1. 中部電力 イーサネット通信を適用した送電線保護装置
昨今の情報化社会の急速な進展に伴い,通信ネットワーク技術は高度化しており,特にイーサネット*通信やIP(Internet Protocol)通信などの汎用通信技術は,高速・大容量通信を実現して広く普及している。
一方,送電線保護リレー装置であるPCM(Pulse Code Modulation)電流差動リレーは,各端子で取り込んだ電流データを,互いに伝送して差動電流演算を実施することにより区間内事故の有無を判定しているが,30年程度前に開発されて以降,電流データの伝送には電力会社専用の通信設備が適用されてきた。
従来はPDH(Plesiochronous Digital Hierarchy)通信方式を用いており,保護リレー装置には専用の通信制御基板を実装していた。今回,汎用のイーサネット通信設備であるL2(レイヤ2)スイッチを適用した送電線保護リレー装置を開発し,専用の通信基板を汎用のイーサネットインタフェースに置き換え可能とした。また,専用の通信設備も汎用のイーサネットとなり伝送路構成の自由度を高めることができるとともに,保護リレーシステム全体としてのコスト低減に寄与することができた。
さらに,今後再生可能エネルギー電源の連系増加が予想されるが,送電線保護リレー装置の保護区間内に連系されると,外部事故時に当該電源からの流出電流により送電線保護リレーの不要動作が懸念されるため,不要動作防止対策機能を新たに設けた。
本装置は抵抗接地系の送電線保護リレー装置として開発し,最大8端子まで対応可能な回線分離型の構成である。2020年7月より電気所に順次出荷し,2020年9月に初号機が運用開始された。