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日立製作所と北海道大学のオープンイノベーション拠点である日立北大ラボは,2016年の設立以来,従来の共同研究の枠組みを越えた産学官と地域の連携を通じて,北海道が直面する社会課題の解決に向け,健康・産業・エネルギーが連携した共生のまちづくりを推進している。

2024年3月のシンポジウムは,過去4年間に開催された日立北大ラボフォーラムから形を変え,数学・数理科学による課題解決研究に取り組む北海道大学 電子科学研究所附属社会創造数学研究センターとの共催で実施された。「新領域探索」をテーマに掲げる本シンポジウムでは,「数学的社会創造」,「AIの産業応用」,「哲学的考察」,「エコシステム構築」などの観点から,持続可能な地域社会の実現に向けた新研究領域の探索に関する議論が交わされた。

客席(開会前) 北海道大学にてオフラインとオンラインのハイブリッド形式で開催された新領域探索シンポジウム2024

目次

開会挨拶

増田 隆夫 北海道大学 理事・副学長
増田 隆夫

西村 信治 日立製作所 研究開発グループ 基礎研究センタ センタ長
西村 信治

2024年3月,北海道大学 電子科学研究所附属社会創造数学研究センターと日立北大ラボによる「新領域探索シンポジウム2024」が,北海道大学札幌キャンパスにて,オフラインとオンラインのハイブリッド形式で開催された。

開会挨拶に登壇した北海道大学の増田 隆夫理事・副学長は本シンポジウムについて,過去4年間に開催された日立北大ラボフォーラムから趣向を変え,より学術的な側面に焦点を当てて産学官の連携の新しい方向性について考えるものであるとして,次のように述べた。

「北海道大学は,持続可能なWellbeing社会の実現に向けて,世界の課題解決と社会変革を先導する大学となることをめざしています。北海道の社会課題解決に向けては既に多くの企業や官庁,自治体の方々にご協力いただいているところであり,本シンポジウムを通じて地産地消の背後にある学術について考えていきたいと思います。」

また,日立製作所 研究開発グループ 基礎研究センタ センタ長の西村 信治は,日立北大ラボの取り組みを振り返りつつ,今回のシンポジウムに期待を寄せた。

「2016年の設立以来,日立北大ラボはエネルギーや母子健康といったテーマを掲げて成果を挙げてまいりました。本シンポジウムのテーマは『新領域探索』ということで,引き続き地域課題の解決に取り組む一方,より大きな課題について考え,課題を再定義するための議論ができれば幸いです。」

第1部 自治体・企業からの課題提起

シンポジウムの前半では,「自治体・企業からの課題提起」をテーマとして,北海道自然電力株式会社 代表取締役 副社長で北海道科学大学 工学部 都市環境学科 客員教授の堂屋敷 誠氏,ならびに日立北大ラボ ラボ長代行主任研究員で北海道大学 電子科学研究所 客員教授の竹本 享史が地域とエネルギーに焦点を当てた講演を行った。それぞれの講演の内容は,次のとおりである。

(1)地域における脱炭素社会構築の意義について

堂屋敷 誠 北海道自然電力株式会社 代表取締役 副社長 兼 北海道科学大学 工学部 都市環境学科 客員教授
堂屋敷 誠

日本政府は,2030年までに再生可能エネルギーを主力電源化することをめざしています。これは,大規模な発電所でつくった電力を需要地へ供給する従来の電力システムから,再生可能エネルギーを活用する多極分散型の電力システムへの移行を意味しており,今後,電源の分散化によって日本の国土がどのように変わっていくのかを考えていく必要があります。

現在の電力制度は,社会的要請に基づいて形成されました。ガス灯が電灯に変わって電気が必要になり,工場における動力を蒸気から電気に変えていこうという大きな流れの中で,産業の基礎となる電力を安定的に供給することめざし,1930年代から国による管理体制が進みました。しかし近年は市場の自由化が進む中で,こうした制度が大きく変化することが予想されるため,制度は変わっていくということを前提に地域をデザインしていかなければなりません。

