日立評論

在宅ワークとその先にある未来

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ハイライト

今般,新型コロナウイルスによるパンデミックの影響を受けて,多くの企業で在宅ワークの導入・実施が進められた。日立は,これまで在宅ワークを含む多様な働き方をめざし,IT環境や人事制度の整備を進めてきたが,今回,大半の従業員が在宅ワークを行ったことにより,従業員や組織の意識,ワークプレースなどに関して在宅ワークにおけるさまざまな課題が見えてきた。その一方で,さまざまな環境において自ら働く場所を選択できる働き方の実現を通じて,地域活性化につながるワーケーションなど,新たな可能性も広がっている。

本稿では,これまでの日立の取り組みに加え,コロナ禍に伴う在宅ワークの実施を通して明らかとなった課題とその解決に向けた方向性,そして地域活性化に寄与するためのワーケーションの取り組みを紹介し,アフターコロナの新常態(ニューノーマル)における働き方,そして社会のあり方を展望する。

目次

執筆者紹介

津嘉山 睦月Tsukayama Mutsuki

津嘉山 睦月(Tsukayama Mutsuki)

  • 日立製作所 サービスプラットフォーム事業本部 アプリケーションクラウドサービス事業部 働き方改革ソリューション本部 ワークスペースソリューション部 所属
  • 現在,働き方改革ソリューションのサービスビジネス拡販業務に従事

一木 友和Ikki Tomokazu

一木 友和(Ikki Tomokazu)

  • 日立製作所 サービスプラットフォーム事業本部 アプリケーションクラウドサービス事業部 働き方改革ソリューション本部 デジタル&エンジニアリングサービス部 所属
  • 現在,働き方改革関連商材として在宅ワークオフィス統合ソリューションの拡販,設計構築取りまとめに従事

井阪 貴男Isaka Takao

井阪 貴男(Isaka Takao)

  • 日立製作所 サービスプラットフォーム事業本部 アプリケーションクラウドサービス事業部 働き方改革ソリューション本部 デジタル&エンジニアリングサービス部 所属
  • 現在,日立人財データ分析ソリューションの顧客向けコンサルティングやデータ分析に従事

西脇 友香Nishiwaki Yuka

西脇 友香(Nishiwaki Yuka)

  • 日立製作所 サービスプラットフォーム事業本部 アプリケーションクラウドサービス事業部 働き方改革ソリューション本部 ワークスペースソリューション部 所属
  • 現在,Microsoft Office 365のユーザー向け活用支援のコンサルタントや,統合クライアントサービスの拡販業務に従事

荒井 達郎Arai Tatsurou

荒井 達郎(Arai Tatsurou)

  • 日立製作所 サービスプラットフォーム事業本部 アプリケーションクラウドサービス事業部 働き方改革ソリューション本部 所属
  • 現在,「人間中心のデジタル社会をめざし,一人一人が幸福を実感できる明るい未来を創る」活動に従事

1. はじめに

日立では,1999年5月に在宅勤務制度を導入しており,特に2016年からは働き方改革として,多くの人財が成果を上げることができるように,IT環境の整備と人事施策の両面から在宅ワークを含む多様な働き方を経営役員によるトップダウンで推進してきた。

今般の緊急事態宣言を受けた在宅ワーク施策も,早い事業所では2月から開始し,緊急事態宣言中の5月12日には,全国で約2万3,500人(全従業員の64.4%),特に感染者が増加していた7都府県では約1万8,000人(当該地域で勤務する従業員の79.8%)が在宅ワークを実施していた。

本稿では,それ以前から取り組み始めていた在宅ワークの経験に加え,今回,大半の従業員が在宅ワークを行ったことにより見えてきた課題,現在進行中の人事施策の取り組みも参考にしつつ,今後の働き方,さらに社会のあるべき姿について考察する。

2. 在宅ワーク事情

図1|コロナ禍に伴う在宅ワーク実施における課題 図1|コロナ禍に伴う在宅ワーク実施における課題 新型コロナウイルスの感染防止に向けた在宅ワークの実施において多くの課題が発生した。これらの課題を取り除く施策を模索中である。

