日立評論

自家消費PV発電と自己充電EVのシステム連携ソリューション

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日立評論

次世代のエネルギーを実現するイノベーション
[ⅱ]分散電源ソリューション

自家消費PV発電と自己充電EVのシステム連携ソリューション

ハイライト

国内において,供給電力に占める再生可能エネルギーの比率を増加させることが課題となる中,再生可能エネルギーによる自家消費PVを走行時ゼロエミッションのEVと組み合わせることが期待されている。これを実現するためには,EVの充電機会を拡大することが重要である。従来のEV充電器は定置型であり,現状ではEV10台程度に対して1基の充電器が設置されているが,これに加え,EVに高周波変圧器を追設して走行用インバータを急速充電にも活用することで,EV各車に急速充電機能を付与することができる。

本稿では,PVのような直流発電との接続が容易で,車上に急速充電機能を持つEVの一方式を提案する。これにより低炭素化に貢献するとともに,郊外や地方に都市圏よりも優位な価値を提供することが期待できる。

目次

執筆者紹介

井出 一正Ide Kazumasa

  • 株式会社日立パワーソリューションズ 兼 日立製作所 次世代エネルギー協創事業統括本部 所属
  • 現在,エネルギーソリューション事業の開発に従事
  • 工学博士
  • 電気学会上級会員
  • IEEE Senior Member

中津 欣也Nakatsu Kinya

  • 日立製作所 研究開発グループ 制御イノベーションセンタ 所属
  • 現在,パワーエレクトロニクス製品の研究開発に従事
  • 工学博士
  • 電気学会会員
  • 自動車技術会会員

石川 拓也Ishikawa Takuya

  • 株式会社日立パワーソリューションズ サービス&プロダクトソリューション事業統括本部 サービスソリューション推進本部 兼 日立製作所 次世代エネルギー協創事業統括本部 新事業創生部 所属
  • 現在,エネルギーソリューション事業の開発に従事

鈴木 慎悟Suzuki Shingo

  • 日立製作所 次世代エネルギー協創事業統括本部 ビジネス開発第1部 所属
  • 現在,エネルギーソリューション事業の開発に従事

叶田 玲彦Kanouda Akihiko

  • 日立製作所 研究開発グループ 制御イノベーションセンタ ドライブシステム制御研究部 所属
  • 現在,パワーエレクトロニクス製品の研究開発に従事
  • 電気学会会員

1. はじめに

国内のPV(Photovoltaics:太陽光発電)は,FIT(Feed-in Tariff:固定価格買取制度)の導入により発電した電力を電力会社に売電することで利益が得られる形で普及し,FITによるPV発電の技術の進歩に伴って経済性も高まってきた。今後は,発電した電力を自家で消費するPV発電の普及・伸長に転換させることで,発電時に地球温暖化ガスを排出せず,災害時などに電力を自給自足できる電源としての貢献が期待されている。一方,輸送分野では世界的にEV(Electric Vehicle)の普及が進み,経済産業省が作成した自動車電動化の推移によると,国内では今後30年弱で約50〜70%の自動車が電動化され,CO2排出の削減が進められる計画となっている。EVなどの各種電動車の普及にあたっては走行距離,電池コスト,充電時間,充電電力,劣化電池のリサイクルなどの主要課題があるが1),特にPVなどの再生可能エネルギーによる発電電力を低損失でEVに伝送して充電でき,かつ充電機会を高める設備を整備することが重要であると考えられる。

本稿ではこれらの課題を踏まえ,今後普及が進むPVの発電電力を効率よく,かつ充電機会損失を最小限にしてEVへ伝送することをめざしたシステムコンセプトを提案する。このコンセプトの特長は,定置型DC(Direct Current)発電装置であるPVと,主機駆動インバータを急速充電にも活用して充電機能を付与したEVを連携させる点にある。

2. 自家消費PV発電と急速EV充電の連携およびその課題

図1|国内関連市場の動向図1|国内関連市場の動向国内の発電量は今後しばらく化石燃料への依存が続くが,太陽光発電の導入は継続する。
一方,電力消費側でのEV生産台数が伸びるものの,急速充電器設置基数はEV生産台数の伸びよりも低くなる見通しである。

図1に,本提案に関連する国内市場の動向を示す。国内の発電量は今後しばらく化石燃料依存が続いていくが,非化石燃料発電としてのPVは堅調に導入が進む予測となっている。自家消費PVは相応の電力消費を前提として,比較的出力当たりの敷設面積が大きく,日射を遮る建造物が少ない立地条件を満足できるように需要家などに設置されていくものと考えられる。一方,電力を利用する側ではEVの生産台数が伸びていく見通しであるが,急速充電機の設置基数の伸びはそれを下回る見込みである。こうした動向を踏まえると,PV発電の立地条件を満足しやすい郊外や地方では,EVの絶対数が増加しないと急速充電器設置基数が増えないという懸念がある。

