なメンテナンスプロセスによってアセットの状態悪化の影響を低減することがダウンタイムの低減には不可欠である。欠陥を効率的に発見し,メンテナンスプロセスを合理化するカギとなるのがアセットの検査であるが,検査プロセスには適切なデータ収集が必要であり,データに基づく状態評価の質がメンテナンス計画の効率化,修理時間,コストの低減に大きく影響する。現在の運送業では検査のほとんどがマニュアルプロセスであり,作業者が目視検査でアセットの欠陥を特定している。しかし,熟練労働者不足や,主観的な検査,手順に一貫性がないといった課題を現在のプロセスは抱えている。

このような課題に対して,日立アメリカ社研究開発部門は,AI,機械学習,およびコンピュータビジョンを活用した運送分野における外観検査システムを開発している。このシステムの中核となる技術は以下のとおりである。

  1. 検査計画作成サービス
    検査の種類,アセットの種類,検出された欠陥に応じて作業者をガイドする検査計画を自動で作成する。
  2. 検査ライブラリ
    検査の種類やアセットの種類に応じて,一貫性があり自動的かつスケーラブルな検査を可能にするための計画ライブラリである。
  3. 自動検査
    検査計画作成サービスによって生成された計画に基づいて,ロボットやドローンが検査プロセスを実行する。
  4. 欠陥分析
    マルチレベルで欠陥検出を行うAIベースの分析システムが分析精度を高め,誤検出を削減する。
  5. 車両欠陥ライブラリ
    対象アセットおよびその欠陥に関連する画像を含むライブラリに基づき,AI技術で欠陥とその場所を特定する。

日立はこれらの技術をエンドツーエンドの外観検査システムに統合し,高い精度と一貫性のある,繰り返し利用可能なプロセスを備えた欠陥検出を実現している。このシステムは,ロボット,作業者,フリートに搭載した固定カメラ,ドローンから体系的にデータを収集する新しい技術を取り入れ,AIを使用して欠陥を分析・特定し,デザイン思考に基づいて,システムの検査結果を意思決定者に伝える。

日立は,AIベースの修理提案エンジン,部品在庫,ERP(Enterprise Resource Planning)システムなど,フリートのメンテナンスと修理に関係するその他のソリューションにこのシステムを統合し,エンドツーエンドの検査および修理サービスシステムを開発すべく取り組んでいる。

(日立アメリカ社)

9. 倫理的なテクノロジーデザインのためのツールとプロセスの開発

データに基づく技術に対する倫理的な懸念が,学者,政策立案者,一般市民の間で高まっており,イノベーションの実現において倫理が非常に重要な要素として注目を集めている。イノベーションという観点から倫理を理解するには,目先の要求を超えてデータの影響を理解する必要がある。顧客が所有するデータには,大抵の場合,何らかのバイアスが掛かっている。既存のデータは運用上の制約を受けるうえ,人の主観によって形成されており,それが偶然の場合もあれば,社会構造にしっかりと組み込まれている場合もある。したがって,定量的なデータにだけ注目してソリューションを開発すると,有害なバイアスを持続させたり,場合によっては増幅させたりするリスクが生じる。人々がデータに及ぼす影響,データが人々に及ぼす影響を体系的に盛り込むことによって,人間的な視点で倫理的なソリューションの構築が可能になる。

日立アメリカ社研究開発部門のデザインラボでは,倫理を考慮した研究開発の推進方法を探り,倫理的なイノベーションのためのツールを開発している。

(日立アメリカ社)

[9]データを超えて考える:イノベーションプロセスにおいてデータの全体的なライフサイクルと影響を考慮する[9]データを超えて考える:イノベーションプロセスにおいてデータの全体的なライフサイクルと影響を考慮する

10. サステナブルファイナンスプラットフォーム

持続可能な発展は,現代社会および官民の組織にとって最優先課題である。これを実現するには,環境的に持続可能な事業を支援する投融資の促進が求められている。

しかしながら,グリーンローン,グリーンボンド,サステナビリティリンクローンといった革新的な金融市場を今後も成長させるには,投資されるプロジェクトが生み出す環境・社会への効果を示す,測定可能かつ比較可能な指標を示す必要がある。

日立はこのニーズに応えるため,エネルギーやモビリティの分野で脱炭素化を推進してきた経験を金融分野に活用し,投資効果の可視化と検証に取り組んでいる。

「サステナブルファイナンスプラットフォーム」は,IoT,ブロックチェーン,AIといった複数のデジタルテクノロジーを活用して,金融市場が抱える直近の課題を解決する。将来的には,透明性の高いモニタリングや市場機会の特定,データ分析などの機能を有し,金融市場の関係者全員にとってWin-Winになるようなエコシステムを実現することをめざしている。

