日立評論

地産地消型の分散電源を実現する地域エネルギー供給ソリューション

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次世代のエネルギーを実現するイノベーション
[ⅱ]分散電源ソリューション

地産地消型の分散電源を実現する地域エネルギー供給ソリューション

ハイライト

日本では,太陽光,風力などの再生可能エネルギーの大量導入が進む中,電力系統への負担を低減しつつ,地震や台風などの自然災害に対するレジリエンスを高める地産地消型のエネルギー供給システムが注目を浴びている。また,このシステムは,各地域の特性に応じた再生可能エネルギーで生産された電気・熱を地元で利用することで持続可能な地域経済共生圏を形成し,地域の活性化を行う原動力としても,国および地方公共団体の期待を集めている。

株式会社日立パワーソリューションズは,これまでに培った再生可能エネルギーを含む分散電源の技術および経験を駆使し,地域協創型の地域エネルギー供給ソリューションを展開している。

目次

執筆者紹介

佐々木 幸一Sasaki Koichi

  • 株式会社日立パワーソリューションズ エネルギーソリューション事業統括本部 事業開発推進センタ 兼 再生可能エネルギーソリューション本部 所属
  • 現在,地域エネルギー供給ソリューションなどの新事業開発業務に従事

神田 勢生Kanda Seio

  • 株式会社茨城サイエンス研究所
  • 現在,地域エネルギー供給ソリューションなどの新事業開発業務に従事

1. はじめに

2012年の再生可能エネルギーの固定価格買取制度の施行により,太陽光,風力を中心に再生可能エネルギーが大量に導入されつつあるが,その一方で電源の偏在化により主要送電系統の容量が不足するとともに,電力の需要と供給のバランスをとるための調整力確保の必要性が高まっている。これらについては,送電線の増強や調整電源の追設なども計画されているが,コストおよび工期の面で実用化に時間を要する。

一方,地産地消型の分散電源については,再生可能エネルギーなどの分散電源で発電した電力を地元で消費することで,電力系統への負担軽減が可能であり,系統の連系枠がなくとも逆潮流させなければ,原則,系統への接続が可能である。また,昨今の台風や地震などの自然災害により停電が長期化するケースが増えており,災害時の防災電源としてのニーズも高まっている。地域経済にとっても,エネルギーの地産地消を行うことで地域を中心としたサプライチェーンが形成されるため,地元での資金の循環や雇用の創生といった効果が期待でき,地域の活性化につながる。

ここでは,株式会社日立パワーソリューションズの地域エネルギー供給ソリューションの取り組み方針と,ひおきコンパクトエネルギーネットワーク構築事業における取り組みを紹介する。

2. 分散電源ソリューションの推進方針

日立パワーソリューションズでは前述の社会環境に鑑み,分散電源を活用して地域に密着した地域エネルギー供給ソリューションを展開している。本章では,分散電源関連機器・システムのラインアップおよび地域エネルギー供給ソリューションの推進方針について述べる。

2.1 分散電源関連機器・システムのラインアップ

図1|分散電源関連機器・システムのラインアップ図1|分散電源関連機器・システムのラインアップ株式会社日立パワーソリューションズの取り扱う分散電源関連機器・システムのラインアップを示す。ドイツのENERCON GmbH製風力発電設備については約400基,535〜2,400 kWのガスコージェネレーションについては約300台の国内納入実績がある。

日立パワーソリューションズの扱う分散電源関連機器・システムのラインアップを図1に示す。

これらの機器・システムにより,事業用発電設備の保守メンテナンスを行う一方,産業・民間向けの再生可能エネルギー,各種発電設備,エネルギー貯蔵設備およびエネルギー管理システムの計画設計,調達,据え付けおよびO&M(Operation and Maintenance)を行っている。

特に風力発電設備については,ドイツ連邦共和国のENERCON GmbH製風車を採用し,約400基の国内納入実績を誇るとともに,地元の発電事業者に対して地点開発,事業計画,許認可対応,事業運営支援も含めたワンストップサービスを提供している。

また,ガスコージェネレーション(以下,「コージェネ」と記す。)については,バイオガスにも対応したイエンバッハ製ガスエンジン発電設備約300台を国内に導入している。蓄電池システムについては,風力発電併設用出力変動緩和蓄電池システムの開発や,NEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organization:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のドイツ・ニーダーザクセン州における「大規模ハイブリッド蓄電池システム実証事業」に参画し,IGCS(Intelligent Grid Control System)については,国立大学法人三重大学のスマートキャンパス構築事業などで実績がある。