2023年7月に公表された第三次国土形成計画では,災害時のエネルギー確保に向けて地域のエネルギー自給率を高めることが明文化されています。地域におけるエネルギー開発を進めていくうえでは当然,資金が必要になりますが,再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)や石油・石炭関連の税収は将来的には減少していくため,これを補填するための制度が検討されているところです。例えば,GX(グリーントランスフォーメーション)推進法で定められているように,CO2の排出に対してコストの負担を求める一方,脱炭素を進める企業は国が支援するといったルールづくりが,脱炭素を自分事として捉えるための大きなきっかけになると考えています。

また地域に目を向けてみると,人口減少や過疎化といった地域課題を抱える自治体がそうした課題の解決に取り組むためには,地域が資金的に豊かになっていくことが重要です。生産・分配・支出という経済循環構造を地域の中で回し,地域外への資金の流出を避けていく,そういう仕組みを回していくことで社会課題に向き合うための原資が生まれます。

地域脱炭素の意義は,「脱炭素×○○○=地域課題への対処」という方程式に当てはめて考える必要があります。脱炭素はゴールではなく,地域課題を解決するための手段です。「○○○」に当てはまるものは地域によってまちまちですが,例えば,地域でつくったエネルギーを地域で使い,資金が地域内を巡っていく仕組みができれば,地域課題への対応の足掛かりとなるでしょう。北海道自然電力は,脱炭素をきっかけとして地域の課題に向き合いながら,住民に寄り添ったまちづくりに貢献してまいります。

(2)数理科学の社会応用:バッテリ地域循環によるエネルギーの地産地消に向けた取組み

竹本 享史 日立製作所 日立北大ラボ ラボ長代行主任研究員 兼 北海道大学 電子科学研究所 客員教授
竹本 享史

北海道はその土地の広さゆえに,再生可能エネルギー資源は豊富であるにもかかわらず,送電網の容量不足などから十分に活用できていない状況にあります。これに対して,系統に接続しなくても稼働できるマイクログリッドのような自立型の電力システムを構築することも考えられますが,太陽光発電や風力発電などは供給量の変動が大きく,需給バランスを確保するには一定以上の規模の電力システムが必要となります。このため,地域にマイクログリッドを導入するにあたり,コストも時間も掛かり,対応できる自治体も限られます。

そこで日立北大ラボは,地域の需要に合わせてエネルギーの地産地消を進めながら,地域産業と共に発展させるモデルを検討しています。これは,小規模な自立型グリッド(ナノグリッド)を地域に分散させ,発電した電力を自家消費することで地域産業に寄与するとともに,将来的には余剰電力をEV(Electric Vehicle)やバッテリーなどを用いて各ナノグリッド間で連携しながら,安定運用や運搬,交通,防災に活用していこうというものです。

2021年には岩見沢市のご協力の下,マルチ燃料エンジンを調整力として用いた自立型ナノグリッド実証サイトを岩見沢市に構築しております。日立製作所 基礎研究センタで開発したこのマルチ燃料エンジンはさまざまな燃料で発電することが可能であり,岩見沢市で湧出する温泉付随ガスを燃料として稼働させ,太陽光発電と連携させることができます。これにより,太陽光発電の出力が変動しても,所望の電力を安定的に供給できることが確認されています。

また,再生可能エネルギーを用いた複数のナノグリッドから成る分散型エネルギーという不確実性の高いシステムの有効性を検証・評価するため,北海道大学との数学連携を通じて評価手法を開発しました。これは,電力の安定供給/運搬の双方を満たすアルゴリズムをつくり,天候・需要などのさまざまな条件に対して仮想環境上で最適化問題を解くことで,EVやナノグリッド運用結果のログ解析を基に年間の評価を導出するものです。

さらに,過疎化により,再生可能エネルギーの適地と電力需要地は分散しているため,農地など土地があっても電気を供給できない地域へ一時的に電気を運び,活用するための手段として,可搬AC/DC(Alternating Current/Direct Current)併用バッテリーの開発も進めております。これについては,電動農機などのバッテリーを取り外し,作業時間外には地域に広く分散する作業地に運んで必要なエネルギーを低コストで供給するモデルを検討しており,自治体や農業関係者の方々へのヒアリング,関係各企業との共同開発を通じて実証を行っております。実際の運用については短期・長期の両面から検討する必要があるため,設備や地図の情報に基づいて仮想環境上でシミュレーションを行い,需要に合わせたバッテリーの配送,充放電などを計画的に評価可能な仕組みを構築して,2024年から実証実験を開始する予定です。