今回,新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言を受けて,今までオフィス中心であった働く場が半強制的に自宅となった企業も多く,オフィスと同様に業務ができる在宅ワーク環境の迅速な導入が求められている。しかし,在宅ワークの導入にはさまざまな課題があり,緊急事態宣言前に比べて在宅ワークの導入率は大幅に伸びたものの,政府目標の「7割」には到達していないのが実情である。また,コロナ禍におけるテレワークの影響に関する調査1)では,緊急事態宣言解除後も在宅ワークを継続したいという回答が多くあったものの,在宅ワークによる生産性の低下を懸念する回答も多くあった。日立はコロナ禍の以前より在宅ワークを推進していたが,緊急事態宣言による強制的な在宅ワークにより,新しい課題が見えてきた。コロナ禍に伴う在宅ワーク実施におけるさまざまな課題を以下に示す(図1参照)。

  1. 業務対応
    紙文化を抜け出せずペーパーレス化できていないために,出社しないと業務が進められないことや,押印などのためだけに出社せざるを得ないことがある。
  2. オフィス環境
    在宅ワーク環境の準備に時間とコストがかかるため導入が進まないことや,導入したものの,通信環境に負荷がかかり,会議や資料共有など業務に影響を与えることがある。
  3. セキュリティ
    在宅ワークのために端末を社外に持ち出すことによる情報漏洩のリスクがある。
  4. 労務環境
    部下の業務状況の把握が難しいことや,残業が増えてしまうことがある。
  5. コミュニケーション
    会議やその他の業務遂行において関係者との意思疎通がしにくい。
  6. 健康
    社員の健康状態が把握できないことや,運動不足による健康面での不安が生じることがある。

在宅ワークにおける課題は大きくこれらの六つに分類されるが,どの課題が優先すべきものかは業種・業態によりさまざまであり,現在,日立でも解決の方法を模索している状況である。

3. 従業員や組織の意識の変化

日立では,取り組み方次第でオフィスと変わらず仕事ができ,多様な働き方を実現できる手段として以前から在宅勤務制度を導入している。その実証として,緊急事態宣言前後,すなわち在宅ワークの徹底前後において,日立のある事業部Aの従業員個々人や組織の意識の変化を「日立人財データ分析ソリューション2)」を用いた調査で可視化したところ,以下の結果が得られた。

  1. 個人の「生産性の意識」が向上した。
  2. 組織の「生産性の意識」,「配置配属フィット感(イキイキ働けている度合い)」が向上した。
  3. 今後に関して,在宅勤務のニーズが最も多いものの,オフィスや出社に対するニーズも一定数存在する。

まず(1)については,特に成果意識や心身調整の因子(観点)に大きな向上が見られ,それぞれ在宅ワークで業務過程が見えないために成果に対する意識が向上した。通勤などがないことによる時間的余裕が心身の安定につながったと考えられる(図2参照)。

(2)については,多くの因子,特に意思決定過程浸透性や役割明確性の因子に大きな向上が見られ,また上司と部下の1対1での会話頻度が大きく向上したという調査結果からも,在宅ワークの徹底に際して組織や管理職として意識的なサポートが行われたことがうかがえる。加えて環境快適性の因子の向上から,適度な職場との距離感や人間関係を保てるようになったことも想定される(同図参照)。

(3)については,最も効率の良い勤務場所として過半数が自宅を挙げる一方で,残りの大半がオフィスを挙げていること,また好ましい在宅勤務頻度が順に「3回〜4回/週」,「1回〜2回/週」,少し差が開いて「ほぼ毎日」という回答でほとんどが占められることから,今後も在宅ワークが基本路線でよいものの,何かしらオフィスへ求められることや出社要望はあり,勤務場所を柔軟に選択できることが重要と考えられる(図3参照)。

今回の調査では,在宅ワークでも生産性が高くイキイキと働けることが明らかとなったが,一方で,在宅ワークの徹底直後に行った調査のため,在宅ワークの良い部分のみが表出した可能性はある。多様な働き方によるQoL(Quality of Life)向上の実現に向けて,今後も従業員や組織の意識がどのように変化するのか継続的に観測していく予定である。

