日立評論

特集「人工知能という希望―AIで予測不能な時代に挑む―」監修

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日立評論

人工知能やAI(Artificial Intelligence)という言葉を毎日のように新聞やテレビで見かけるようになりました。しかし,その実態はまだよく分からない,というのが多くの人の実感ではないでしょうか。このため私のところには,AIに関する問い合わせや講演依頼が毎日のように来ます。

確かに,書籍やメディアでの紹介は多数ありますが,AIの特定の側面だけを扱ったものが多いと感じます。AIという言葉がブームになる中で,それに乗ろうと,AIという言葉の意味を拡大解釈したものも見られるようになり,誤解を与えていると感じます。

さらに問題は,AIの先端の動きは,企業活動の現場で起きているので,企業秘密の制約もあり,なかなか一般向けのメディアには目に触れにくい状況です。逆に,ウェブでの画像認識の事例などの一般向けにも見せられるものだけがAIの例として取り上げられるというバランスの悪い状況になっています。

本特集では,この状況を超えて,多様な顔のあるAIの全体像を捉えようと試みました。前半では,AIを取り巻くさまざまな視点を,国立情報学研究所の新井紀子教授とヤフー株式会社の安宅和人CSOに示していただきました。後半では,AIのその応用の幅広さと技術の奥深さ,さらにはそれらが同一の汎用AIによって実現される革新を紹介しました。金融,鉄道,物流,水,製造業まで拡大する応用や技術をお読みいただければと思います。

本誌のような企業発行の論文誌は,企業PRの一形態と見なす読者も多いかと思います。本号では,説明には日立の事例を使ってはいるものの,むしろ,AIの実情を知りたいと熱望されている多くの読者の方々の関心に応えられる特集となることをめざしました。忙しいビジネスパーソンの方々が,仮にお金を出しても読みたくなるものを目標としましたが,その狙いが実現されたかは読者の方々の判断を仰ぎたいと思います。

日立はこの4月にフロント体制を強化し,お客様のそばでイノベーションを起こす新しい体制で再出発しました。この中でもAIが中核技術に位置づけられています。

日本はモノづくりからよりサービスによって価値を生み出す国に生まれ変わる転換点にいます。しかし,グローバルな経済変動や紛争の影響が止まることはなくわれわれ一人ひとりに及ぶ中で,変革の時代を生きぬく必要があります。私はAIを,この予測不能な時代を生きる希望だと思っています。この新しい希望の光を,読者の方々が活用する一助として本誌が役立てば幸いです。

特集「人工知能という希望―AIで予測不能な時代に挑む―」監修
日立製作所 研究開発グループ
技師長
矢野 和男

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