ページの本文へ

Hitachi
お問い合わせお問い合わせ

地球環境との共生をめざす次世代エネルギーソリューション

多様化する課題に応えるエネルギーソリューションへの取り組み

ハイライト

地球温暖化対策が世界的に進められる中,最も重要な社会インフラの一つであるエネルギー供給の在り方は国や地域などによって異なっており,多様化する社会の課題やニーズに応えられるソリューションが求められている。

日立は,都市部における省エネルギーや災害時を含むエネルギーの安定供給などに対応するエネルギーマネジメント技術,島しょ域での再生可能エネルギー導入促進に寄与する蓄電池活用技術などの開発に取り組んでいる。さらに,マイクログリッド,国内電力システム改革に対応するデマンドレスポンス(DR)やバーチャルパワープラント(VPP)などの技術でソリューションを展開し,顧客や社会が抱える課題の解決に貢献している。

目次

執筆者紹介

赤津 徹Akatsu Tohru

  • 日立製作所 エネルギーソリューションビジネスユニット 電力情報制御システム事業部 ソリューションビジネス推進本部 プロジェクト推進部 所属
  • 現在,マイクログリッドをはじめとした分散電源ソリューションに従事

松永 権介Matsunaga Kensuke

  • 日立製作所 社会イノベーション事業推進本部 サービス統括本部 サービス事業推進本部 トータルエンジニアリング第一本部 サービステクノロジーセンタ 所属
  • 現在,エネルギー関連ソリューション・サービスの設計および取りまとめ業務に従事
  • 空気調和・衛生工学会会員

佐野 豊Sano Yutaka

  • 日立製作所 エネルギーソリューションビジネスユニット 電力情報制御システム事業部 ソリューションビジネス推進本部 プロジェクト推進部 所属
  • 現在,エネルギーソリューション事業に従事

奈須 嘉浩Nasu Yoshihito

  • 日立製作所 エネルギーソリューションビジネスユニット 電力情報制御システム事業部 ソリューションビジネス推進本部 デマンドソリューション推進部 所属
  • 現在,エネルギーソリューション事業に従事

河村 勉Kawamura Tsutomu

  • 日立製作所 研究開発グループ エネルギーイノベーションセンタ エネルギーマネジメント研究部 所属
  • 現在,エネルギーソリューションの研究開発に従事
  • 博士(工学)

1. はじめに

世界のエネルギー消費量は,1965年から年平均2.6%で増加し続けている1)。内訳を見ると,人口増加と経済成長が著しい新興国での伸びが顕著となっている一方で,先進国では省エネルギーや低炭素化に向けた取り組みが進んでいる影響もあり,エネルギー消費量の増加は鈍化傾向にある。

エネルギーを取り巻く事情は国や地域,業種などによってさまざまであり,エネルギーインフラに求められる機能や性能の優先度もそれぞれ異なっている。ここでは,多様化する課題とニーズに対応する日立のエネルギーソリューション事例を紹介し,今後の展開について述べる。

2. 多様化するエネルギーインフラの課題

COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)「パリ協定」が採択・発効され,世界規模で温暖化ガス削減の取り組みが進められている。先進国,特に都市部においては環境に配慮した省エネルギー化が進められているが,快適性と利便性を犠牲にしない無理のない対策が必要である。さらに,台風や地震などの災害時においても生活や事業の継続が可能なエネルギー供給システムが求められている。

また,先進国では先行して構築してきたエネルギーインフラの老朽化が進んでおり,インフラ設備の更新と強化に要するコストをいかに削減するかが課題になっている。

一方,新興国では人口の増加と経済発展に伴い,エネルギー消費量が年々急激に増加している。このため,エネルギー需要に対して供給力が不足する地域もあり,エネルギーインフラの整備が急がれているが,費用問題や自然環境保全との両立などの課題を抱えている。また,島しょ域においては,これまでは化石燃料による発電が主であったが,島しょ域の気候を生かした風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの活用により燃料費を削減して発電コストを低減するとともに,CO2削減に貢献することが期待されている。

日本国内においては2016年に電力小売の全面自由化が実施され,2020年には送配電部門の法的分離が予定されるなど,電力システム改革が進行中である。従来の電力会社のみならず,ガス会社や石油会社,通信会社,小売会社などさまざまな業種が参入する新たなビジネスチャンスと捉えることもできる。それぞれの立場で異なる経営課題を抱え,また一方では相互に関係しながら進化するエネルギーインフラとマーケットに対応していく必要がある。