図2|コロナ禍に伴う在宅ワーク前後における意識の変化に関するサーベイ結果(その1) 図2|コロナ禍に伴う在宅ワーク前後における意識の変化に関するサーベイ結果(その1) 個人における「生産性の意識」と組織における「生産性の意識」および「配置配属フィット感」のコロナ禍に伴う在宅ワーク開始の前後での変化を比較した。ほぼ全項目で,前回に比べて高い点数が得られている。

図3|コロナ禍に伴う在宅ワーク前後における意識の変化に関するサーベイ結果(その2) 図3|コロナ禍に伴う在宅ワーク前後における意識の変化に関するサーベイ結果(その2) 緊急事態宣言解除後の働き方についての意識調査である。半数以上が在宅ワークを期待する一方,一定数はオフィスへの出勤を求めている,という結果が得られている。

4. 新しいワークプレース

表1|ワークプレースのあり方の変化 表1|ワークプレースのあり方の変化 これからの働く場所は,主に三つに分類されると想定され,それぞれに求められる機能や使われ方について解説する。オフィスのあり方は企業により異なるが,今後も繰り返される可能性のある災害に備え,オフィスの対策を求められるであろう。

これまでの局所的で一時的な災害対策や一部の従業員のための在宅ワーク環境は,もはや意味をなさなくなっている。これからも頻繁に起こりうる災害やライフイベントを考慮しながら社会生活に適応した業務環境を実現するには,在宅ワークを中心として,住環境とオフィスの利用用途は変化していくと予想される。ここでは,今後のあるべきワークプレース(就業環境)を取り上げる(表1参照)。

  1. 在宅ワーク
    前述したとおり,在宅勤務の長期化・常態化においてはさまざまな課題が明らかになり,具体的にはIT環境面や従業員のコミュニケーション,健康管理といった問題の対策が必要であることが分かった。自宅のIT環境で効率よく安全に安心して業務を行うための机・いすなどの什器,クライアントデバイス,ネットワーク環境,セキュリティの強化といった対策を実施するため,ある一定の補助や支給の制度設計なども考慮に入れる必要がある。オフィスへの通勤が減少することで日常の生活費を抑えられ,かつ自然環境の優れた地方へ定住したり,家族とのより良い生活環境を求めるために遠方へ移住したりするケースも出てくると考えられる。
  2. サテライトオフィス
    自宅での就業が必ずしも快適でないケースも考えられ,そのようなケースでは,サテライトオフィスの需要が高い。以前は,通勤や顧客先訪問といった利便性を考慮し,日中の活動における導線上に設置設計されることが多く,いわゆる都市型のサテライトオフィスを主に想定していた。出張先に直出・直帰するようなケースでは,移動時間の短縮や資料の印刷といった業務に有効であった。今後は,それに加えて在宅ワークの補助的なスペースとしての活用が期待され,郊外型のサテライトオフィスの需要が増える。特に,郊外駅や地域の公共的な施設といった住環境に比較的近く,日常の生活圏に設置されると利用価値が上がると考えられる。なお,不特定多数の利用者を受け入れる場合,設営・運営にあたっては異業種との連携が必要になることも予想され,新たなビジネスの可能性がある。
  3. マザーオフィス
    オフィスのあり方は根本的に変わることが想定される。リアルなFace to Faceでのコミュニケーションを取る必要性のあるケースを中心としたオフィス設計が期待される。例えば,新しい人財が配属されるケースでは,不安払拭のために職場の雰囲気をつかむまでは,チームメンバーとリアルなコミュニケーションを定期的に取りながら互いの心理的安全性を高めることが求められる。また,在宅ワーク実施中の労務管理の観点からも,誰がどこで業務を行っているかを把握するための仕組みも必要である。パンデミック発生の際は,従業員どうしがどこでどう接触したかといった情報管理も今後は必要になってくると考えられる。

5. ワーケーションと地域活性化

在宅ワークは,当初は通勤できない事情がある一部の従業員が利用する制度として採用され始め,その後は働き方改革の一環として多くの従業員が日常的に使い始めた。しかし,これからの時代には,従業員本人の働き方改革だけでなく,家族やゆかりのある地域とつながりを深めることで豊かな人生を送るための「働き方の選択肢の一つ」として活用されることも考えられる。実験的に,日立は2019年のテレワーク・デイズの期間中の7月22日(月)〜7月26日(金)に,北海道・知床の斜里町にて「地域活性化型テレワーク」を実施し,地方における在宅ワークの有用性を検証した。斜里町はオホーツクの観光拠点でもあり,自然豊かで特産物も多く,非常に魅力的な町である。