第2部 企業・大学からのシーズ紹介

シンポジウム後半では,「企業・大学からのシーズ紹介」として4名の識者が登壇し,昨今注目を集める生成AI(Artificial Intelligence)などの先端技術の応用,研究について情報を共有した。それぞれの講演の内容は,次のとおりである。

(1)AI技術の産業応用から考える,"人間=機械複合系社会"の行方

椎橋 徹夫 株式会社 Laboro AI 代表取締役CEO
椎橋 徹夫

私たちLaboro AIは,さまざまな産業領域でAIの産業実装に携わっております。本日はその視点から,AI技術を取り巻く今後のイノベーションの方向性について,仮説を共有させていただきたいと思います。

「人間=機械複合系社会」というのは,東京大学の西垣 通名誉教授がご自身の著書『基礎情報学』の中で提唱されている概念です。私はアカデミアの人間ではありませんが,AIベンチャーの立場から,かねてよりグローバルを牽引していく日本発のイノベーションがあればと考えております。しかしインターネットの登場以降,周回遅れになっているといわれる日本で,本当にそれが可能なのかという疑問も同時に抱いています。生成AIが注目を集める中,日本政府もLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)などの関連技術に予算を投入していますが,果たして私たちは本当に,欧米の巨大資本が主導する今の世代のAIを後追いするだけでいいのでしょうか。仮にそうではないとすると,私たちは次の世代のAIを仕掛けていくことにベットするべきではないのか,すなわち今あるAIの先を見据えた問題提起や取り組みが求められるのではないかと考えています。

生成AIは非常に大きなブレークスルーと言われています。しかし実用的な観点からは,与えられた目的を達成するために最適な立ち振る舞いを自ら獲得して目的を達成するAI,つまり目的や達成度合いを評価する関数があり,環境とインタラクトして学習の方法自体を学習して逐次最適な作動則を獲得していく技術が求められているのではないかと考えます。現状のAIにはまだ,このような挙動はできません。

従来のソフトウェアは,作動則を人が直接設計していました。その次の段階,すなわち作動則を事前に学習してデータから帰納的に獲得するのが現在のAIであり,生成AIや基盤モデルもこの成功例に当たるかと思います。これをもう一段拡張したものが,探索と活用のバランスを取りながら,事前の設計に基づいて逐次学習していくアルゴリズムです。そしてさらにその先に,目的関数だけを事前に固定して与えることで,学習則自体を最適化しながら学習していく自律技術があるのではないかと考えています。

次世代の人工知能が,生命が持つ天然知能と近い形で試行錯誤から柔軟に学習し,目的を自力で達成する自律的な技術であるとすると,現世代のAIと次世代のAIはアーキテクチャが根本的に異なってくるはずです。そうした新領域の技術開発においては,既存の知識を活用するモデルと機械学習の融合や,最適探索の領域における従来の手法と強化学習,新しいコンピューティングなど,さまざまな領域の融合が必要であると考えています。

(2)強化学習戦略による作業効率化と最適戦略設計

小松崎 民樹 北海道大学 電子科学研究所附属社会創造数学研究センター・化学反応創成研究拠点 教授
小松崎 民樹

私たちは,まちづくりによる地域活性化,Wellbeingの向上を目標として,エネルギーマネジメントの効率化ならびにコミュニティ・エンパワメントを含めたさまざまな施策に数理・社会連携で取り組んでいます。

コミュニティ・エンパワメントにおいては,選択したエンパワメント施策がコミュニティを構成する「個人」,「集団」,「組織」のどの部分を改善したかを評価するのが困難であるという課題があります。そこで,Wellbeingの評価軸ならびにWellbeingのための方策(選択肢)を設定するにあたり,いかにして最も有効な方策を少ない試行回数で導出するかを検討しています。

多腕バンディット手法というアルゴリズムがあります。これは試行錯誤で学習する強化学習のアルゴリズムであり,一定の限られた資源のセットを競合する選択肢間で,期待利得を最大化するように配分する手法です。通常,ある目的に対し,どのような手段が有効であるかを検証するためには,考え得る手段の数,あるいは組み合わせの数だけテストを行い,結果に基づいて判断しなければなりません。これに対し,多腕バンディットのアルゴリズムは,実験をしながらどの組み合わせが最適であるかを判断していくことができます。「選択肢」と「報酬」を設定することで最適な解を導くことができるため,がん治療をはじめとしたさまざまな分野で既にこのアルゴリズムが活用されています。