本稿では,以上のように多様化する課題やニーズに柔軟に対応する日立のエネルギーソリューションについて述べる。

3. 都市部における エネルギーマネジメント

都市部では省エネルギーの推進によるCO2排出量削減とともに,災害などに強いエネルギー供給システムが求められている。ここでは,熱と電力を地域全体で効率よく管理・運用することでこれらの課題に対応する日立のエネルギーソリューションについて,東京都田町駅東口北地区と千葉県柏市の柏の葉スマートシティの事例を用いて述べる。

3.1 田町駅東口北地区における熱供給の需給最適制御

田町駅東口北地区(東京都港区)では,港区の「田町駅東口北地区街づくりビジョン」(2007年10月)に基づき,港区,愛育病院,東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社,東京ガス株式会社などが,官民連携によりエネルギーの面的利用や未利用エネルギーなどの活用を行うスマートエネルギーネットワークを構築し,1990年比で45%のCO2排出量削減をめざした環境性・防災性に優れた複合市街地を形成している(図1参照)。

日立は,東京ガスエンジニアリングソリューションズが実施する地域冷暖房事業向けに,熱供給の需給最適制御システムを提供している。日立が納入した需給最適制御システムは,ICT(Information and Communication Technology)を活用することで,熱需要側の建物と熱供給を行う第一スマートエネルギーセンターとを情報連携し,エネルギー需給の一括管理・制御を支援するものである。過去の運転実績データと気象予報データから記憶ベース推論(MBR:Memory-based Reasoning)に基づいて将来の熱需要を予測し(図2参照),外気状況,空調機稼働状態などの建物のエネルギー利用状況,熱源機の運転状況などを把握したうえで,リアルタイムに空調機の温度設定や熱源機の温度・圧力設定などを最適に制御する。これによりエリア全体の低炭素化に貢献している2),3)

図1|田町駅東口北地区における熱供給事業(東京ガス株式会社Webサイトより)従来の地域熱供給をさらに進化させたスマートエネルギーネットワークによる省CO2型の街づくりをめざして,熱,電力,情報のネットワークを構築し,需要側と供給側が連携して最適な運転制御を行う。取り組みの先進性が認められ,国土交通省の「住宅・建築物省CO2先導事業」に採択されている。(https://eee.tokyo-gas.co.jp/sen/case/case04.html)

図2|記憶ベース推論(MBR: Memory-based Reasoning)に基づく熱需要予測の概念将来の気象予報値(温度,湿度など)に類似する過去の気象実績値とそのときの熱需要実績値を抽出し,気象予報値と実績値とのデータ間距離に基づき,熱需要実績値の重み付き平均値から将来の熱需要値を予測する。

3.2 柏の葉スマートシティにおけるエリアエネルギー管理システム

柏の葉キャンパス(千葉県柏市)では,街づくりを通じて世界の課題を解決する「世界の未来像をつくる街」というコンセプトを掲げ,環境共生,健康長寿,新産業創造の3テーマを推進している。環境共生(エネルギー)の取り組みとして,創エネ,蓄エネ,省エネ,およびそれらを地域全体で管理する地域エネルギーマネジメントを構築し,住民参加型の省エネルギー,地域全体での低炭素化,災害に強い街づくりをめざしている(図3参照)。

日立はその頭脳となる柏の葉エリアエネルギー管理システム(AEMS:Area Energy Management System)のほか,3.8 MWhのリチウムイオン蓄電池システムや送電システムを提供している。AEMSは,街区・建物ごとの分散電源や,ビルや住居のBEMS(Building Energy Management System),HEMS(Home Energy Management System)間を自営で整備した地域内情報ネットワークと電力ネットワークにより統合し,各種施設の電力(受電状態・発電状態・需要状態),ガス,水など地域全体のエネルギー情報を収集して一元管理する。その情報を分析することでエネルギー需要を予測しながら,街全体を効率的に運用し,低炭素化を図っている。

周辺街区にはエネルギー棟から各街区へ総延長約2,500 mに及ぶ電力自営線を敷設している。街全体の電力を平準化するため,電力会社から各施設が個別に受電した状態で,蓄電池の電力を自営線を通じて街区間で相互に融通することにより各施設のピークカットを行う国内初の電力融通システムを構築している。

また,AEMSは災害などの非常時に対応する監視機能やガイダンス機能も有しており,地域の停電時には分譲集合住宅や研究施設棟に対して最小限必要な負荷(非常用エレベータ,共用部照明,コンセント,機械式駐車場,集会場など)に電源供給を行うことができる。