本章では,この取り組みの概要と,都心を離れて地方で就業した結果として参加メンバー自身が感じたワーケーションの可能性について紹介する。

5.1 知床での「地域活性化型テレワーク」の概要

図4|知床での「地域活性化型テレワーク」 図4|知床での「地域活性化型テレワーク」 2019年のテレワーク・デイズの期間中に,パートナー企業との合宿を企画した。家族を伴ったバケーションや地域の人たちとの交流なども取り入れ,有意義なワーケーションを実践した。その後も交流は継続しており,地域活性の一助にもなることを実感したイベントである。

「地域活性化型テレワーク」では,ワーケーションの要素である「ワーク」,「バケーション」に加え,「地域交流」,「ビジネスモデル検討・創出」に関する活動を行った(図4参照)。

  1. ワーク
    知床滞在中は,主に斜里町のテレワーク施設「しれとこらぼ」を利用し,都心にいるときと同じように業務を進め,社内外会議もコミュニケーションツールを利用することで特に支障なく参加,開催できた。また,都心と比べて空気もきれいで静かな環境の中で,業務に集中しやすい効果もあり,晴れた日には「青空会議」と称して公園の芝生上でリラックスしながら活発なディスカッションを行うことができた。
    滞在中の2019年7月24日には,総務省の企画によるイベントが開催され,石田真敏総務大臣(当時)との遠隔会議にも参加し,テレワークの意義についてディスカッションを行った3)
    「地域活性化型テレワーク」体験後の参加メンバーの気付きとしては,「ストレスから解放され,業務生産性が上がった」,「新しい価値観に出会え,自身の過去の働き方を見直すことができた」といった意見が挙げられた。
  2. バケーション
    観光地でテレワークすることの大きな意義は,仕事と休暇が隣どうしにあることである。普段は,まとまった休暇を取って遠方への旅行ができない人も多いが,今回家族を伴ったメンバーは,休暇を活用して観光に出かけたり,休憩時間に子どもたちとのアクティビティを楽しんだりしていた。保護者の勤務中は,地域のサポートメンバーが協力して子どもたちの活動を見守り,社会科見学にも連れて行くなど,新たな体験の機会も得られた。始業前には毎朝の活動として,同僚と近隣の観光を楽しむメンバーもおり,全員が都市部では味わえない貴重な経験をすることができた。
  3. 地域交流
    1. 斜里町児童館での小学生向けプログラミング教室
      講師のいる日立横浜事業所と,児童たちがいる斜里町児童館をインターネット接続し,プログラミング教室を実施した。初めのうちは,児童たちには,講師が遠隔地にいる実態を理解するのが難しい様子も見られたが,徐々に講師の解説も理解できるようになり,プログラミング自体にも興味を持ってもらうことができた。ICT(Information and Communication Technology)に精通した人財育成が今後ますます重要になることが予想される中で,地方においても,このような取り組みがGIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想4)におけるICTの学びへの活用,STEAM(Science, Technology, Engineering, Arts, Mathematics)教育推進の一助になれば幸いに思う。
    2. 斜里町住民との特産物盛りだくさんのバーベキュー
      地域住民の手厚いサポートと歓待により,テレワークを滞りなく行うことができただけでなく,道東の特産物を味わい,知床の星空を眺める中で,メンバー全員が再訪したいという希望を抱いたと思われる。このような通常の観光では得られない体験を経て,テレワーカーが町の魅力を広く伝えていくことで,関係人口5),※)の増加につながり,その結果,地域の経済活性に都市部の住民が貢献できると感じた。地域との結びつきを望み,地域課題の解決に対する意識が高い関係人口を形成する層は,地域活性化のために必要な要素として今後重要視されていくと思う。
    3. 第37回しれとこ斜里ねぷたへの参加
      斜里町青年会議所の協力により太鼓の指導を受け,祭り当日は扇ねぷたの運行にも参加した。都市部から来訪したテレワーカーとして紹介され,地域住民に交じり,太鼓演奏のほか,提灯を持って町を練り歩き,地域一体となった荘厳な祭りの雰囲気を味わった。斜里町では,このような貴重な機会を得ることができた。
  4. ビジネスモデル検討・創出(ディスカッション)
    町議会議員・高等学校教員とは,東京への一極集中という日本の持つ課題,地域活性化実現の方向性に関して議論を行った。また,今回の「地域活性化型テレワーク」を共に企画・実施した協創パートナーとも,地域活性化につながるビジネスアイデア,テレワークの推進において必要となる企業間シェアードオフィスといったテーマで,新たな働き方・社会のあり方を検討した。
※)
移住した「定住人口」でもなく,観光に来た「交流人口」でもない,地域と多様に関わる人々を指す言葉。