一方,人の嗜好や考えはこうした「報酬」とは無関係に決まります。地域の課題に関する施策には自治体・住民などのステークホルダーの考え方が介入しますので,簡単に数値に落とし込むことはできません。しかし,そのような分野にこの手法を展開することは,学術的にも価値が高いと考えています。

そこで,私たちが着目しているのがDemocratic AIです。これは,人の考えや嗜好を反映させたVirtual Playerを設定し,一定の条件下においてAIが自律的に最適戦略を提案するというものです。例えばこのアルゴリズムをある公共財ゲームに適用したところ,プレイヤーの資産状況や投資額の変化などを考慮しながら,全員が満足する最適な結果を導出することができました。こうした技術は,地域課題への対策を考えるうえでの合意形成などにも効果を発揮するのではないかと考えています。

バーチャルAIを展開・応用可能なターゲットを検討するべく,現在,世界各地域のさまざまな業種に対してアンケートを実施するなどの取り組みを進めており,意見が集まりつつあるところです。今後も引き続き,新たな学問領域の発見と創出,有効なテーマの発掘に向けて,産学連携で取り組んでまいります。

(3)自他の重ね合わせと相互媒介─哲学×AIの融合研究

田口 茂 北海道大学大学院 文学研究院 教授 兼 人間知・脳・AI研究教育センター センター長
田口 茂

コミュニティ・エンパワメントを考えるにあたっては,初めに「コミュニティとは何か」を考える必要があります。同じ電車に乗り合わせた人々がコミュニティかというと,そうではありません。個体の集合が必ずしもコミュニティになるわけではなく,個体の集合とは別のところにコミュニティという実体があるわけでもない。つまり,コミュニティを構成する要素は個人というよりコミュニケーションであり,コミュニケーションによってコミュニティが生まれ,コミュニティによってコミュニケーションが保たれるという循環的関係があるわけです。

したがって,人間ではなくAIがコミュニケーションに加わっても,コミュニケーションが成り立ってさえいればコミュニティは成立するとわれわれは考えています。AIとコミュニティとの関係に関して,われわれはコミュニティの基礎となる自他関係(社会的認知)の研究を行っています。

その一つが「自他の重ね合わせ」です。サッカーの試合を見ていて思わず足が動くことがありますが,そうした「自他を重ね合わせる」ような現象は特別なものではなくむしろ自然な現象であり,われわれの社会的認知の根底にあるとわれわれは考えています。社会的認知の研究では,TT(Theory-theory),ST(Simulation-theory)が理論的枠組みとして用いられますが,いずれも自己と他者という枠ありきの考え方であり,その枠がどのように形成されてくるのかについては考慮されません。

そこで,哲学分野の知見を基に,「自己と他者という概念は,学習を通じて初めて獲得されるものではないのか」という仮説を立て,AIを用いたシミュレーションを行いました。仮想環境中で視覚的予測学習を行うAIエージェントをつくり,次の場面で何が起きるのかを予測していくモデルに対し,「自他の重ね合わせ」を模した,同じ入力を二つに分けて重ね合わせる「重ね合わせメカニズム」を実装したところ,エージェントは自分視点の経験を積み重ねるだけで,他者の視点における視覚的事象を予測できるようになりました。

また,「AIの介入によるコミュニティ・エンパワメント」についても研究を行っています。コミュニケーションの活性度を測る指標には,コンタクトの回数,時間,会話の量,質問の量,振る舞いなどがあります。また,そうした客観的に測定可能な尺度に加えてコミュニティを構成するメンバーの意識も考慮する必要があります。

そこで,オンラインコミュニティにAIのチャットボットを混ぜ,AIの介入の有無や種類によってコミュニケーションの活性度がどう変化するのかを検証する実験を検討しています。これは複数のグループ,複数のセッションでAIが介入するケース,しないケースをそれぞれ検証し,AIによるさまざまな介入が人間の会話をどの程度活性化させるかを測るもので,将来的には集団での合意形成にAIが介入した場合の効果についても検証していきたいと考えています。

