1. がん再発を低侵襲かつ早期に発見できる遺伝子検査
近年,低侵襲ながん診断技術として,血液などの体液サンプルを用いる液体生検が注目されている。液体生検は,内視鏡や針を使って腫瘍組織を採取する従来の生検と異なり,血中に微量に存在する腫瘍由来遺伝子を検出する。腫瘍由来遺伝子は正常な遺伝子がわずかに変異したものであるため,遺伝子変異を高感度に定量する技術が必要である。
このニーズに対し,高感度に対象遺伝子を定量するデジタルPCR(Polymerase Chain Reaction)に,遺伝子の変異を識別する融解曲線分析を組み合わせ,検体を多数の微小区画に分割した後に増幅し,おのおのの微小区画の蛍光強度と融解温度を計測する技術を開発した。
これにより,血中の微量な腫瘍由来遺伝子にみられる小さな遺伝子変異を,高感度かつ多項目同時に検出できることを実証した。この技術は,がん再発を低侵襲かつ早期に発見し,遺伝子変異に基づいた適切な薬剤選択や早期治療効果判定への応用が期待される。