図2に,自家消費PV発電と急速EV充電の連携方式を示す。(a)は,既存の交流線を介してPV発電からEVに充電する方式を示し,直流のPV出力をDC/DC変換器・AC(Alternating Current)/DC変換器・変圧器を交流線に接続し,交流線を介して変圧器・AC/DC変換器・DC/DC変換器から構成される定置型のEV充電設備を通じて移動体のEVを充電する。この方式では,複数の変換器と変圧器を経由するため,PVの発電電力のEVへの伝送には相応の損失を伴う。さらに,EVを充電しないときもEV充電設備側の変圧器は待機損失を発生している。(b)は,PVにDC/DC変換器を接続し,直流線を介してDC/DC変換器による急速充電機能を持たせたEVに直接充電する方式を示している2)。(b)の方式では,定置側でEV充電に用いる設備は直流線とコネクタで構成でき,かつEV充電設備側変圧器での待機損失が発生しない。したがって直流線に急速充電機能を持たせたEVを複数台接続することも容易になると考えられるが,急速充電用のDC/DC変換器をEV車上に実装することが課題となる。

図2|自家消費PV発電と急速EV充電の連携方式図2|自家消費PV発電と急速EV充電の連携方式(a)の方式では,交流配電線を介してPV発電からEVに充電すると複数の変圧器と変換器を通して電力を授受し,地上側のEV充電設備に移動体であるEVを接続して充電する。EVに充電しないときもEV側の変圧器は待機損失を発生している。一方(b)では,PVにDC/DC変換器を接続し,直流線を介してDC/DC変換器による急速充電機能を持たせたEVに充電することで,地上側のEV充電設備は直流線とコネクタのみで構成できる。直流線には急速充電機能を持たせたEVを容易に複数接続可能である。

3. 車上電機品へ急速充電機能を付与したEVの提案

図3|直流PV発電と連携する駆動用インバータを急速充電にも活用するEVの回路構成図3|直流PV発電と連携する駆動用インバータを急速充電にも活用するEVの回路構成EVの二つの駆動軸に駆動用としてインバータとモータ・ジェネレータを配し,さらに変圧器と切替器を付加することで駆動用のインバータが急速充電にも活用できる。

図4|駆動用インバータを急速充電にも活用するEVの概略動作と電力の流れ図4|駆動用インバータを急速充電にも活用するEVの概略動作と電力の流れモード1は地上側の充電制御用DC/DC変換器に接続するモードで,従来の充電器インフラに対応できる。モード2は地上側に充電制御用DC/DC変換器がない場合に車上で急速充電器を構成し,モード3はインバータを駆動用としてEVが走行する。

前章で述べた課題を踏まえ,図2(b)の方式に基づく具体的なEV車上の機器構成を図3に示す。地上側には,交流商用系統と連系するための変圧器とAC/DC変換器が設置されて直流線に接続され,直流線にはさらにPVと電池がそれぞれDC/DC変換器を介して接続される。電池はPV発電の出力変動を緩和する想定で設置している。一方,直流線は定置型のDC/DC変換器を介さず,コネクタを通過して移動体であるEVに直接接続される。EV上には,従来のEVにも搭載される制御装置,車載電池,主機駆動インバータ,モータ・ジェネレータのほか,急速充電に用いる変圧器および走行と急速充電機能を切り替える切替器で構成する。同図の破線内領域はモータ・ジェネレータを除く車載急速充電システムと駆動インバータを兼ねる静止型の電源システムになる。なお,モータ・ジェネレータは左右の駆動輪にそれぞれ設置して示したが,前後輪に駆動力を配分したり,1軸に単機で駆動力を与える構成とすることも可能である。

この車上システムは,基本的に三つのモードで動作することを想定している(図4参照)。モード1は,インバータを停止させ,コネクタの定置側にDC/DC変換器(図示せず)を置き,コネクタに直接車上電池を接続し,定置型DC/DC変換器で充電制御するものであり,このモードで既設のEV充電設備にも接続できる。モード2は,2台の主機駆動インバータ間に高周波変圧器を接続したうえで車上電池に接続し,主機モータ・ジェネレータを開放することで,車上での急速充電を可能にする。このモードではインバータの交流側を高周波で駆動させ,冷却系を稼働させることで,温度上昇の許容範囲内で急速充電を行うことが可能となるとともに,寒冷期にはインバータ,変圧器の電気損失を充電中の車上で熱源として活用することも可能になる。モード3は,高周波変圧器を開放し,主機駆動インバータを主機モータ・ジェネレータに接続してEVが走行するモードである。