これらの実験を通じて,AIの介入によるコミュニティ・エンパワメントの可能性を検証し,AIのやり方に学びながら,人間による効果的介入のヒントも探っていきます。

(4)小さなモデルと大きな現実:市民から見た数理の意義

竹澤 正哲 北海道大学大学院 文学研究院 教授
竹澤 正哲

数理モデルを用いて社会課題の解決を試みるには,課題解決を希求する側にも数理モデルの本質や特性を理解することが求められます。そこで本日は,数理モデルとは何で,何のためにあるのか,それによって現実の何が分かるのかをお話ししたいと思います。

初めに,数理モデルと現実の関係を表した科学史における事例を二つご紹介します。

1492年,インドをめざしてスペインを出発したコロンブスには,二つの誤りがありました。一つ目の誤りは,スペインの西に日本があり,そのさらに西にインドがあると考えて,航海距離を計算したこと。二つ目の誤りは,古代の地理学者や天体学者の残した記述に従って,地球の大きさを過少推定したことです。しかし誤った認識に基づいてスペインから日本までの距離を計算した結果,コロンブスは航海を決断して,アメリカ大陸に到達しました。

現実世界はあまりに複雑で,すべてを人間が測定し認識することはできません。そのため,人間はモデルを用いて複雑な現実を理解し,予測し,ときには介入していきます。しかし複雑で大きな現実の世界に比して,モデルはあまりにも小さいため,理論やモデルというものは現実との対応という点で必ず間違っていると言えます。コロンブスの成功は偶然ではありますが,この点において彼のエピソードは現実と数理モデルの関係を端的に表していると言えるでしょう。

もう一つの事例は,地動説と天動説です。現代において,天動説が誤りであることは周知の事実ですが,実はデータの説明・予測という点でこの二つのモデルを比較してみると,どちらもまったく同じ精度で説明・予測することができます。いずれのモデルも周期関数をフーリエ級数で近似しているに過ぎず,複雑さの度合いやパラメータの数が違うだけなのです。つまり間違ったモデルであっても,現実を説明し,予測するという点では非常に役立つ,そして実際に役立っていたということが言えます。

目的が真実を知ることではなく,予測することにあるならば,モデルが間違っていても問題はありません。しかしながら,研究を進める中ではときに,「もっと現実に近い複雑なモデルでないと問題は解決できないのではないか」といった批判の声が聞かれます。それが原因となって意思疎通ができず,課題が解決できないままに終わってしまうことも少なくありません。

数理モデルの原則やメカニズムを理解することで,課題解決を希求する側,すなわち市民や企業の側からも解決策を提案することができ,数理モデルを扱う研究者側もより効果的な提案が可能になります。そうした課題解決サイクルを生み出すうえでは数理モデルに対するリテラシーの向上が重要になるのではないでしょうか。今後はそれをいかにして育むかについて,引き続き議論してまいりたいと思います。

閉会挨拶

瀬戸口 剛 北海道大学大学院 工学研究院 教授
瀬戸口 剛

山田 真治 日立製作所 研究開発グループ 基礎研究センタ 日立北大ラボ ラボ長
山田 真治

閉会挨拶では,北海道大学大学院 工学研究院の瀬戸口 剛教授が登壇し,建築と地域計画を専門とする自身のバックグラウンドに触れつつ,本シンポジウムのプログラムを振り返って次のように述べた。

「コミュニティ・エンパワメントをはじめとして,本日ご紹介いただいたさまざまな理論を地域社会の課題に適用できれば,人口減少の進むコミュニティに安全・安心な生活基盤を提供する有効な手段になるのではないかと感じています。本共同研究のさらなる発展に期待しつつ,北海道大学といたしましても,行政,企業や地域の方々との連携を深め,北海道はもちろん日本や世界の社会課題解決に向けて取り組んでまいります。」

また,続いて登壇した日立製作所 研究開発グループ 基礎研究センタ 日立北大ラボ ラボ長の山田 真治は,2016年の日立北大ラボ設立から今日にいたるまでの活動を振り返り,「日立北大ラボは約8年にわたって,社会課題解決に向けたソリューションの提案から実装まで,愚直に取り組んでまいりました。今後もパートナーの皆さまと協調しながら,学術新領域の開拓にも積極的に取り組んでいきたいと思います。本日の講演から,ご参加いただいた皆さまそれぞれが何らかの気づきやヒントを持ち帰っていただければ幸いです。」と結んだ。

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