日立評論

ロボティクスと自動化技術で産業の現場を変える

次代の製造業を支えるロボットシステムインテグレーターをめざして

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ロボティクスと自動化技術で産業の現場を変える

次代の製造業を支えるロボットシステムインテグレーターをめざして

ハイライト

自動化とロボティクスは,自動車や食品から,携帯電話,家庭用電化製品,医療・医薬品,通信販売の処理・配送に至るまで,それが目に見えるものでも見えないものでも,暮らしの中のあらゆる場面に関わっている。先進国を中心として労働人口の減少が社会課題となる中,自動化を実現する技術とソリューションは,今後の産業現場になくてはならないものと考えられる。

2019年12月,米国のロボットシステムインテグレーターであるJR Automation社が日立グループの一員に加わった。ここでは,産業の現場を革新する同社の取り組みと,新型コロナウイルス感染拡大を受けた協創の事例を紹介する。

目次

執筆者紹介

Bryan Jones

Bryan Jones

  • JR Automation社 CEO

産業の現場を革新する自動化ソリューション

先進国を中心に少子高齢化の進行,労働人口の減少といった社会課題が顕在化する中,産業の現場ではロボティクスを用いた自動化が進展しつつある。中でも多くのロボットを組み合わせて複雑な自動化システムを実現するロボットSI(System Integration)市場が拡大しており,2023年までの予測によれば年平均成長率は10%を超えると見込まれている。

その応用分野は自動車や食品,電化製品,医薬品,物流など多岐にわたり,製造業や物流の自動化に向けたシステムやソリューションのニーズも拡大・変化している。自動化は現場の安全性を高めるとともに,結果を高品質かつ一定に保ち,製品の迅速な市場投入を可能にする。一方で,複雑な部品や製品を取り扱うには精緻なソリューションが必要であり,各種のサブシステムとハードウェア,ソフトウェアを最適化された一つのプロセスとしてシームレスに統合するため,システムインテグレーターには高度な技術と知見が求められる。

2019年12月,米国ミシガン州ホランドに本社を置くロボットシステムインテグレーターであるJR Automation社が日立グループの一員に加わった。そのねらいは,高成長が続く北米のロボットSI事業に参入し,両社の技術と顧客基盤を掛け合わせることで,現場と経営をつなぐトータルシームレスソリューション事業の展開を加速することにある。

製造現場の自動化を支えるロボットシステムインテグレーター

ロボティクスを活用した生産ラインの自動化 ロボティクスを活用した生産ラインの自動化

1980年に設立されたJR Automation社は,40年以上の長きにわたり世界中で自動化装置を設計・構築し,顧客の自動化設備導入をサポートしてきた。顧客は物流から医療,自動車,航空機,エンタテインメントに至るまで多岐にわたり,精密機器の加工やFSW(Friction Stir Welding),カーボンファイバー加工,大量製造まで多彩な技術によって,北米,欧州,アジアの23の事業所でさまざまな分野・用途に対応する自動化ソリューションを構築してきた。

同社の取り組みについて,CEOのBryan Jones は次のように語る。

「JR Automation社は,お客さまの利益という共通のゴールに向けて,常に団結して取り組んできました。献身の精神は,私たちの企業文化に深く根づいており,グローバルに事業を拡大していく中でもそのビジョンは変わりません。今日,北米・欧州・アジアの約2,000人の従業員がJR Automation社として一体となり,自動化ソリューションの開発・展開を通じて,製造業や物流関連企業のお客さまを支えています」

そして2019年,世界の製造・流通分野においてフィジカル空間とサイバー空間をシームレスにつなぐ取り組みの一環として,JR Automation社は日立グループの一員となった。顧客の資産とデータを統合する独自のシングルソースソリューションを提供することで,Industrie 4.0構想の実現に向けたさらなる高速化,柔軟性および効率向上の実現をめざしている。

顧客のニーズに寄り添うカスタムソリューションの実現

JR Automation社の中核事業である自動化ソリューションの開発と提供に際しては,一般的に,標準化した手法を活用することは難しい。これに対し同社は,各プロジェクトを最先端のテクノロジーとプロセスを見いだすためのチャンスと捉えて取り組んできた。プロジェクトの合理化,知見の共有,標準設計の採用を推進するとともに,共通のビジョンを通じて従業員のモチベーションを高く保ち,業務にあたっている。

北米,欧州,アジアの各地に点在するJR Automation社の事業所はいずれもローカルな集まりではなく,従業員や地域のパートナーとその技術,知見を融合したグローバルなネットワークであり,個々の顧客に合わせてカスタマイズした自動化ソリューションを効率的に構築することができる。顧客は,JR Automation社のリソースと専門性をフルに活用しながら,地域に密着した事業所とコネクションを持つことができる。また,JR Automation社の各事業所はグローバルに統括されており,キャパシティとリソースを戦略的に割り当てることで,ワークロードを均等化できる。