4. エネルギー利用の観点における提案方式の価値

本稿で提案したPVと急速充電機能つきEVの連携コンセプトの価値を,エネルギー利用の視点から説明する。

4.1 経済性と低炭素化への貢献

移動体としての経済性と低炭素化への貢献の価値を試算した例を表1に示す。なお,試算の結果は電力および燃料単価,PVなど電気システムの導入費や効率などによって変動するものであり,また車両の初期費用,メンテナンス費用は除外している。ここでは,商用車・バンを12台保有し,1日150 km走行すると想定し,試算を行った。

表中の(1)は内燃機関車,(2)は交流配電線に接続した既存の急速充電器で充電するEV,(3)は交流配電線を介して至近の自家消費PVと既存の急速充電器を接続して充電するEVである。(4)は図3に示した自家消費PV発電を直流線に接続し,急速充電機能付きEVに直接充電する方式である。

(2)は走行時ゼロエッミッション,(3),(4)は走行時に加えて発電時もゼロエミッションを実現している。前述のとおり,試算の前提条件により数値は異なるが,車両を走行させるための電力費と低炭素化への貢献の観点では,自家消費PV発電とEVの連携には価値があり,加えて(4)の場合は各車に急速充電機能を備えるため,自家消費PV発電からの充電機会損失も抑制できるといえる。

表1|内燃機関や従来のEVなどと比較した場合の経済性などの試算の例表1|内燃機関や従来のEVなどと比較した場合の経済性などの試算の例1,500 ccクラスの商用車・バンを想定し,(1)内燃機関車,(2)交流配電線に接続した定置型充電器で充電するEV,(3)交流配電線に接続したPV発電器と定置型充電器で充電するEV,(4)PV発電器と駆動用インバータを急速充電にも活用するEVのそれぞれについて,走行に要する燃料費,電力費の試算例および低炭素化における価値を示す。PVで発生した電力はEV充電と需要家内設備への供給で全消費することを前提とし,また(4)の電力費は冬期に充電時コンバータの発熱を車内暖房に活用して,電力費を10%改善すると仮定した。

4.2 分散エネルギーシステムとしての発展性

図5|主機駆動インバータを急速充電にも活用するEVを用いる価値図5|主機駆動インバータを急速充電にも活用するEVを用いる価値主機駆動インバータを急速充電にも活用するEVを需要家サイトで活用すると,地上側DC/DC変換器を用いた急速充電が可能となり,直流線に接続する急速充電やV2Gが地上側DC/DC変換器なしで可能となる。さらに,EVで活用して性能が劣化した電池も地上側DC/DC変換器を新たに準備することなく蓄電装置として活用しやすくなる。

自家消費PVを導入した電力需要家に直流自営線を設け,急速充電機能付きEVなどを接続して運用する分散エネルギーシステムの構成例を図5に示す。直流自営線にはPVのほか,非常用あるいは常用の発電機器を接続することができ,エンジン発電機のような交流発電機にはAC/DC変換器を介して直流自営線に接続することで,交流配電線の通電状態に依存せずに連系・自立いずれの運転も容易になる。図中の(a)では,定置型のDC/DC変換器に既存のEVあるいは充電機能付きEV(図4モード1)を接続した充電ができ,主機駆動インバータの出力を超える定置型DC/DC変換器でより短時間の急速充電が可能になる。(b),(c)は直流自営線に直接充電機能付きEVを接続するもので,充電やV2G(Vehicle to Grid)が可能になる。(d)は充電機能付きEVの車載電池の性能が劣化した後,劣化した電池と図3破線内領域の静止型電源システムを活用し,新たに定置型DC/DC変換器を準備することなく,需要家内の蓄電装置として活用できることを示している。

このシステムは気象条件などに左右されるPVと,移動体であるEVを連携するEMS(Energy Management System)である。このEMSは,需要家内の負荷,発蓄電機器と需要家が使用する走行中のEVから各種データを収集し,需要家内負荷の需給調整,PVとEV群を協調させた充電状態管理と充電制御,電源システムの保守などを需要家サイト単位または複数の需要家サイト間で管理することで,BCP(Business Continuity Plan)などにも対応することになる。

5. おわりに

本稿では,定置型充電装置の有無による制約を受けにくい環境でPVによる発生電力を活用できる,PVとEVの連携システムコンセプトを提案した。実証と効果の定量化など課題も残っているが,今後,世界共通の課題である再生可能エネルギーの活用拡大を促進する施策の一つとして実現をめざしていく。

参考文献など

1)
中津欣也,外:産業界からみたパワーエレクトロニクスのこれまでとこれからの研究開発,平成30年電気学会全国大会シンポジウム,S18-2(2018.3)
2)
株式会社エネルギー応用技術研究所
3)
井出一正,外:再生可能エネルギーによるDC発電と急速充電機能を内蔵する電動車を連携させるシステムコンセプトの提案,電気学会論文誌,Vol.140-D,No.4(2020.4掲載予定)
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