また,住民やテナントユーザーにタブレット情報端末を通じて地域エネルギーの需給状態,省エネルギーアドバイスなどを提供するほか,地域内情報ネットワークおよびインターネットを通じてWebポータルやデジタルサイネージへもエネルギー情報を配信している。

以上のように,柏の葉キャンパスはエネルギーインフラによって街の価値を向上するエネルギーソリューション事業の先進事例である。

図3|柏の葉スマートシティ・柏の葉キャンパスの概要エネルギー使用量を一括で収集・管理し,エネルギー需要を予測しながら地域全体として効率よく運用する。災害などによる停電時には最小限の必要電力を供給する。

4. 島しょ域における再生可能エネルギー活用ソリューション

島しょ域では化石燃料による発電を削減して燃料費などの発電コストを低減し,CO2排出量の削減に貢献することが求められている。ここでは,蓄電池活用により再生可能エネルギーの導入拡大を可能にし,これらの課題に対応する日立のエネルギーソリューションについて,米国ハワイ州と東京都伊豆大島の事例を紹介する。

4.1 ハワイにおけるスマートグリッド実証

図4|システム構成図家庭にはEV(Electric Vehicle)普通充電器および給湯器を遠隔遮断することができるホームゲートウェイ,太陽光発電の出力を制御するSmartPCS,家庭用蓄電池を設置し,島内13か所にはEV急速充電ステーションを設置し,μ-DMSでこれらの機器を低圧変圧器単位で制御する。また,系統側に設置した蓄電池や島内の分散電源をDMSで統合管理することで全島の電力需給バランスを最適に制御する。

米国ハワイ州は,2030年までに電力需要の40%以上を再生可能エネルギーとする計画を法制化している。中でも再生可能エネルギーの普及が進んでいるマウイ島は,総発電量に占める再生可能エネルギーの割合が2014年3月時点ですでに約30%に達している。発電量が不安定な風力発電や太陽光発電の導入比率を増やすためには,電力品質の維持が課題である。日立はこれを解決するため,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO:New Energy and Industrial Technology Development Organization)と共同でスマートグリッド実証事業「Japan-U.S. Island Grid Project(プロジェクト呼称:JUMPSmartMaui)」をマウイ島で2013年12月から実施してきた。

太陽光発電の大量導入に伴い,日中は太陽光発電量が需要を上回り,電力系統安定運用のために必要な電源を除いて,火力発電などの従来電源は運転しなくてもよい状態となることがある。一方で,太陽が沈む夕方から夜にかけては太陽光発電量が急激に減少すると同時に家庭の電力需要が急増するため,従来電源は短時間で大量の電力を供給しなければならなくなる。そのためには,本来運転しなくてよかった日中の時間帯から従来電源を待機運転する必要があり,日中の太陽光発電の出力抑制と従来電源の待機運転による効率悪化が新たな課題になっている。

このような問題に対処するために,日立は現在デマンドレスポンス(DR:Demand Response)の対象としているEV(Electric Vehicle)蓄電池を,充電遮断による「ネガワット」効果に加えて,蓄電池から電力系統に放電する「ポジワット,V2G(Vehicle to Grid)」効果としても活用している。また,分散配置されるEVの蓄電池をアグリゲートし,仮想発電機として全体をコントロールする技術であるVPP(Virtual Power Plant)について,一般家庭およびビジネスボランティア計83軒が参加して効果を評価中である(図4参照)。

充電だけでなく放電にも対応が可能なEV蓄電池を用いたソリューションの有効性を検証し,エネルギーリソースアグリゲーションにより,再生可能エネルギーの導入加速に貢献していく。

4.2 伊豆大島におけるハイブリッド型蓄電システムの実証

再生可能エネルギーは発電量が天候に左右されるため,余剰電力が発生したり,電力系統の電圧や周波数に影響を与えることが課題である。特に島しょ域においては,電力系統が小規模で独立しているため,再生可能エネルギーの出力変動が電力系統に与える影響は顕著となる。

太陽光発電を例に取ると,朝〜昼〜夜の時刻に依存する長周期の出力変動と,雲が太陽光を遮ることによる短周期の出力変動がある。日立は,電力系統への影響要因としてこの2種類の出力変動があることに着目し,それぞれの対策に適した異なる蓄電池を組み合わせたハイブリッド型蓄電システムを提案している。