主な提供価値は,効率的なレポート作成,投資の意思決定支援,透明性の確保,複数事業のアグリゲーションの4点である。

[10]サステナブルファイナンスプラットフォーム[10]サステナブルファイナンスプラットフォーム

11. データ駆動型顧客協創プロジェクト

[11]コーンクラッシャの残存耐用時間予測[11]コーンクラッシャの残存耐用時間予測

今日,機械によって生成されるデータは,正確さや量において人の生成するデータを上回っているが,ネットワークに接続された機械によって生成される膨大なデータをいかに管理し活用するか,という新たな課題が生じる。機械によって生成されるデータには,機械の稼働に関する知見が含まれ,業務効率の改善に活用できる可能性があるため,多くの企業がこのようなデータを収集して保存している。いずれこのデータを使って業務を革命的に変化させ,効率化とコスト削減を実現させたいと考えてのことである。

日立は顧客と協創し,これらのデータを活用して価値ある知見を見いだし,業務効率化のための行動を提案することにより,コスト削減およびサービスや製品の品質向上につなげている。

日立は長年にわたり「データ駆動型顧客協創」に取り組んできた。これは,顧客とチームを組み,データに基づいてソリューションやサービスを創出するという試みである。この取り組みでは,日立のNEXPERIENCEツールを使用して顧客のニーズを理解することから始め,特定分野の専門家の協力を得てデータを理解したうえで,高度な機械学習および人工知能のモデルを構築する。そして,顧客のフィードバックに基づいてこれらのモデルを連続的に改善していく。

現時点で,自動車,海洋,道路輸送,鉄道輸送,医薬品,半導体など幅広い産業分野の顧客にサポートを提供している。そして,日立の協創のユースケースとして,以下の4点を重点的に取り上げている。

  1. 予知保全と残存耐用時間(RUL:Remaining Useful Life)予測
  2. 業務効率化
  3. 異常の検出と予測
  4. 効果的かつ安全な業務のための業務推奨エンジン

12. 社会課題解決をめざす大学連携「清華-日立未来創新連携計画」

グローバル化の進展,人々の価値観の変化などにより,知識や価値の創造プロセスが大きく変化し,経済や社会の在り方,産業の構造が急速に変化している。このような変革の中で,日立の大学連携は,先端技術の共同研究にとどまらず,将来ビジョンの創生や社会課題を起点とした価値創出など,イノベーションパートナーとしての取り組みにまで広げている。

2018年11月には中国の清華大学と「未来創新(イノベーション)連携計画」に関する戦略的提携協定を締結し,2019年4月より活動を開始した。この連携では,都市のデジタル化,ヘルスケア,エネルギー,モビリティなどのさまざまな領域において,両者が有する技術や資源を活用し,ビジョンに基づく政策提言や技術開発,現場実証などを通じて社会実装につなげることをめざす。さらに,社会イノベーション事業を創出し,中国社会の持続可能な発展,人々のQoL(Quality of Life)向上に貢献していく。

[12]清華-日立未来創新連携計画調印式[12]清華-日立未来創新連携計画調印式

13. 加工技術デジタルレシピを活用した中国市場向け加工最適化ソリューション

日立は,プレス加工などの加工技術ノウハウをデジタル化したデジタルレシピを活用し,製造事業者の生産業務をサポートするソリューションを立ち上げている。プレス加工の設計業務において,顧客はプレス加工解析を用いて金型形状を設計するが,中国では新興企業が多く離職率も高いことから,解析や設計ノウハウが蓄積されていないため,十分な解析精度が得られず金型形状の修正回数が多く発生している。

日立は,これまでの解析・最適化モデルの構築実績から機能や設定のパターンを抽出してノウハウをライブラリ化し,それらを組み合わせて適切なモデルを構築することで,金型設計で問題となるスプリングバックを高精度に予測し,金型形状を最適化するプレス成形のデジタルレシピを開発した。このデジタルレシピを活用し,顧客の製品,金型,設備情報から最適な金型形状を提供することで,金型修正回数低減による金型製造リードタイム短縮という顧客価値を生み出す。