5.2 知床での体験から考えるワーケーションの可能性

地方での非日常的なバケーションと日常的な業務を組み合わせた「地域活性化型テレワーク」を実施したことで,一般的な働き方改革観点でのテレワークや,単なるビジネス・観光による効果にとどまらない「地域活性化型テレワーク」の意義について考えることができた。地域住民や自身の家族,ビジネス関係者などを広く巻き込む多種多様な人財とのコミュニケーションの促進,ステークホルダー全体が幸せになれる働き方・ビジネスアイデアの創出にもつなげられるという点に,有意義なワーケーションの将来的な可能性を強く感じている。

6. パンデミックから得た学び

今回,新型コロナウイルスによるパンデミックの影響を受けて,ほぼ世界中の人たちが,非日常的な生活を余儀なくされてきた。しかし,非日常的な生活体験そのものは,同時に,これまで経験したことのない貴重な経験であった。この経験を受け入れ,積極的に生活常識を変えていくのか,なかったことにして元に戻るのかは,さまざまな考え方があってよいと思っている。ただ,今回のパンデミックそのものも,自然のバランスが変わったことで引き起こされた可能性を考えると,今後さらに想定を超えた事象が起きることも十分に予想される。自然界の生物は,環境変化に柔軟に対応することで生存能力を伸ばしてきた。今回も,この非日常的な環境変化を一部でも取り込み,生存能力を磨くことが求められているのかもしれない。

総務省の統計6)によると,東京・名古屋・大阪の大都市圏の国土面積は9%であるが,日本全体の48%の人口が集中している。さらに今回の新型コロナウイルス感染者数累計は東京・名古屋・大阪の大都市圏だけで全体の77%が集中しており,人口比を大きく上回る感染者数となっている(2020年7月24日現在)7)。少なくとも,大都市部に集中しないと経済活動が行えないという状況に関しては,それを回避する方向への社会構造の変革が必要と考える。

こうした状況と,改革の基本的な方向として打ち出していた地方創生政策を合わせ,自由民主党では,デジタル社会推進特別委員会が,「デジタル・ニッポン2020〜コロナ時代のデジタル田園都市構想〜」と題し,分散型社会実現のための各種政策提言を行っている(2020年6月11日)8)。これは,Society 5.0の発展形と位置付けられ,今後の日本社会の歩むべき方向を示している。

7. おわりに

図5|人を中心としたテレワークで明るい未来へ 図5|人を中心としたテレワークで明るい未来へ プロダクティビティ,ワークスペース,ワークプレースの三つをそれぞれ整えることで,働く環境を支え価値最大化をめざす。その結果,皆が幸せを感じることができる社会の創造につなげたい。

日立は,業界に先駆けて在宅ワークの導入による働き方改革を実践してきたが,今回それをさらに加速していく意思を表明し,働く場所に依存しない働き方の常態化をデジタル技術を活用して推進している。テレワークはITそのものの進化とともに,それを活用する人たちに寄り添った人事施策であると同時に,技術だけではなく社会環境として捉え,社会全体で支える環境施策としての複数の側面があり,全体でのバランスの良い施策実行が不可欠である(図5参照)。

今回の,新型コロナウイルスによる社会環境の劇的な変化をきっかけに新しい働き方の常態化が進む中で,日立は,働く人々やその家族のQoLと,社会価値・環境価値・経済価値のさらなる向上に努めていく。その活動が,人類全体の幸せにつながっていくことを,願ってやまない。

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