日立製作所と日立化成株式会社が共同で,容量が大きく「持久力」のある鉛蓄電池と,数百ミリ秒までの急峻(しゅん)な変動に対応でき「瞬発力」があるリチウムイオンキャパシタの両者の長所を組み合わせた1.5 MWのハイブリッド型蓄電システムを開発し(図5参照),NEDOの助成事業「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」(2011年から2016年2月)において,東京電力パワーグリッド株式会社の協力の下,伊豆大島(東京都)の電力系統に接続した実証試験を実施した。

その結果,蓄電池のガバナフリー運転によって電力系統の周波数変動が減少し,系統安定化に貢献できることを確認した(図6参照)。また,蓄電池を用いたピークシフト運転により,既設のディーゼル発電機の運転台数削減や,発電機の発電効率が低い負荷率での運転時間短縮が可能になり,発電コスト削減にも寄与できる見通しを得ている4)

現在,東京電力パワーグリッドと共同研究を実施中であり,さらに詳細な評価と検証を経て実用化する予定である。

図5|伊豆大島におけるハイブリッド型蓄電池「持久力」のある鉛蓄電池と,「瞬発力」があるリチウムイオンキャパシタを組み合わせた1.5 MWのハイブリッド型蓄電システムで長周期と短周期の変動を抑制する。

図6|ハイブリッド型蓄電システムによる周波数変動抑制結果例(制御あり/なしでぞれぞれ2時間測定)蓄電システムのガバナフリー制御によって周波数変動が減少し,系統安定化に貢献できることを確認している。

5. 今後の展開

上述した技術を活用し,日立がこれまで培ってきたエネルギー機器の製造や運転に関する経験とノウハウをITと組み合わせることで,以下に述べる新たなソリューションへ展開する。

5.1 マイクログリッドソリューションへの展開

近年,北米では電力インフラの老朽化や自然災害による大規模停電が増加している。また,シェールガス革命によるガス価格の低位安定化の影響もあり,高いレジリエンシーと経済性を兼ね備えたマイクログリッドのニーズが高まっている。

マイクログリッドは,太陽光発電などの再生可能エネルギー,発電機,蓄電池,冷凍機や蓄熱槽などの熱源機器や需要家の負荷が集約されているため,電力や熱の需給バランスを最適化することによってCO2排出量を削減し,運用コストを最小化することが可能である。日立は,これまでマイクログリッドの系統連系時の逆潮防止や電力品質確保に関する技術を開発してきており,愛知万博(2005年日本国際博覧会)プロジェクトやNEDO仙台市プロジェクトで効果を確認してきた5)。また,第3章および第4章で述べたエネルギー管理技術や蓄電池活用技術を統合することにより,現在,北米において大学キャンパス,ショッピングモール,自治体などを対象にしたマイクログリッドソリューションへの展開を図っている。

今後,マイクログリッドが普及すると,マイクログリッドの中の最適化だけでなく,電力系統を介して連携した複数のマイクログリッド間で電力を融通し,地域全体でエネルギー効率が向上することが期待できる(図7参照)。例えば,需要家の業種などの構成割合が違うことにより,電力および熱の需要パターンが異なることが想定される。この場合,発電量に余力があるマイクログリッドから,発電量が不足するマイクログリッドに余剰電力を融通することにより,全体としてのエネルギー効率をさらに向上させることが可能となる。

そこで,複数のマイクログリッドを連携し,統合的に管理運用する熱電運転計画技術を開発した6)。従来は,個々のマイクログリッド内で熱と電力を最適化していたため,太陽光発電の電力が余る場合や,コージェネレーション発電では熱が余るときに発電単価の高い外部電力を購入する場合があった。複数のマイクログリッドを統合的に管理運用するエリアエネルギー管理システム(AEMS)は,各マイクログリッドに設置されたEMS(Energy Management System)と連携し,各マイクログリッド内の熱と電力の需要を考慮して,コージェネレーション排熱が全体として最小になるようにマイクログリッド間で電力を融通することにより,地域全体でエネルギー効率を最大化する(図8参照)。

また,北米では余剰電力の電力市場取引が開始されており,複数マイクログリッドの余剰電力をアグリゲートすることにより,さらなるエネルギー効率と経済性の向上が期待できる。

今後は,再生可能エネルギーの導入によって生じる電力系統の電圧や周波数の変動問題に対しても,マイクログリッドがその安定化に貢献する役割を担い,新たな価値を提供していく。

また,国際標準規格の通信プロトコルを使用し,ユーティリティーや他マイクログリッドの管理システムとの通信を容易にすることでスケーラビリティを確保し,単一マイクログリッドから広範囲にわたる複数マイクログリッド間の協調,さらには電力市場との連携など,付加価値が高くフレキシブルなマイクログリッドソリューションへと展開する。