現在,中国の大手自動車部品メーカーを対象に実証実験をしており,解析精度の向上とリードタイム短縮の見通しを得た。

[13]デジタルレシピによる加工最適化ソリューション[13]デジタルレシピによる加工最適化ソリューション

14. デジタルスマートシティの取り組み

急速な都市化の進行により,交通渋滞や大気汚染,エネルギー消費の増加などの社会問題が生じている。日立は,生活者(市民)価値を起点とした都市の在り方に注目し,都市や市民のデータを収集・分析し,データ駆動により都市計画や運営を改善することで,生活者中心の都市「People Centric City」の実現をめざしている。

例として,日立東大ラボでは「ハビタット・イノベーション」プロジェクトの取り組みにおいて愛媛県松山市をフィールドに,人流計測技術を活用した「データ駆動型都市プランニング」の実証を行った。また日立アジア社研究開発センタは,シンガポール政府からの助成を受け,2019年2月より,IoTとAIを利用して空間機能,利用者の活動,個人の快適性といったビルのダイナミズムに適応するスマートビルディング/デジタルツインソリューションを開発している。

日立は,データ解析や住民とのオープンな協創を通じて街に暮らす人々の価値観の変化を捉え,Lumadaに搭載される最新技術を活用することによって,常にその時代の人々が新たな価値を得られるサービスを提供し続け,愛される街を創っていく。

[14]People Centric Cityの概念[14]People Centric Cityの概念

15. インドにおける電子決済分析サービス

[15]電子決済分析サービス[15]電子決済分析サービス

インドでは,インターネットとスマートフォンの普及に加え,キャッシュレス経済の実現をめざす政府のさまざまな取り組みによって,電子決済が急成長している。インド政府は,2014年から「IndiaStack(インディアスタック)」と呼ばれるオープンAPI政策を進めている。

IndiaStackのAPIは,企業,スタートアップ,デベロッパーに,e-KYC※1)(Electric Know Your Customer),UPI※2)(Unified Payment Interface)などのデジタルインフラの利用を可能にする。このような政策によって,中小企業も含め,事業者による電子決済チャネルの導入が進んでいる。また,銀行が一貫して電子決済の使用手数料を下げており,この流れはさらに加速している。

2019年に日立はSBI(State Bank of India:インドステイト銀行)と合弁会社を設立し,電子決済の加盟店開拓と電子決済サービス基盤の構築に乗り出した。日立はSBIとの協創を通じて,膨大かつ動的な電子決済データを活用した加盟店中心の電子決済分析サービスを開発している。電子決済データとその他の関連データソースから,顧客,ロケーション,加盟店に関する知見をリアルタイムで抽出し,顧客と加盟店の関係を分析する。また,「Hitachi AI Technology/Prediction of Rare Case(AT/PRC)」を使用して,潜在的な要因から加盟店のさまざまなリスクを予測する。電子決済分析サービスでは,以下のような高付加価値のサービスを提供する。

  1. 銀行:高収益加盟店/非アクティブ加盟店の診断,AIに基づく短期融資審査
  2. 加盟店:ロイヤルカスタマーマーケティング,製品に関する知見
  3. 加盟店アグリゲータ:ロケーションインテリジェンス,迅速な加盟店ネットワーク拡大のサポート

日立は今後もSBIと協力して高度なサービスを創出し,電子決済の導入加速,銀行と加盟店の継続的な成長をサポートしていく。

※1)
銀行口座などの開設に必要な本人確認をオンラインで行うこと。
※2)
インドの決済会社National Payments Corporation of Indiaが開発した次世代オンライン決済システム。

16. 物流輸送最適化ソリューション

経済成長が著しい東南アジアでは,物流輸送の定時配送とコスト削減に対するニーズが高まっている。これに応えるため,日立アジア(タイランド)社は日立物流(タイランド)社と協力し,配送計画の最適化と車両シェアリングのサービスを提供する。

サービス展開にあたり,さまざまな配送依頼の要件と適切な車種を自動的にマッチングさせるデータ解析エンジンを開発した。このデータ解析エンジンは,最短の計画時間内で配送コストを削減する車両割当計画の最適化を行う。さらに,この協創により車両互換性,配送先,積荷に関する制約といった地域固有の要件に対応する個別機能も提供できるようになる。また,提携する物流会社間で車両を共有することによって,混載やコンテナ貨物の配送が可能になる。

結果として,これらのサービスにより配送車両の数を最小限に抑え,配送ルートを最適化できるため,燃料消費と配送コストを削減しつつ,定時配送を保証できる。

[16]物流輸送最適化ソリューション[16]物流輸送最適化ソリューション

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