2.2 取り組み方針

図2|地域エネルギー供給ソリューションの事業モデル図2|地域エネルギー供給ソリューションの事業モデル地元自治体および企業と日立パワーソリューションズの長所・短所を相互に補い合いながら,事業創生を行う。

地域エネルギー供給システムの導入を図るには,地元自治体・企業との協力体制を構築することが必須である。地元自治体や企業は,地元の情報や課題に精通し,地域からの信頼も厚いが,発電事業などの事業化経験に乏しい,資金調達が困難であるといった課題を抱えている。一方で日立パワーソリューションズは,豊富な風力発電事業の立ち上げ経験やエンジニアリング力を有するものの,地域の信頼,事情の把握といった面では自治体や地元企業には及ばない。

これらの長所・短所を補い合うため,日立パワーソリューションズはファイナンスを含む事業計画立案,許認可・補助金申請対応の支援やEPC(Engineering, Procurement, Construction),O&M,事業運営支援を推進している。これに加えて,地元自治体や企業に地域エネルギー会社への出資や地元の合意形成に向けた協力を仰ぎ,協創型の事業を立ち上げていく方針である(図2参照)。

3. ひおきコンパクトエネルギーネットワーク構築事業での取り組み

3.1 背景

鹿児島県日置市は,人口約5万人の中規模都市であり,再生可能エネルギーのポテンシャルが高く,その活用に向けて市民,行政が積極的に取り組んでいる。例えば,市と地元企業が中心となり,2,000 kW級の風力発電事業や小水力発電事業を展開している。一方で,大企業の工場撤退などにより人口は減少しており,市の活性化が急務となっていた。

こうした中,市内でエネルギーを地産地消し,エネルギー関連費用を循環させることで地元企業の事業確保,新たな雇用の創出など,市の活性化に寄与することを目的として,自治体施設へのエネルギー供給を主とした地域エネルギー供給事業の推進を決定した。

当初は地元企業や市が主体となって計画が進められたが,地域エネルギー供給事業の事業性評価やシステム構築の経験がなかったため,同市において風力発電事業の立ち上げ支援の実績を有する日立パワーソリューションズが協力して進めることになった。

3.2 事業体制

図3|ひおきコンパクトエネルギーネットワーク構築事業の事業体制図3|ひおきコンパクトエネルギーネットワーク構築事業の事業体制地元の企業,自治体,銀行などが出資し,ひおき地域エネルギー株式会社は需給計画管理,電力調達,電力料金徴収を実施する。

地元ガス会社(太陽ガス株式会社),地元銀行(株式会社鹿児島銀行),自治体(日置市),地元企業14社が出資する,ひおき地域エネルギー株式会社が中心となり,経済産業省の「地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業費補助金」を活用して,2016年から2017年にかけて事業計画を策定した。これに続き,2018年から2019年には「平成30年度 地域の特性を生かしたエネルギーの地産地消促進事業費補助金(分散型エネルギーシステム構築支援事業)」を活用して据え付け工事を開始し,2019年3月には運転を開始している。日立パワーソリューションズは,各需要家の使用電力測定,システム検討および事業性評価からEPCを担当した(図3参照)。

ひおき地域エネルギー株式会社の主な業務は,以下のとおりである。

  1. 需要家の電力需給管理およびOCCTO(Organization for Cross-regional Coordination of Transmission Operators:電力広域的運営推進機関)への電力需給計画書の提出
  2. JEPX(Japan Electric Power Exchange:一般社団法人日本卸電力取引所)や電力会社からの自家発電設備以外の必要電力の調達
  3. 需要家からの電力・熱料金の徴収

3.3 システム構成

図4|ひおきコンパクトエネルギーネットワークの構成図4|ひおきコンパクトエネルギーネットワークの構成二つの離れたエリアをEMSで結び,1か所でエネルギー管理を行うことで,広域的に最適なエネルギー需給調整を行う。発電した電力は,コンパクトグリッド内で消費し,逆潮流しないようにEMSで出力抑制制御を行う。

本事業では,二つのエリアに分けてシステムを構築した(図4参照)。

コンパクトグリッド1は,市役所を中心とした行政エリアであり,市役所本庁舎,中央公民館,文化会館,上下水道課などの需要家を自営線で結び一括受電するとともに,需要家の最大電力550 kWに対し発電出力200 kWの太陽光発電設備を市役所の駐車用カーポート上に設置した。