図7|複数マイクログリッド連携の構成例再生可能エネルギー,熱源機器,蓄電池および負荷から構成される複数のマイクログリッドがEnergyIoT プラットフォーム上の地域エネルギーマネジメントシステムを介して電力系統や電力市場と接続される。

図8|マイクログリッド間の電力融通によるエネルギー効率向上の運転例マイクログリッド内の熱需要を考慮してマイクログリッドAとBの間で電力融通することにより,全体としてのエネルギー効率を最大化する。

5.2 国内電力システム改革とソリューション展開

日本国内では電力システム改革に伴い,2017年のネガワット市場設立,2019年のリアルタイム市場設立など,調整力に対する制度設計とともにエネルギーアグリゲーションビジネスの創生が期待されている7)図9参照)。

日立は,これまで発電,送配電,小売の各部門に対し,前述した米国ハワイ州におけるスマートグリッド実証や伊豆大島におけるハイブリッド型蓄電システムをはじめ,NEDOが実施する「英国・グレーターマンチェスターにおけるスマートコミュニティ実証事業」8)などでソリューションの効果を検証してきた(図10参照)。これまでに蓄積してきたエネルギー機器の運転・制御に関するOT(Operational Technology)とデータの分析や活用に関するITを最大限に活用し,新しいエネルギー市場に柔軟に対応していく。

さらに,ビッグデータ解析技術やAI(Artificial Intelligence:人工知能),Pentahoソフトウェア9)によるアナリティクスなどの技術を融合させた日立のIoT(Internet of Things)プラットフォーム「Lumada」10)をベースに,バリューチェーンを構成する各ステークホルダーの経営課題解決に取り組んでいく。

図9|バーチャルパワープラント管理システムの機能構成例アグリゲーションビジネスにおけるバーチャルパワープラント管理システムは,共通フレームワーク上に実装した契約から運用までの業務機能と標準規格に基づく通信機能で構成される。

図10|リソースアグリゲーションソリューション事例エネルギーリソースアグリゲータは発電事業者,小売事業者,送電事業者,需要家の課題を解決するとともに,電力市場との取り引きなどにより,各ステークホルダーのメリットを向上させる。

6. おわりに

エネルギーに関わる課題とニーズは国や地域,供給側から需要側までの各ステークホルダーによってさまざまであり,複雑化かつ多様化している。

日立はこれまで培ってきたエネルギー機器製造の経験とノウハウ,IT,OTとをフレキシブルに融合させ,顧客と共に課題を解決するソリューション型ビジネスを加速させていく。

参考文献など

1)
資源エネルギー庁:平成27年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2016),第2部第2章 国際エネルギー動向(2016.5)
2)
K. Matsunaga, et al. : EFFICIENT ENERGY AND EQUIPMENT MANAGEMENT BASED ON HITACHI’S “EMilia” CLOUD SERVICE, The 4th International Conference on Microgeneration and Related Technologies, ID0020 (2015.10)
3)
松永,外:スマートエネルギーネットワークによる省CO2まちづくり(第14報)SENEMS(セネムス)による空調・熱源機連携制御について,空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集(鹿児島)(2016.9)
4)
乗松,外:2種類の蓄電デバイス(鉛蓄電池とリチウムイオンキャパシタ)を用いた新開発1.5MWハイブリッド型蓄電システム,電気学会保護リレーシステム研究会資料,PPR-16-026(2016.11)
5)
三村,外:新エネルギーを利用した分散型電源の導入形態と監視制御技術,日立評論,89,3,236〜239(2007.3)
6)
高橋,外:マイクログリッド内の複数エリアを対象にした熱電運転計画方式の開発,平成28年電気学会電力・エネルギー部門大会,No. 290(2016.9)
7)
デマンドレスポンス関連技術・市場の現状と将来展望 2016,株式会社富士経済(2016.7)
8)
日立ニュースリリース,「英国・グレーターマンチェスターにおけるスマートコミュニティ実証事業」の開始について(2014.3),http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2014/03/0313.html
9)
日立ニュースリリース,新たな成長機会を捉えるビッグデータ利活用のシステム導入支援サービスを販売開始(2015.10),http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2015/10/1020.html
10)
花岡,外:社会イノベーション事業を広げるIoTプラットフォーム,日立評論,98,7-8,498〜502(2016.8)
Adobe Readerのダウンロード
PDF形式のファイルをご覧になるには、Adobe Systems Incorporated (アドビシステムズ社)のAdobe® Reader®が必要です。