世界各地の事業所の取り組みを標準化する手法の一例が,PEP(Project Execution Process)の利用である。JR Automation社が手掛けるすべてのプロジェクトは,この独自のプログラム管理システムを介して実施されている。PEPは,さまざまな局面においてプロジェクトを予定どおりに進め,利害関係者に明確な責任とスケジュールを割り振り,社内外の必要なリソースを効率的に連携させる。通常,ほとんどのプロジェクトでは完了までに50以上の成果物を要求されるが,PEPにはあえて柔軟性を持たせることで,顧客とのコラボレーションの強化を図っている。

「PEPやPLM(Product Lifecycle Management)プラットフォームといったシステムは,世界に広がる私たちの各拠点のベストプラクティスを活用し,キーエリアの効率を高めることを可能にしてくれます。これらを私たちの幅広い技術的知見と組み合わせることによって,製品を迅速に市場投入することができます」(Jones)

JR Automation社では,プロジェクトチームはいずれも,業務手順をまとめた社内ガイドラインに沿って,適切なプロセスで成果物をまとめる。事前にプロジェクトの内容をしっかりと定義し,効率的に問題を特定・解決して,柔軟にプロジェクトを管理することで,顧客と共にチェンジマネジメントを行うことができる。JR Automation社はさまざまな業界での経験から得た知見に基づく高信頼なリスク評価・軽減プロセスを採用しており,これによって,プロジェクトを効率的に完遂させることにつながっている。

また,同社はプロジェクトの実施・管理にあたり,標準化アプローチを採用してきた。アフターサービス部門はカスタマーサポート要員のスキルの平準化,グローバル化への投資を通じて,サービス,部品の修理交換対応,トレーニングをワンストップで提供している。カスタマーサポートは年中無休で稼働しており,顧客は緊急サポートホットラインに問い合わせることで,たとえ真夜中であっても適切なサポートを受けることができる。

効果的なアフターサービス活動のため,JR Automation社では社内ソフトウェア開発チームがグローバルCRM(Customer Relationship Management)システム上にカスタマイズしたダッシュボードを活用している。これにより,顧客設備のメンテナンス周期に合わせて連絡を取ったり,ロボットの交換または改修による効率向上を提案したりするなど,先を見越して顧客に働きかけることができる。真のグローバル企業になることを掲げる日立のビジョンの下,JR Automation社は各部門の知識と経験,ベストプラクティスを活用し,共通プロセスと基準の採用に取り組んでいる。

世界に広がるJR Automation社の事業拠点 世界に広がるJR Automation社の事業拠点

JR Automation社のPEP JR Automation社のPEP

コロナ禍で生かされた自動化技術のノウハウ

JR Automation社の自動化ソリューションを導入したマスク製造ライン JR Automation社の自動化ソリューションを導入したマスク製造ライン

JR Automation社は自動化技術を通じて,イノベーションや改善の枠にとどまらないさまざまな可能性に挑戦している。新型コロナウイルス感染症の拡大を受け,同社は医療現場に必要不可欠なPPE(Personal Protective Equipment:個人防護具)やその他の必需品を最前線で働く人々に届けたいと考えた。

同社の顧客の多くが医療用マスク,フェイスシールド,手袋などを製造するために工場設備を改造しており,春先には問い合わせが入り始めた。2020年3月,JR Automation社とそのグループ企業であるEsys Automation社は,General Motors社と協力し,医療用マスクの生産ラインをわずか6日間で構築することに成功した。当初1日5万枚のマスク生産を想定していたこのラインは,稼働から間もなく,1日20万枚を生産できるようになった。ルーマニアでは,同じくJR Automation社のグループ企業であるFSA Technologies社が医療用マスクの生産ラインを2週間で納入した。その他にも多数の新規・既存顧客と協力し,医療用のマスク,ガウン,手袋,病院用ベッド,検査キットなどの保護具や器具を生産している。

JR Automation社は過去数十年にわたって医療業界向けに厳格な規格に適合した装置を提供してきた実績に基づき,メーカー各社の速やかなPPE生産・提供をサポートした。現在は,新型コロナウイルス感染症対策に関連する多数のプログラムの設計,構築,導入にあたっている。世界中でこの重要な取り組みを支えるべく,今後も努力を続けていく。

産業現場の未来を担うロボットシステムインテグレーターへ

日立とJR Automation社は今後,双方の顧客基盤とリソースを相互に活用しながら,北米のロボットSI事業の強化を図っていくとともに,日立が持つプロダクト,OT,ITの強みや,AI(Artificial Intelligence),制御技術,Lumadaを活用して,現場と経営を一貫してつなぐトータルシームレスソリューションを提供することで,顧客の経営および事業全体に新たな価値を創出していく計画である。

これからの日立とJR Automation社について,Bryan Jonesはこのように結んでいる。

「JR Automationと日立の原動力は,お客さまや地域社会のニーズに応えるという共通の理念にあります。新たなパートナーシップを通じて共に成長していくことを心から楽しみにしています」

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