コンパクトグリッド2は,日置市伊集院健康づくり複合施設ゆすいん,日置市伊集院総合運動公園,社会医療法人人天会鹿児島こども病院を自営線で結び,需要家の最大電力500 kWに対し,発電出力150 kWの太陽光発電設備と100 kWのコージェネを設置した(図5参照)。コージェネの排熱は,ゆすいんの温泉水の加熱に活用される。

それぞれのコンパクトグリッドには,EMS(Energy Management System)が設置され,各コンパクトグリッド内の需要家の使用電力や各発電設備の発電量および運転状態の監視を行うとともに,系統への逆潮流防止を行う太陽光発電設備の出力抑制制御や,ゆすいんの熱負荷に応じたコージェネの出力制御を行う。

EMSから得られるこれらの運転データは,統合EMSに集約管理されたうえで,顧客の所有する需給管理システムにて日々の需要電力予測やOCCTOへの需給計画の提出,JEPXや電力会社からの調達電力の計画管理に活用される。

図5|コンパクトグリッド2における各設備の外観図5|コンパクトグリッド2における各設備の外観コンパクトグリッド2では,三つの需要家を自営線で結び,150 kWの太陽光発電設備と100 kWのガスコージェネレーションにより電力供給を行う。逆潮流発生時には,逆潮流防止盤にて系統と遮断する。

3.4 導入効果

図6|コンパクトグリッド2における使用電力量と発電量の関係実績図6|コンパクトグリッド2における使用電力量と発電量の関係実績温浴施設ゆすいんの営業日と休館日におけるコンパクトグリッド2の電力使用量と発電量を示す。営業日は,JEPX電気料金に応じてコージェネレーション発電を稼働させる。休館日は電力使用量が少ないため,太陽光発電量の抑制制御を行う。

コンパクトグリッド2における各需要家の使用電力量と,発電設備の発電量の関係の実績を図6に示す。

温浴施設であるゆすいんの営業日においては,温浴設備の加温のため,6時よりコージェネとボイラ設備が起動を開始する。本来,昼間もコージェネを運転する計画であったが,当時,燃料費の高騰に加え,昼間のJEPX調達電力価格が安価であったため,加温終了後コージェネを停止させる運用としている。一方,総合運動公園のナイター設備稼働により電力使用量が増加する18時〜22時の時間帯は,JEPXの調達電力価格が上昇するため,コージェネを運転することとした。

ゆすいんの休館日においては,需要家の電力使用量が少なく,熱負荷がないため,コージェネを停止し,優先的に太陽光の運転を実施することとした。また,全需要家の使用電力量よりも太陽光の発電電力量が上回る場合には,太陽光の発電出力を逆潮しないレベルまで抑制して運転し,太陽光の発電量を最大限に活用している。

以上の運用により,年間の省エネルギー率は,計画の22.5%に対し18.7%となった。これは,計画時に比べ燃料費が高騰し,JEPX調達価格が低下したことによりコージェネの運転を抑えたためであるが,需要家には従来に比べ7%安い電力を提供するとともに,事業収支も計画値を満足することができた。

4. おわりに

ひおきコンパクトエネルギーネットワーク構築事業を通じて,再生可能エネルギーやコージェネなどの自家発電設備と外部からの調達電力を採算の取れる比率にすること,そして燃料費や調達電力料金の時価に合わせて発電設備の運用を変えていくことが必要であると分かった。

今後,太陽光パネルや蓄電池の価格低下が見込まれるため,上記のような太陽光の電力抑制や蓄電池による余剰電力および夜間電力の充放電,ピークシフト,インバランス低減や災害時の自立運転などの機能を追加することで,さらなる経済性とレジリエンスの向上を図る予定である。

本プロジェクトでは自営線を活用しマイクログリッドを構築したが,自営線の敷設費用などが事業性に与える影響も大きいため,今回の成果を基に配電系を含めたマイクログリッドやVPP(Virtual Power Plant)の構築につなげていく。

謝辞

本稿で述べたひおきコンパクトエネルギーネットワーク構築事業においては,太陽ガス株式会社,日置市役所および地元企業の方々に協力を頂いた。ひおき地域エネルギー株式会社小平竜平代表取締役,奥保成部長をはじめとする関係各位の多大なる支援に対し,深く感謝の意を表する次第である。

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